世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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今回初のコラボ編です。

コラボしたのは悪維持さんの作品『煉獄の義姉弟』とです。しっかりコラボできているか不安ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


34話

簪と本音と会ったその日の夜、部屋へと帰って来たネイサンはある所に電話を掛けていた。コール音が暫く鳴り響いた後、電話が取られた。

 

『はろはろ~、ひっさしぶりだね、ネイ君!』

 

「お久しぶりです、束さん」

 

ネイサンが電話を掛けた先は、束の携帯だった。

 

『用件は大体把握しているよ。例の眼鏡っ子のISの開発を手伝えば良いんだよね?』

 

「……相変わらず、何処からそう言った情報を入手して来るんですか?」

 

ネイサンは既に用件を知っていると言わんばかりに説明する束に、苦笑いを浮かべる。

 

『そりゃあネイ君に関することだったらいち早く情報収集するからね。さて、その眼鏡っ子のISの開発のお手伝いなんだけど、今私手が離せないの。だから、クーちゃんと護衛の人を送るね』

 

「クロエちゃんでしたっけ? 彼女一人で大丈夫なんですか?」

 

『大丈夫、大丈夫! 必要なパーツやらシステムとか全部クーちゃんに渡して、後はそれを説明書通りに取り付けたら完成するから!』

 

「は、はぁ」

 

相変わらず用意周到だなぁ。とネイサンは思いながら、苦笑いを浮かべていると、先程までとは違う雰囲気で束が口を開く。

 

『そう言えば、ネイ君の部屋に盗聴器を仕掛けた蛆虫って見つかった?』

 

「蛆虫って……。まぁ、まだ見つかっていないところですね。スコールさんから聞いた話ですが、僕の捏造記事を出そうとした新聞部の部員の荷物には盗聴器等は確認できなかったらしいので、恐らく別の人物だと思います」

 

『チッ。なかなか尻尾を掴ませないとか、マジ腹立つ。それが2匹もいるとか、本当にイライラさせてくれるよ』

 

束がイライラした口調で洩らす。ネイサンは心配性だなぁと思い、安心させようと声を掛けた。

 

「大丈夫ですよ、束さん。そいつの目的が何であれ、僕の周りでウロチョロするなら撃滅しますから」

 

そう言うと束からイライラした雰囲気が和らいだのか、口調が戻り始めた。

 

『おぉ~、さっすがネイ君。けど、無茶は駄目だよ? さて、そろそろクーちゃんにパーツやらシステムとか渡さないといけないから切るね』

 

「分かりました。お休み、束さん」

 

そう言うと、束も『お休み~!』と言って電話を切った。

 

 

次の日、ネイサンは簪が居るであろうメンテナンスルームへと来た。

中へと入ると、変わらず奥のコーナーで作成を続けていた。だが一つ違っていたのは

 

「こんにちは簪さん、本音さん」

 

「あ、こんにちは」

 

「やっほ~、ネイネイ」

 

「ネイネイ?」

 

本音から自身の呼び名に、首を傾げるネイサンに簪が訳を話す。

 

「本音は変わったあだ名を付けたがるの」

 

「なるほど、そう言う事ですか」

 

疑問が解消されたネイサンは、用件を伝えるべく口を開いた。

 

「昨日頼まれた技術者の件なんですが、向こうが了承して下さったので具体的な日にちが分かったらまたお伝えしますね」

 

「も、もう了承して下さったんですか!?」

 

簪はたった一晩で了承した技術者は一体どういう人物か気になり、ネイサンに聞く。

 

「その技術者って本当に無所属なんですか?」

 

「えぇ、無所属ですよ」

 

「……そうなんですか「ですが、少し問題が」えっと、問題って?」

 

ネイサンは少し苦笑いを浮かべた状態でその問題を口にする。

 

「実はその技術者本人が来れず、そのアシスタントが来られるようなんです」

 

「そ、そうなんだ。そのアシスタントの方は、手伝えるの?」

 

「技術としての腕は分かりませんが、技術者の方が言うには問題無いそうです」

 

そう言われ簪は一抹の不安を感じながらも、「ありがとう」とネイサンにお礼を口にした。

 

 

その頃、ココ達はと言うと

 

「ひっさしぶりの日本だぁ!」

 

そう言い腕を上げるのはココだ。その周りには元気あるなぁ。と苦笑いを浮かべるレーム達が居た。

 

「それでココよぉ。なんでまた日本なんかに来たんだ? ネイサンの文化祭はまだ先だぜ」

 

レームはそう言うと、ココは何時もと変わらない笑みを浮かべた表情を向けながら説明した。

 

「うん、実はキャスパー兄さんから少し話があるって先週電話があったの。で、今日はネイサンの文化祭が始まる前にも関わらず日本に来たって言う訳」

 

そう言うと、レーム達は「「「へぇ~」」」と声を漏らす。

 

「さてそれじゃあバルメ、一緒に来て。ウゴは運転宜しく」

 

そう言いココはバルメとウゴと共に空港を後にする。

 

「で、俺達はどうするんだ?」

 

「何時も通りさぁ。ローテーションでココを陰から護衛する」

 

「だな」

 

そう言いレーム達はそれぞれ歩き出し、空港を後にした。

 

レーム達より先に空港から出たココ達は、空港から車で一時間程にあるとあるレストランへと着いた。

 

「ウゴ、私達は兄さんに会いに行ってくるから車で待っててね」

 

「了解だ、お嬢」

 

腕を上げ了承するウゴ。ココはバルメと共にレストランへと入って行き、奥へと進む。

 

「さて、兄さんはと「おぉ~いココ。こっちだ」あ、いたいた」

 

そう言い2人はレストランの奥の席に座っているキャスパー達の元に向かう。

 

「久しぶり兄さん。えっとそちらは?」

 

ココはキャスパーとチェキータの向かいに座っている2人の男性に目を向けた。

 

「あぁ此方の方々は「Mr.キャスパー、自己紹介は私が」そうですか」

 

男性は席を立ちココの傍へと行き手を差し出す。

 

「初めまして、Ms.ヘクマティアル。私はPurgatory.Eden.Company、通称PECの社長、Mr.Kです」

 

「初めましてMr.K。HCLI社所属のココ・ヘクマティアルです」

 

そう言い手を握り返す。そしてココはもう一人の方に目を向ける。

 

「そちらの方は?」

 

「あぁ、此方は私の護衛に来て貰った」

 

「鬼鉄一輝と言います。本日は社長の護衛として参りました」

 

一輝は自己紹介をして、一礼する。

 

「初めまして」

 

「さて、ココは其処の席に着いてくれるかい。今から商談を始めるから」

 

そう言われココは商談?と首を傾げながら席に着く。バルメはココの左後ろに立ち警護に着く。

 

「さて、詳しい話を始めようと思う。実は先日此方のPEC社社長のMr.K氏からある条件を呑んでくれたら幾つかの商品を安価で提供して下さる様なんだ」

 

「なるほど。……Mr.K幾つか質問があるのですが、宜しいでしょうか?」

 

ココは疑問に思った事を聞こうと、Mr.kに聞く。Mr.Kも「勿論構いませんよ」と笑顔で了承した。

 

「貴方の企業で開発されたパワードスーツ、確か『ダークネクロム・スーツ』通称DNスーツは男性でも扱え、噂ではISと同等の力を有していると聞いています。そんな商品を何故我々に?」

 

「それは貴女方が幅広い地域に武器を販売されているからです。我々は商品を開発できてもそれを販売する為のルートを開拓できていないのです」

 

「なるほど。海運であちこちに武器を販売している我々に武器を売り込めば、貴方方は儲けられる。そして我々も新たな商品を調達できる企業を入手できる上に、男性も扱えるパワードスーツもあって更に多くの顧客を得られる。顧客が増えれば貴方方の需要は増え更に儲けられる。そう言う訳ですね?」

 

キャスパーがそう説明すると、Mr.Kは「そうです」と頷く。

 

「なるほど。では、そちらの言う条件とは何ですか?」

 

ココはキャスパーが言っていたPEC社の提示する条件を聞く。

 

「現在IS学園で身柄が拘束されているシャルロット・デュノア、彼女の身柄を我々に引き渡す。それが条件です」

 

「シャルロット・デュノア? 確か男性操縦者と扮して学園に入学した生徒ですよね? 何故また彼女の身柄を?」

 

「調べた所、彼女は只父親や会社の言いなりで仕方なく産業スパイをしたと分かりまして、実の父親にその様な扱いを受けているのが何とも可哀想で仕方がないと思ったのです。だから我が社で保護しようと考えたのです」

 

Mr.Kの説明にココ達はなるほど。と納得した表情を浮かべながらも、相手の考えが読めずにいた。

 

「そちらのご提示した条件は理解しました。まぁ、此方も別に彼女の身柄をそちらに引き渡しても何ら問題はありませんので、条件を呑みましょう」

 

そう言われMr.Kは笑みを浮かべた。

 

「では、商談成立で宜しいでしょうか?」

 

「えぇ、これから宜しくお願いします」

 

そう言いキャスパーは手を差し出すと、Mr.Kも同じように手を出して握手を交わす。そしてMr.Kは護衛の一輝と共にレストランを去り、キャスパーとココはレストランで商談の事を話し始めた。

 

「それで兄さん。なんで私もこの話し合いに参加しないといけなかったの? 別に兄さんだけで良かったと思うんだけど?」

 

「向こうから、被害に遭われた男性操縦者の雇い主にも同席頂きたいとお願いされたんだ。それに向こうはココには幾つかの商品を無償提供するって言ってたんだ」

 

そう言われココは驚いた表情を浮かべた。

 

「それ本当?」

 

「あぁ。呼ばれて良かっただろ?」

 

キャスパーにそう言われ、ココはニンマリと笑顔を浮かべる。

 

「確かに。……ん? もしかして後日ネイサンに会いに行くの?」

 

「ネイサンに会うかは分からないけど、IS学園には後日Mr.K氏と行くよ」

 

IS学園に行くと聞き、ココは少し考え込む。

 

「ん~。私もIS学園に行きたいけど、欧州に残してきた仕事もあるしそれ片付けないといけないから戻るね」

 

「そっかぁ。分かった、ネイサンにはココが日本に来ていた事は伏せておくよ」

 

「お願いね、兄さん。それじゃあ」

 

ココは席を立ちバルメと共にレストランを後にした。




次回予告
数日が経ったある日、ネイサンはメンテナンスルームにクロエ、オータムを連れ訪れた。そして簪のISの開発を始める。そんな中、学園長室ではキャスパーとMr.K、そして学園長とシャルロットと千冬を交え会談を行っていた。
次回
最後の自由への切符
~サインするかは君の自由だ~

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