――束の隠れ家
隠れ家のある一室にて束は、おでこに青筋を浮かべながら複数の空間ディスプレイを見ながらキーボードを操作していた。
すると傍に居たクロエが話しかけた。
「束様、1年生全員のパソコン、スマホの中身を確認しましたが怪しいものはありませんでした」
「分かった。それじゃあ次は3年生のをやって」
そう言われクロエはディスプレイを開き、一人一人確認していく。2人がやっているのはIS学園在学の生徒、そして教師達のパソコン、スマホなどにハッキングし盗聴していた人物の特定を行っていたのだ。
「全く、漸くあの
束はネイサンに楽しい高校生活を送らせようと色々しているのに、それを邪魔しようと動く連中にイライラが募っていた。
「ん? 何だこのファイル?」
束はある生徒のパソコンの中にあった謎のファイルに目が留まり、そのファイルを開く。
「さてさて一体何が……」
ファイルを開き中身を確認した束はイライラした表情が、イライラが限界を超え真顔となりそのファイルの中身を見ていた。
クロエは突然黙ってしまった束を心配し声を掛けた。
「束様? 如何なさいましたか?」
「何でも無いよ。ちょっとスーちゃんに電話して来るね」
そう言い束は席を立ち、部屋から退室して行く。クロエは雰囲気、声量などから本気で怒っておられると察し、怒らせた人物は一体誰なのかと思い束が見ていたディスプレイを見る。そして怒った理由を察した。
「なるほど、確かにこれは酷いですね。束様が本気で怒られる理由も分かります」
そう言っていると、ドッン!!!と音がすると共に部屋が一瞬揺れ、クロエは束が外で怒りを放出されたのだろうと思い作業へと戻った。
そして次の日、IS学園2年2組では朝のSHRが始まるのを、談笑しながら待つ生徒達。すると教室の前の扉が開きスコールが入って来た。
「失礼するわね」
そう言いスコールはテクテクと一人の生徒の元へと歩む。
「少しいいかしら?」
そう声を掛けられたのは眼鏡を掛け、私物だと思われるカメラを弄る生徒であった。
「えっと、何ですか先生?」
「黛さん、貴女に少しお話があるの。付いて来てもらってもいいかしら?」
「え? でもこれからSHRが「担任の瑠莉奈先生には、私から事情は話してあるから大丈夫よ」そ、そうですか。分かりました」
そう言い黛は立ち上がり、スコールと共に教室を出て行く。生徒達は何かやらかしたのか?と話し合い始めた。
その頃黛がスコールに連れて来られた場所、それは生徒指導室だった。
黛は何故この部屋に連れて来られたのか、訳が分からず目の前に居るスコールに訳を聞く。
「あの、スコール先生。何故私は此処に連れて来られたんでしょうか?」
「そうね。訳を話しましょうか」
そう言いスコールは訳を話し始めた。
「実は最近、生徒達の間で新聞部の記者が捏造した新聞記事を掲載しているって噂が挙がってるのよ」
「ね、捏造記事ですか!?」
黛は驚いた表情を浮かべ、顔をしかめる。
「私も新聞部の一人ですが、そんな事をしている人が居るなんて信じられません! 直ぐに犯人を「実はもう見当がついてるのよ」……へ?」
犯人はもうわかっているとスコールの言葉に、黛は可笑しな声をあげる。
「実は新聞部の部長にお願いして部員全員のパソコンを調べさせて貰ったの。因みに自前のパソコンもよ」
そう言うと、黛の顔から滝の様な汗が流れ始めた。
「そしたらあなたのパソコンからこんな記事が見つかったのよ」
そう言いスコールは紙を机の上に出し、黛の方に置く。その紙には記事が書かれており内容が
『噂の男性操縦士、夢はハーレム王!』と書かれていた。
「これ、一体どういう事かしら?」
「えっと、わ、私には何のことかさっぱり……」
黛は汗を大量に流しながら、目を明後日の方向に向ける。
「そう。けどこの記事、厳重に色んなファイルに隠すようにされていたんだけど? しかもご丁寧にこの記事があるファイルにはロックさえかけられてあったし」
そう言われ黛は、汗が更に激しく落ちていく。
「何か言い訳は?」
「だ、だって噂の男性操縦士のマクトビア君に取材を依頼しても、全部断られるんですもん。そうなったら記事が書けないから捏造するしか……」
そう言い黛は言い訳を述べていると、指導室に置かれているロッカーがガタガタと動き出しそして
「このぉ、恥知らずがぁ~~~!!!」
そう叫びながら黛を殴り掛かったのは
「ぶ、部長!? ブベラッ!!???」
突然ロッカーから飛び出してきた部長に、黛は驚きの余り身動きが取れずそのまま部長の拳を貰った。
「貴様ぁ! 捏造なんて言う歪んだ記事を世に出そうとは、貴様それでジャーナリストかぁ!」
そう叫びながら黛の胸倉を掴み、ブンブン振る部長。黛は「く、苦しぃ~」と零しながら、意識を失った。意識を失った黛を部長は廊下の外に居た部員達を呼び、持って来させた担架に乗せた。
「先生、こいつの不始末は我々新聞部が片付けます」
「そう? 此方は今後捏造した記事を掲載しない様にと警告するだけだから、別に良いけど」
そう言われ部長は「では、失礼します!」と言い部員達と共に拘束した黛を運び出て行った。
後日黛は部長からジャーナリストとしての心を一から叩き込むと言われ、部活の時間終了一杯までマンツーマンで心得を教えられているとのこと。
そんなことがあった日の放課後。学園のとある一室にいる一人の女子生徒。机の上にはネイサンの入学時の資料が置かれていた。
「突然薫子ちゃんが、先生に生徒指導室に連れていかれたのは、偶然にしては出来過ぎてる。それに今になって噂を調べるなんて可笑しい。やはり彼の後ろに居る篠ノ之博士が何かしたのかしら。動いた理由はあれよね……」
そう呟きながら外を眺める生徒。
「どちらにしても彼は一体何者なのかしら」
そう言い扇子を開く。其処には『何者?』と書かれていた。
次回予告
何時もと変わらず鈴やマドカ、そして真耶と訓練をするネイサン。そんなある日、ネイサンはISの定期メンテの為アリーナ横に設置されているメンテナンスルームへと向かう。其処には作りかけの一機のISが鎮座し、一人の生徒が作業していた。
次回
努力をした者ほど、その見返りは大きい
~迷惑と思われることは分かっています。ですが、それでも手伝わさせて下さい~