世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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2話

ココ達が乗っているHCLI社のトラック群は本土と学園を結ぶ橋を渡り、学園の荷下ろし場へと到着した。トラックに乗っていたココ達が降りて周辺を警戒していると3人組の学園の関係者と思しき人物たちがココに近寄った。

 

「初めまして、Ms.ヘクマティアル。当学園の学園長をしております、轡木と言います」

 

「これはどうも、Mr.轡木」

 

ココは挨拶を返しながら握手を交わす。そして轡木の背後にいた人物に気づく。

 

「所で後ろの方々は一体?」

 

「あぁこちらは付き添いとして来ていただいて当学園の教師たちです」

 

轡木がそう言うと黒髪の女性と緑髪の女性は挨拶した。

 

「は、初めまして。当学園で教師をしている山田と言います」

 

「同じく織斑だ」

 

ココは最後の織斑の挨拶を聞き、こいつがと内心呟く。

 

「どうも初めまして、HCLI社から参りました。ココ・ヘクマティアルと言います。それとお会いできて光栄です、ブリュンヒルデ」

 

「よしてください。その名はあまり好きではないので」

 

ココはそうですか。と言いそしてレーム達に荷物を下ろすように伝える。

 

「それにしても此処は他の学園と違ってデカいよなぁ」

 

金髪男性の元警察対テロ特殊部隊狙撃手のルツがそう呟くと、一緒に作業していた元自衛隊員のトージョが同意するように頷く。

 

「此処はISを学ぶための学園だ。そりゃ他の学園とは違って金は結構掛けてるだろ」

 

そう話していると元イタリア軍陸軍情報担当少尉で、ベルサリエリに所属していたアールも会話に混ざってきた。

 

「しかも女学園なんだろ。まじあの学園長が羨ましいぜ」

 

「そういや、此処の教師ほとんどは女性だったな。男性はほとんどいないらしいし」

 

ルツが思い出すように言うとトージョとアールが何だと言わんばかりの顔でルツに顔を向けた。

 

「けど、此処に入るにはISに乗れるか、ISの専門技師になるかのどっちかだよな」

 

「確かに。まぁ俺たちにとっちゃどうでもいい話になると思うが」

 

「確かに」

 

3人が談笑しながら作業をしている中、作業は着々と進んでいく。千冬は作業をしているレーム達を眺めているとふとトラック付近で銃を下げながら辺りを警戒しているネイサンを見つける。千冬はその横顔が数年前行方不明となった弟の一夏に似ていると思い、気になって近づく。その光景をレームとバルメも気づいており、バルメはインカムでココに警戒を呼び掛ける。

 

『ココ、ネイサンに例の彼女が近づいてます』

 

ココはこっそりと目線をネイサンの方へと向けると確かに千冬がネイサンに近付いているのが見て取れた。

 

『万が一があったら不味いから警戒しておいて』

 

ココはインカムでそう言うとレーム達は作業をしつつ何時でも動けるように警戒した。

 

「……一夏?」

 

千冬はそう呼びかけるが、ネイサンは目線だけを千冬の方に向けるが、また周辺警戒へと戻った。千冬はめげずに近づくとその横顔を見て確信したように言い寄る。

 

「や、やはり一夏じゃないか! 今まで何処にいたんだ! ずっと心配していたんだぞ!」

 

そう言って一夏の肩に手を置くが一夏はその手を振り落し、千冬は一夏の行動に驚く。

 

「誰と勘違いしているか知りませんが、自分はネイサン・マクトビアと言って貴女の言う一夏という名前ではありません。仕事の邪魔なので向こうに行っててもらえませんか?」

 

そう言ってネイサンは周辺警戒へと戻ろうとするが、千冬はそれを否定して自分の弟だと言おうとしたが。

 

「織斑先生、彼らの仕事の邪魔をしてはいけませんよ」

 

轡木にそう注意されるが、千冬は自分の弟だとネイサンに言い寄るがアールがネイサンを呼ぶ。

 

「おーい、ネイサン。悪いがマオと警備を交代してこっちの手伝いをしてくれないか」

 

そう呼ばれネイサンはマオと交代してアールの元へと向かう。千冬はネイサンの腕を掴もうとしたが学園長が止めた。

 

「織斑先生、何度同じことを言わせる気ですか? もう貴女は戻っていただいて結構ですよ」

 

そう言われ千冬は顔をネイサンの方へと一度向けた後、学園長に言われた通り学園の中へと入って行った。

 

「……申し訳ありません、Ms.ヘクマティアル。実は彼女の弟さんは今行方不明になっていまして。それで彼を行方不明の弟さんと思い込んであんなことを言ったんだと思うんです。どうか許してやってください」

 

「あぁいえ、大丈夫ですよ」(流石ネイサンの元姉だ。横顔で本人だと見抜くとは、油断ならないわね)

 

ココは内心千冬の観察眼に驚きつつもアールのファインプレーに感謝しつつ、轡木に荷物の受領完了の手続きへと入った。

 

その頃、アールに呼ばれたネイサンはトラックの荷台に入っていた武器等を下ろしていると、一機のISがトラックの奥で鎮座していた。

 

「アール、これは?」

 

「荷物表にはこいつのことは書かれて無い。お嬢にこいつのことを聞かないとな」

 

そう言ってアールはインカムでココに連絡をとっている中、ネイサンは何でこれがと思いながらISに触れた瞬間頭の中に情報が入ってきた。

 

『あ、お嬢。今いいか? いや、トラックの後ろに……ISが…………。ネ、ネイサン?!』

 

アールの叫びを聞いたココ達は急いでアール達が居るトラックへと向かい中を覗くと、中では驚いた表情で固まっているアールと深緑色のISを身に纏っているネイサンがいた。

 

「「「「「「「「え、えぇぇぇーーーーーーー!?」」」」」」」」

 

ココ達は驚き大声で叫んだ声が学園に響いた。




次回予告
次の話から本編が始まるので、ネイサン・マクトビアこと元織斑一夏がどうして今の名前を名乗っているのか、そして何処で銃の技術などを磨いたのか、その過去の話をしようと思う。
次回閑話ネイサンの誕生と成長~今日から俺がお前の義父だ~

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