「うぅぅ……こ、此処は?」
シャルロットはズキズキと痛む額を押さながら辺りを見渡す。周りはコンクリートで覆われており鉄の扉と簡素なベッドと机、そして用を足すための便座が備えられていた。
「此処は一体?」
「あら、目が覚めたの」
その声が聞こえ、シャルロットは声がした方へ顔を向ける。其処には格子の向こうからこちらに顔を覗かせているスコールが立っていた。
「せ、先生。どうして、僕は?」
「マクトビア君が貴女に撃ったのは、硬質ゴム弾よ」
そう言いスコールは説明を始めた。
「あの時、マクトビア君が貴女に向けていたのはマテバって言うリボルバーで、装填されていたのはさっきも言った硬質ゴム弾よ。で、貴女を撃った後私に連絡をして貴女をこの独房へと放り込んだって言う訳」
スコールは淡々と説明をし、次に哀れんだ目線でシャルロットを見下ろす。
「それにしても貴女って言われた事しか出来ない機械のような人ね」
「ど、どう言う事ですか?」
「だって、貴女が本当に自由になりたいと思っているなら、この学園の規則をよく読んでおけば良かったのに」
そう言われシャルロットはどう言う訳かと疑問の顔持ちでスコールへと向ける。
「はぁ~、本当に何も知らなかったようね」
そう呟き、スコールはシャルロットに生徒手帳を放り投げた。
「35ページを読んでみなさい」
「“当学園は如何なる政府、企業からの要請などが有っても生徒の引き渡し等はしない”……こ、これって」
「そう、この学園に入った後は学園にいる間は政府、企業から如何なる要請だろと生徒の身柄は学園が保護するって言う事よ」
シャルロットは何故これに気が付かなかったのだろうと、自身を責め続けた。だがある事に気付く。
「あの、先生。なら僕が産業スパイをしてもフランス政府に僕の身柄は……」
「えぇ、引き渡されないでしょうね」
シャルロットはその言葉を聞き安堵したような表情になろうとしたが
「けど、貴女が犯罪をしたという経歴は消えないわよ」
「え?」
「貴女が盗んだデータを確認したらHCLI社で開発したIS、つまりマクトビア君が乗っているISの基本データだと確認できたそうよ」
そう言われシャルロットは嫌な汗が引き出し続ける。
「そ、そんな! あの時マクトビア君はISに似せた物だって言ってたんですよ! だから入っていたデータだって偽物のはずです!」
「そう言うけど、HCLI社が本物だって言ってるしそれに、マクトビア君自身もこのデータは本物だって言ってたのよ。つまり貴女が言っている事は虚偽だと判断せざるを得ないのよ」
シャルロットはもう訳がわかないと言った表情で頭に手を置き、顔を下に向ける。
「そう言えば、今区画監視カメラと集音装置が停止しているのよ」
突然のスコールの呟きにシャルロットはそれが何といった表情を浮かべる。
「今から私が言う事は只の独り言。信じるかどうかは貴女次第よ。今回の1件、マクトビア君は前から予期していたのよ。それで貴女が何もしてこなければ無視を決め込んでいた。けど貴女がデータを盗みやすくするために、仲良くしようと近付いて来るのがストレスを溜めていたらしいのよ」
スコールの呟きにシャルロットは、もう前からバレていた事に驚いた表情を浮かべつつ、続きを聞く。
「で、二度と自分の目の前に現れないようにする為に彼は今回の計画を立てたの。そして貴女はその計画に上手く引っかかったって言う訳」
「じゃ、じゃあどうして僕を助けようとしなかったんですか」
「助ける? 貴女を?」
スコールは信じられないって言う表情を浮かべ、失笑する。
「スパイと仲良くしたいって言う人なんかこの世にいる? いる訳ないでしょ」
そう言われシャルロットは肩をビクッとさせる。
「さて、そろそろ私は帰るわ。それじゃあさようなら、哀れなスパイさん」
そう言いスコールは独房から去って行った。
「そ、そんな嫌だ! 僕は只自由になりたかっただけなんです! お願いです、此処から出してください! デュノア社からの指令などを全部喋るから!」
そう叫ぶ声が響くがスコールはそれを無視して独房を後にした。
シャルロットをスコールに引き渡し終えたネイサンは机に置いておいたISに似せた物をアタッシュケースに仕舞い部屋を後にする。
そしてネイサンは学園前の門付近まで行くと其処にはキャスパーとその私兵達が立っていた。
「やぁネイサン。それは役に立ったかい?」
「えぇ大変役に立ちました。これお返ししますね」
そう言いネイサンはアタッシュケースをエドガーに手渡す。
「なぁに君が必要となる物は僕が手配するよう言われているからね。そう言えば本社の奴からネイサンにお礼を言っておいてくれって言ってたよ」
「はい? 別に自分はお礼をされることをした覚えは無いんですが」
キャスパーの言葉にネイサンは疑問を浮かべそう伝えると、キャスパーはその訳を話し始めた。
「実は、本社がデュノア社が有しているラファールの開発権利を買い取ったんだ。しかも安価でね」
「なるほど、それでですか」
ネイサンはシャルロットのスパイ行為を脅迫に安価にさせたんだろうなと思っていると、キャスパーがあることを聞いてきた。
「そうだ、ネイサン。もうすぐ休みだよね?」
「えぇ、トーナメント戦が終えた後ですけど、それが何か?」
「いやぁ、僕久しぶりに休暇を貰おうと思ってね。それでレゾナンス近くに美味しいお店とかないかなって、それでネイサンに案内してもらおうと思ってさ」
キャスパーの要件にネイサンはなるほどと納得した面持ちで、休日の確認をする。
「そうですねぇ…。まぁいいですけど、僕もあまりレゾナンス近くのレストランとかは知らないですよ」
「別にいいよ、ついでに一緒に探せればいいし。それじゃあ僕は帰るね」
そう言い、キャスパーはチェキータ達と共に車に乗って帰って行った。
それから数日後、デュノア社は倒産し社長と社長夫人は横領やら産業スパイの指示などの罪で逮捕となった。
次回予告
トーナメント戦がタッグマッチとなり、ネイサンは鈴と組むこととなった。そして当日ネイサンと鈴の対戦相手はラウラと箒だった。
次回
軍人VS傭兵