世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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14話

屋上から戻ってきたネイサンは部屋へと戻り、リビングへと行くと落ち込んだ表情を浮かべている真耶が椅子に座っていた。

 

「山田先生? どうかしましたか?」

 

ネイサンに声を掛けられ、真耶は肩を跳ね上げながら顔を後ろへと向ける。ネイサンの心配そうな顔を見た真耶は、こんな顔を見せちゃいけないと考え、直ぐに笑顔に変える。

 

「い、いえ、大丈夫ですよ。そうだ、実はマクトビア君が要望していた一人部屋の方が準備できたと学園上層部から通達がありました。ですので明日からそちらのお部屋にお引越しになります」

 

「漸くですか。それじゃあ今日は少し豪華な夕飯にしますね」

 

そう言われ真耶は首を傾げていると、ネイサンが訳を話し出す。

 

「いや、今日まで僕と同じ部屋で暮らしてくれたんで、そのお礼をしたいと思ったからですよ」

 

そう言われ真耶は納得し、手伝おうと申し出るがネイサンにやんわりと断られ、席に座りながらネイサンが料理をしている姿を眺めていた。

そしてネイサンが作ったのは、和牛ハンバーグとポテトサラダだった。2人は美味しくその夕飯を頂き、ネイサンはココに電話をしに行き真耶はネイサンの代わりに洗い物をしに台所に立つ。

 

 

『―――なるほど、わかった。こっちでも調べる様会社に伝えておくね』

 

「お願いします」

 

ネイサンはココに、今日スコールに教えてもらった転校生の一人、シャルル・デュノアの事を伝えていた。

 

『それにしても、遂に手段を選ばないほど追い詰められたか、あの企業』

 

「デュノア社の事知ってるんですか?」

 

ネイサンがそう聞くと、ココは真剣そうな雰囲気を出しながら答えた。

 

『うん。あそこの企業は第2世代のラファールの製造で上位企業に入っていたんだ。けど最近の企業は第3世代型の開発に着手し始めていて、デュノア社は金銭的理由でそれが遅れてるって噂が前からあったの』

 

「なるほど。それで自分の娘を男に変装させて、僕からデータを盗み男でも動かせるISの開発に着手しもう一度上位企業の仲間入りしようとした訳ですか」

 

ネイサンは呆れたような雰囲気で言うと、ココも同じような雰囲気で返す。

 

『だろうね。まぁネイサンからデータを盗める訳ないと思うけどね』

 

「その根拠は?」

 

『ネイサンは私の部隊の一員だし、私の一番のお気に入りだから』

 

ネイサンはココの返答に苦笑いを浮かべる。

 

「それ、根拠になってませんよ」

 

『いいの! ……ネイサン』

 

さっきまで明るい声だったココの声は、突然暗い感じの声へと変わる。

 

「何ですか?」

 

『……気を付けてね。ネイサンに何かあったら私……』

 

「……大丈夫ですよ。僕がそう簡単にやられるわけないじゃないですか」

 

そうネイサンが返すと、ココは暗かった雰囲気から明るい雰囲気へと戻る。

 

『そうだよね。ネイサンは私の部隊の一員だし、私の一番のお気に入りだからね』

 

「だから根拠になってませんって」

 

ネイサンは苦笑いをしつつ、ココと他愛のない会話を続け門限ギリギリまで喋った後、ネイサンは部屋へと戻りベッドへと入り眠った。そんなネイサンの隣にいた真耶は、悲しそうな表情を浮かべながら自問自答を繰り返していた。

 

(マクトビア君と一緒にいるときは何ともないのに、彼と明日別の部屋になると聞いた瞬間胸が引き裂かれるほど痛いと感じたのは何でだろぅ? それにマクトビア君とヘクマティアルさんが、一緒に何処かに行こうとしている姿を見たときも、胸の中がモヤモヤして気持ち悪かったし)

 

真耶は中々でない答えを悶々と考えながら一夜を過ごした。

 

 

次の日ネイサンは早めに起き、引っ越す先の部屋に持って行く荷物を纏めていると真耶が起きてきた。

 

「ふわぁ~、マクトビア君おはようございます」

 

「おはようございます、山田先生。ちょっと待っててくださいね、直ぐに朝食の準備をするので」

 

そう言いネイサンは立ち上がって、キッチンに立とうとしたが

 

「い、いえ! 今日は私が用意しますからマクトビア君はお引越しの準備を続けていてください」

 

「そうですか? でしたらお言葉に甘えさせていただきます」

 

そう言いネイサンはまた荷物を纏め始めた。

そして数十分後、真耶が準備した朝食をとり、その後朝食をとり終えた2人は部屋を出た。

 

真耶が職員室へと向かい、ネイサンは教室へと向かっていると前方から金髪の男装をした生徒が歩いてきた。

 

「えっと、ネイサン・マクトビア君だよね?」

 

そう聞きながら近づいてきた生徒に、ネイサンはこの生徒が。と近づいてきた生徒に警戒心を表さないよう警戒する。

 

「何か用か? 早く教室に行って今日の授業の予習したいんだが?」

 

「えっと用と言うか、挨拶をと思って」

 

そう返され、ネイサンはふぅ~ん。と納得したような雰囲気を出し、デュノアの隣を通り過ぎ

 

「要件がそれだけなら、これで失礼する」

 

そう言い去って行った。デュノアは困惑したような表情を浮かべ、その場で茫然と立ち尽くしていた。

 

 

(すき好んでスパイと仲良くする気なんて無いんだがな)

 

そう思いながらネイサンは教室へと向かった。




次回予告
授業を終えたネイサンは寮の部屋へと帰る途中、鈴から訓練をするから付き合ってほしいと頼まれ、一緒にアリーナへと行く。面倒な人間に絡まれるとは知らずに
次回
模擬訓練~実戦と模擬戦は大きく違うからな~

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