GWが明け、多くの生徒達が学園へと戻ってきている中、ネイサンはアリーナにて鈴と共に模擬戦を行っていた。
「このぉ!」
そう叫びながら鈴は持っていた牙月を振り下ろす。ネイサンはバックステップで攻撃を躱し、アヴェンジャーに装填されているキャニスター弾を放つ。
鈴もその場を素早く躱しつつ間合いを取る。そしてタイムアップのアラームが鳴り響く。
「また残量判定? アンタと模擬戦しても全然SEが空になった試合にならないわね」
「確かに。まぁそれだけお互いの実力が高いってことなんじゃないんですかね」
ネイサンの推論に鈴は納得できなさそうな表情だが、それで納得するように頷く。
「さてそろそろ戻りましょうか」
そう言い鈴はネイサンと共にアリーナを後にした。
そんなある日の朝、ネイサンは何時もと変わらない時間帯に教室へと到着し中へと入ると、クラスメイトの一人から話しかけられた。
「ねぇねぇ聞いた、マクトビア君?」
「何をですか?」
「もしかして知らないの? 1組に転校生が来たんだって。しかも2人も!」
クラスメイトは興奮した様子でそう話すと、もう一人のクラスメイトも会話に混ざってくる。
「しかもその内の1人が男性らしいのよ!」
「へぇ~、他にもいたんですか」
ネイサンは、もう1人が見つかったなら部屋割もいい加減1人部屋を用意してほしいと思っていると、チャイムが鳴りクラスメイト達は自身の席へと戻る。
そしてクラスの前にある扉から真耶とスコールが教室内へと入ってきた。
「はい、皆さんおはようございます。朝のSHRを始めるから静かにしててね」
そう言いスコールはSHRを始め、そして伝達事項を伝え終え2人は教室を後にしようとした時にスコールはもう一つ伝えないと、と呟き体を生徒達の方へと向ける。
「1組に転校生が来ているって話はもう知ってるわね。会いに行くなら2限目以降が良いと思うわよ」
そう言い教室を出て行った。生徒達は何故と思っていると一人の生徒が思い出したかのように話す。
「そう言えば、今日は1組と2組が合同で授業をするって言ってたわ」
「なるほど、それでスコール先生はあぁ言ったのね」
生徒達は来る2限目と3限目の休み時間になるまで教室で待機していた。
そして時間は進み、2限目と3限目の休み時間になった瞬間クラスにいた生徒達は全員1組へと突入したとか
時間は更に進み、放課後となりネイサンは教科書などをカバンに入れ終え、カバンを持ちクラスを後にする。
「それじゃあ皆さんまた明日」
「うん、また明日ねぇ~」
「またね~」
クラスメイト達と別れた後、ネイサンは教室を出て廊下を歩いていると、人気のない廊下に差し掛かったところで、ネイサンは誰もいないはずなのに言葉を投げる。
「……スコール先生、僕に何か用ですか?」
そう呟くと、廊下脇の柱の影からスコールが笑みを浮かべながら出てきた。
「あら、よく気が付いたわね」
「そりゃあ、香水の匂いがすれば誰だって気が付きますよ。それにこの香水の匂いは何時も貴女がよく使用している物でしたからね」
そう言われスコールは、流石伝説の傭兵の息子ね。とネイサンを褒める。
「ちょっと、屋上に付いて来てもらってもいいかしら?」
そう言われ、ネイサンはスコールの後に付いて行き、屋上へと出る。
そして屋上へと着いたスコールは、ネイサンにあることを聞く。
「今日転校してきた2人の生徒、もう会ったかしら?」
「いえ、まだ接触してませんよ?」
「そう。なら警戒しておいた方がいいわよ」
そう言われネイサンは頭に疑問符を浮かべつつ、自身の推論を伝える。
「……厄介な事なんですか?」
「厄介と言えば、厄介ね」
そう言いながらスコールは、あるレポートの束をネイサンへと渡す。ネイサンは怪訝そうにその中身を読む。
「転校してきた2人の内、一人が二人目の男性操縦者って言う事は知ってる?」
スコールの問いにネイサンは噂くらいは、と呟く。
「その生徒、そこに書いてある通り男性じゃなくて女性よ」
そう言われネイサンはレポートに書かれているプロフィールを見る。
「シャルロット・デュノア。フランス生まれで、父親がデュノア社の社長で、実の母親は死去。……男装して此処に来たという事は?」
「確実に貴方のISの情報でしょうね」
スコールの返答に、ネイサンはため息を吐く。
「まぁこいつに関しては、どうにかするとして、もう1人はどう言う人物なんですか?」
そう聞きながらレポートを読むネイサン。
「もう1人はドイツの軍人で、IS部隊の隊長をしているらしいわ。……数年前、織斑千冬が訓練教官としてドイツにいた際に、彼女とその部隊を鍛えたらしいわ。その為彼女は織斑千冬を心酔しているようよ」
ネイサンはレポートに書かれているもう一人の転校生のプロフィールを読む。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、ドイツ軍IS部隊、黒ウサギ隊隊長。……確かに面倒ごとを持ってきそうな奴ですね。ところでどうして僕にこの二人のプロフィールを見せたんですか?」
「博士からも気を付ける様伝えて欲しいと頼まれたから、こうして貴方に教えに来たっていう訳よ」
そう言われネイサンは、相変わらず心配性な人だ。と心の中で束の行動に苦笑いを浮かべつつ礼を言う。
「情報ありがとうございます。取り合えず本社と上司にこの情報をそれとなく伝えておきます」
そう言いながら、ネイサンは屋上を後にした。
一人残ったスコールは、これで良し。と内心思い息を吐く
「それにしても、彼女って本当に彼に関することだと、過保護になるわね」
そう呟きながら、数時間前の事を思い返す。
スコールが職員室で明日使う授業の準備をしていると、スマホに電話が掛りスマホを持って職員室を後にし人気のいない場所で出ると、相手は束だった。スマホ越しでも判るくらいの殺気を放ちつつ、用件を伝えてきた。
『其処に入ってきた2人の転校生、ネイ君に知らせた?』
「……まだ知らせてないわよ。放課後になったら伝える予定でいたけどどうかしたの?」
『ちょっとね。……スーちゃん、もしあいつ等のどっちかがネイ君に迷惑な事したらすぐに連絡をちょうだい。束さん自らそいつらの事バラしに行くから』
殺気を含んだ言葉に、スコールも流石に冷や汗がじんわりと流れ始める。
「別に連絡を入れるのはいいけど、流石にやり過ぎると後が大変だから程々にね」
そう言うと束は分かったと伝え、電話を切った。スコールは額の冷や汗を拭い、何時の間にか束から送られていたメールに添付していた2人のプロフィールを印刷し、ネイサンに忠告しに来たのだ。
屋上から去ったネイサンは寮の部屋へと戻る途中、誰もいないことを確認しコルトを取り出し、マガジンを一度抜きスライドが正常に稼働するか確認し、マガジンを戻しスライドを引く。
「初弾はいつでも撃てるようにしておくか」
そう呟きセーフティーをして、コルトを腰のホルスターに戻し、部屋へと帰って行った。
次回予告
部屋へと戻ると、真耶から1人部屋が用意できたとのことで明日から引っ越しです。と言われネイサンは豪華な料理を作りその日を終えた。
次の日、クラスへと行く途中シャルルこと、シャルロットと会うが適当に挨拶を交わして、ネイサンはその場を去った。
次回男装女子との出会い~(宜しくするつもりは無いんだがなぁ)~