クラス代表戦を終えた後、ネイサンは教室へと行くとクラスメイト達が出迎え、待っていた。
「マクトビア君優勝おめでとう!!」
「いや~、まさか優勝してくれるなんて、夢みたいだよ」
「本当、本当! これでもし夢だったら今すぐ神様をぶん殴ってやるけどね」
そう言いながらネイサンの優勝を祝っていると、教室に真耶が入ってきた。
「は~い、皆さん! 注目してください。マクトビア君が優勝した為皆さんに景品のデザートフリーパスを配りますので、並んで下さ~い!」
そう言われ全員一列に並び始め、ネイサンも後ろの方に回ろうとしたが
「マクトビア君は一番最初に貰わないと!」
「そうだよ! マクトビア君のお陰でゲットできたものなんだし、最初に貰わなくちゃ」
多くのクラスメイト達に言われ、ネイサンはそれではと言い、フリーパス券を受け取り早速食堂へと向かった。その途中、ネイサンは小柄なツインテールの少女を見つけ声を掛ける。
「凰さん、今から食堂ですか?」
「あら、ネイサンじゃない。そうよ」
そう言いネイサンの隣を歩く。
「それにしても今回の試合、惜しいところまで行ったのに負けるとか本当に悔しんだけど」
そう言いながら睨むような目つきでネイサンに見つめる鈴。ネイサンは、ははは。と乾いた笑い声を上げながら視線を明後日の方向へと向ける。
「と言う訳で、こんな悔しい思いをさせた罰として私の訓練に今度付き合いなさい」
「それ本気で言ってます?」
鈴の突然の命令にネイサンは困惑した顔で聞くと、鈴は当たり前といった顔で返す。
「当たり前でしょ。それに私はアンタの事好敵手として認めてあげるんだから感謝しなさいよね」
「……マジですか」
ネイサンはこりゃ諦めるしかないかと苦笑いでいると、2人は食堂へと着きそれぞれ定食を注文し席へと着く。鈴は醤油ラーメンとチャーハンのセット。ネイサンはカルボナーラと、デザートのミルフィーユクレープを頼んだ。
「で、訓練は何時頃やるんですか?」
ネイサンは席でカルボナーラを食べながら鈴に聞くと、鈴はう~んと。と考えながら答える。
「そうね。GW明けからでいいかしら?」
「えぇいいですよ」
ネイサンはそう答えつつ、最後のデザートを食べ終え食器を持って席を立つ。
「では、また凰さん」
「鈴で良いわよ。凰って呼ばれるのは慣れてないし」
「分かりました。ではまた来週、鈴」
そう言いネイサンは食器を返し、食堂から出て行った。
食堂を後にしたネイサンは人気のいない廊下を歩いていると、前方から箒が歩いてくるのに気づくが無視して通り過ぎようとしたが
「一夏! あの戦いは何だ!」
そう怒鳴りながら箒は近付いてきた。ネイサンは呆れるように息を吐く。
「すいませんが、一夏って誰ですか? それとどう戦おうと僕の勝手です」
そう言いネイサンはそのままその場から去ろうとすると、箒は行かせまいと腕を掴む。
「そのひん曲がった根性を叩き直してやる! 道場に来い!」
そう言い箒は道場へと無理やり連れて行こうとしたが、ネイサンは自身を掴んでいる腕を取り払う。
「悪いんだが、お前に教えてもらう事なんて何もないんだ。これで失礼する」
そう言いネイサンはイラついた表情を必死に隠しながらその場を後にしようとしたが
「待て!」
そう言い箒はもう一度掴もうとしたが、その前にネイサンの膝蹴りが箒の腹に当たった。
「ガハッ!?」
箒は突然加えられた膝蹴りに、腹を押さえながら蹲る。
「しつこいんだよ。道場に行きたかったら一人で行け」
そう呟くネイサンに箒は顔をあげその顔を見ると、ネイサンの顔は真顔で、体からは殺気が出ていた。
「これ以上しつこくするなら容赦はしないからな」
そう言いネイサンはその場を去ろうとする。箒はネイサンから出た殺気に怖じ気づくも、それでも道場に連れて行こうとネイサンの腕を掴もうとした。すると今度はネイサンの回し蹴りを横顔に加えられ、そのまま宙を一回転し廊下に叩きつけられた。その近くで彼女の歯だと思われる物が転がり落ちる。
「言ったはずだ、次は容赦しないって。お前の頭は鳥頭以下か?」
そう言いネイサンはその場を去って行った。箒は痛みと衝撃で薄れゆく意識の中、必死にネイサンを呼び止めようとするも、意識はそこでブラックアウトした。
それから数日が経ち、GWへと突入した。生徒達は学園で訓練をしたり、街へ買い物に出掛けたりなどしている中、ネイサンは昨日の夕方にココから学園の門に来るよう言われ、疑問を持ちつつも学園の門へと行くと其処には
「あれ? 何で此処に居るんですかココさん」
そう言うと、プラチナブロンドを靡かせながら麦わら帽子をかぶったココが、笑みを浮かべながらネイサンの元へと近寄る。
「そりゃあ私の大切なネイサンが、ちゃんと学業に励んでいるか確かめにね」
ココは優しい笑みを浮かべながら言うと、ネイサンはそうですかと返答する。
「と言ってもそれは建前だけどね」
「……はい?」
突然の建前発言にネイサンは困惑した表情を浮かべていると、ココの髪で隠れていた左頬を見た瞬間、戦慄した。
(や、やべぇ~。青筋がはっきりと浮かんでるんだけど~!!)
ネイサンはココが完全にご立腹状態だと分かり、冷や汗を流しつつも、こうなった原因を思い返す。そしてある一つの結論に達した。と言うよりもそれ以外問題が無い。
「ま、まさか教員が同じ部屋だったことでご立腹になられているんですか?」
「あ、分かる? うん。その通りだよ」
ココは笑顔で肯定しているが、その目は明らかに怒っている状態だった。
「ロケットに括り付けて打ち上げるのだけは勘弁してください!」
ネイサンはサラリーマンもびっくりな綺麗な土下座をして許しを請うと、ココはだったらと呟く。
「それじゃあ私とデートして」
「……それ以外の贖罪は?」
「宇宙に飛び出して散歩するか、私とデートする以外の贖罪はありません」
ココのハッキリとした口調に、ネイサンは選択肢がもはやないと思いつつ、諦めるように息を吐く。
「……分かりました。ココさん、デートしましょう」
そう言うと、ココは嬉しそうにネイサンの腕に抱き着く。
「ふふん。そう言うと思ってたよ。それじゃあしゅっぱ~つ!」
そう言いながらネイサンの腕にしがみ付き、街へと引っ張っていった。ネイサンは引っ張られながら苦笑いを浮かべていた。
そんな二人の後姿を遠目で見ていた真耶は、胸の中がモヤモヤとした気分になり、そのモヤモヤの正体について悩んでいた。
(何ででしょう? あの二人を見ると胸の中が、何だかモヤモヤして気持ち悪いです)
そう思いながらも、真耶は二人の後姿を見つめていた。
次回予告
GWが終わり、ネイサンは鈴と訓練したりと学園生活を楽しんでいたある日、1組に2人の転校生がやって来た。そして一人は男子らしく、部屋割がされて漸く一人部屋が貰えると思っていたネイサン。だがスコールからその男子が女子だと聞かされ、めんどくさそうな奴だったと思い始めたのだった
次回欧州からの転校生~初弾は何時でも撃てる様に込めておくか~