セシリア達が出て行った後、真耶がスコールの代わりにSHRを始めた。そしてSHR終了後、真耶が教室から出て行くと、生徒達は真っ先にネイサンの元へと集まる。
「ねぇねぇ、マクトビア君。彼女が持ってきた請求書って何なの?」
「あと、彼女何であんな包帯姿になってるの?」
多くの生徒達がネイサンの所に集まってきた為、ネイサンは全員に落ち着くように言う。
「皆さんちょっと、落ち着いて。説明するから」
そう言うと全員少し落ち着いた感じとなり、ネイサンは順序よく説明する。
「事の始まりは、昨日俺の専用機を受領した時に起きたんです。最初はアリーナ内で簡単な動作確認等をした後に、武装の確認をするはずだったんですが、1組の織斑先生が突然自分のクラスにいる代表候補生と対戦させるためにアリーナ内に出撃させてきたんです。自分は報酬が無いと働く気は起きないほうなんで、その試合で使った弾代を彼女に請求することにしたんです。勿論こちらだけしか報酬が無いのは向こうにとって不利でしかない。だから僕が負けたらクラス代表戦には出ないと言ったんです」
そう言うと周りにいた生徒達は驚いた表情を浮かべる。
「そ、そんな賭けをしてたなんて」
「それって、負けたら私達半年間デザートをタダで食べられないってことじゃない!」
全員騒然としている中、一人の生徒が騒然とした空気を沈める。
「皆ちょっと静かに。マクトビア君、続きを」
「分かりました。彼女は勿論この賭けに乗りました。恐らく自分は今年の首席だから簡単に勝てる。自分が勝てば相手はクラス代表戦に出ない、そうすればクラスの人たちから役立たずのレッテルが貼られる。そして学園から追い出せると思ったんでしょう」
「それじゃあ、彼女が包帯でグルグル巻きだったという事は」
「えぇ、僕が勝ちましたよ」
そう言うと、また騒然となり生徒達は勝機が見えた!と叫んでいた。
「1組の彼女は今年の首席。そんな彼女をボロボロに出来るほどの実力を持ったマクトビア君が居るなら、私達の半年間デザートフリーパスは貰ったも当然よ!」
「やったーーー! いっぱい甘い物が食べられる!」
生徒達はまだ先のクラス代表戦はさも勝ったも当然と思い叫んでいる中、またさっきの生徒によって沈められる。
「もぉう、みんな騒ぎすぎ! ところでマクトビア君、一つ気になったことがあるんだけどいい?」
「えぇ、構いませんよ」
「実は私の父、軍に所属してて、その所為か兵器関連の事は多少わかるの。それでね、請求書に書かれていたAPFSDS弾なんだけど、あれって120㎜砲弾だから500発も撃つ必要は無かったんじゃないのかなって思ったんだけど」
生徒がそう言うとネイサンは、さっきまでの朗らかな笑みだが少し悪い笑顔を混ぜる。
「そりゃあワザと多めに撃ったに決まってるじゃないですか」
「え? ワザと?」
「えぇ、僕は女尊男卑と言うくだらない風潮に染まった人が嫌いなんです。だからちょっとお仕置きを含めて500発ほど撃ったんです」
ネイサンの屈託のない笑顔を見た生徒達は、あ、この人怒らせるとやばい人だと瞬時に理解でき、この日からネイサンを絶対に怒らせてはいけないという暗黙のルールが出来たとか。そして生徒達はセシリアの行動に呆れたと呟き始める。
「それにしても、オルコットさんって女尊男卑ぽかったからまさか。とは思ってたけど本当に女尊男卑だったんだ」
「そうだよね。と言うか確か代表候補生や代表生には、ルールが設けられてたよね?」
「うん。【何人も男性に侮辱などの行為はせず、代表候補生として尊厳と常識を守ること】って書いてあったはず」
「何で貴女そんなこと知ってるの?」
「私の姉の友達が、スペイン代表候補生だったからその伝手で知ったのよ」
「それにしても請求書の額やばかったよね。あれじゃあきっとオルコットさん払えないわよね」
一人の生徒がそう言うと全員うんうん。と首を縦に振り、生徒達は女尊男卑と言うくだらないモノに染まった結果、散々な目にあわされると理解し、嫌だ嫌だと思いながら談笑を始め、ネイサンも同じように談笑へと加わる。
それから数日が経ち、この数日で起きた事は、セシリアはネイサンに教えてもらった電話番号に掛け、キャスパーと交渉して支払期日を学園卒業まで伸ばしてもらったとのこと。キャスパーは、今回の件は彼女一人に背負わせても請求書の半分くらいしか払われないと考え、更に政府に言っても恐らく彼女一人に責任を負わせるだろうと判断し、今回の件の原因となった千冬にセシリアに課せられた請求の半分を請求したのだ。勿論学園側は今回の件はこちらに非があるという事で、織斑の給料から引いていくと決めたとのこと。
そんな中、ネイサンは何時も通り教室へと入り生徒達に挨拶しつつ席へと着くと、一人の生徒が話しかけてきた。
「ねぇねぇ、マクトビア君。隣の2組に転校生が来るって話聞いた?」
「いや、知らないですね」
そう言うと、そうなんだぁ。と呟き転校生の事を話し始める
「実はその転校生、中国の代表候補生って噂でね」
「なるほど、そうだったんですか」
そう呟くとクラスの前扉から一人の生徒が入ってきた。
「入るわよ。このクラスの代表って誰?」
そう呟きながら見渡している生徒に、近くにいた生徒がネイサンを指さす。
「彼がこのクラスの代表だけど……」
そう言うと入ってきた生徒は、ネイサンの元へと行く。
「あんたがこのクラスの代表ね?」
「あぁそうだが、君は?」
「私は隣の2組に転校してきた中国の代表候補生、凰鈴音よ。クラス代表は私に変更されたから簡単に勝たせる気はないから。それじゃあね!」
そう宣言して凰と呼ばれた少女は教室から出て行った。突然現れ、何かを宣言して帰って行った凰に3組の生徒は唖然としている中、ネイサンだけは一人鋭い視線を凰が出て行った扉を見つめていた。
(凰か。確か、日本にいた時に小学4年の頃転校してきた少女がそんな名前だったかな。取り合えず、彼女は俺のデザートフリーパスを狙う敵の一人という事だけは確信できたな)
そう思いネイサンは視線を扉から外し、教科書とノートを取り出し何時もの予習を始めた。
その頃とある某所に建てられている束の隠れ家では、イライラした表情を浮かべた束と、そんな束と同じ部屋で本を読みながら冷や汗を流しているマーちゃんことマドカ、そしてパソコンで夕飯の献立を考えている落ち着いた感じを出しているクロエがいた。すると部屋に栗色の長髪の女性が疲れ切った表情で入ってきた。
「あぁ~疲れた。ほれ、博士。ご所望のISだ」
そう言い白色のガントレットを束に投げる女性。束はそれを受け取り、ISを展開する。そしてパーツを一つずつ無理矢理引き剥がしていき、コアを取り出す。
「……ありがとうね、オーちゃん」
そう言い束は、コアを取り出し只の鉄屑に変わったISに蹴りを入れて《資材置き場》と書かれた場所に叩き込む。
「おいおい、折角このオータム様が苦労して手に入れたISをそんな蹴り一発でゴミ箱に捨てるかぁ?」
「……オーちゃんには感謝してるよ。けどねあのISを見るとマジでムカついてくるからさ」
オータムと呼ばれた女性やマドカ達の方からは束の顔は見えないが、雰囲気からして相当イラついた表情を浮かべていると伺えた。
「で? 俺にあれを盗ませた理由って何だよ?」
オータムは束に只『倉持技研って言う場所に白式って言うISがあるからそれ盗ってきて』と言われ、なぜそれを盗んでくる必要があるのか理由を聞いていなかったのだ。
「……あのISはある無能教師が、ある生徒に渡そうと企業に許可も取らずに造らせたものなんだよ」
束がそう言うと、オータムは頭に疑問符を浮かべているがマドカだけは誰なのか分かったのか、鋭い視線を蹴とばされた白式と呼ばれたISに向ける。
「まさかその無能教師って、織斑千冬か?」
マドカがそう推論を述べると、束は首を縦に振る。
「うん、そうだよ」
そう言いながら束は蹴とばした白式に近付き、踏みつける。
「ネイ君はジェイソンと呼ばれる、傭兵の一人息子だ。それなのに何度も何度もネイ君を自分の弟だって決めつけて近付きやがって。そして今度は自分が乗っていたISと同じ能力を積んだピーキーな機体を渡そうとした」
束は何度も何度も白式を踏みつけ、遂に装甲にヒビが入る。
「ネイ君は過去を捨てて、新しい人生を歩みだしてるんだ。それを邪魔する奴は誰であろうと絶対に許さない」
束の雰囲気は鋭利な刃物その物で、ネイサンに邪心で近付いたらで殺されると3人は直感できた。
次回予告
昼休み、ネイサンは何時もの通り食堂へと向かう途中、真耶と廊下で会い一緒に屋上でお昼をとることとなった。
そして昼食後、真耶とネイサンは銃の事で話が合い、残りの時間を楽しんだ
そして数日後クラス代表戦が始まった
次回クラス代表戦~悪いが速攻で片付けるからな~