世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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9話

アリーナから寮へと戻ってきたネイサンは、ISの運用方法が書かれている本を読みながら、夕飯のカレーを焦がさない様にお玉でかき混ぜている。

すると居間に真耶が紙袋を持って帰ってきた。

 

「あ、お帰りなさい。今日の夕飯はカレーにしてみました」

 

「わぁ~、寮に入ろうとした時、カレーのいい匂いがすると思ったらマクトビア君が作っててくれたんですか」

 

真耶は喜びながら椅子に座りそして、ココからのお礼の品が入った紙袋から中身を取り出す。中に入っていた物は丁寧に包装されており、真耶はそれを丁寧に剥がし中身を取り出すと中にはある高級店のバスローブが入っていた。真耶もその店の事は知っており、最初はお菓子や紅茶の葉だと思っており、まさか高級バスローブが入っているとは思ってもいなかったのだ。

 

「す、凄い。まさかあの高級店のバスローブを送ってくださるなんて」

 

「それって、もしかして僕の上司からですか?」

 

ネイサンはそう言いながら、カレーがよそわれた器を真耶が座っている席の前に置く。

 

「は、はい。なんでもマクトビア君と同室になってくれたそのお礼だそうです」

 

「そう言えばそんな事言ってましたね」

 

ネイサンは自分の器を置き、席に着きカレーを食べ始める。そして夕飯を終えたネイサンはスマホを持ち、何時も通りにココに電話をしに行く。真耶はネイサンが夕飯を作ってくれたため、自分が洗い物をすると言い出し、ネイサンはその言葉に甘え、真耶に洗い物を頼んだのだ。

 

『―――そっか~、兄さんがネイサンのISの武装をねぇ』

 

「えぇ、本当に驚きましたよ」

 

ネイサンはココに電話すると、開口一番がネイサンのISの事で、キャスパーがネイサンのISの武装を選定したことを、笑いの種に話が盛り上がっていた。

 

『それにしても織斑千冬、やっぱり動いたんだ』

 

「……えぇ、俺が織斑一夏だと言う証拠を掴もうとしたんでしょう。あの時キャスパーが居なかったら本当に撃ちそうになりました」

 

そう言いながらネイサンは、腰のホルスターに挿しているコルトを取り出す。

 

『それは流石に不味いからやめてね。次に会う時が刑務所だなんて私嫌なんだから』

 

「分かってます。向こうが武力行為をしてこなければこっちは何もしませんから」

 

ネイサンはそう言いコルトを腰のホルスターに戻す。

 

『あ、そうだ。実は『ココ、もうそろそろ出発しないと商談に間に合いませんよ』え? もうそんな時間? ごめんねネイサン、そろそろ切るね』

 

「いえ、構いませんよ。ではココさん、また明日」

 

『うん、また明日。それとおやすみ』

 

ココが電話を切ったのを確認したネイサンもスマホをポケットに仕舞い屋上を後にする。

屋上から部屋へと戻ると、部屋に備え付けられている風呂からバスローブ姿の真耶と鉢合わせとなった。バスローブ姿の為、真耶の強調された胸が、更に強調されて突き出ており、ネイサンはそれを見てドキッと大きく心臓を跳ね上げ、真耶も帰ってきたネイサンと鉢合ったことに驚き、自身が今バスローブ姿と言うことを思い出し、顔を真っ赤にさせる。

 

「え、え、えっとお、お、お帰りなさいです」

 

「え、えっとただいまです」

 

互いに顔を赤くさせており、ネイサンは居た堪れなくなり、部屋の奥へと行きパジャマを持って風呂場へと入って行く。真耶も真っ赤に染まっているであろう自分の顔を冷まそうと冷蔵庫に入っている牛乳を飲み、布団に入って寝始めた。風呂から上がってきたネイサンも布団に入って寝ようと寝室に入ると、バスローブ姿で寝ている真耶を見つけた。ただしその格好は紐が解けかかっているのか、若干肌が露になった状態で、ネイサンは此処で寝ると非常に不味いと思い、布団を持って廊下に敷きそこで一日を明かすこととなった。

 

次の日、色々大変な一日だったにも関わらず、ネイサンは特に問題も無いと言った感じで部屋から出て簡単に体を動かしてから部屋へと戻る。すると真耶が先に起きて朝食を作っていた。服装はバスローブ姿から普段の服装だった。

 

「あ、マクトビア君おはようございます!」

 

「え、えぇ、おはようございます」

 

そして汗を洗い流し終えたネイサンと朝食の準備を終えた真耶は、朝食をとり部屋を後にした。

 

クラスに着いたネイサンは、クラスメイト達に挨拶を交わしながら自分の席に座り予習を始める。

 

「ふむ、……アーシアさん、少しいいですか?」

 

「え? なにマクトビア君?」

 

「此処の問題が少し分からないんだ。教えてもらってもいいかな?」

 

「別にいいわよ。えっと此処の問題は、この文章を簡単に説明すればいいんだよ」

 

クラスメイトにそう言われネイサンはなるほど。と納得しお礼を言い、予習を続ける。すると教室の前の扉が開き、包帯姿のセシリアが入ってくる。3組の生徒達は突然包帯姿のセシリアに驚き、ヒソヒソと話し始める。

 

「し、失礼します」

 

「ねぇあれって1組のセシリア・オルコットさんじゃないの?」

 

「うん。確か今年の主席って聞いてるわよ」

 

「でもなんでボロボロなんだろ?」

 

全員首席で入学したセシリアが何故ボロボロなのか疑問に思っている中、セシリアはネイサンのいる席へと着く。ネイサンは目線を一度セシリアに向けるも、また視線を下へと向ける。

 

「……何か用か?見ての通り今予習で忙しいんだ」

 

「じ、実は昨日の請求書のことで、ご相談が」

 

請求書と言う単語に、周りにいた生徒達は騒然となる。

 

「そう言えば幾ら位になったんだ。弾代は知ってるが、慰謝料も含めるとなるとどの位になるか知らないからな」

 

そう言いネイサンは、セシリアに請求書を見せる様、手を差し出す。セシリアは請求書を取り出し、ネイサンに渡す。周りにいた生徒達も気になり、その請求書を覗き見る。其処には合計5000万ドルと書かれていた。日本人の子達は幾らか分からずにいるが、ドルが分かる生徒達はその金額に、唖然となった。

 

「う、嘘。こんな金額普通じゃ払えないわよ」

 

「ね、ねぇ。この5000万ドルって日本円で幾らなの?」

 

「今は1ドル、約114円で5000万ドルで56億円って言ったところよ」

 

その金額を聞いた日本人の生徒は金額に驚き、口が開いたままとなる。

 

「へぇ、やっぱりこれだけの金額になったのか。まぁ当たり前と言えば当たり前か。で、相談って言うのはこれの金額の事か?」

 

「は、はい。我がオルコット家にはそれだけの金額を払える程の財力が無いのです。ですのもう少し、金額の方を下げていただけませんか?」

 

セシリアは、何とか下げてもらおうとネイサンの元にやって来たが、ネイサンの返答は

 

「悪いが、そう言った交渉はキャスパーとしてくれ。俺じゃあどうにも出来ない」

 

「そ、そんな!」

 

「と言うか、払えないなら政府に相談すればいいじゃないか」

 

そう言うとセシリアは苦渋に満ちた顔付きとなり、拳を力強く握りしめる。

 

「……そ、それが出来ればこんなにも悩みませんわ」

 

「あぁ~、まさかとは思うがお前の中にあるちっぽけなプライドがそれを許さないってことか。まぁ俺には関係ない事だ。兎に角キャスパーの連絡先は教えてやるから、後は自分で何とかしてくれ」

 

そう言いネイサンは、メモ用紙にキャスパーの仕事用の電話番号を書き、セシリアに渡す。

するとまた前の教室の扉が開き、今度入ってきたのは篠ノ之だった。

 

「貴様、金を巻き上げると言う事をしていたのか!」

 

そう怒鳴りながらネイサンの元に来る。

 

「はぁ~、今度は誰だ?」

 

「なっ!? 幼馴染の私を忘れたと言うのか、貴様!」

 

ネイサンは心底呆れたような顔を浮かべる。

 

「悪いが、何処かで会ったことがあったか? 俺はお前の事知らないんだが」

 

そう言うと篠ノ之は、何処からか木刀を取り出しネイサンに襲い掛かった。

 

「えぇいその態度を叩き直してやる!」

 

そう言い上段の構えで振り下ろしてくる。周りの生徒達は悲鳴を上げる中、ネイサンは単純な攻撃だなと思いつつ、腕の部分展開で木刀を掴む。

 

「全く。幼稚園児かお前は?」

 

そう言いネイサンは掴んでいた木刀を奪い取る。すると悲鳴を聞き駆けつけてきたのか、真耶とスコールが教室へと入ってきた。

 

「な、何事ですか!」

 

「マクトビア君、一体何があったの」

 

スコールはネイサンが部分展開をしている手に持っていた木刀を見てある程度状況は理解できたが、一応確認の為ネイサンに何があったのか聞く。

 

「最初はオルコットが請求書の金額の事で相談してきたんです。けど自分ではどうすることも出来ないと言って、帰そうとしたんです。そしたらそこの生徒が突然来て、木刀で襲い掛かってきたんです」

 

「みんなそうなの?」

 

スコールが確認の為周りにいた生徒達に確認すると、全員が頷きスコールは篠ノ之に近寄る。

 

「どうやら全員が目撃していたようね。それじゃあ篠ノ之さん、一緒に生徒指導室に来てもらうわよ」

 

「な、なぜですか! それだったらこいつも一緒に来るべきです!」

 

篠ノ之はネイサンに指さして言うが、スコールは首を横に振る。

 

「確かにISを許可なく展開することは禁止よ。けど自身の命が危ない場合はそれに該当しないの。貴女だったらそう言う事はよく知ってるはずでしょ、篠ノ之束の妹さん」

 

「!? あ、あの人は関係ありません!」

 

「あらそう。まぁ私にはどうでもいいことだけどね」

 

そしてスコールは篠ノ之を連れクラスを後にした。その後セシリアもトボトボと3組から出て行った。




次回予告
SHR終了後、生徒達はセシリアがどうして包帯姿なのかネイサンに聞く。そしての訳を聞き、呆れた表情を浮かべる。そして数日後、クラスに一人の生徒が挨拶に来た
次回転校生

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