お久しぶりです。
半年振りの更新、今まで更新できずに申し訳ありませんでした。
自分の満足できる文が書けず、それが原因で徐々に執筆する回数が減っていき、最終的には執筆をしなくなりました。
それでも、楽しみにしているという感想をいただき、満足できる文でなくても更新だけはしなくてはとまた執筆を始めました。
本当にすみませんでした。前のような更新ペースではなく少しずつにはなりますが、これからもよろしくお願いします。
僕達が天狼島から帰ってきて二週間が過ぎた。僕達の帰還の噂は国中どころか大陸中に広がっているようで、週刊ソーサラーがいち早く取材に来ていた。
みんなは7年の空白を埋めるかのように毎日騒ぎ、僕もようやく7年の変化に慣れ、以前と変わらない幸せな日常を送っている。
そんな中、ギルドでロメオ君からこんな話を聞いた。
「……セイバートゥース?」
「そう。
どうやら、僕達のいない7年の間に
そのギルド名を聞き、グレイさんは顎に手を添えて自身の記憶を探る。しかし、何も思い出せなかったようで、ふぅ、とため息をついて頭を掻いた。
「
「7年前はそんなに目立つギルドじゃなかったんだけど、この7年の間に急成長を遂げたのよ」
「ギルドマスターが変わったのと、ものすごく強い魔導士が5人加入したのが強くなったキッカケだって聞いてるよ」
グレイさんの疑問にビスカさんとアルザックさんが答える。
ギルドマスターの変更と、たった5人の魔導士の加入。それだけでフィオーレ最強のギルドになったとすると、その5人の強さは僕の想像を容易く越えるものなのだろう。
あのジュラさんや一夜さんの強さは、僕もよく知っている。彼らも7年の間に成長しているだろうし、それを越えるというのはそう簡単なことではないのだ。
想像できない。7年前は無名だったギルドが、フィオーレ最強にまで至るなど。
「ちなみに、私達のギルドは何番目くらいなんですか?」
考えを巡らせる頭は隣から聞こえてきたウェンディの疑問を聞いて思考を中断し、そちらに思考を向ける。
建物は7年前と打って変わって小さくなり、
それはシャルル達も同じようで、ウェンディの質問に「聞くまでもないでしょ」と呆れていた。
「最下位さ」
「超弱小ギルド」
「フィオーレ一弱いギルド」
「ああああ……ごめんなさい!」
アイザックさん達は愛想笑いを浮かべながらそう答えた。負けず嫌いのロメオ君もこればかりは諦めているのか、乾いた笑みを浮かべながら下を向いている。
そんな三人を見てウェンディは頭を抱えながら謝っていたが、その時、ガンッと音を立てながらナツさんが机に足を乗せた。
「かーっはっはっはっ! そいつはいい! 面白ェ!」
「は?」
「だってそうだろ!? 上にのぼる楽しみがあと何回味わえるんだよ! 燃えてきたァー!!」
疑問符を浮かべていたグレイさんは、ナツさんの言葉を聞いて「やれやれ……」と、呆れていたが、ルーシィさんやロメオ君達はナツさんらしい、と笑みを浮かべていた。
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「マ、マジで……?」
「オレらだって、7年間何もしてなかった訳じゃねぇ。それなりに鍛えてるんだ」
砂埃で汚れ、目を見開いて驚愕するナツさんと対峙しているのは、傷一つ無い余裕の表情を見せるマックスさん。
7年のブランクで生じた差を確かめる為に手合わせしているナツさんだが、ナツさんの魔法はマックスさんの砂魔法で相殺されてしまっていた。
「もう一度だッ!!」
地面を蹴り、一気に距離を詰めたナツさんは攻撃を仕掛けるが、全て躱されてしまう。攻撃を見切ったマックスさんは砂をぶつけて反撃し、ナツさんを後方へと飛ばす。
「燃え尽きろ!! 火竜の鉄拳!!」
「
着地した片足で地面を蹴り、即座に距離を縮めたナツさんは炎を纏わせた拳で殴り付けるが、砂の壁に阻まれて勢いを殺されてしまう。
額に汗を滲ませながら火力を上げるナツさんにマックスさんは砂の強度を上げることで対抗していたが、次第に炎付近に電気が発生し、電気と融合した炎は砂の壁を吹き飛ばした。
「――モード雷炎竜!」
「ちょ……何だよソレ……!?」
「雷炎竜の――」
雷と融合した炎を全身に纏ったナツさんは大きく息を吸いながら上体を反らし、気圧されて冷や汗をかくマックスさんを睨む。
「――咆哮ォォ!!!」
放出された炎はマックスさんの横を通過し、後方にある森の木々をなぎ倒した。
横髪の先端が焦げたマックスさんは膝が震えており、両手を上げて降参する。
「ま、参った……あんなの喰らったら死ぬって……」
「いつの間に自分の物にしたの!?」
「今」
「今って……」
「凄い……」
ルーシィさんの問に答えたナツさんは、「あの時程のパワーは出ねぇな……」と不満そうだったが、今の戦いだけで自分のものにしてしまうセンスは相当なものだと思う。
ニヤリと笑いながら「次はどいつだ」と振り返り、先程まで自分達でも勝てるんじゃないかと興奮していたナブさん達が震え上がるのを見て、ナツさんはかかかと大笑いしている。
しかし、相当魔力消費が激しかったのか突然倒れてしまった。気を失ってはいないが、動けそうではない。
「やっぱり魔力の消費が半端ないみたいね」
「しかし、コイツァ思ったより深刻な問題だぞ。元々化物みてーなギルダーツやラクサスはともかく、オレ達の力はこの時代についていけてねぇ」
グレイさんの意見を聞いてウェンディ達を一瞥してみると、みんなも同じ意見だったようで浮かない表情をしていた。
確かに、7年前はバラム同盟の一角である
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あの後、ルーシィさんの“人里離れた森の中に住んでいる
「つー訳で――」
「帰れ」
ポーリュシカさんは僕達を見るとグレイさんの言葉を遮り、拒絶するように音を立てて扉を閉める。
人間嫌いの人だとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
それとは別に、数秒程度しか会えなかったが、その数秒でポーリュシカさんの匂いに何か不思議な感覚を覚えた。
何処かで嗅いだことのあるような不思議な匂い。リヴァルターニの匂いに酷く似ているのだが、決定的な何かが違う。とても似ているのに全く違うと確信出来る“何か”が違っていた。
「二人とも、どうかしましたか?」
ずっと黙っていたせいか、フィールが不安げにそう尋ねてきた。ただの考え事だと答え、二人ともという言葉が気になってウェンディの様子を窺ってみる。
ウェンディはフィールの言葉に「ううん」と一言だけ返し、俯いている。確かに様子がおかしいし、フィールが心配するのも無理はない。
僕も少し不安になって声をかけようとした時、扉が開き、ポーリュシカさんが出てきた。
「人間は嫌いなんだよっ!! 帰れ! しっしっ!」
ポーリュシカさんは出てくるや否や、箒を振り回して僕達を追い返そうとする。
扉越しに事情を説明していたルーシィさん達と急いで逃げ出し、暫く走った所で荒くなった呼吸を整え、それぞれその場に座り込んだ。
「もぉー誰よ、ポーリュシカさんの所に行こうって言い出したの~」
「人間嫌いとは聞いてたけど、あそこまでとはねぇ」
「シャルル達はエクシードだけど、追い出されちゃったね……」
「……ウェンディ、本当に大丈夫ですか?」
そんなフィールの声に振り返ってみると、ウェンディが一人で俯きながら座っており、今にも泣いてしまいそうな様子だった。
「ちょ、大丈夫!?」
「あんのばっちゃん! ウェンディを泣かしたなァ!」
「違うんです……懐かしくて……」
目元を手で押さえながら首を横に振るウェンディに、シャルルは「会った事あるの?」と問いかける。
目元の涙を拭い、ポツリポツリとウェンディは話し始めた。
「ううん……今さっき会ったはずなのに、懐かしいの……あの人の声が、匂いが……
その言葉に、僕は衝撃を受けた。ウェンディはポーリュシカさんの匂いと声がグランディーネと同じだと言っていたが、それと同じような事を僕も思っていた。
僕は自分の中で他人の空似だと完結させていたが、そうはいかなくなった。
僕はポーリュシカさんがリヴァルターニの匂いに似ている、と思ったが、ウェンディは "同じ" だと断言した。
「……確かめなきゃ」
動揺のせいか、僕の声は震えており、額に汗が流れる。
もしも、もしもこれが偶然で無いのならば、ポーリュシカさんは
そんな期待を抱いてポーリュシカさんの家に戻ろうとすると、グレイさんに手首を捕まれて止められた。
「待てよ、冷静に考えてみろ。仮にグランディーネが人間に化けたとしても、少しおかしくねぇか?」
「そうね、ナツ達の
「つまり、
ルーシィさんの説明にシャルルは補足を入れ、こちらをチラリと一瞥する。
確かに、落ち着いて考えればおかしい事だ。ウェンディから聞いていたグランディーネの人物像と、ポーリュシカさんは一致しなかった。
「まぁ、お前らが必死に
「アクノロギアを見ちゃったし、優しい
「――優しくなくて悪かったね」
「「!?!?」」
突如背後から聞こえた声に、グレイさんとルーシィさんの二人は声にならない悲鳴を上げる。
現れたポーリュシカさんはウェンディをジッと見つめ、僕達にだけ話しておくと言うと、自分はウェンディの探しているグランディーネではなく、正真正銘の人間だと、はっきりと述べた。
「悪いけど、
「じゃあ、あなたは一体……」
「……こことは違うもう一つの世界。エドラスの事は知っているね? あんたらも、エドラスでの自分に会ったと聞いているよ」
ポーリュシカさんからの質問で、みんなの頭に答えが浮かんだ。
エドラスの人間はこっちの世界に居る人間と姿は同じだが、性格は正反対と言えるほど違う。
つまり――
「
告げられた事実に、みんな予想ができていたが驚きを隠せずにいた。そもそもエドラスの人間というだけでも驚くには充分なのに、こっちではドラゴンであるグランディーネがエドラスでは人間なのだから。
マスターに助けられて以降、ポーリュシカさんは
「もしかして、イグニールやメタリカーナ、リヴァルターニも向こうじゃ人間なのか!? つーかこっちに居るのか!?」
「知らないよ、会ったことも無い。……けど、天竜とは話したことがある」
そう言うとポーリュシカさんは懐を探り、マントの中から一冊の書物を取り出した。
表紙らしい表紙はなく、ただ紙を纏めただけの手作りの本。ポーリュシカさんは、それをウェンディに差し出した。
「天竜とは会った訳じゃない。魔法か何かで私の心に語りかけてきたんだよ。
アンタら、"強く"なりたいって言ってたね? そのウェンディって子だけなら、何とかなるかもしれないよ。これは天竜に言われた通りに書き上げた魔法書だ。二つの天空魔法、 "ミルキーウェイ" "照破・天空穿" アンタに教えそびれた滅竜奥義だそうだ」
「グランディーネが私に……」
「会いに来たら渡してほしいとさ。その魔法はかなりの高難易度だ。無理して体を壊すんじゃないよ」
戸惑いながらも受け取った魔法書を大事そうに抱えるウェンディを見ると、ポーリュシカさんは自分の家に帰る為歩き始める。その後ろ姿にウェンディは頭を下げ、嬉しそうに、笑顔でグランディーネと呼んでいた。
グランディーネと呼ばれたポーリュシカさんの横顔が微かに見えたが、ポーリュシカさんは僅かに微笑んでいた。
人間嫌いではあるが、本当はそれ以上にとても優しいであろうその人は、振り返ることなく森の奥へと帰っていった。
星空の鍵編なのですが、原作しか持ってなく、アニオリである星空の鍵編の細部まで思い出すことも出来ないのでスキップさせてもらいました。ご了承下さい……
今までは原作をなぞっていましたが、大魔闘演武編からはオリジナル要素を加えていく予定です。