FAIRY TAIL 海竜の子   作:エクシード

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小説書くの難しいですね……
合間合間に少しずつ書くと読み返した時に同じ表現を連発している事に気づき、かといって一気に書くと集中力が足りずに頭が回らなくなる……適当が大事だと改めて実感しました。




コードETD

 

 

 

 

 

 

「ルーシィ、星霊魔法は!?」

 

シャルルがルーシィに問いかけるが、どうやらルーシィの腕を拘束しているベトベトの所為で魔法を使えないらしい。

 

シャルルが苦しい顔でこの場をどう打開するか思考していると、魔水晶(ラクリマ)のあった広場で聞いた国王の声が響いた。

 

「コードETD、発動せよ!」

 

その声を聞いた兵達が笛を鳴らし、機械を取り出してその照準をハッピー達に合わせる。

 

「建物の中に逃げましょう!!」

 

フィールがそう叫ぶと提案に従い急いで建物に向かうと、機械から光が放たれ、その光を浴びた近衛師団達が顔を歪めて苦しみだした。

 

「なんでエクシードの方を!?」

 

「どういう事……人間にとってエクシードは、天使や神様みたいな存在でしょ!?」

 

王都の兵達の狙いは自分達だと思っていたハッピー達は、兵達がエクシードを攻撃する光景を見て驚きを隠せずにいた。

 

「よく分かりませんが、今はこの混乱に乗じるのが得策です。今のうちにテューズ達を助けに行きましょう!」

 

フィールの提言を受け入れ、四人は西塔の地下へと進む。

先程の騒ぎのお陰で無事に西塔に入り、地下へ向かう階段を下りていると、ハッピーが「なんか大変なことになってきたね……」と呟いた。

 

「まさか人間とエクシードが戦争を始めるなんて……」

 

「私達には関係のないことよ。どっちもどっちだし、勝手にやってればいいのよ……」

 

シャルルの意見を聞いたハッピーは不安そうにシャルルを見ていたが、何も言わずにナツ達を捜して走り続ける。

階段を下りたシャルルが足を踏み出した時、シャルルの目の前に槍が突き刺さった。

 

「この先には行かせんぞ」

 

兵を率いてハッピー達の前に立ちはだかるエルザに、ルーシィが「あたし達に興味無くしたんじゃなかったの!?」と糺すと、エルザはニヤリと笑って四人を吹き飛ばした。

 

「ほう……私の魔法をまともに食らってまだ生きているのか。だが、これで終わりだ」

 

エルザは嘆称しながら地面に刺さった槍を引き抜き、倒れているルーシィに矛先を向ける。

 

「お前達を生かして捕らえろとの命令は受けていない。止めを刺させてもらうぞ」

 

そう言って振り上げた槍がバチバチと音を立てながら光り出すが、エルザは横から飛び込んできたハッピーに突き飛ばされて、手に持っていた槍がルーシィの目の前に落とした。同時に、槍は溜め込んだエネルギーを放出して地面に穴を空け、ルーシィ達は瓦礫と共に地下へと落ちてしまった。

 

「ハッピー! 目を覚まして!!」

 

目を閉じたまま落ちるハッピーを掴もうと、ルーシィは体を動かしてハッピーに近づいていく。

 

「ナツ……ごめん……もうちょっとで助けに行けたのに……オイラ……ここまでみたいだ……」

 

震える声でそう呟くハッピーをシャルルが空中でキャッチし、ルーシィの背中をフィールが掴んで瓦礫が当たらないよう避難する。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「おい、居たか?」

 

「いや、どこ行ったんだ! あいつら!」

 

身を隠すために避難した部屋の扉から、兵達の苛立った声を聞いてシャルルは額に汗を浮かべる。

 

「完全に身動きが取れなくなったわね」

 

「ウェンディ達の周りは敵が固めてるはずだもん……近づこうにも近づけないわ」

 

意識のないハッピーを膝に寝かせたルーシィがそう言った時、ハッピーの目が微かに開いた。

 

「う……ぐぐ……」

 

「ハッピー!」

 

「諦めちゃ……ダメだ!」

 

片目を瞑り、苦しそうにしながらハッピーが体を起こす。

 

「ナツはどんな時でも諦めなかった! 最後まで戦い抜いて、そうやって勝ってきたんだ! 今度はオイラ達がナツを見習う番だよ!」

 

力強く語るハッピーを心配そうに見ながらルーシィが何か考えがあるのか尋ねると、ハッピーはコクリと首を縦に振った。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

雄叫びを上げながら突っ込んでくるハッピーに兵達が武器を構えるが、ハッピーは兵の射程範囲に入る前に手に持った袋をぶちまけ、辺りを煙が包み込む。

 

「食らえ! 毒霧攻撃だぁぁ!!!」

 

「なっ!? 吸い込むな!」

 

ハッピーのぶちまけた小麦粉を毒霧と勘違いした兵達は隙を作り、煙が小麦粉だと気づいた時にはハッピーは通路を曲がり進んでいた。

 

「しまった!? 逃がすな!」

 

ハッピーを追っていったため兵達が居なくなり、無人になった通路からシャルル達はにハッピーの飛んでいった通路を見つめていた。

 

「うまくいったみたいね」

 

「ええ」

 

「ハッピー……上手く逃げてよ!」

 

そう言ってシャルル達は奥へ進もうとしたが、突如現れたエルザに再び突き飛ばされてしまう。

 

「一人を囮にして、警備が薄くなった所を救出する。大方そんな手を使ってくるだろうと思っていた」

 

シャルルが口角を上げて見下してくるエルザを悔しそうに睨んだ刹那、三人の耳に悲鳴が入る。

 

「ウェンディ!?」

 

続いて聞こえてきたのは別の悲鳴。

 

「テューズ!?」

 

「ナツの声も……あんた達! 三人に何してるの!」

 

ルーシィが怒りを露にしてエルザに問い質すと、エルザはニヤニヤと笑いながら問いに答える。

 

「コードETDに必要な魔力を三人から奪っているんだ」

 

絶え間なく聞こえてくる三人の悲鳴に、シャルル達は涙を流して止めるように切望していると、「捕まえました」と言う声と共にハッピーがシャルル達の前に放られた。

 

「「ハッピー!」」

 

「お前らの悪運もここに尽きたのだ。」

 

エルザがシャルルに槍を向けると、シャルルは涙を流し、拳を強く握ってエルザを睨む。

 

「ウェンディとテューズを返して!!」

 

泣き叫ぶシャルルを冷たい目で見たエルザが槍を振り上げると、シャルルを守るようにハッピーが間に立った。

 

「シャルルはやらせない! やらせないぞ!!」

 

両手を広げて守るようにシャルルの前に立つハッピーを鼻で笑い、「ならばお前からだ」と言ってエルザは槍を降り下ろす。

 

しかし、突然響いた轟音と地響きにより、エルザの槍はハッピーに届く事なく止まった。

 

「なんだ!?」

 

エルザが音のした通路に視線を移すと、通路は冷気に満ちていて先を見通すことが出来ない。

 

 

「おいこらテメェ等……そいつら、うちのギルドの者だと知っててやってんのか?」

 

「ギルドの仲間に手を出した者を、私達は決して許さない!」

 

通路の奥から歩いてきた二人のシルエットを見て、ハッピー達は目を見開いて言葉を失う。

 

「テメェ等全員、オレ達の敵ってことになるからよ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)のなァ!!」

 

「グレイ! エルザ!」

 

二人を見たルーシィの表情は安堵に変わり、嬉しそうに二人の名前を呼ぶ。

 

「な、なんだ……? エルザさんが……もう一人?」

 

冷気が晴れ、そこにいたアースランドのエルザを見て兵達は困惑し、エドラスのエルザは目を見開いて絶句している。

 

「あっちはグレイ・ソルージュか?」

 

「違う、アースランドの者共だ!」

 

初めは困惑していた兵達も状況を飲み込み、アースランドのグレイとエルザに武器を向ける。

 

「オレ達の仲間は何処だ……魔水晶(ラクリマ)にされた仲間は何処にいるんだ! あァ!?」

 

グレイは氷欠泉(アイスゲイザー)を放って兵達を撃破する。

それを天井に跳ぶことによって回避したエドラスのエルザ――――ナイトウォーカーがグレイに槍を向けるが、エルザが間に入って槍を剣で受け止める。

 

二人の剣と槍が唾競り合い、その衝撃で周囲に突風が吹き荒れる。

 

「エルザ対エルザ!?」

 

目の前で繰り広げられるエルザとエルザの戦闘にルーシィが驚愕していると、ナツの怒号が響いて聞こえてくる。

 

「ナツの声!」

 

「近くにいるのか!?」

 

ルーシィとグレイがナツの声に反応し、ハッピーもシャルルとフィールの体を起こして通路の奥を見る。

 

「きっとこの先に!」

 

「ウェンディとテューズもいるはずよ!」

 

「急ぎましょう!」

 

「グレイ! 先に行け!」

 

ナイトウォーカーを警戒しながら出されたエルザの指示を受け、グレイはルーシィの手を拘束していた粘着質の物体を凍らせて破壊する。

 

「立てるか? ルーシィ」

 

「あ、うん……どうやってここに?」

 

不安げに問うルーシィに「詳しい話は後だ!」と言って、グレイはハッピー達を連れて通路の奥へと駆けていく。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「広場にあった魔水晶(ラクリマ)?」

 

「あぁそうだ。あれがちょうどオレとエルザだったらしい」

 

ナツ達の元へ駆けながらされたグレイの説明に、飛行しているハッピーがどうやって元に戻ったのかを尋ねると、グレイは立ち止まって後ろをついてきていたハッピー達に視線を移す。

 

「ガジルが来たんだ」

 

グレイの説明によると、ガジルはミストガンに言われた通り広場にあった魔水晶(ラクリマ)を破壊しようと攻撃を加えた所、魔水晶(ラクリマ)が発光した。光が止むと、魔水晶(ラクリマ)が消えてグレイとエルザの二人が倒れていたらしい。

 

グレイ達が目を覚ますと兵達が襲ってきたので撃退しようとしたが、その時はグレイ達は魔法を使えず、ガジルが兵を撃退してその場を離れた。

 

その後、潜伏先でガジルに事情を説明してもらい、その時にエドラスでも魔法が使えるようになるエクスボールをもらったらしい。

 

「そっか、ガジルも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だからナツ達みたいにアニマが効かなかったんだ!」

 

納得した表情で言うハッピーにルーシィが、「こっちに吸収されずに、アースランドに残されたってこと?」と聞くと、ルーシィの隣で腕を組んだグレイが返答する。

 

「あぁ、そしてミストガンがガジルを送り込んだ」

 

「あいつ……なんで自分はこっちにこないわけ?」

 

ルーシィは自分達を送り込むだけでエドラスに来ないミストガンに不満を持つ。

 

「こっちの世界じゃ、滅竜魔法は色んな役割を果たすらしくてな、魔水晶(ラクリマ)にされたみんなを元に戻す事も出来るんだよ!」

 

と嬉しそうに言ってグレイが拳を握っていると、ハッピーが手を上げてみんなの魔水晶(ラクリマ)の場所を知っていると伝える。

 

「マジか! ハッピー! ガジルが今、その巨大魔水晶(ラクリマ)を探すって街中で暴れてる! ガジルを魔水晶(ラクリマ)の所まで連れていけるか?」

 

膝を折り、ハッピーに目線を合わせてグレイがそう尋ねると、ハッピーはガジルなら本当に魔水晶(ラクリマ)を元に戻せるのかを確認する。

 

「正確にはナツ達でも可能なはずだが……方法知らねぇと思う」

 

「分かった。オイラがガジルをあそこへ連れていく!」

 

(エーラ)を発動し急いでガジルの元へ向かうハッピーを、「ちょっと! 大丈夫なの!?」とルーシィが心配していると、シャルルとフィールがルーシィの目を力強く見つめる。

 

「大丈夫よ」

 

「私達は早くテューズ達を見つけましょう」

 

フィールの言葉に頷き、四人で通路を奥へ進むと、扉があるのが見えた。

 

「見て、扉があるわ!」

 

「三人はあの中に……!」

 

閉められた扉をグレイが蹴破ると、中で三人が倒れているのが目に入る。

 

「大丈夫か!? しっかりしろ!」

 

「テューズ……」

 

グレイがテューズの体を起こし、フィールがそれを心配そうに見ている横で、ルーシィがナツを、シャルルがウェンディをそれぞれ揺さぶっている。

 

「ナツも意識がねぇのか!?」

 

「テューズにウェンディもないの!?」

 

焦るルーシィがそう問うと、グレイが立ち上がってナツの元まで行き、肩を掴んで乱暴に揺さぶり始める。

 

「おいナツ! いつまで寝てんだ! いい加減起きろこの野郎!!」

 

「ちょっとグレイ……!」

 

ルーシィが困惑しながらグレイを止め、グレイが無理矢理エクスボールを飲み込ませるとナツが咳き込み始めた。

 

「よし、次はウェンディとテューズだ!」

 

グレイが二人にエクスボールを飲ませていると、ナツの意識が戻った。ルーシィが「大丈夫?」と声をかけると、ナツは険しい顔で右手に炎を纏って地面を殴り付ける。

 

「止めねぇと……!」

 

「止める?」

 

ルーシィが聞き返すとナツは上を向いて炎を吹き出し、全員がそれに驚いている間に部屋から出ていってしまった。

 

「あ! ナツ!」

 

「おいテメェ!」

 

グレイが声を荒げた瞬間、グレイに抱えられたテューズと隣でシャルルに見守られているウェンディが咳をして意識を取り戻す。

 

「テューズ! 大丈夫か!?」

 

「……グレイ……さん?」

 

テューズは少し瞼を上げてグレイを視認すると、ふらつきながら立ち上がろうとする。

 

「おい! まだフラフラじゃねぇか!?」

 

「でも……ギルドのみんなが……」

 

ギルドのみんなと聞いてグレイは一瞬動きを止めたが、転びそうになったテューズを抱えてウェンディの隣に寝かせ、事情を聞く。

 

「王国軍はエクスタリアを破壊するために、巨大魔水晶(ラクリマ)を激突させるつもりなの……!」

 

涙を流して告げられたウェンディの言葉にグレイ達が驚愕していると、テューズが息を切らしながら説明を続ける。

 

「僕達妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間を、爆弾代わりに使うつもりなんだ!」

 

事情を知ったルーシィは、顎に手を添えて何かを考え始める。

 

「エドラスには空に浮いている浮游島がある。みんなも幾つか見たでしょ? あれはエクスタリアの魔力で浮いているらしいわ。世界の魔力のバランスをとってるって、本に書いてあった」

 

魔水晶(ラクリマ)に変えられた仲間も、その島の上にいるのか?」

 

グレイがそう尋ねるとフィールがエクスタリアのすぐ近くにあると答え、シャルルがその事について説明を始める。

 

「今私達の上空に、エクスタリアと魔水晶(ラクリマ)が浮いているのよ」

 

「その浮游島に滅竜魔法を当てることで加速させ、エクスタリアに激突させるのが王国軍の狙いなんです」

 

膝をつき、重い表情でテューズが語ると、グレイがどうなるのかを聞き返す。

 

「エクスタリアの魔力と妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔力がぶつかる事で弾けて融合し、永遠の魔力がこの国に降り注ぐ……と」

 

「そんな事されたら、ギルドのみんなが消えちゃうんです!」

 

ウェンディの言葉にグレイ達が驚いていると、誰かがこっちに走ってきているようで、足音が聞こえてくる。

グレイが全員の前に出て迎撃の構えを取ると、顔を真っ青に染めたナツが悲鳴を上げながら走ってきた。

 

「いやぁぁぁぁ!!! エルザが二人いたぁぁ!! 何だよあれ!? 何あれ!? 怪獣大決戦か!? この世が終わるのか!?――― あ?」

 

首を振って混乱していたナツだが、ナツを冷たい目で見つめるグレイが目に入り、この場にグレイがいることに驚き出す。

 

「グレイじゃねぇか!?」

 

「締まらねぇし、落ち着きねぇし、ホントうぜぇなお前」

 

グレイを見て固まっているナツにルーシィがアースランドのグレイだと伝えると、ナツは更に驚倒する。

 

「色々あってこっちに居るんだ。エルザとガジルもな」

 

「ハッピーは、魔水晶(ラクリマ)を止めに行ったわ」

 

とルーシィがナツに伝えると、ウェンディが「あれ?」という声を出して口元を押さえる。

 

「ホントだ! グレイさんが居る!?」

 

ウェンディからも認識されていなかったという事実を知り、グレイはショックを受けて固まっていた。

 

「え!? ウェンディ今気づいたの?」

 

テューズに問われ、ウェンディが「うん……」と言って首を縦に振った事により、もしかしたら冗談かもしれないというグレイの淡い期待が無情にも打ち砕かれた。

 

「お、おや……地下だから日が当たんねぇのかな…? 自分の影が……薄く見えるぜ……」

 

涙を流し、「ハ……ハハ……ハハハ……」と虚ろな目で笑い続けるグレイに、ルーシィが「あらら……拗ねちゃった」と言いながら薄い笑みを浮かべる。

 

「だ、大丈夫ですよ! 僕は気づいてましたから!」

 

テューズが慌ててグレイを慰めると、グレイはテューズを抱き締めて頭を撫で始めた。

 

「お前だけだよ……オレのことを認識して(分かって)くれたのは……うぅ……」

 

「で、お前らがオレ達を助けてくれたのか? てかルーシィも無事だったんだな!」

 

グレイを無視してナツがそう言いながらルーシィの肩を叩いていると、「あたしの事も今気づいたんだ……」と言ってルーシィは顔をピクピクと引き攣らせる。

 

「あ! 私ってば一番最初に言わなきゃいけないことを……あ、ありがとうございます!」

 

ウェンディが慌ててルーシィに頭を下げると、ルーシィは笑みを浮かべて「ううん、気にしないで」と優しく告げる。

 

「僕もありがとうございました」

 

「いや、オレの方こそありがとな……!」

 

テューズも礼を述べるが、グレイは更に強く抱き締め、「あ゛」というテューズの声と共にゴリッという音が微かに聞こえた。

それを見ていたシャルルは、フィールが今までシャルルの背中に隠れていた事に気づいて「あんた、何してんの?」と尋ねる。

 

「その……会わせる顔がないので……」

 

とフィールはシャルルの背中に完全に隠れ、シャルルは深いため息をつく。

 

「やっぱり、シャルル達も私達を助けに来てくれた……ありがとう」

 

と言ってウェンディはシャルルとその背中にくっついているフィールを嬉しそうに抱き締める。

 

「どうでもいいけど服着ろよ、グレイ」

 

「おぉ! いつの間に!?」

 

「最初からだけどね――ってちょっ!?」

 

ナツに指摘されたグレイが手を上げて驚き、ルーシィが苦笑いをしながらツッコミを入れようとしたが、グレイから解放されたテューズの顔を見て愕然とする。

 

「あわわわわ……テューズ大丈夫!?」

 

ウェンディもオロオロしながらテューズを心配し、当の本人は「何が?」と首を傾げているが、その頬にはグレイの着けている十字のネックレスの痕がくっきりと残っていた。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「うし、準備完了! 王様見つけて、魔水晶(ラクリマ)ぶつけんの止めんぞ!」

 

とナツが気合いを入れて部屋を出ると、ルーシィと服を着用したグレイが通路を真っ直ぐ進もうとし、ナツがそれを慌てて制止する。

 

「待て! そっちは怪獣が二匹も居る! 此方だ!」

 

左の通路を指さすナツに、ルーシィが「エルザを放っておいて大丈夫?」と問うが、「あのエルザだぞ?」とグレイに言われ、納得した様子でナツ達と共に走り出した。

 

「テューズ、私達はエクスタリアに向かおう」

 

ウェンディがナツ達についていこうとしたテューズを制止してそう言うと、シャルルが困惑して何故かを尋ねる。

 

「王国軍の攻撃があることを伝えて、避難させないと!」

 

「そうだね、分かったよ」

 

振り返ってそう強く提言するウェンディにテューズは納得したが、シャルルとフィールは食い下がる。

 

「私達はその攻撃を止めるんでしょう!?」

 

「行く必要は無いはずです!」

 

「勿論止めるよ。絶対にやらせない! それはナツさん達を信じてるから。でも王国軍は他にどんな兵器を持っているか分からない! 万が一に備えて、危険を知らせなきゃ! 私達にはそれが出来るんだから!!」

 

ウェンディがそう強く言うが、シャルルは戻りたくないと悲痛な声を上げる。

ウェンディは膝を折ってシャルルに目線を合わせ、優しく語りかける。

 

「人間とかエクシードとかじゃないんだよ?」

 

シャルルは言葉を返す事が出来ずに黙り、その隣に居るフィールは視線を逸らす。

それを見たテューズは困ったように笑いながらしゃがみ、フィールの頭を優しく撫でた。

 

「同じ生きる者として、僕達にも出来る事があると思う。大丈夫、二人は僕達が必ず守るから」

 

「どうして……どうしてそんな危険を冒してまでエクシードを助けようとするんですか! 私はエクスタリアに住むエクシード達を見てきました……でも私は彼らに価値を見いだせない! 私は彼らよりテューズ達の方が大切です!」

 

フィールが必死にそう言うと、テューズとウェンディは顔を合わせて笑い合う。

 

「それでも私達はエクスタリアに行くよ」

 

「フィール達の、友達の故郷を守りたいんだ」

 

「っ!」

 

二人の言葉にフィールは反論出来ず、シャルルと共に渋々同行してエクスタリアへと向かった。

 

 

 

 

 






突然ですが、私は文の書き方が初期に比べて変わったんですよね。
途中からもっと地の文を書くように意識し始めたのですが、一番始めに書いたプロローグを修正しようと思っています。
具体的に言うと、5つに分けていたプロローグを2つに統合するつもりです。展開自体を変更するつもりはありませんが、時間があれば少し話を追加するかもしれないです。


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