ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

85 / 112
投稿遅れましたっ
すみません!

最近はエリンギの料理にハマっています

感想等ありがとうございます!


case81 treason 〜反乱〜

「全員揃ったな?」

 

「はい。声をかけた隊員は全員揃ってます」

 

 

ホグワーツ城の空き教室に13名のセンチュリオンの隊員が揃っている。

彼らは全員、小銃もしくは機関銃を手に武装していた。

 

その顔は皆暗い。

この場に居ない隊員はエスペランサとネビル、チョウ、コーマック、フナサカの5人。

エスペランサ、ネビル、チョウはダンブルドア軍団の集会に出ている。

 

しかし、アーニーやハンナといったダンブルドア軍団に加入している隊員もこの場に居た。

 

「この場に集まった隊員は非交戦派の隊員だ。隊長はヴォルデモートが現段階で本格的に活動をし始めたら、即座に宣戦布告するつもりでいる。だが、そうなれば我々は全滅するだろう。だから、ここに居る隊員で隊長の暴走を止める」

 

セオドールが集まった隊員を見渡して言う。

 

「隊長と隊長派の隊員は現在、ダンブルドア軍団の集会に参加中だ。だが、今朝、ドラコをはじめとした尋問官親衛隊から得た情報によると、アンブリッジは今日、ダンブルドア軍団及び必要の部屋を取り締まるそうだ。ああ、尋問官親衛隊というのはアンブリッジが現在、密かに組織している魔法省令に基づいた……学生による警察機関のようなものらしい」

 

セオドールの言葉に隊員がざわつく。

 

「それは、本当なのか?」

 

「それが本当なら、隊長やネビル、それにポッターだって退学だ」

 

「それだけじゃない。必要の部屋が押さえられたら我々だって……」

 

センチュリオンの火器はほとんどが必要の部屋で管理されている。

故に必要の部屋をアンブリッジに取り締まられた場合、活動が出来なくなってしまうのだ。

 

「この際、必要の部屋が使えなくなるのは問題無い。我々は今から隊長に対して叛逆行為を行い、一時的にセンチュリオンの活動を止める事でヴォルデモート勢力との戦闘が出来ないようにするのだからな。だが、隊長やネビル達を退学させる訳にもいかない。アンブリッジにホグワーツにおいて天下を取らせる訳にもいかない。故に、我々が尋問官親衛隊より先に必要の部屋と隊長を抑える」

 

「でも、相手は隊長とネビル、それにチョウだぞ?そんなに簡単に抑えられるか?ダンブルドア軍団もいるんだぜ?」

 

ダンブルドア軍団の集会を抜けて来ているアーニーが不安げに言う。

 

エスペランサやネビル、チョウはセンチュリオンの中でもトップを争う戦力だ。

13名の隊員総出でかかっても拘束することは難しいだろう。

 

「問題無い。ダンブルドア軍団は5分で拘束出来る。所詮は杖を振り回す事しか知らない連中だ。それに、隊長も13人の完全武装した隊員相手に戦おうとはしないだろう」

 

と言うものの、セオドールはこの自分の言葉にはあまり自信が無かった。

エスペランサは13人の隊員に囲まれても抵抗してくる可能性がある。

 

「でもこれってさ。クーデターだよね?やっぱり……良くないような気もする」

 

ボソリと呟いたのはダフネだった。

 

「そうだ。これはクーデターだ。だが、正当性はある。僕はここにいる隊員に一人として死んで欲しくないからこそ、隊長を止めるんだ。そのためのクーデターだ」

 

「確かに、皆が死ぬのも、私が死ぬのも嫌だよ?でも、これじゃ隊長が可哀想で……」

 

「可哀想?感情論で語っていたら戦争には勝てないし、犠牲者は出る一方だぞ!」

 

「わかってる!わかってるよ……。わかってるから、私はここに来たんだし……」

 

ダフネは引き下がる。

 

「他にも、僕のクーデターに反対の者は下りて良い。何なら抵抗してくれても構わん。だが、仲間を1人たりとも無駄死にさせたくないという僕の案に賛成の者は……武器を取れ」

 

セオドールの言葉に隊員達は戦闘の準備を始める。

 

戦う事を恐れた者。

死ぬ事を恐れた者。

仲間が死ぬ事を恐れた者。

無駄死にする事を恐れた者。

 

そして、全てを諦めた者。

 

13人の隊員は自分達の隊長に銃口を向ける覚悟を決めたようだった。

 

「フローラ。君は……てっきりこのクーデターに反対すると思っていた」

 

セオドールは準備を開始する隊員を見ながら、横に居るフローラに話しかけた。

 

「…………」

 

「君は隊長側につくと思っていたが……?」

 

「私は……あの人に死んで欲しくない。それだけです。あの人が死ななくて済むのなら、私は進んで悪役になります」

 

フローラは相変わらずの無表情だ。

だが、セオドールはフローラの心情をある程度把握していた。

 

「僕達は悪役か……。それもそうだな。で、この流れもアエーシェマ・カローのシナリオ通りなのか?」

 

「………まさか。そんな訳ありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンブルドア軍団はいよいよ守護霊の呪文の練習を始めた。

 

守護霊の呪文に関してはプロフェッショナルなハリーの教えもあってほとんどの生徒が程度の差はあれど、守護霊を出現させる事に成功させている。

 

エスペランサは守護霊をいまだに出現させる事が出来ずにいたが、然程、問題にはしていなかった。

 

そんな事よりも、この場にアーニーやハンナやアンソニーといったダンブルドア軍団とセンチュリオンを兼務している隊員の姿が見えない事を気にしている。

 

 

そんな最中、必要の部屋に1匹の屋敷しもべ妖精が血相を変えて入って来た。

 

 

「ドビーじゃないか!どうしたんだい?」

 

ハリーがドビーに声をかける。

 

「ハリー・ポッター様!あの女が……あの女がやって来ます!ドビーめは警告しに参りましたのです!」

 

肩で息をするドビーの言葉にハリーも顔色を変えた。

 

「アンブリッジか!アンブリッジがここに来るんだね?ドビー」

 

「そうです!その通りで御座います!」

 

ドビーの言葉を聞いて、ハリーは即座に決断した。

 

「皆、逃げるんだ!早く!談話室でも図書館でも何でも良いから、とにかく逃げろ!」

 

ダンブルドア軍団の生徒達は我先に必要の部屋から逃げようとする。

必要の部屋から出た生徒は蜘蛛の子を散らすように城の各地へと逃げ出した。

 

最後まで残っていたのはハリーとネビル、エスペランサにチョウの4人だ。

 

「皆、逃げたようだ。俺達もこの場から逃げた方が良い」

 

エスペランサが傍に置いていたM733を手に取りながら言う。

 

無論、ハリー達に異論は無く、3人も必要の部屋から逃げようとした。

 

しかし……。

 

 

「動くな!武器を捨てろ!」

 

洗練された無駄の無い動きで必要の部屋の中に完全武装した13名のセンチュリオンの隊員が入ってくる。

 

隊員達はエスペランサが銃を構えるよりも前に、部屋の四周を確保した。

隊員達の持つ小銃の銃口はエスペランサ、ハリー、ネビル、チョウに向けられている。

 

退路を絶たれたエスペランサは一先ず、M733を床に置いた。

 

「どういうことだ?セオドール。訓練という訳じゃ……無さそうだな」

 

平静を装いつつも、部下の隊員達から銃口を向けられたエスペランサは動揺している。

それはネビルもチョウも同様だった。

隊員達は無表情のまま銃を構えている。

 

「どういうこと?何なのこの集団は!」

 

ハリーに至っては何も分かっていなかった。

 

「悪いが隊長。副隊長以下13名は現時刻をもってセンチュリオンの活動を一時停止させるために隊長を拘束し、必要の部屋を使用禁止にさせてもらう」

 

「拘束だと!?一応、理由を聞かせてもらうぞ」

 

「理由を説明する必要があるか?」

 

「だいたいの予想はついている。だが、説明をしろ。これは隊長としての命令だ」

 

「………。隊長はヴォルデモート勢力が活動を開始したら、即座に戦闘を開始し始めるつもりでいる。そうなれば、先日言った通り、我々は一人残らず死ぬ。そうなる事を阻止する為にセンチュリオンを強制的に活動停止させる必要があった。故に、隊長を拘束し、必要の部屋を閉鎖する。説明はこれで足りるか?」

 

「なるほど。理解はした。ヴォルデモート勢力が行動を開始したら、何もせずに指を咥えて見てるっていうんだな。良い御身分だな」

 

エスペランサは皮肉たっぷりに言うが、セオドールは動じなかった。

 

「何度も言うようで悪いが、今のまま戦闘を行えば、確実に負けるんだ。隊長は隊員が全滅すると分かっていても戦闘を行うというのか?」

 

「我々が戦わなければ、罪の無い人間が片っ端から殺され、魔法界が征服されるんだぞ?」

 

「だからと言って、僕はここに居る隊員達をもう一人として死なせたくは無い!隊長は隊員達が死んでも構わないと言うのか!?」

 

「そうは言っていない!だが、我々が戦わなければ、より多くの一般人が死ぬんだ!」

 

「我々だって非正規の軍隊もどきをやってるだけで、身分はただの学生だ!一般人なんだ!隊長と違って、僕は仲間が死ぬ事を容認出来はしないんだ!」

 

長年の軍隊生活で多くの仲間を失った経験のあるエスペランサと、戦闘経験の殆ど無いセオドールとの考え方の違いがここで明らかになる。

 

戦闘を行えば必ず戦死者が出る。

エスペランサとしても部下を一人も殺したくは無い。

それでも、戦闘を行えば戦死者が出る事はある程度、覚悟しなくてはならない。

そう考えるのがエスペランサだ。

 

しかし、セオドールや他の多くの隊員は、一人として戦死者を出したく無い。

戦死者が出るくらいなら戦闘を行わ無い方が良い、と考えているのだ。

 

エスペランサはその事実をここで初めて理解した。

 

「お前たちの考えは良く分かった。戦いたくない隊員を戦わせる程、俺は愚かな指揮官でも無い。だが、俺は一人でも戦うつもりだ。だから、悪いが、必要の部屋は俺一人でも使わせてもらうぞ?」

 

「隊長だけじゃない!僕も戦わせてもらう!」

 

「私も隊長と行動を共にするわ。でなければセドリックに顔向け出来ない」

 

ネビルとチョウが言う。

 

「そうだろうな。だが、君達に勝手にドンパチされても困るんだ。情勢が余計にややこしくなる。悪いが、隊長には当面の間、戦闘行動を出来ないようにさせてもらう」

 

「「 インカーセラス・縛れ 」」

 

複数名の隊員が呪文を唱えた。

 

たちまち、拘束の魔法でエスペランサ以下4名は縄で縛られる。

 

「隊長とポッターは僕とフローラで校長室へ連行する。他の隊員はネビルとチョウを監視しつつ、必要の部屋を確保しろ。尋問官親衛隊やアンブリッジをこの部屋に近寄らせるな」

 

縄で縛られたエスペランサとハリーはセオドールに銃を突きつけられたまま、校長室へ連行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拘束されたエスペランサとハリーが校長室に入ると、そこには大勢の人が居た。

 

穏やかな表情で椅子に座り、長い指の先を組むダンブルドア。

緊張した面持ちで、直立しているマグゴナガル。

コーネリウス・ファッジは暖炉の脇でうれしそうにしている。

扉の両脇には、キングズリー・シャックルボルトと厳しい顔つきの短髪剛毛の魔法使いが護衛で立っていた。

羽根ペンと分厚い羊皮紙の巻紙を持っているのはパーシー・ウィーズリーである。

そして、パーシーの横に意地悪そうな顔をして立っているのがアンブリッジだった。

 

歴代校長の肖像画は、全員目を開け、眼下の出来事を見守っている。

 

「あら?ミスターマルフォイと私で探していたのに見つからないと思ったら、ノットがポッターを捕まえてくれていたのね!」

 

アンブリッジは歓喜の声を上げる。

しかし、セオドールとフローラがM733を所持している事には少なからず驚いたようだ。

 

「あなたもミス・カローも明日から尋問官親衛隊に入れてあげます。ポッターを捕まえてくれたんですもの。それに……ルックウッドも」

 

「尋問官親衛隊のお誘いは断らせていただきます。我々にポッター捕獲を先取りされるようでは、あまり役に立つ組織とは呼べそうもありませんし」

 

セオドールは鼻で笑った。

アンブリッジは自分の直属の組織を馬鹿にされて不愉快そうにしていたが、それを口には出さなかった。

代わりにファッジが口を開く。

 

「さてさて。ポッター。君は何故ここに連れてこられたか分かっているね?」

 

「いいえ。分かりません」

 

ハリーが挑戦的な態度で言う。

 

「なんと!?校則を破った覚えは無い、と言うのかね」

 

「はい。校則違反をした覚えはありません」

 

「魔法省令は?校内で無許可の組織を編成することは違法であると知らないのかね?」

 

「いえ。全く知りません。僕の知る限りでは」

 

シラを切るハリーにファッジがイライラし始める。

 

エスペランサは溜息を吐きつつ、懐から煙草を取り出したが、杖を没収されている為、火をつけられない事実に気付いた。

縛られている為、手は使えないが、首を動かして懐から煙草の箱を口で取り出すという器用な真似は軍隊時代に会得したものだ。

 

「あー。どなたかライター……火種を持ってませんか?」

 

「ルックウッド!この場で喫煙はやめなさい!」

 

マグゴナガルがピシャリと言い放つ。

 

「通報者を連れてきた方が話が早いでしょう」

 

「うむ。そうしてくれ」

 

アンブリッジは一旦部屋を出ると、どこかへ行ってしまった。

そして、数分後、顔を両手で覆い隠しながら啜り泣いているマリエッタ・エッジコムを連れてきた。

 

どうやらダンブルドア軍団の事を密告したのは彼女らしい。

 

「怖がらなくてもいいの。あなたは正しいことをしたのよ。大臣がとてもお喜びです。あなたのお母様に、あなたの善行を言ってくださるでしょう」

 

甘ったるい声でアンブリッジはマリエッタに声をかけるが、マリエッタは泣いてばかりいる。

 

「大臣、彼女の母親は魔法運輸部の煙突飛行ネットワーク室のエッジコム夫人です。ホグワーツの暖炉を見張るのを手伝ってくれていたのです」

 

「なるほど!その母にしてこの娘ありだな、え? 」

 

大臣が嬉しそうに言う。

 

「この状況下じゃ嫌味にしか聞こえねえよ……」

 

エスペランサの皮肉を聞きながら、ファッジはマリエッタに話しかけた。

 

「さあ、いい子だ。顔を上げて、恥ずかしがらずに。もう一度、通報した内容を言ってくれれば良いんだ………な、何だこれは!?」

 

マリエッタ顔は、頬から鼻を横切って、膿んだ紫色のでき物がびっしりと広がり、密告者という文字を描いていた。

恐らくハーマイオニーのかけた呪いの所為なのだろう。

 

マリエッタは泣き喚いて、それ以上なにも話せなくなった。

 

痺れを切らしたアンブリッジが代わりに口を開く。

 

「マリエッタは今夜、八階にある必要の部屋と呼ばれる秘密の部屋に行けば、私にとって都合の良いものが見つかるだろうと言ってきました。もう少し問い詰めたところ、この子は、そこで何らかの会合が行われるはずだと白状しました。残念ながら、その時点で、この呪いが効き始めて何も言わなくなってしまったのです」

 

「なるほど。その会合はどのような意図で誰が集めたものなのかね?」

 

ファッジがマリエッタに聞くが、マリエッタは首を横に振って答えない。

これ以上何か喋れば、余計に呪いが酷くなると判断したのだろう。

 

「大臣。ウィリー・ウィダーシンの証言があります。ホッグズ・ヘッドでポッターをはじめとする大勢の生徒が違法組織を編成するという情報を私に通報してきたのです!そして、その組織の活動は"魔法省が不適切と認める魔法の習得"でした。これは、魔法省に対する叛逆行為ですわ」

 

「しかしのう、ドローレス。ハリーが"闇の魔術に対する防衛術"の学生組織を作ろうとしたのは、魔法省令を発効する2日前じゃ。じゃから、ハリーはホッグズ・ヘッドで、何らの規則も破っておらんぞ?」

 

ダンブルドアの言葉にアンブリッジもファッジも口をパクパクさせた。

 

「ですが、教育令第二十四号が発効してから、もう六ヵ月近く経ちますわ。最初の会合が違法でなかったとしても、それ以後の会合は全部、間違いなく違法ですわ」  

 

「そうじゃのう。もし、教育令の発効後に会合が続いておれば、たしかに違法になる。じゃが、そのような集会が続いていたという証拠を、何かお持ちかな?」

 

「マリエッタ。ここ6ヶ月でどのような会合が行われて来たか話なさい」

 

アンブリッジが問いただすが、奇妙な事に、マリエッタは首を横に振るだけだった。

まるで、いつの間にか錯乱の呪文にでもかけられているような……。

 

「本当の事を言いなさい!マリエッタ!」

 

「アンブリッジ先生。首を横に振るということは、否定を意味します。それよりも、確実に6ヶ月以上活動をしていたルックウッドの組織について言及したらどうです?」

 

セオドールが言う。

 

「そうね!そうだわ。ポッターの組織と同時期にルックウッドの組織も活動していたのよね!」

 

アンブリッジがエスペランサの方を向く。

無論、答える義務も無いのでエスペランサは黙っていた。

 

「それに関しては僕から説明させて下さい」

 

セオドールがエスペランサの代わりに話し始める。

 

「おお!君はノット家の倅だね。是非とも喋ってくれたまえ」

 

ファッジは昨年度末にクラウチJr.の件で対立した事をすっかり忘れているようで、セオドールに友好的な態度を取ってきた。

この変わり身の早さが魔法大臣たる所以なのだろうか。

 

「はい。エスペランサ・ルックウッドの組織には僕やフローラ・カローも加入していました。その組織の目的は学校内外に存在する反乱分子を排除するというものです」

 

セオドールは嘘に塗り固められた発言をし始めた。

その意図をエスペランサは掴めていない。

 

「セオドール。お前一体、何を企んでやがる?」

 

「悪いが、少し黙っていてくれ。シレンシオ・黙れ」

 

「!?」

 

セオドールに魔法をかけられ、エスペランサは一時的に会話をする事が不可能となった。

そんな彼を差し置いて、セオドールは言葉を続ける。

 

「反乱分子とは例えば、今回、ポッターが作ったグループのような魔法界に混乱をもたらす組織を指します。我々はルックウッド指揮の下、これらの組織を武力で制圧することを目的としていました」

 

「それは……つまりあれかね?魔法省に不利益をもたらす組織を制圧する、謂わば闇払いのようなものか?」

 

「御理解が早くて助かります閣下。ただし、我々の装備する武器はいずれも高性能かつ高火力。アンブリッジ先生に認められる筈もない為に申請をしませんでした」

 

ファッジとアンブリッジの目がセオドールの持つM733に行く。

この二人はマグルの武器の威力をまだ知らない。

だが、マグゴナガルやダンブルドアに関してはエスペランサの戦闘を見た事があった。

故に、彼らはアンブリッジ以上にエスペランサが武装組織を編成したことに脅威を感じたのである。

 

 

「なるほどなるほど。だが、許可の無い組織を作る事は退学相当の罪だ。それが例え魔法省に有益な組織であっても……」

 

「それは重々承知しています。ですが、我々はポッターとは違い、魔法省の利益の為に動いていました。ノット家の名において保証しましょう。それからカロー家も」

 

英国魔法界においてノット家、カロー家はブランド的価値のある名前だ。

両家共に魔法省には多大なる寄付という名の貢献をしてきた過去もあるし、権力もある。

 

この両家の名前を出されれば魔法大臣とて無闇には逆らえない。

 

「ふむ。そうだな。君の家に免じて、ルックウッドとその組織に関しては処分を保留しよう。ドローレス、それで構わないな?」

 

「え、ええ。そうですわね。ですが、ミスター・ノット達の組織は解散しなさい。そして、今後、組織する場合は私の許可を得る事と、そして、私……いえ、魔法省の利益の為に活動しなさい」

 

アンブリッジが言う。

 

この発言に憤ったのはマグゴナガルだった。

 

「ドローレス!魔法省のための組織を学生に編成させるなど言語道断です!」

 

「大丈夫です。マグゴナガル先生。それで構いません」

 

「ミスター・ノット!あなたは一体何を考えているのです!?」

 

顔を真っ赤にして怒るマグゴナガルをセオドールは無視した。

 

「我々は魔法省の為に動きましょう。その代わりにホグワーツの必要の部屋の管理を我々に任せてもらいたい。再び、ポッター軍団が必要の部屋で活動する可能性もあります。なら、必要の部屋を警備する組織が必要だ。現状、尋問官親衛隊では戦力が不足している。ですが、我々であれば十分に警備出来るでしょう」

 

この言葉を聞いてエスペランサはセオドールの意図が全て理解出来た。

 

センチュリオンの活動を停止し、エスペランサの戦闘行動を止める為には、ハリーと一緒にエスペランサを拘束するのが手っ取り早い方法であった。

 

しかし、センチュリオンの武器弾薬が保管されている必要の部屋をアンブリッジや尋問官親衛隊の管理下に置くことはセオドールとしても防ぎたいところである。

 

故に、あえてセンチュリオンがアンブリッジにとって有益な組織であると嘘を吐き、必要の部屋の管理をセンチュリオンに一任させる。

 

これが、セオドールの魂胆なのだろう。

 

(そういうことかよ。俺から戦力を奪い、戦う術を奪うために強硬手段に出たって訳か。だが、それは、セオドール自身が戦うという選択肢を放棄したのと同義だ)

 

クーデターを起こされた事にもショックを受けていたエスペランサだが、その首謀者が片腕と頼んだセオドールであり、彼が戦闘を放棄する選択肢を選んだ事には殊更、ショックを受けた。

 

「まあそうね。ミスター・ノットはスリザリンの優等生ですし、家柄も良い。あなたに任せておけば問題ないでしょう。ですが、その妙な武器は全て放棄しなさい」

 

「承知しました。では、今後、必要の部屋は我々が警備及び管理をさせて頂きます」

 

「さてさて、ルックウッドの件はこれで解決したとして、ポッターの件はどうしますかな」

 

ファッジが思い出したかのようにハリーを見て言う。

 

「ポッターは省令に違反した組織を校内で6ヶ月もの間、活動させていた疑惑がある訳だ」

 

「じゃが、その証拠はあるのかのう?ミス・エッジコムは否定しているようじゃが?」

 

「むっ!?た、確かにその証拠はありませんわ!しかし、今夜は絶対に会合が行われていました!現にポッターが確保されているのですから!それにっ!」

 

「それに?」

 

「私の命で動いていたミス・パーキンソンがこんなものを見つけました!」

 

アンブリッジが手に持っていた羊皮紙を掲げた。

この場にいる全員の目が羊皮紙に向けられる。

 

その羊皮紙はハーマイオニーが作成したダンブルドア軍団の署名入り名簿であった。

 

「ドローレス!でかしたぞ!さてさて、もう言い逃れは出来まい。この羊皮紙には参加者の一覧と、そして、組織の名前が書いてある。組織の名前は……ダンブルドア軍団だ!」

 

「そうじゃのう。ポッター軍団ではなく、ダンブルドア軍団じゃ。ハリーの組織では無く、わしの組織ということになる」

 

「なんと!では、まさか、ダンブルドア……あなたが生徒を使って非合法の組織を!?」

 

「ダメです!先生!」

 

「ハリー。黙るのじゃ」

 

ダンブルドアがハリーを庇って罪を被ろうとしているのはエスペランサにもよく分かっていた。

 

しかし、その場合、ダンブルドアが魔法省令違反で逮捕される事になる。

それは魔法界にとって最悪の結果をもたらすだろう。

 

何としてもダンブルドアの逮捕は回避させなくてはならないが、武器も杖も奪われ、拘束され、発言さえ魔法で封じられたエスペランサには何も出来ない。

 

「ハリーでは無く、わしが魔法省に対抗する組織を作ったのじゃ。そして、今夜が初の会合じゃった。故に逮捕すべきなのはハリーではなく、わしじゃの」

 

朗らかに言うダンブルドアを見てファッジは歓喜の声をあげた。

 

「よしよし!では、さっそく、お前を逮捕して裁判までの間、アズカバンに投獄する」

 

「ああ。やはり、そうなるのじゃな。残念じゃが、わしはアズカバンには行かん。他にやる事がたくさんあるのでな」

 

「なんだと!?この場には私だけでなく、ドローレスやキングズリー、ドーリッシュもいるんだぞ?逃げ切れると思うのか?」

 

「まあ、そう難しくはないじゃろう」

 

「舐めおって!かかれ!ダンブルドアを拘束しろ!」

 

ファッジの号令で魔法省職員が一斉にダンブルドアに魔法攻撃を仕掛ける。

 

だが、現代魔法界最強のダンブルドアの前では魔法省のエリートたちも赤子同然であった。

 

ファッジをはじめとした魔法省職員の魔法を簡単に跳ね除けたダンブルドアは杖を一振りしただけで、その場を制圧する。

 

ダンブルドアの杖から放たれた銀色の光に当てられた職員は例外無く気絶し、エスペランサも漏れなく光に当てられて気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたエスペランサは状況を理解するのに暫しの時間を要した。

 

魔法省職員とダンブルドアの戦闘に巻き込まれて気を失ったという事を思い出した彼は、自身にかけられていたインカーセラスとシレシシオの魔法が解かれている事にも気付いた。

 

周りを見ればファッジやドーリッシュ、アンブリッジも目を覚ましている。

 

「ダンブルドアはどこだ!」

 

「階段です!姿くらましは城内では使えない筈!」

 

慌ただしくダンブルドアの捜索を始める魔法省の職員達。

 

「これでダンブルドアは魔法界から追放されたも同義だ。ヴォルデモートが天下を取る日はそう遠くないぞ」

 

エスペランサは同じく目を覚ましたセオドールとフローラに皮肉を込めて言う。

 

ダンブルドアが追放されることはセオドールにとっても想定外の事態だったに違いない。

彼は彼でダンブルドアという戦力に頼ろうとしていたのだから。

 

「どの道、センチュリオンが戦闘に参加すれば隊員は全滅していた。僕は僕の判断を間違いだとは思わない」

 

「そうか……。俺は単に戦う事から逃げる口実探しのようにしか思えんけどな」

 

「何とでも言えばいいさ。僕は君のような戦闘狂じゃない。部下の命を失わない方法があるのなら、その方法を選ぼうとするまでだ」

 

セオドールはそう言い残し、校長室を後にした。

ここで完全に隊長と副隊長が決裂する。

 

「フローラ。お前も副隊長と同じ考えなのか?」

 

残されていたフローラにエスペランサは声をかける。

 

「……私、私は………。そうです。セオドールと同じ考えです。私にも、命を落として欲しく無い人がいるので」

 

彼女もそう言い残し、校長室を去った。

 

後に残されたのはエスペランサ一人。

 

 

 

センチュリオンという組織は事実上、消滅した。

 

 

 




やはり主人公は逆境に立たされてこそだと思う今日この頃

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。