ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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case75 High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle 〜ハンヴィー〜

ハリーがアンブリッジと言い争ったという噂は瞬く間に学校中に知れ渡った。

エスペランサもそれに加わったというおまけ付きだった。

 

生徒達は敢えてハリーに聞こえる場所で「ポッターが例のあの人と決闘したって言っているらしい」等のヒソヒソ話を繰り返している。

ハリーがそれを聞いて癇癪を起こし、もう一度、第3の課題で何があったのかを公言させるためだ。

 

他寮の生徒とそれなりに良い関係を築いていたエスペランサは連日のように質問攻めに遭っていた。

 

禁じられた森での演習を控えた週末の昼休みも、ザカリアス・スミスというハッフルパフの生徒からしつこく質問をされた。

 

「で、結局、あの夜何があったんだ?君は全部知ってるんだろ?」

 

「全部は知らない。あの夜何があったのか全部知ってるのはハリーだけだ」

 

「ポッターの言うことは信じられないし、何も話そうとしない。新聞を読む限り、ダンブルドアもポッターも嘘をついているそうだし」

 

一々、癪に触る言い方をしてくるブロンド髪の生徒にうんざりしつつ、エスペランサは懐から煙草を一本取り出した。

場所は校庭の湖の畔であるから、喫煙しても教師に咎められる事はない。

 

「ハリーは本当の事を言っている。少なくとも俺はあいつの言うことを信じてる」

 

「例のあの人が復活したなんて出鱈目を信じるのか?」

 

「勿論。そうすれば、ワールドカップでの出来事も、セドリックの死も、クラウチJr.がムーディに化けていた事も全て辻褄が合うからな」

 

なかなか火がつかないライターにイライラしていたエスペランサだが、自分が魔法使いだと思い出す。

杖先から火を出して、煙草に火を付けた。

 

マグル界から持ち込んだ煙草も底を尽いてきた。

ボージン経由で輸入したいところだが、ボージンは手数料と言ってぼったくってくるので抵抗がある。

 

「セドリックの死は事故だってアンブリッジは言っていたが?」

 

「それこそ出鱈目だ。セドリックは課題で導入された魔法生物に殺されるようなヤワな男じゃない。手練れの死喰い人でもセドリックを殺すなんて一筋縄じゃいかない」

 

煙を吐きながら彼はセドリックの死を思い出し、少し俯いた。

 

「そうかな?僕はハッフルパフでセドリックを見てきたけど、彼にそんな秀でた能力があったとは思えない。皆、過大評価し過ぎさ。きっと、巨大蜘蛛やスフィンクスに殺られてしまったに違いない」

 

エスペランサはザカリアス・スミスを殴り飛ばしたい衝動に駆られたが、思い留まった。

 

「言いたい事はそれだけか?悪いが貴重な休み時間をこれ以上浪費したくない」

 

彼は吸殻を消失呪文で消した。

そして、尚も何か言いたそうにするスミスを置き去りにして城に戻った。

 

「ったく。どいつもこいつも」

 

スミス以外にもセドリックの死に関する事を聞いてくる生徒は多い。

一々、相手をしていてはストレスが溜まる一方だ。

ハリーが癇癪を起こすのも分かる。

 

「おい。ルックウッド」

 

「今度は何だ?」

 

階段を登る途中で呼び止められたエスペランサは不機嫌そうに振り向く。

 

呼び止めたのはマルフォイだった。

 

驚くべき事に腰巾着のクラッブとゴイルを連れていない。

 

「口の利き方に気を付けろ。僕は君から減点することも出来る」

 

「俺が減点を恐れると思うか?」

 

「思わない。嘆かわしい事に。少し聞きたい事がある」

 

マルフォイにしては妙に真面目な顔をしていた。

 

「何だ?ハリーの事か?それともセドリックか?」

 

「違う。ここでは目立ち過ぎる。着いてこい」

 

「はあ?人に物を頼む態度じゃねえぞ」

 

不機嫌なエスペランサはマルフォイを無視する事も考えたのだが、彼の異様な雰囲気に興味を持ち、渋々、着いていった。

 

2階の廊下の隅に誰も居ない場所を見つけたマルフォイはそこで立ち止まる。

 

「で?何が聞きたい?」

 

「これを見ろ」

 

マルフォイは手に持っていた預言者新聞を投げて渡してきた。

 

「預言者新聞?こんな便所の落書きをまだ読んでるとはな」

 

「その新聞の3面を読め」

 

エスペランサは新聞を広げた。

その3面には"魔法使い15人が行方不明"と書いてある。

 

15名の魔法使いは全員、アウトローな人間だった。

 

「15人が行方不明、か」

 

「父上が言うには行方不明になった魔法使いは全員、闇の帝王の賛同者だった者達だ。まあ、どいつもこいつも下品で無能な連中だったらしいが」

 

「ヴォルデモートの賛同者なんて皆、下品で間抜けな連中だろうが。元々、アウトローな連中だったんだろ?そんな奴らが行方不明になるなんて不思議でも何でも無い」

 

エスペランサは鼻で笑ったが、マルフォイは真面目な顔を崩さなかった。

 

「最初は僕も父上もそう思った。だけど、連中の仲間の一人が夏休みに僕の屋敷に現れたんだ。それも、どこからか逃げて来たみたいに」

 

「逃げて来た?」

 

「そうだ。彼が言うには、連中はマグルの襲撃を企てていたらしい」

 

「クソみたいな企てだな。いや、待て。らしいって事は未遂だったんだな?」

 

「そう。彼等の企ては未遂で終わった。マグルの家を襲おうとした瞬間に、仲間が片っ端から血を吹き出して倒れたらしい」

 

「血を噴き出して?つまり殺されたってことか」

 

魔法使いや魔女が人を殺すならアバダ・ケダブラを使うのが普通だ。

 

無論、死の呪いはある程度の魔法力がなければ使えない。

他にも殺傷力のある魔法はある。

 

だが、片っ端から血飛沫を上げて死んでいく魔法使いの光景を思い浮かべたエスペランサは別の可能性を考えた。

 

 

 

狙撃された?

 

 

 

「僕はお前が使うマグルの武器を知っている。もしかしたら……」

 

「殺された魔法使い達は銃撃されたかもしれない、と考えた訳だな」

 

「そういう事だ。僕としては、お前が犯人なんじゃないかとも考えたんだが。その反応だとどうも違うらしいな」

 

「ああ。俺じゃない。しかし、魔法使いを銃撃して殺すマグルなんて俺の知る限り存在しない……」

 

ふと、エスペランサは英国の軍隊が魔法界を攻撃する計画を立てていることを思い出した。

もしかしたら、彼等が行動し始めたのかもしれない。

 

英国軍が魔法界を攻撃するトリガーは英国魔法界がヴォルデモートの暴走を阻止出来なくなる事だ。

現状、英国軍が魔法界を攻撃する可能性は非常に高い。

 

 

「本当にこの件にルックウッドは関与していないんだな?」

 

「ああ。関与していない。まあ、でも、死喰い人の連中が俺の前に現れたら問答無用で殺害はするだろうがな」

 

エスペランサの言葉にマルフォイが一瞬、顔色を変えた。

彼の親であるルシウスはヴォルデモート復活の際にその場に居た正真正銘の死喰い人だ。

つまり、ルシウスがエスペランサの前に現れればエスペランサは容赦なく彼を殺害しようとすると宣言したようなものなのである。

 

「一つ忠告をしておく。ルックウッドは闇の帝王の勢力を甘く見ている。その内、痛い目に遭うぞ?」

 

「ご親切にどうも。だが、連中もマグルの戦力を舐めているからお互い様さ」

 

 

マルフォイはそれ以上何も言わずに去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルフォイと会話した次の日。

 

エスペランサはクィデッチ競技場に来ていた。

 

ロンがグリフィンドールチームのキーパーになってからはじめての練習をするという話を聞いたので見学に来たのである。

 

ハーマイオニーと競技場のスタンドに来てみると何故かスリザリンの生徒が大勢居た。

 

「スパイにしては大世帯だな。何しに来たんだ?」

 

スタンドに座るスリザリン生の中にダフネの姿を見つけたエスペランサが訊ねる。

 

「ええとね。ドラコから"今日のグリフィンドールの練習で面白い光景が見れるぞ"って言われたから来てみたんだけど」

 

ダフネが答えた。

 

「面白い光景だぁ?」

 

「うん。でも、嫌な予感しかしないよね」

 

エスペランサはスリザリンの面子を見た。

マルフォイ、クラッブ、ゴイル。

それにパンジー・パーキンソンをはじめとしたガチガチのスリザリン生達だ。

 

「フローラは一緒じゃないのか?」

 

「うん。あの子はクィデッチに興味無いから。それに、フローラは朝に弱くてね。今頃まだ寝てるんじゃないかなぁ」

 

スタンドの一番上に備え付けられた時計は朝の7時を指している。

 

「こんな時間まで寝てるのかよ」

 

「こんな時間って言っても、まだ7時だし。でもでも、フローラは多分、9時までは起きて来ないかも。休みの日の朝はいつも遅起きだから」

 

「起こしたりしないのか?」

 

「起こさないよ。だって、とっても気持ち良さそうに寝てるんだもん。それに、寝てるフローラって可愛いんだよ。一度見せてあげたいなぁ」

 

「じゃあ今度、写真でも撮ってきてくれ。10クヌートくらいで買ってやる」

 

「安い安い。1ガリオンで売ってあげるよ。それくらいの価値あるから」

 

そう言ってダフネは懐から1枚の写真を取り出した。

 

写真には布団に包まっているフローラが写っている。

魔法界の写真なので勿論、静止画では無く動画だ。

 

寝息を立てながら芋虫のように丸くなって寝ているフローラの写真にエスペランサは釘付けになった。

 

 

「どう?1ガリオンだよ?」

 

「買った」

 

「毎度あり!」

 

即座にガリオン金貨を取り出したエスペランサを見てハーマイオニーが目を丸くしている。

 

「エスペランサ!それ、プライバシーの侵害よ!」

 

「良いじゃないか別に寝顔くらい。あ、ダフネ。俺がこれ買った事、本人には絶対言うなよ?」

 

「もちろん!いやー最近金欠でね。小遣い稼ぎしないとさ」

 

「なんで金欠なんだ?」

 

「え?えーと。実は、コーマックと賭けをしまして」

 

ダフネは目を逸らしながらボソボソと言った。

 

「賭け?コーマックと?お前、まさかとは思うが」

 

「そのまさかだよ。ドクシーの卵をコーマックが食べ切って1時間倒れなかったら10ガリオンって賭けをしたんだ。コーマックの奴、2時間も耐えちゃって。はは」

 

コーマックがドクシーの卵を馬鹿食いして倒れたのはダフネのせいだった訳である。

エスペランサはブチ切れそうになるのを抑えようとしたが無理だった。

 

彼は無言で杖を取り出した。

 

「ごめん!ごめんってば!謝ってるじゃん!ねえ!」

 

「ごめんで済んだら軍隊は要らねえんだ!」

 

杖から次々に呪いが飛び出す。

 

クラゲ足呪いやコウモリ鼻糞呪いだ。

 

「本当にやめて!ねえ!あっ、フローラの秘蔵の写真あげるから。許してええ!」

 

抵抗も虚しく、ダフネはエスペランサの放つ呪いを全て受けてしまう。

 

数分後。

顔面中がコウモリの鼻糞だらけで、手足がクラゲのようになったダフネが泣きながらスタンドの隅に倒れていた。

 

「酷い。鬼、悪魔!トロール!」

 

「何とでも言え」

 

エスペランサは醜い姿になったダフネのローブの中を探った。

 

「ぎゃああ!何するの!変態!どこ触ってるの!」

 

「どこも触ってねえ。触るような凹凸も無いだろうが」

 

「セクハラ!セクハラで訴えてやる!アンブリッジに言いつけてやる!」

 

「あ、あったあった。これか」

 

彼女のローブのポケットに入っていた魔法界のカメラをエスペランサは取り出す。

ついでにフローラ秘蔵写真も没収した。

 

「あ、私のカメラ。何するの?ねえ!」

 

「随分とアナログなカメラだな」

 

カシャ

 

フラッシュがたかれる。

 

「あ……」

 

「へっ。ピューリッツァー賞が撮れるかも知れねえ」

 

勝ち誇るエスペランサをダフネは涙目で睨みつけた。

コウモリの鼻糞まみれの顔で睨まれていても怖くもなんとも無かったが。

 

「許さない!ドラコー!こいつから減点して!200点くらい減点してよ!」

 

ダフネが遠くに居るマルフォイに叫んだが、マルフォイはグリフィンドールチームを野次るのに夢中で気づいていない。

 

どうやらロンがお粗末なプレイをしているのを見て喜んでいるらしい。

 

「ウィーズリー家は皆、飛行が得意なものだと思っていたが、ロンは違うみたいだな」

 

ロンはクアッフルを守るどころか明後日の方向に飛んでいったり、箒から落ちそうになっていた。

 

顔が真っ赤になっている。

 

「彼はあがり症なのかな?」

 

クラゲ足になった自分の手をフリフリしながらダフネが聞く。

 

「かもしれん。軍隊にいた時もあの手の奴は何人か居た。人前が苦手なんだろう」

 

「なんか可哀想になってきた。それにしても、ドラコ達は性格悪過ぎだよ」

 

「そう思うなら奴らの嫌がらせを止めれば良いじゃないか」

 

「無駄無駄。私やセオドールが何度言っても止めないもん」

 

「じゃあ俺が止めさせてくるか。流血沙汰になれば流石に連中も嫌がらせを止めるだろ」

 

「駄目!流血どころか死人が出ちゃうから!」

 

ダフネが足をクネクネさせながら必死に止めるのでエスペランサは思い留まる。

 

結局、スリザリンによる嫌がらせは最後まで止まらなかった。

エスペランサは手に入れたフローラの写真を机の一番奥にこっそり保存した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンの初練習から2日後。

アンブリッジがホグワーツ高等尋問官という役職に就いたという記事が預言者新聞で報じられた翌日。

 

センチュリオンは禁じられた森で久々の大規模な演習を行っていた。

センチュリオンの戦力と練度は格段に向上している。

セドリックが戦死した事を受けて復讐心に燃えた隊員達の士気は高かった。

 

チョウも本調子とは言えないまでも演習に参加出来る程度には復活している。

 

 

「いつまでもメソメソしてられないし。私が居なくなったら遊撃部隊がコーマック一人になっちゃうでしょ?」

 

箒と銃を担いで現れたチョウはエスペランサにそう言ったものだ。

 

今回の演習は禁じられた森の奥地で行われる。

既にホグワーツの敷地内では無い場所なので邪魔をする魔法生物もほとんど生息していない。

 

81ミリ迫撃砲やパンツァーファウストⅢを使用した射撃訓練と、これに加えて新たに導入された対戦車ミサイルの訓練。

そして、ようやく出来上がった車輌を使用した戦闘訓練。

 

2日を通してやる事は多くあった。

 

必要の部屋で作り出した車輌は米軍で1985年から使われているハンヴィーだ。

High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle(高機動多用途装輪車両)を略してハンヴィー。

4.6メートルもある車体で時速100キロを超える速力を出す事が可能。

湾岸戦争でも大量に投入され、米軍の作戦に大きく貢献してきた車輌である。

 

燃料である軽油を入れた200リッター入りのドラム缶も禁じられた森に運び込まれていた。

 

追加装備として車体上部にはMK.19グレネードランチャーも搭載されている。

対死喰い人、対闇の生物を想定してエスペランサは点ではなく面の制圧力を欲した。

故に擲弾を連射可能なMK.19を装備した訳だ。

 

縮小拡大呪文を駆使して禁じられた森に運ばれたハンヴィーを隊員達は物珍しそうに見ている。

魔法界出身の者はマグルの車に乗ったことすらないからだ。

 

「空を飛べないんじゃ機動力に欠けるな」

 

コーマックが森の中にある空き地に置かれたハンヴィーの車体をコツコツ叩きながら言う。

 

「だが、この車とやらは複数人を一度に運べるじゃないか。これで作戦に幅を持たせることも出来る」

 

「マグルの道具も案外捨てたもんじゃ無いな」

 

アーニーとアンソニーが車内に乗り込んで言う。

彼らはハンドルやアクセル、シフトレバーをおもむろに触り始めた。

 

「とりあえずエンジンを始動させてみるか」

 

エスペランサは運転席に乗り込んだ。

軍隊に所属していたとは言え、彼は運転を担当したことが無い。

車の運転は出来るが、ドライブテクニックは一般市民と変わらなかった。

それでも、センチュリオンの隊員の中で車輌を運転出来るのは彼とマグル出身のフナサカだけだ。

 

イグニッションキーを入れ、クラッチペダルとブレーキペダルを踏む。

サイドブレーキを解除し、一気にキーを回した。

 

クイッ

 

 

クイイイイ

 

 

クイッ

 

 

「あれ?」

 

「どうした?エスペランサ」

 

セオドールが車外から不安そうに声を掛ける。

 

「エンジンがかからん。あれ?」

 

一向にエンジンはかからない。

エスペランサは車輌整備を担当したフナサカを呼んだ。

 

「おい。動かねえぞ。機動実験はしたんだろ?」

 

「したさ。でも、必要の部屋を少し走り回しただけ。バッテリーの蓄電量が足りないのかもしれない」

 

「魔法でどうにかならんのか?」

 

「単なる故障ならレパロで何とかなるけど、バッテリー切れは直せない。他の車があればブースターブルを使ってジャンピング出来るんだけど」

 

「おいおい。動かないんじゃただの鉄屑じゃないか」

 

第二分隊員のアンドリューが呆れたように言う。

他の隊員も肩を落としていた。

 

「仕方ない。これ以上時間を無駄にもしてられん。次の訓練に移行しよう」

 

結局、ハンヴィーの起動試験は中断し、他の新規装備の試射を行うことにした。

 

 

新規装備は3つ。

 

一つは対戦車ミサイルのBGM71TOW。

対戦車ヘリコプターAH-1コブラにも搭載されている対戦車ミサイルである。

第2世代のミサイルで主に使用される半自動指令照準線一致の誘導方式で、ミサイルが飛んでいる間は常にオペレーターが照準器で目標を追い続ける必要がある。

 

発射装置は無反動砲に似ているが、センチュリオンの装備するカールグスタフやパンツァーファウストⅢよりも射程が長い。

 

 

二つ目は先に紹介したMK.19グレネードランチャー。

 

三つ目はM134ミニガンだ。

 

最大で100発/秒の発射速度を誇るミニガンはヘリが地上を制圧する武器である。

その発射速度は圧倒的であり、一瞬にして敵を制圧出来る。

重量が18キロと重いが、魔法で軽量化する事で取り扱いが楽になっている。

稼働にはバッテリーが必要である為、センチュリオンの隊員達は軽油と可搬式発電機を携行してきていた。

 

乾いた地面に置かれたミニガンを操作しながらエスペランサが概要説明を行う。

 

「これはミニガンと呼ばれる武器だ。重量は魔法で軽量化しているが、反動が強い。地面に魔法で本体を固定しなければ使用出来ない」

 

「見たところ強そうには思えないよ?」

 

ダフネが疑わしげな目でミニガンを見る。

 

ミニガンはそこまで大きい武器ではないし、使用する弾丸もキャリバー50より小さい。

おまけにバッテリーに接続しなければ起動しない。

そんな武器を採用する必要があるのかダフネをはじめとした隊員達は疑問に思っていた。

 

「見た目からは想像も付かない程、強力な兵器なんだよ。こいつは」

 

エスペランサはバッテリーにコネクタを接続し、発射ボタンを押した。

 

 

ブウウウウウウウウン

 

 

機械音と共に数千発の弾丸が撃ち出される。

禁じられた森に生える木々があっという間に砕け散り、草木は燃え尽きてしまった。

 

飛び出した空薬莢が無数に転がる。

 

「なんだこの馬鹿みたいな火力は……」

 

木っ端微塵に吹き飛んだ木々を見て隊員達は唖然とした。

 

「凄まじい威力だ。マグルはこれを戦争で人に向けて使ってるんだよな」

 

セオドールが言う。

 

「そうだ。米軍では割とオーソドックスな兵器だな。俺も中東で何度か使っていた」

 

「こんな闇の魔術にも匹敵する恐ろしい兵器を善良な軍人が人間相手に使っているのか。何だか僕はマグルが恐ろしくなってきたよ」

 

「そうだな。マグル界にも悪い連中は大勢居る。そして、そいつらはこの手の兵器を大量に持っているんだ。我々が将来的に戦う相手はそういった連中だ」

 

隊員達の表情は硬い。

 

彼らはヴォルデモート勢力よりも、マグル界の敵の方が圧倒的に脅威であることを再認識したからだ。

 

「恐る事はない。我々は近代兵器と魔法、両方を使うことの出来る部隊なんだ。ヴォルデモートにもマグル界のテロリストにも遅れをとる事はない。この調子で練度を上げていけばな」

 

エスペランサは隊員達に言葉をかける。

 

しかし、彼もまた、マグルの兵器を駆使する敵に対してはある種の恐れを抱いていた。

闇の魔術を凌駕する兵器を持つ敵と戦うとなればミニガンや誘導弾で武装しても太刀打ち出来ない。

 

センチュリオンの隊員達はヴォルデモート勢力を殲滅する事で頭がいっぱいであったが、エスペランサはヴォルデモート勢力を一掃した後、世界各地で暴れるテロ組織との戦闘の事を考えていた。

彼はヴォルデモート率いる闇の勢力の殲滅は過程に過ぎないと常々言っていた。

しかしながら、隊員達はかつて魔法界を支配しかけた闇の勢力とマグル界の脅威であるテロ組織や独裁国家の脅威度の違いを理解出来ていない。

 

 

この認識の齟齬が後に取り返しのつかないものとなるとは誰も予想出来ていなかった。

 




題名にしたもののハンヴィーはまだ稼働出来ません。

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