ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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感想、誤字報告ありがとうございます!

先日、デジモンの映画を見てきました。
すごい良かったです。



case48 Sign of darkness 〜闇の印〜

エスペランサの持つMP5サブマシンガンは25発の9ミリパラペラム弾を装填できる。

加えて、自動追尾の魔法もかけられている。

 

森から飛び出した彼は仮面の男たちの先頭集団を掃射した。

銃口から飛び出した10発の弾丸は正確に仮面の男たちの腕や足に命中する。

 

魔法使いを相手にする場合、奇襲を仕掛けるのが最も効率の良い戦い方だ。

エスペランサは今までの戦闘経験からそれを学んでいた。

 

仮面の集団はエスペランサの奇襲に混乱する。

そのチャンスを逃すまいと、彼は続けざまに残る15発の弾丸を叩き込んだ。

 

「ぎゃああ!!」

 

「いてええええええ!!」

 

聞き覚えのある悲鳴が聞こえる。

あっという間に20名近くの敵が地面に倒れこんだ。

 

エスペランサは横に走りながら銃の弾倉をすばやく交換する。

 

手持ちの弾倉はこれがラストだ。

 

 

「あそこだ!あの子供が攻撃してきた!!」

 

「迎え撃て!」

 

「やっちまえ!!」

 

 

エスペランサの姿に気づいた仮面の男たちが一斉に杖を向けてくる。

だが、男たちは統制が取れているわけでもなく、戦闘組織として機能していない。

 

「ステューピファイ!」

 

「インペディメンタ!!!」

 

「ステューピファイ!!」

 

 

何人かが呪文を唱えて攻撃してくる。

赤い閃光、つまり失神光線と呼ばれる魔法が飛んでくるが、エスペランサは前回りをしながら地面に伏せて、これらを躱す。

そして、地面に伏せたまま射撃を再開した。

 

 

パララララという乾いた音とともに、銃弾が敵に撃ち込まれる。

 

聞き慣れた悲鳴とともに、さらに数名の男が地面に倒れこんだ。

しかし、敵の数はまだかなり残っている。

 

多勢に無勢。

 

このまま戦闘を継続すればジリ貧だった。

 

 

エスペランサは地面から立ち上がり、5メートルほど前に走る。

その間、数発の呪文が彼の身体を掠めたが、これを避けられたのは奇跡といって良いだろう。

敵との距離は50メートルを切っており、ベテランの魔法使いなら確実に呪文を当てることのできる距離であった。

 

 

「アクシオ!!」

 

 

エスペランサはすでに弾薬が底を尽きて使い物にならなくなったMP5サブマシンガンを地面に投げ捨てた後、杖を取り出して呼び寄せ呪文を使用した。

 

狙いは初撃で倒れた仮面の男である。

呼び寄せ呪文は見事に成功して、エスペランサのもとに血だらけになった仮面の男が呼び寄せられた。

エスペランサは腰元からサバイバルナイフを取り出して、その仮面の男の喉元に突き付けた。

 

 

「よく聞けお前ら!!この男の命を助けたいなら、今すぐにでも杖を下ろして投降しろ!」

 

 

弾薬も武器も若干しか手元にない以上、敵の一人を人質にして、敵の武装を解除させるほかに手段はなかった。

 

 

「くそっ!卑怯な手を!!!」

 

「何とでも言え!俺は目標達成のためなら手段は選ばない」

 

 

仮面の男たちは杖を下ろしはしなかったものの、呪文で攻撃をしてくることはなくなった。

何人かは負傷して倒れこんだ仲間の手当てを魔法で行おうとしている。

 

エスペランサは詳しく知らなかったが、この仮面の男たちは元死喰い人、もしくは、反マグル主義の魔法使いたちである。

つまり、ほとんどがスリザリン出身であり、彼らは目的のためには手段を択ばない狡猾さを持っていた。

故に、エスペランサの意図するところも理解している。

 

ー武装解除しなければ仲間が殺される

 

闇払いや、ダンブルドア勢力、グリフィンドール出身の魔法使いたちは決して人質を盾にして武装解除を命じるような作戦は取らない。

元死喰い人は自分の仲間が人質に取られるという経験をここにきて初めて経験したのである。

 

 

「はやく杖を下ろせ!さもなければ」

 

「!?」

 

 

エスペランサは人質にした男の銃創にナイフを刺し込み、捻った。

 

 

「ギャアアアアアアアア!!」

 

男は悲鳴を上げる。

 

「調子に乗りやがって!こっちもマグルの人質が居るぞ!」

 

仮面の男の一人が杖を高らかに上げて言う。

 

「さて、そいつはどうかな?」

 

「なんだと?」

 

男たちは振り返って背後を見た。

 

宙吊りにされていたマグル4人の姿は無い。

宙吊りにしていた魔法使いは全員、気絶している。

 

セオドールたちが手はず通りに、エスペランサが陽動をしている隙に、救出したらしい。

 

恐らく、自動追尾の魔法がかけられた銃で魔法使いを無力化した後に、エスペランサと同様に呼び寄せ呪文でマグルを引き寄せて救出したのだろう。

 

 

「万策尽きたようだな」

 

「このっ小癪な!!」

 

「人質なんてどうでも良い!やっちまえ!」

 

「止せ!あの人質になってる奴は現魔法省の高官だぞ!」

 

 

幸運にもエスペランサが人質にした男は位の高い人間らしい。

 

 

 

 

 

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フローラ・カローの義理の父であるアエーシェマ・カローは今回の騒動の火付け役の一人であった。

 

彼はヴォルデモートに忠誠を誓っていたわけではない。

彼は“強さ”が好きであった。

 

幼少時は森で小動物を虐殺して己の強さを証明しようとしていた。

ホグワーツ在学時は同期の生徒に闇の魔法をかけて己の強さを誇示しようとした。

 

しかし、上には上がいるもので、ヴォルデモートはまさに強さの塊であった。

 

アエーシェマはヴォルデモートの強さを間近で感じるために闇の勢力に加わった。

そして、ヴォルデモートの強さを学び、自分の強さを高めようとしたのだ。

 

飽くなき強さへの探求心は周りの死喰い人から見ても異常であった(カロー家にはほかにも常軌を逸したサイコパスたちがたくさん居たが)。

 

やがて彼は自分の強さを試すために、ダンブルドア勢力の猛者との闘いを求めるようになる。

マグル狩りという弱者を一方的に嬲り殺す死喰い人たちの娯楽には興味を持たず、ひたすらに闇払いや騎士団と闘いを繰り広げた。

 

アエーシェマにとっては強さこそすべてであった。

 

故に、強さを持たないマグルや、マグル贔屓の魔法使いを差別し、原理的純血主義を掲げていたのである。

逆に言えば、魔法使いを倒せるようなマグルや、強力なマグル贔屓の魔法使いが存在すれば、彼は差別をしなかった。

無論、そのような人間は稀有であったが。

 

やがて、ヴォルデモートが倒されると、アエーシェマは裁判にかけられた。

普通なら速攻でアズカバン送りなのだが、彼は闇払いや騎士団と決闘を繰り広げるのみで、表向きには一切の殺人を犯していない。

要するに、死喰い人の犯罪に関与していなかったのである。

加えて、彼はカロー家の本家における家主であった。

権力と富は莫大であり、結局、執行猶予付きの判決が下る。

 

実際には、数えきれない程の殺人を犯してきた彼であったが、それらは死喰い人になる前のもので、しかも完全に証拠を隠滅していたために暴かれなかっただけであるが。

 

しかし、平和な時代が訪れた後、アエーシェマの心にはポッカリと穴が開いてしまっていた。

平和な時代などくそくらえ。

常に殺伐としていて、戦闘に明け暮れる日々が恋しかったのである。

 

その鬱憤を晴らすかの如く、彼は暴力、犯罪、酒に溺れていった。

 

とは言え、カロー家存続という当主としての役目もあり、いつまでも堕落しているわけにはいかない。

唯一存在した娘のヘスティア・カローを純血家庭に嫁がせる必要があったが、この娘も娘で人格破綻者である。

人格と、ついでに容姿の関係から嫁ぎ先が見当たらない。

 

外国に相当昔にカロー家から離反した家族が存在し、そこには娘がいる、ということを思い出した彼は、無理矢理、その娘を養子にした。

 

名前をフローラ・カローというその娘は、容姿も性格も問題なかった。

むしろ容姿に関して言えば釣りがくる程に整っていた。

 

ホグワーツ入学までの数年間、彼はフローラを調教し、元の優しかった人格などを叩き潰して、機械のように仕立て上げてしまったのである。

 

 

 

 

さて、そんなアエーシェマが今回の騒動を起こした理由は単純で、ただの鬱憤晴らしである。

 

お頭の弱い無能な部類であった元死喰い人を上手い具合に焚き付け、ついでに用心棒としてルシウス・マルフォイなどを巻き込み、十数年前には日常茶飯事であった暴動を起こす。

最初は愉快だったが、元死喰い人の下品な立ち振る舞いを見ているうちに、徐々に熱は冷めていった。

 

そんな時である。

 

エスペランサ・ルックウッドが登場したのは。

 

 

「面白い………」

 

 

彼はエスペランサの戦闘を見てそうつぶやく。

 

エスペランサの戦い方は今まで相手にしてきた魔法使いとは全然違った。

ヴォルデモートは圧倒的な力で敵をねじ伏せるが、その力の強さ故か、戦闘に快楽を求め、無駄が多い。

騎士団の人間は、相手を傷つけることを恐れているのか、もしくは、殺人を恐れているのか、無意識に手加減をしてしまっている。

闇払いの戦い方は無駄も多ければ、経験も無く、面白くない。

 

しかし、エスペランサの戦い方は、目的達成のために最小限の動きで最大限の成果を得るために考え抜かれた合理的なものだ。

一切の無駄がない。

しかも、彼は戦場慣れしている。

常に周囲を警戒して、先を読み、確実に敵を叩く。

 

あっという間に20人以上を倒したエスペランサを見て、アエーシェマはますます、彼を倒したくなった。

 

 

 

 

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同時刻。

 

透明マントに隠れている“この男”も、“強さ”に惹かれる人物であった。

男はキャンプ場の森の中で透明マントに隠れながら騒動を観察している。

 

彼は仮面の男たちが元死喰い人で、しかも、一切の罰を受けることなく、のうのうと生活していることを知っていた。

そして、憤りを覚えた。

 

ーなぜ、彼らは闇の帝王を復活させない?

 

ーなぜ、彼らは死喰い人としての誇りを捨てたのに、このように暴動を起こしているのだ?

 

男は無意識に杖を強く握りしめた。

 

この杖はハリー・ポッターから盗んだものである。

 

 

今ここで、闇の印を打ち上げれば、奴らはどうなるだろうか。

怯えるだろうか。

逃げ出すだろうか。

 

男はそう考えた。

 

 

そんな時に、一人の少年が森から飛び出して、得体の知れない武器で死喰い人を攻撃し始めたのである。

 

 

 

「何だ……あの武器は」

 

 

男にとって銃は見たことのない武器であった。

が、その武器の威力は強力で、あっというまに死喰い人を蹂躙する。

 

 

成程、効率的だ。

 

最初の奇襲で戦力を削ぎ、相手が混乱したところで人質を取る。

人質を盾に相手を武装解除させ、別動隊にマグルを魔法で救出させる。

 

そのような連携プレーは死喰い人にはできない。

死喰い人は基本的にソロで動くのを好むからだ。

 

恐らく、彼は年齢的にホグワーツの生徒だ。

となれば、“任務を行う上で”彼に接触することができる。

 

「戦い方は素晴らしい。が、魔法の腕は未熟と見た。それに、邪悪さも無い。だが、いずれ奴は闇の帝王の敵になるだろう………」

 

ならば“任務の中で”ハリー・ポッターと同時に殺してしまえば良い。

 

男は笑みを零すと、杖を高らかに上げて呪文を唱えた。

 

 

 

「モースモードル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の印が夜空に浮かび上がり、そして、元死喰い人たちは逃げていった。

 

 

後には、エスペランサがたった一人、残っていた。




M733の電動ガンを買いました。
何か自分の書いたssで活躍させてる銃をサバゲで使うのって変な感じです。

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