ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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久しぶりの投稿です!

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case 04 Midnight fight 〜真夜中の決闘〜

図書館から食堂に向かうとグリフィンドールの席で何やらいざこざが始まっていた。

いざこざを起こしているのはハリーとロン、それにマルフォイとその腰巾着だった。

 

先日行われた飛行訓練での一件以来彼らは犬猿の仲となっている。

ハリーは飛行技術を見込まれてクィディッチとやらの選手になったらしい。

ちなみにエスペランサは全く飛べなかった。

 

 

 

 

「地上ではずいぶんと粋がってるじゃないか。小さなお友達もいるしね」

 

「僕一人で相手にしてやろうじゃないか。お望みなら今夜でもいい。魔法使いの決闘だ」

 

「決闘?」

 

「いいとも。僕が介添え人だ。そっちは?」

 

「ウィーズリーが介添人か。こっちは………クラッブだ」

 

 

聞けば彼らは決闘の約束をしているらしかった。

少し興味のわいたエスペランサは会話に混ざろうとする。

 

 

「介添え人ってなんだ?決闘って殺し合いでもするのか?」

 

「誰かと思えば落ちこぼれのマグルびいきじゃないか」

 

「それは否定しないが………。魔法使いの決闘ってどんなものなんだ?ロンは知ってるみたいだが」

 

「一人ずつ杖だけを持って呪文を撃ちながら戦うんだ。最初の一人が死んだら、介添え人が代わりに戦う」

 

「へー」

 

「今夜トロフィー室でしよう」

 

「わかった。逃げるなよ」

 

 

にやりと笑ってからマルフォイと腰巾着は去っていった

 

 

 

「俺、クラッブとゴイルが喋ってるとこ見たことないんだが」

 

一言も言葉を発さなかった2人を思い出してエスペランサはつぶやく。

 

「僕もだよ。ところで決闘って本当に殺し合いをするの?」

 

「まさか。それは本当の大人の決闘さ。僕らじゃせいぜい火花をぶつけあうくらいだよ」

 

「決着がつかなかったら?」

 

「杖なんか捨てて殴っちゃえ!」

 

「お前らがクラッブに勝てる未来が見えないんだが」

 

ヒョロガリのハリーがクラッブを倒すところはどうやっても想像できない。

 

 

「「……………」」

 

 

「戦争ってのは必ず勝てる条件下で行う必要がある。もしくは有利な条件で講和に持ち込める算段が無ければ戦わない。何の策もなく戦闘に持ち込んで闇雲に戦うんだったら石器時代と変わらないぞ。古代ローマ帝国の時代の人間のほうが今のお前らよかずっと戦い方を知ってる」

 

「うるさいなあ。君は部外者なんだから放っておいてくれよ」

 

「同じ寮の同期が負け戦をしようとするのは止めるだろうが。まあ、聞け。相手が戦力的に上であっても勝つ方法なんてたくさんある。ファランクスとか少数が大勢に勝つことは歴史的に見ても珍しいことじゃない。何にせよ戦い方だよ」

 

「戦い方って言っても君の戦い方はマグルの戦い方だろう?銃とか」

 

「まともな攻撃呪文も覚えてないリトルウィッチの持つ杖よりも銃のほうが役に立つぞ。ま、マルフォイたちに銃を使うわけにはいかないし。うーん。俺もその決闘にこっそりついていっても良いか?」

 

「いいけど………。その“じゅう”ってやつをぶっ放したりはしないんだよね?」

 

「約束する。ついでにお前たちの勝利も約束しておこう」

 

「君の自信は一体どこから来るんだい?」

 

 

さて、どうやってマルフォイら2人を倒そうかと考え始めた時、エスペランサの後ろから女子生徒が話しかけてきた。

 

「ちょっと失礼」

 

「ん?お前は………」

 

 

見れば眉間にしわを寄せたハーマイオニーが立っていた。

 

 

「聞くつもりじゃなかったんだけど、あなたたちの話が聞こえてきて………」

 

「聞くつもりが無かった?あったんじゃないの?」

 

「おいロン。挑発するんじゃない」

 

 

ロンとハーマイオニーが犬猿の仲であるのはグリフィンドール1学年なら誰しもが知っている。

 

 

「消灯後に校内を出歩いちゃ駄目!校則違反だもの。また減点されるわよ?」

 

「大きなお世話だよ」

 

 

ハリーもうんざりしたような顔で言う。

 

 

「それにあなたはまだ銃を隠し持っているの?法律違反だし、それも減点対象よ!」

 

「おいおい。魔法界に銃刀法は存在しないはずだ。調べたからな」

 

「それでも危険すぎるわ!だってそれは人殺しの為のものじゃない」

 

 

人殺しの為の武器。

 

確かにそうだ。

 

銃も爆弾も人を殺傷することを目的に作られたものだ。

 

エスペランサ自身、その武器を使って多くの人間を…………。

 

 

しかし…………。

 

 

「考え方は人それぞれだ。ガトリング銃はおびただしい数の死者を1次大戦等で出したが、開発者は“人道的な兵器”としてガトリング銃を開発した。武器は人を殺めると同時に、人を守ることだって出来る。まあ、俺が今持っている銃は完全に護身用だけどな。守るべき対象はすでにこの世を去ったし…………」

 

 

自分には今、守るべき対象がいない。

 

今、持っている武器は自分の命を守ることにしか使っていない。

 

その事実がエスペランサを傷つける。

 

 

 

「なんにせよ、宣戦布告をしてきたのはマルフォイたちだ。白旗を揚げるのも癪だしな。ここで一回ギャフンと言わせてみるのも悪くは無いだろ」

 

 

ハーマイオニーはまだ何か言いたそうであったが、それを無視してエスペランサは大広間を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

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結論から言おう。

 

 

「はめられたあああああ!!!!!」

 

 

「ちょっと静かに!」

 

 

 

迂闊だった。

 

真夜中になって約束のトロフィー室に来てみたものの、そこにマルフォイの姿は無かった。

代わりに管理人のフィルチがトロフィー室に出現する始末。

 

要するに嘘の決闘を申し込み、エスペランサたちを誘い込み、そこへフィルチをけしかけたという訳である。

 

ハリー、ロン、エスペランサを止めようとついてきたハーマイオニー、そして諸事情により同行したネビルの5人は現在窮地に立たされている。

 

 

 

「どこかこの辺にいるぞ隠れているに違いない………」

 

 

フィルチのいやらしい声が近づいてくる。

彼がペットのミセス・ノリスと共にトリフィー室へ踏み込んでくるのも時間の問題であった。

見つかったら処罰と減点が待っている。

フィルチは生徒を処罰する際に拷問器具を使おうとしているという噂をエスペランサは耳にしていた。

エスペランサは拷問に対してある程度までなら耐えることが出来るだろうが、他の4人はそうもいかないだろう。

 

 

「どうするの?早く逃げないと………」

 

「逃げるって言っても………」

 

「仕方ない。本当はマルフォイたち相手に使おうと思ってたんだが、これを使うか………」

 

 

そう言ってエスペランサはトロフィー室の床スレスレの場所にピンと張られたワイヤーを指でつまんだ。

 

 

「みんな。目を瞑って耳を塞いでろ」

 

「何をするつもりなんだ?」

 

「いいから言われたとおりにしろロン」

 

 

4人が目を瞑って耳を手で塞いだのを確認すると、彼は思いっきりワイヤーを引っ張った。

 

 

 

 

 

 

 

カッ 

 

 

 

キイイイイイイイイイイイイイン

 

 

 

 

 

 

フィルチがトロフィ室にいざ入ろうとしていたその瞬間に“ソレ”は起爆した。

 

 

M84スタングレネード。

 

1991年現在、米国で開発中の閃光発音筒だ。

まだ部隊に配備されるには至っていないが、試作品は裏で出回っており、エスペランサも数ヶ月前に入手していた。

起爆と同時に180デシベルの爆発音と100万カンデラ以上の閃光を放つ非殺傷兵器であり、使用用途は敵の制圧である。

 

そして、エスペランサが仕掛けたのはブービートラップというものであった。

 

スタングレネードを固定し、安全ピンにワイヤーをくくりつける。

そのワイヤに敵が足を引っ掛けてスタングレネードの安全ピンが外れ、起爆するという至って簡単な罠だった。

 

マルフォイたちがトロフィー室に入ってきたらそのブービートラップに嵌めてやろうと彼は思っていたのである。

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああ!」

 

 

 

閃光で目を、爆音で耳をやられたフィルチの叫び声がトロフィ室にこだまする。

 

 

「よし。逃げるぞ!悪く思うなフィルチさんよ」

 

 

エスペランサの号令でハリーたちはトロフィ室をダッシュで出る。

 

全速力で廊下という廊下を走りぬけ、妖精の呪文の教室近くまで5人は逃げてきた。

 

 

 

「あれ何? すごい音と光だったけど?」

 

「フラッシュバンだ。俺も使ったのは初めてだが、かなりの威力だったな」

 

「何でそんな危ないもの持ち込んでるの!? 見つかったらまた減点されるわよ。それにフィルチさんは大丈夫かしら?」

 

「安心しろ。あれは非殺傷兵器だ。耳と目が潰れるのも一時的なものだよ。死にはしない」

 

「フィルチのやつざまあみろだ!」

 

 

フィルチを撃退できたことで歓声を上げるロンとハリー。

 

何が起こったのかわからなくて呆然とするネビル。

 

 

「後は寮まで逃げるだけだ。ここで誰かに見つかったら終わりだけど………」

 

 

エスペランサはそう言って寮へ帰ろうと歩き始めた。

 

他の4人もそれに続く。

 

そんな時だ。

 

 

 

「おやおや~。こんな夜中に出歩いている生徒がいるぞ~」

 

 

この状況下で一番出会いたくない相手であるピーブスが出現した。

 

 

「どけピーブス」

 

「やだやだどかないよ。悪い子だな~。捕まるぞ~」

 

「また撃たれてえのか?」

 

「ヒッ」

 

 

ハリーたちに憎まれ口を叩いていたピーブスであったが、エスペランサが脅すと途端に顔色を変えた。

おそらく入校初日にガバメントで撃たれたときの痛みを思い出したのだろう。

 

 

「黙っていなくなれば痛い思いはしなくて済むぞ」

 

「うっ。そ、そんな脅しが………」

 

「脅しだと思うか?」

 

「………っ!でも大きな音を立てたら先生が飛んでくるぞ~」

 

 

ジャキ

 

 

「うわあああああああああああ!殺されるううううううううううう!」

 

 

エスペランサがローブの下で拳銃のスライドを引く音を聞いてピーブスは悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

とっととピーブスを追い払おうとして行った行動だったが、完全に裏目に出てしまった。

 

 

「まずい。ピーブスの声を聞きつけて教師が来るぞ!」

 

「は、早く逃げないと!」

 

「そこだ!そこの部屋に入れ!」

 

「鍵がかかってる!!!」

 

 

ちょうど近くに部屋があったのでそこへ逃げようとしたが、残念ながら鍵がかかっているようだった。

 

 

「どいてっ!」

 

 

エスペランサが万策尽きたと思っている最中、ハーマイオニーは杖を取り出して鍵のかかった扉に魔法をかけた。

 

 

「アロホモラ」

 

 

途端に鍵は外れ、扉が開く。

 

 

「便利な魔法だな。俺のピッキングの技術も魔法界じゃ意味を成さない」

 

「いいから入って!」

 

 

暗い部屋の中に5人が入る。

 

しかし、その部屋には先客がいた。

 

 

「ああ。ここは禁じられた4階の部屋だったのか。何で禁じられていたか今分かった」

 

「あ、あれって何!?」

 

 

部屋の中に居たのは3つの首を持つ巨大な犬であった。

 

 

グオオオオオオ

 

 

うなり声をあげる3頭犬。

 

黒い体毛に覆われるその巨大な怪物は血走った目でエスペランサたちを睨みつける。

その目から「殺意」の感情を読み取ったエスペランサは即座に行動を起こした。

 

 

「先に扉まで逃げろ!!」

 

 

3頭犬が肉食かどうかは知らないが、明確な殺意を持っているのは確かだった。

怪物がちらつかせている鋭い爪や牙を見て命の危険を察知したエスペランサはまず先にハリーたち4人を部屋の外に逃がすことを考えた。

 

(全員杖を持った魔法使いだが、使える魔法は初歩的なものばかり。おそらく3頭犬には太刀打ちできない。なら、逃げるのが得策だ。しかし、パニックに陥っている4人が無事に逃げることが出来る可能性は低い)

 

ハリーたち4人はあろうことか悲鳴を上げながら3頭犬に背を向けて逃げている。

その4人に怪物は容赦なく襲い掛かろうとしていた。

 

「「「 わああああああああああああ! 」」」

 

グオオオオオオオオオオ

 

 

扉の前でつっかえて固まっている4人の命は風前の灯である。

扉とは逆の方向に退避して手持ちの武器を取り出していたエスペランサは軽く舌打ちをした。

 

このままでは全滅だ。

 

手持ちの武器は短機関銃に拳銃。

それに破片手榴弾M67が二つ。

スタングレネードはトロフィー室で全て使用してしまったことに気づく。

スタングレネードを使用して逃走する計画は不可能となった。

 

手持ちの武器は人間相手なら十分に威力を発揮する武器であるが3頭犬に対してどこまで有効かは分からない。

最大の火力を持つ破片手榴弾は効果範囲が15メートルと広いためにハリーたちにも被害が及ぶ。

 

 

(あの生物の皮膚が戦車並みの装甲だとしたら俺の持っている武器は役に立たない。しかし、ここで行動を起こさなくては4人とも食い殺される)

 

 

彼は短機関銃を構えた。

 

 

M3グリースガン。

米国が大戦中に開発したサブマシンガンであるM3はM1911ガバメントで使用する11.4ミリ弾を使用する。

内部構造も至って単純であったために急遽作成したものであった。

しかし、短機関銃故に威力と命中精度は芳しくない。

 

 

扉の前でもたつく4人に3頭犬が突進する。

 

突進する3頭犬の真ん中の頭の眼球に狙いを定め、エスペランサは引き金を引いた。

 

 

 

パラララララララララララ

 

 

 

短機関銃特有の乾いた音とともに11.4ミリの弾が銃口から発射される。

 

グリースガンには単発や三点制限射撃が存在しない。

安全装置を外せば連射しか出来ない代物だ。

引き金を引いたままだとすぐに弾は底をつく。

 

しかし は構わず引き金を引き続けた。

 

反動で銃口が上に向きそうになれば即修正。

間違ってもハリーたちには当たらないように慎重に狙う。

 

11.4ミリの弾は眼球に集弾し、確実に怪物にダメージを与えた。

初速の遅い短機関銃といえど数メートルの至近距離でその銃弾を浴びればただでは済まされない。

 

30発の弾丸は3頭犬の真ん中の犬だけの眼球を確実に粉砕した。

 

 

無論、1頭のみの眼球を狙ったのには意味があった。

3匹それぞれの脳が独立しているのなら、真ん中の1頭のみ痛みでのた打ち回り、混乱することで3頭の連携は崩れる。

エスペランサの読みどおり、3頭犬は真ん中の犬の痛みによる暴走によりハリーたちを襲うことを忘れていた。

 

 

 

「ぼさっとするな!!退避だ!」

 

 

戦場において何度も声に出した台詞をハリーたち4人に向ける。

 

その声にハッとして4人は禁じられた部屋から飛び出した。

 

 

しんがりを勤めたエスペランサは扉を厳重に閉める前に破片手榴弾を2つ部屋の中に投げ込み、すぐに扉から離れた。

 

 

 

ズドン

 

ズドン

 

 

安全ピンを引き抜いてから5秒で炸裂するM67破片手榴弾は5メートル以内の人間に致命傷を与え、15メートルの範囲に破片を撒き散らす。

3頭犬が死んだとは思わないが、戦闘能力は奪ったであろうと彼は思った。

 

 

 

 

 

 

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全速力でグリフィンドールの寮まで戻ったエスペランサたち5人は談話室の床に倒れこんだ。

 

倒れこんだ後、すぐにエスペランサはM3グリースガンの銃点検を行う。

 

 

「魔法で急遽作った銃だから各部品ともボロが出てるな。薬室がめちゃくちゃだ」

 

 

魔法で作った部品は実際の銃よりも粗が多い。

スライドを動かして薬室内を見てみると中がぐにゃぐにゃに曲がっていた。

おそらく連射の熱に耐えられなかったのだろう。

M3は何丁か作ったが後でそれらも調整が必要だろうと彼はぼんやり思っていた。

 

何にせよ生き延びて帰ってくることが出来て良かった。

そうも思った。

 

 

「あんな怪物を学校で飼っておくなんて。一体何考えてるんだ!」

 

「あなたどこに目をつけてたの?」

 

怒鳴るロンにハーマイオニーがあきれた声で言う。

 

「隠し扉よ。あの犬は何かを守っていたに違いないわ」

 

「あの状況下でよくそんなところ見つけたな。案外お前は良い隊長になれるかもしれない」

 

「御生憎様。わたしはあなたのように野蛮じゃないの。それにあなたたちと一緒にいると命がいくつあっても足りないわ。下手したら退学!」

 

 

そう言ってハーマイオニーは寝室に行ってしまう。

 

 

「あいつ死ぬよりも退学のほうが嫌なんてどうかしてるぜ」

 

ロンが言う。

 

ハリーは何やら考え事をしているようでしかめっ面だ。

 

ちなみにネビルは未だに顔を真っ青にしていた。

 

 

「あんな犬に守らせている“何か”ってのは一体何なんだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エスペランサたちがようやく眠ろうとしていたころ、アルバス・ダンブルドアとセブルス・スネイプは4階の禁じられた部屋にいた。

 

 

数十分前に管理人のアーガス・フィルチが目と耳を押さえながら医務室に飛び込んできたとの知らせを聞いてトロフィー室にやって来たところ、今度は爆発音が聞こえ、その音のした禁じられた部屋に来た訳である。

 

 

「フィルチさんは寮から抜け出した生徒がいると聞いてトロフィー室に行った所、突然、眩い閃光に襲われたと言っておったが………」

 

「それだけなら生徒のいたずらで済む話です。しかし、これは………」

 

「うむ。いたずらで3頭犬を倒すことの出来る生徒が一体この学校に何人おるかの?」

 

 

セブルス・スネイプは考える。

 

彼ら2人の前にあるのは傷だらけで横たわる3頭犬だ。

 

今は魔法で眠らせてある。

 

 

これだけの怪物を倒すとなれば相当な魔法の腕の持ち主であるはずだ。

 

ホグワーツには優秀な生徒が多く存在するが、魔法生物相手に戦うことが出来る生徒は多くない。

まね妖怪やレッドキャップ程度の生物相手ならまだしも、小型ドラゴン並みの危険指定を受けているケルベロスを倒すとなると………。

 

 

「生徒ではない。とすればやはりクィレル………」

 

「ふむ。その可能性は大いにあり得る。しかし、彼が犯人となるとこれをどう説明するか困るのう」

 

「これは…………?」

 

「わしもマグルのことに関しては初心でのう。しかし、記憶に間違いが無ければこれは“じゅう”という武器を使った時に出るものじゃよ」

 

「銃………」

 

 

スネイプはマグル界でも治安の悪い場所であるスピナーズエンド出身だ。

父親はマグルであったし、環境的にも銃の存在は知っていた。

だが、存在を知っている程度で、銃がどのような仕組みであるかは知らなかった。

 

だから床一面に転がる空薬莢が何なのかも分からなかったのである。

 

 

「これは“からやっきょう”というものじゃと聞いた。“じゅう”を使った時に出るものじゃ」

 

「それなら尚のことクィレルが怪しい。奴は闇の魔術に対する防衛術の前はマグル学の教授であった」

 

「そうじゃのう。そう考えれば辻褄はあう。じゃが、実は最近マクゴナガル女史から妙なことを聞いてのう」

 

「例の……エスペランサ・ルックウッドですか?」

 

「そうじゃ。彼は“じゅう”を持っていた。それに、図書館で武器を作っているという噂も聞いておる。マグル生まれの生徒はマグルの武器を知っておるから」

 

 

スネイプは3頭犬に目を向ける。

 

真ん中の犬の目は完全に失われ、今も赤い血が滴り落ちている。

犬の胴体は“何かの爆発”に巻き込まれたのか、火傷跡が目立つ。

 

 

「かわいそうに………。ハグリッドが見たら泣いて悲しむじゃろう」

 

「だが、仮にルックウッドがこれをやったとしたら何のために?」

 

「フィルチさんの証言によれば、フィルチさんに“生徒が真夜中にうろついている”という情報を与えたのはスリザリンの1年生じゃそうじゃ。スリザリンの生徒の罠に嵌められ、フィルチさんから逃げてきたエスペランサがこの部屋に迷い込んだとしたら?」

 

「……………」

 

「まあ、疑わしきは罰せずじゃな。ともかく3頭犬が使い物にならない以上、セブルス、お主がクィレルを見張っておくのじゃぞ」

 

「はい………」

 

 

そう言ってダンブルドアは部屋を後にする。

 

スネイプも彼に続いた。

 

 

(エスペランサ・ルックウッド。落ちこぼれに違いないが要注意だ………)

 

 

スネイプは懐からトロフィー室で拾った“ある物”を取り出す。

 

それは使用済みのスタングレネードであった。

 

 

 

 

 

 




M3グリースガンを登場させた理由は題名のネタ元の映画から。
角川映画ではよく登場しますよね。
ちょっと古い銃で個人的にはトンプソンの方が好きです。

今回登場したスタングレネードは1991年時点ではまだ配備されていなかったので試作品ということで出しました。
主人公がなぜそんなものを入手できたかは後々書こうかなと。

3頭犬に対して銃がどの程度効果あるのか分からなかったのですが、至近距離からサブマシンガン撃たれたらやばそう。
ああ、ちなみに死んではいません。後日ハグリッドが号泣したとかしないとか。

あとフィルチどんまい。

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