子供は男の子だと判明しました。
ホグワーツレガシーを購入したので夫婦でやっています。
主人公の名前は私の本名になりましたが……。
ホグワーツレガシーの設定もちょくちょく入れていきます。
ゲーム内で出てくる隠し部屋とかはセンチュリオンが弾薬庫にしていたり、遺跡はCQBの訓練施設にしている…とかやっていこうかなと思います。
「エスペランサ・ルックウッドか……」
ドロホフは神秘部での苦い記憶を思い出した。
既に完治している腕がズキズキと痛む。
身体もまたあの苦い記憶を持っているようだ。
よりによってこのタイミングで復活されるとは思わなかったが、一体どうやって呪いを解除したのだろうか。
劣勢になりかけていたセンチュリオンの隊員達は突然の隊長の復帰に士気を取り戻している。
センチュリオンの隊員一人一人の戦闘力はドロホフにとって大した事は無い。
しかし、彼が恐れていたのは組織としての力だ。
指揮統制が取れ、高い士気と練度を維持する組織ほど恐ろしいものはない。
そしてそれは死喰い人達にはない力だ。
ドロホフは再び杖を構えると、今度はエスペランサに向けた。
攻略法は既に知っている。
司令塔のエスペランサを亡き者にしてしまえば良いのだ。
「アバダ・ケダブラ!」
必殺の魔法が杖から飛び出し、エスペランサに向かう。
躱せるタイミングではない。
だが、丘の上に立つエスペランサは半身をくるりと回転させて、最も簡単に死の呪文を回避した。
緑色の閃光は遥か彼方へと飛んでいく。
「は??」
ドロホフの思考が一瞬停止した。
魔法というのは直線で進むため、遠距離での撃ち合いであれば回避はそう難しくも無い。
だが、ドロホフとエスペランサとの距離はせいぜい5.6メートル。
回避するのは困難どころか不可能だ。
常人の反射神経で躱せる筈がない。
「アバダ・ケダブラ!」
間髪入れずに2射目を放つ。
闇の魔法使いでも乱発するには魔力を一定時間溜めなくてはならない死の呪い。
だが、ドロホフは闇の魔術の才能に秀でている。
2、3発は連射可能だ。
だが、エスペランサは軽くしゃがんで2発目も容易く回避した。
(間違いない。奴は意図的に魔法を躱している。だが、一体どうやって?)
最初に思い浮かんだのは超感覚呪文だ。
しかし、エスペランサは呪文を詠唱するどころか、杖すら構えていない。
次に思い浮かんだのはオーパーツとなっている古代魔法の類や他国で使用される特殊な魔法だ。
だが、古代魔法を扱える者が限られており、最後に使用が確認されたのは100年以上前である。
では、どうやって超人的な魔法の回避をやってのけたのか。
ドロホフはエスペランサを見た。
「なるほど……。開心術か」
一般的に「レジリメンス」を詠唱して相手の心理、記憶等を掌握する開心術であるが、才能のある魔法使いならば詠唱無しにある程度行使することができる。
例えばヴォルデモート。
ヴォルデモートは優れた開心術者であり、死喰い人の忠誠心を見抜くことができる。
対抗出来る閉心術者はセブルス・スネイプくらいなものだろう。
エスペランサは無意識に開心術を使い、ドロホフの思考を読み、攻撃を避けている。
ドロホフはそう分析した。
であるならば、攻撃方法は死の呪いではなく広範囲を破壊可能な悪霊の炎が適切だ。
ドロホフは杖先から紫色の炎を噴出させ、鞭のように操る。
完璧に制御された悪霊の炎がエスペランサを襲おうとした。
「副隊長。頼んだ」
「任せろ」
エスペランサの端的な一言にセオドールが即反応する。
彼は魔法で周囲の弾箱や資材を浮かび上がらせると、それを悪霊の炎にぶつけた。
これにより、炎はエスペランサに直撃せず、明後日の方向へ向かっていく。
「隊長を援護しろ!」
体勢を立て直した隊員たちが掩体の中から小銃や機関銃による反撃を仕掛けてきた。
「敵は2人。火力を集中すれば制圧できる。動ける者はとにかく撃て!」
「了解!!」
無数の小火器弾が飛来する。
ドロホフは撤退を決意した。
「部が悪い。一旦退くぞベラトリックス」
「何言ってんだ!あいつら全員ぶっ殺してやる」
「満身創痍のお前が勝てる相手じゃない。仲間の仇を取るチャンスならこの先いくらでもある。ここは退却だ」
「だが……それでは我が君の命令に背いてしまう」
「今回は何もかもが敵の罠だった。ポッターが居なかった時点で我々の負けだったんだ」
ドロホフは特大の爆破魔法を放ち、隙を作る。
ホグワーツでは姿眩ましは使えない。
故に撤退は門の外まで徒歩で行くしかなかったが、ドロホフとベラトリックスはヴォルデモート仕込みの「飛行魔法」を駆使して、撤退に成功した。
「状況終了。深追いは無用だ。撃ち方やめ」
「追撃はしないのか!?」
「ああ。敵は既にホグワーツの敷地として認識されている場所を超えた。こうなれば追跡は不可能だ」
セオドールは双眼鏡を片手に言う。
ドロホフとベラトリックスがホグズミードに向かう道とは反対のホグワーツ渓谷の方へ逃亡するのが見えた。
どういう魔法を使っているのかは分からないが、ドロホフとベラトリックスはコウモリのように空を飛んで逃げていく。
遺跡や洞窟が多く敵の潜伏し易い地域だ。
深追いしても味方の損失が増える可能性は否めない。
追い討ちをかけようとした隊員が何人もいたが、これ以上の攻撃は無駄と判断してセオドールは作戦の終了を命じた。
遊撃部隊が戦闘不能な以上、飛行する敵を追撃する手段はないのも事実である。
後に残されたのは死喰い人の亡骸と爆発で抉れた地面のみだ。
双眼鏡で見渡す限り残党は残っていない。
セオドールはほっと息をついた。
「た……隊長!!!」
「復活したんですね!」
「死んだかと思ってたぜ?」
戦闘終了に安堵した隊員たちがエスペランサの周りに集まってくる。
誰も彼もが興奮していた。
「持ち場に戻れ!負傷者の収容と残党の有無の確認。それに起爆していない爆薬の回収がまだだろ!」
興奮気味の隊員たちにセオドールが怒鳴る。
我に帰った衛生班が負傷者のところへ走って行った。
残った戦闘員も残務処理をするために散っていく。
「隊長。喜びたいのは山々だが、事後処理が多い。復帰早々だが、指揮を執ってくれ」
「これは副隊長の作戦だろ。最後まで副隊長が指揮を執るべきとは思わないか?」
「馬鹿を言うな。数週間休んでた分の働きはしてもらわないと。しばらく代休は使えないぞ」
セオドールはニヤリと笑う。
エスペランサが復活して歓声を上げたいのはセオドールも同じだった。
だが、それは今では無い。
ドロホフの攻撃で少なからず負傷者が出ているし、射耗品の確認や器材の整備など、やることはたくさんある。
「了解した。では、只今から指揮権を副隊長から隊長に委任。以後の行動については各分隊長指示の下、各個に実施とする」
「指揮権を副隊長から隊長に委任の件、隊長了解。隊長指示を復唱する。以後の行動については各分隊長指示の下、各個に実施とされた」
「で?俺は作戦の概要も成果もほとんど知らん。何をすれば良いのか、説明はあるんだろうな?」
「転がっている死喰い人らの死体をかき集めて、それから消耗品の確認だな。経過概要の報告をまとめて報告するのは……後日で良いだろう」
「つまり、いつも通りの事後処理だな」
「そうだとも。とにかく……だ。帰還を歓迎するよ。隊長殿」
そう言ってセオドールはエスペランサに手を差し出す。
エスペランサはその手を握り返した。
戦闘から数日後。
ホグワーツは一見平和だった。
守護魔法により闇陣営から守られている上に、ダンブルドアという抑止力がある。
さらに、死喰い人を蹴散らす能力を有したセンチュリオンと、センチュリオンと同盟関係にある闇祓い等が駐屯しているからだ。
ただし、学内の雰囲気はすこぶる悪かった。
学内最大派閥となったセンチュリオンと親ヴォルデモート派の生徒たちの衝突は日常茶飯事となっていたからだ。
先日も、新米隊員がスリザリン生に集団で攻撃され、医務室に運ばれている。
件のスリザリン生はエスペランサを筆頭にした主力部隊に鎮圧され、聖マンゴ送りとなったが、隊員の身の安全を考え、常にツーマンセル以上で行動させることと、銃器を携行させることを徹底させた。
また、規則を無視して交戦許可を与えた。
死喰い人による殺害事件が毎日のように起こり、一般生徒の親族に犠牲者が出始めている。
「そんな情勢なのに……うちの寮の連中ときたらお盛んなこって……」
エスペランサが久々にグリフィンドールの寮に行くと、季節外れの春がやってきていた。
何のことはない。
ロンとラベンダーがいちゃついているだけだ。
それを恨めしそうに睨むハーマイオニーには近づかない方が良い、とエスペランサの生存本能が騒いでいる。
一方でジニーとディーンもベタベタとくっついており、ハリーがそれをボーッと眺めていた。
現状、エスペランサはハリーにしか話しかけることが出来ないので、仕方なしに彼に話しかける。
「俺が寝てる間に何があったんだ?いつからグリフィンドールは獅子寮から猿寮になった?この調子だとクリスマスまでに寮生が数人増える事になるぞ?」
「ああ。エスペランサ……。退院おめでとう」
「何だよハリー。やけに上の空だな。セオドールがダンブルドアとの個人レッスンの内容を知りたがってた」
「あー。うん。この間行ってきた。うーん」
「おいおい。しっかりしてくれよ選ばれし者なんだろ?お、これは何だ?」
エスペランサは机に転がっていた魔法薬学の教科書を手にした。
「これが例のプリンスの本か。やたらと魔法薬学に詳しいみたいだが……。ひょっとしてスネイプの私物なんじゃないのか?」
「あり得ないよ。スネイプが自分の事をプリンスなんて言うと思う?」
「思わん。プリンスよりリンスインシャンプーの方がお似合いだ」
プリンスの本を机に戻す。
プリンスの本のおかげでハリーの魔法薬学の成績はトップとなった。
その事を快く思っていないのはハーマイオニーとフローラだ。
エスペランサは目覚めて以来、フローラとはまともに話していない。
戦闘の事後処理で互いに忙しかったためだ。
「あ、そうだ。スラグホーンが君をクリスマスのパーティーに誘いたいみたいだよ。ほら、スラグ・クラブ」
「あったなそんな会報。でも俺はパーティーなんて興味ないしな……。しかも今は戦時中だ。ハリーは誰かと行くのか?」
「僕はルーナと行く。まともな格好をして来てくれれば良いんだけどね」
「へえ。俺はあいつ嫌いじゃないぜ?あと俺からしてみれば魔法族は皆ヘンテコな格好をしてる」
戦闘服の上にローブを羽織り、銃をぶら下げるエスペランサに言われたくない、とハリーは思ったが口にはしなかった。
「ところでハーマイオニーが誰とパーティーに行くか知ってる?」
「知らん。俺は昨日まで寝てた人間だぞ」
「コーマックと行くらしいんだ。それでロンとハーマイオニーがまた口論になって……」
「なるほど…な」
その手の浮ついた話に疎いエスペランサだが、だいたいの相関図が見えてきた。
ロンの本命はハーマイオニー。
ハーマイオニーの本命はロン。
ハリーは恐らくジニー目当てだ。
あとコーマックは後で腕立て300回の刑を与える。
瀕死の隊長を差し置いてパーティーの約束をするなどもってのほかだ。
「よし。俺が恋のキューピットになってやろうか」
「やめて。ハートの矢じゃなくてライフル片手にしたキューピットなんて嬉しくも無いだろ?だいたい、誰と誰をくっつけるのさ」
「ハリーとジニー」
「は?え?何言ってるんだ!!僕がなんでジニーと!?」
「冗談だよ。このご時世だから、偶にはユーモアがないとな……」
「ユーモアから最も遠い君がジョークを言うなんて……。ロンの言葉を借りるならマーリンの髭って奴だよ。だいたい、血生臭い君に恋愛とか分かるのかい?」
「分からん。考えたことも……無かったな」
「人を好きになるってどういうことなんだろ?」
歯の浮くような話題なのでエスペランサは早々に話題を切り替えようと思い、自分なりの考えを述べた。
「そりゃあお前。そいつのために生きて帰ってきたいと思うのが……恋愛感情なんじゃないのか?」
「君らしいね」
ゲームではホグズミードに向かう道の両脇の森はあんまり木が生えていません。
100年以上の年月で森になったと解釈して頂ければ汗