笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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ひっさしぶりの投稿です。
お待たせしました。
テストの結果はお察しで…。

あと利根の章とか書いてありますが、この回の出番は筑摩さんの方が多いです(おい)。

本編どうぞ。


利根の章
閉ざされた闇の心


 ーーー第35鎮守府 正面玄関

「来たみたいだね」

 響の声。今日は、ここに新しく着任する、憲兵と療養対象の艦娘が来る日だ。午前中に憲兵、そして午後に艦娘のほうが着任することになっている。

「確か、司令官はその人のことを知っているんだっけ」

「ああ…祖父を介して、あくまでも間接的にな。会うのは今日が初めてだ。」

 門の前に停止する車。中から降りてくる二人の男性。

「こんにちは。憲兵養成学校校長の、アイハラ・リュウです。そして…」

「はい!本日より第35鎮守府に着任することになりました、ヒビノ・ミライです!よろしくお願いします!」

 元気に敬礼して挨拶する、憲兵の緑の制服を着た青年。元GUYS隊員の、ヒビノ・ミライさんだ。そして、かつて地球を守った、ウルトラマンメビウスでもある(何度も言うようだが某人間の屑によって正体をバラされた)。

 前日に校長のアイハラさんとも連絡を取っており、挨拶などもスムーズに済んだ。

 ちなみに、憲兵関係でかつて一悶着あった高雄にも、ちゃんと大丈夫なことを確認している(というかむしろミライさんの顔写真を見てイケメンとか言ってた)。

「では、ここを案内します。アイハラ校長、ありがとうございます。」

「いやいや!これからこいつをよろしくな!」

「リュウさん、お元気で!」

「おう!しっかりやれよ、ミライ!」

 アイハラさんは再び車に乗って去っていった。敬礼して、車が見えなくなるまで見送るミライさん。とても強い絆で結ばれているように感じられた。

 

 ーーー見送りを終えたミライさんに、鎮守府を案内する。

「あっ!しれぇー!」

「あれぇ、この人は誰ー?」

 廊下の先から、雪風と時津風だ。初めて見る憲兵さんに興味を示しているようである。

「こんにちは!今日からここで働く、憲兵のミライです。よろしくね!」

「わぁー!よろしくお願いします!」

「すごーい!かっこいー!」

 早速ミライさんはフレンズを作ったようだ。何気にこの人すごい…。

 

 ーーー食堂

 時間も時間なので、案内の後は昼ごはん。

「あら、提督。えっと…そちらの方が新しい憲兵さんですか?」

 水を運んできた鳳翔に、ミライさんがこんにちは、と挨拶。

「は、はい、こんにちは…!わ、私、鳳翔と言います、よろしくお願いしましゅ!」

 あ、噛んだな。…言わずにおこう。

 …にしてもこのイケメンは反則じゃないかな、ミライさん。

 

 その後も、不知火や大潮、島風たちと追いかけっこをしたり、空母艦娘たちの練習風景を見学したりと、ミライさんはどんどん艦娘たちと仲を深め、ここに馴染んでいく。そうこうしているうちに時間は過ぎ、俺と響、ミライさんは再び正面玄関に向かった。

 ここに来る新たな療養対象の艦娘…利根を迎えるためにーーー

 

 ーーー「来たみたいだね」

 響の声。先程とは違う車がやって来た。那珂の時と同じ、大本営の所有車である。中からスタッフに連れられ、二人の艦娘が降りてきた。片方はもう片方の背中に隠れ、おっかなびっくりに顔を出して挨拶する。

「あ…あの…こ、航空巡洋艦の、と、利根…なのじゃ…」

 それだけ言うと、今度は完全に顔を隠してしまった。余程のことがあったのだろう。そしてもう片方はその事情を知っているのか、冷たく無表情でこちらを見て挨拶する。

「航空巡洋艦の、筑摩です。」

 たったそれだけだ。いきなりシリアスなムードになってしまう。とりあえず自己紹介はしなければ。

「はじめまして、ここの提督だ。これからよろしくな」

 響、ミライさんも挨拶し、俺はここの案内をしよう、と提案した。が…

「…ご遠慮いたします」

 小さくとも重みを痛いほど感じられるその一言。

 利根が…いや、この姉妹は一体どのような闇を抱えているのかーーー

 

 ーーー「直接聞かなきゃ意味無いからな…利根や筑摩の場合、いきなり同情されてもかえって反感を招くだろうし」

 俺はこの後どうするかを悩みつつ書類整理をしていた。あの後すぐに、ミライさんが案内した個人部屋にこもり切りの2人。提督や、それだけでなく仲間との間にも何かがあったとしか思えない。

「ただ、ミライさんに対しては比較的態度に関してトゲがおさまっていたからな…ここは彼に頼ってみるか…」

「なんか、前と違って司令官の出番減っちゃったね…」

 ふと響が呟いた。

「まあ、本当はこういう仕事の出番はない方がいいんだけどな…」

「そうだけど…なんとも思わないのかい?」

「ははっ、適材適所ってやつさ。ひょっとして響、俺が『ウルトラマンたちが悩みを解決してくれるなら、この仕事の存在意義ってなんなんだ?』とか思っているんじゃないか…なんて考えてるとか?」

「…司令官には敵わないな」

「安心しろ、それは杞憂だ。

 知ってるか?歴代防衛チームの中でも特にウルトラマン…当時のはウルトラマンタロウ、彼と強い信頼で結ばれていたZATは、自分たちの存在意義に悩まず、自分たちのすべきこと、出来ることをしっかり自覚して、タロウと協力し怪獣たちを撃退していたそうだ。チームの雰囲気も良くて、それに時にはタロウがZATの作戦を援護したこともある、と聞くぞ」

「ふふ、すごいね…つまり、司令官はしっかりそういう考えを持っているんだね」

「俺の提督としての願いは、ここの鎮守府のみんなが笑顔でいられることさ。なにも俺がでしゃばりすぎる必要はない。」

「また尊敬したくなっちゃうよ…司令官」

「はは、ありがたいな」

 建前なんかじゃない、本当の気持ち。微笑みをつなぐ世界を、ここから広げていきたい。提督としての俺の夢だ。

 と、不意にドアがノックされた。

「ん、誰だ?」

 ガチャリとドアが開き、入ってきたのは…

 

「私です、提督」

「…筑摩か。どうした?」

「いえ、その…提督」

 スタスタと、先ほどと変わらない無表情のまま、こちらに近づいてくる筑摩。そして…

 

「…申し訳ありませんが、今ここで消えてください」

 

「!?」

「…ほう」

 

 その言葉の直後、筑摩の腕の艤装、その砲塔が俺に伸びてくる。俺は座ったまま素早く、愛用している銃の一つーーーその日持っていたTACガンを抜き、筑摩の砲塔を後ろに薙ぎ払いつつその銃口を向けた。

 

 驚く響。だがこれは、俺にとっては想定内だった。

 着任時の挨拶、そして今この瞳…明らかに光がなく、何をしでかすかわからない感じだった。

「…。さすが提督、と言ったところでしょうか。しかし、その銃で艦娘である私と戦えますかね?」

「あいにく、こいつは怪獣より強い超獣にもダメージを与えられる優れものだ」

「………」

「それに」

 

「まずお前と戦う気は無い」

 

「…えっ…」

 筑摩の表情が僅かながら驚きのそれに変わる。

「何か理由があったから、こんなことをしたんだろう?」

 筑摩は答えない。そこへ…

 

「提督さん!大丈夫ですか!?」

 ミライさんが駆け込んできた。この状況を見るや否や、すぐさま銃を構える。あ、あれGUYSのトライガーショット…まだ使ってるんだな。

「ああ、大丈夫だ。」

 とりあえず、冷静に考えられていたこともあり、落ち着いて返事をする。

「…私の負け…みたいですね…」

 ミライの姿を見て、筑摩はがっくりと崩れ落ちた。そして、先程までの殺気はどこへやら、

「提督、響ちゃん、憲兵さん…大変申し訳ないことをしました…ごめん、なさい…」

 涙をぽろぽろと落としつつ、蚊の鳴くような声で言った。

「筑摩…」

 おそらく元の鎮守府での何かしらの事件の傷跡は、利根のみならず、筑摩にも少なからず残っていたのだろう。

「提督…もう…私のことは…好きにしていいです…だから…利根姉さんには…手を、出さな、い、で…くだ…さ…」

 そこまで言って、筑摩はパタリと倒れてしまった。

「筑摩さん!?」

 事態の急展開に固まっている響。ミライさんは筑摩の元に駆け寄り、体の様子を見る。

「…気を失っているだけです。命に別状はありません。

 …おそらく、過去のことが蘇ってきて…提督さん、僕は彼女を医務室に運んできます」

 そうしてミライさんが筑摩さんを抱き抱えようとした時、執務室のドアがまたもノックされた。

「提督、長門だ」

「そうか、入れ」

 いつものように割烹着姿の長門。だが…

「…と、利根…!?」

 なんと、長門が肩に利根を抱えていたのだ。

「部屋の掃除をしようと、利根のドアをノックしたんだが…応答がなくて、ドアを開けたら、既に倒れていたんだ…。」

「そうか…一体何が…」

「どうすればいいんだろう…とにかく、一緒に医務室に寝かせよう。」

 

 長門、ミライさん、俺と響で、利根と筑摩を医務室に運ぶ。その後、長門は用務員としての仕事に戻り、響には執務を頼み、俺とミライさん、2人だけで少し話し合うことにした。

「この2人…姉妹揃って、辛い思いをしてきたんだろう…」

「でしょうね…それに、僕の勝手な推測になるんですが、この2人は提督という存在や他の艦娘といった仲間に対し、強い嫌悪感や恐怖感を抱いていると思います。彼女たちの部屋へ案内している時も、人気の多い食堂近くの廊下は通りたがりませんでした」

「確かに…。療養対象は通達によると利根だが、筑摩も誰にも気づかれずに闇を抱えていたのか…」

「ただ、利根さんのものとは、何かしら関連があるみたいですね…」

「ああ。おそらく調べれば分かることだが、利根自身の口から聞いた方がいいだろう…

 だが俺にも恐怖を抱いているとすると…」

 俺はミライさんの方を向いて、言った。

 

「利根と筑摩を、ミライさん、あなたに任せたい」

「僕ですか…!?」

 

 目を瞑っている利根、筑摩。その心の闇は、計り知れないものだろう。

 でも、どんなにぶつかり合っても、励まし合い、その闇を超えられる道があるのなら。

 悲しみなんかない世界に繋がる道を進むのに、自分の力が役に立つなら。

 ミライは、決心した。

 

「提督さん!僕、やってみます!」

 

「シーッ!起きちゃう、起きちゃう…!」ーーー




というわけで今回も読んでいただきありがとうございました!

感想や評価、よければお願いします!

ではまた次回!

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