笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

34 / 37
寒波来たりインフル流行ったりしてますが
筆者はピンピンしております。
皆様もお気をつけて。

では本編どうぞ。


迫り来る嵐

 ーーー「怪獣の生命反応が二体分!?」

 その報告に、実験中の全員が驚愕した。

「一体ならまだしも、二体となると相当厳しくなる…ましてや今はミライさんにも頼れない…!」

「とにかく、奴らはこっちに向かってきているのだろう!?提督、早く住民を避難所に避難させないとだ!!」

「まだ猶予はある、急ごう司令官!!」

 長門と響の言葉にはっとする。そうだ、状況に飲み込まれている暇はない。

「実験を中断、すぐに体制を整えよう!」

 高山さんと藤宮さんも、すぐに行動を始めた。

「最低限の機材を載せて、すぐにここから撤退しましょう。」

「大丈夫だレイさん、僕達や提督さん、響さんたちが、必ず何とかしてくれる。今は身を守るのが優先だ。」

「は、はい…!」

 藤宮さんに手を引かれ、なんとかその場から走り出すレイであったーーー

 

 ーーー第35鎮守府

「二体の怪獣がこちらへ接近しています!総員、直ちに迎撃態勢を整え、周辺住民の避難誘導を!」

 大淀の緊迫した声が、鎮守府に響き渡る。それは当然、病室で療養中だったミライにも届いていた。

「怪獣!?しかも二体来たか!」

 慌ててベッドから起き上がろうとするミライ。しかし、腕はまだ固定を外せない状況だ。

「ぅがっ…!」

「ミライ、ダメじゃ!まだお主の傷は回復しておらん!」

「でも怪獣が二体も接近しています…!利根さんたちだけに負担をかけられません、僕も…!」

「ミライ!」

 恋人の強い叫びに、はっとして動きが止まるミライ。

「ここは吾輩たちが食い止める…いつも助けてくれる恩返しじゃ。

 必ずまた戻る、吾輩を…吾輩たちを信じてくれ」

「利根さん…」

 尚も心配な表情のミライ。そんな彼を、利根は優しく抱きしめた。

「大丈夫じゃ」

 若干頬を赤くしつつ、利根は決意の表情で病室を出ていった。

「利根さん…」

 そして彼女と入れ替わるように、長門とレイが入ってきた。

「ミライ殿、ここも決して安全とは言いきれない。この鎮守府の地下には堅固なシェルターが建造されている、治療器具もあるから、そこへ避難しよう」

「は、はい」

 長門に抱えられ、用意されたストレッチャーに乗せられるミライ。二人に移動しながら、ミライは思いにふけった。

 今の自分は確かに戦えない。おそらく足でまといになるだけだろう。冷静に考えればすぐに分かることだった。歯がゆくも感じたが、ミライは今の自分に出来る唯一のこと…利根の無事を祈ることに決めた。

「どうか、ご無事で…」

 

 その一方、町では艦娘たち総出で避難誘導が行われていた。昼時とあって、買い物客で町は溢れていた。

「落ち着いてください!こっちです!」

「慌てないで、押さないでください!」

 奮闘の中、なんとか全員を避難させた時には、町の中からでも遠くの黒々とした雲がはっきりと見えるようになっていた。遠征帰りの暁たちも、顔を青くしている。

「あの嵐の中に、怪獣がいたなんて…」

「あとどれ位でここに到達するんですか!?」

 阿武隈が聞いてくる。すぐにコンピューターを操作し、予想時刻を割り出す。

「俺達が電波特異点から移動したからか、やはり台風の進路も変わって、こっちに向かってきているな…まずい、あと三十分ないぞ!」

 そこへ、工廠から通信が入る。

「提督、シルバーシャークGの起動、完了しました!いつでも撃てます!」

 確かに、台風の中にいる怪獣たちをそのまま狙うのは困難だ。ここはすぐにでも迎撃すべきだろう。

「待ってください!」

 しかし、それに高山さんたちが待ったをかけた。

「台風を解析した結果、中心部にエネルギーを帯びた竜巻があることが判明しました。ただ砲弾を撃っても、おそらくは、それがバリアの役割をして弾かれてしまいます!」

「じゃあどうすれば!?」

「台風の目です。そこだけはエネルギーが及んでおらず無防備でした。上空からそこを直接攻撃出来れば、上手くいくはずです!」

「上空から直接…分かりました!」

 二人のアドバイスを受け、俺は工廠に通信をつないだ。

「今のアドバイスの通り、シルバーシャークGによる迎撃は中止だ。代わりに成層圏から直接台風の目を攻撃する。

 ウルトラホーク2号、出撃スタンバイ!」

 

 工廠の側にある、基地航空隊の艦載機発着場。そこに、ウルトラ警備隊の大気圏外専用ロケット型戦闘機・ウルトラホーク2号が三機、出撃準備に入った。

 元々その機体の形状や大気圏外専用という特徴により、配備はされていなかったが、深海棲艦獣の出現を受け、今後の需要を先読みして、基地航空隊にごく最近配備されたのだ。

「出撃準備完了!」

「「「いつでもいけます!」」」

「よし、出撃!」

 明石と妖精さんたちの報告を受け、俺は発進命令を下した。

 

 三機のウルトラホーク2号は、全速力で台風の影響のない空高くへと到達した。

「もくひょうをかくにん!」

「たーげっと、ろっくおん!」

 ロケットの機首を台風の目へと向け、狙いを定める。

「よし、撃て!」

「りょうかい!

 れーざーほう、はっしゃー!」

 レーザーなら台風による暴風の影響も受けない。針の穴に糸を通すような精密な射撃が、徐々に台風の勢いを削いでいく。

「もう少しだ!」

「正体を現せ…!」

 やがて、その雨がこちらに降ってこようかという時、台風はついに勢いを失い、その中心部にいた存在が目に入ってきた。

 

「「ギュィャァァアアアアア!!!」」

 

 二体の形はそっくりで、やはり深海棲艦の砲台や装甲も見られる。

 頭頂部や背中には巨大な角。

 目に見えてわかる両者の違いは、体色。片方は黒地なのに対し、もう片方は真っ赤だ。

「出た!あいつらは!?」

「…いたぞ!

 ドキュメントMACに同種族を確認!

 

 黒いのが双子怪獣ブラックギラス、

 赤いのが双子怪獣レッドギラスだ!!」ーーー

 

 ーーー双子怪獣ブラックギラス、そしてレッドギラス。どちらもかつて、サーベル暴君マグマ星人に率いられて地球にやってきた怪獣だ。

 双子怪獣の名に恥じずそのコンビネーションは強力で、当時地球の守りについていたウルトラセブンに深手を負わせ、戦闘不能にしてしまったほどだ。その後駆けつけたウルトラマンレオも、地球に来たばかりでまだまだ未熟だったとはいえ、大いに苦戦を強いられたのであるーーー

 

 ーーー「みんな、攻撃開始だ!!」

 号令とともに、双子怪獣に向けての一斉攻撃が始まる。俺もランドマスケッティで援護する。

「まずは動きを分断させろ!互いを近づけるな!」

「はい!」

 双子怪獣とあって、コンビネーション攻撃はかなりの威力と予想できる。なら、まずはそれを封じる必要がある。

「撃ちます!FIRE!」

「狙いよし!全門、斉射!!」

 幾多もの戦いを重ね、深海棲艦獣との戦い方もだいぶ掴めてきたのか、艦娘たちの攻撃も効果が上がっている。双子怪獣は角から破壊光線を放ったり、胴回りの砲台から砲撃を仕掛けてくるが、不規則なそれを上手くかわし、隙あらば即座に砲弾や艦載機のミサイルが叩き込まれていく。二体を相手に全く引けをとっていない。

「こっちもいくぞ!ファントンレールキャノン、発射!」

「シルバーシャークG、発射!」

 全員の獅子奮迅の活躍で、とりあえずは二体の間に一定の距離を置かせることが出来たーーー

 

 ーーーしかし、その様子を宇宙の彼方から、謎の宇宙戦艦の男が見ていた。

「ふふふふ…まだまだこんなものでは無いぞ…!双子怪獣の真の力を見せる時だ!

 やれ、ブラックギラス、レッドギラス!

 

 ギラススピンで全てを吹っ飛ばせ!!」

 

 男の言葉と同時に、戦艦から謎の光線が放たれたーーー

 

 ーーー「いいペースよ!このまま一気に行きましょう!」

「反撃の隙は与えません!」

 その時だった。突如天から、二筋の光線が降り注いできたのだ。

「みんな、一旦下がれ!」

「あれ何よ!?」

 やがてその光線は、双子怪獣の角に吸い込まれた。

「気をつけろ!」

 それを受けた双子怪獣は、互いに向き合うやいなや猛ダッシュ。そしてガッチリとスクラムを組む。待てよ、これは確か…!?

「まずい!ギラススピンだ!!」

「ギラススピン!?」

 艦娘たちが即座に身構える中、双子怪獣は互いの間を軸に高速回転を始めた。やがてエネルギーがその周囲を纏い、空の暗雲を巻き込んで、暴風と大雨を伴った台風が発生していく。

「さっきの台風はこれだったのね!!」

「…ダメ、これじゃ近づけない!!」

「仕方ありません、遠距離から砲撃を仕掛けます!!」

 風の影響が弱まるところまで下がり、艦娘たちは再び攻撃を仕掛ける。しかし、砲撃やミサイルは、全て弾かれてしまった。さらにはギラススピンしつつこちらに破壊光線で反撃してきた!

「きゃぁぁぁっ!」

「…くっ、威力が上がってる!?」

「ギラススピンの効力だ!このままだと手に負えない!ウルトラホーク2号、再攻撃だ!」

「「「わかりました!」」」

 上空待機の妖精さんたちにより、レーザーがギラススピンを真上から攻撃する。しかし…

「「我々ノ、邪魔ヲスルナ!!」」

 なんと、ギラススピンをしながらこんどは上空に向けて砲撃を開始したではないか!

「「「わぁぁぁ!?」」」

 妖精さんの悲鳴を最後に、ウルトラホーク2号との通信が途絶えた。射程まで上がるのか!

「我々ニ歯向カオウトハ愚カナ!」

「身ヲ持ッテ思イ知レ!」

 乱射される砲弾と光線。あちこちから艦娘たちの苦しみの叫びが聞こえるーーー

 

 ーーー第35鎮守府

 地下シェルターに設置されたモニターで、海に出ていない大淀や間宮、さらに避難してきたミライや我夢、藤宮が戦いの様子を見ていた。しかし、劣勢の戦局に、皆不安そうな顔をしていた。

「なんて強いのでしょう…!」

「みんな、頑張ってくれ…!」

 そんな中…

 

「藤宮」

「我夢…まさか」

「…ここでは不便だ、少し場所を移そう」

 

 次の瞬間、二人は駆け出した。

「高山さん!?藤宮さん!?どこへ!?」

 大淀が叫んだ頃には、二人は地下シェルターから出て、鎮守府の一階へと続く階段を駆け上がっていた。

「私が行きます!皆さんはここで待っていてください!」

「レ、レイ!?」

 二人を追って、レイは駆け出したーーー

 




今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価や感想等もらえると励みになります、よければお願いしますm(_ _)m

それではまた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。