笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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活動報告にも書いた通り、「笑顔は太陽のごとく…」シリーズに、挿絵が入ることになりました!
イラストレーターのつく様、ありがとうごさいますm(_ _)m

では、本編どうぞ。


誓いを胸に

 ーーーその日の夕方 第35鎮守府医務室

 点っていた「使用中」のランプが消え、ドアが開く。夕張の押すストレッチャーの上には…目を閉じたミライさんが寝かされていた。

「明石、夕張、状況は…!?」

「ミライは、ミライは助かったのか!?」

 俺と利根を頭に、艦娘たちから一斉にミライの身を案じる言葉が飛ぶ。

「皆さん!落ち着いてください。」

 とりあえず皆を諌めて、明石は話し始める。

 

「ミライさんは…なんとか一命を取り留めました。今は治療の影響で眠っているだけです」

 ほっ…安堵のため息があちこちから聞こえる。だが、明石はさらに続ける。

「しかし…ミライさんは先程の戦いで負傷し、更には持っているエネルギーをほとんど使い切ってしまいました。当分の間は、ウルトラマンとして戦うことは不可能でしょう…。」

 その言葉を聞いた皆に、不安が広がる。

「…恐らく、敵がこの機を見逃すはずはない。ウルトラマンが手負いの隙に、畳み掛けてくる可能性も十分に考えられる。警戒をより強めないとだな…」

 しかし、そうなると必然的に、レイの件に人手をかけられなくなってしまう。工廠の二人は、このように医務関係も兼任しているのだ。

 どうしようか、思索を巡らせていると…

 

「皆…さん?」

「ミライさん…!」

 なんと、ミライさんの目が開き、寝かされていながらこちらを見ていたのだ。

「先程は、すみません…こんなことに、なってしまって…」

 途切れ途切れに言葉を紡ぐミライさん。

「そんなことはない…あなたはよく戦ってくれました。自分ももう少し怪獣を、速く、詳しく分析できていたら…」

 …本当にそうだった。慢心せず、もっと気を引き締めていれば…

「提督さんは、悪くありません…」

 そう言ってくれたのは、他でもないミライさんだった。

「僕は、大丈夫です。怪獣は強敵でしたし、自分も倒したと油断していたところもありましたし…。とにかく、これくらいの傷は、すぐに治しますから」

 そう言って起き上がろうとするミライさんであったが…

「…ぁぐっ…!?」

「ダメです!安静にしていてください!深手を負っているんですよ!?」

 明石の剣幕に押され、謝りつつ再びその身を横たえるミライさん。

「…でも、僕は本当に大丈夫ですから…明石さんたちも、レイさんの件に当たってあげてください。救出の計画には、あなたたちの力が不可欠なはずです…」

「ミライさん…」

 なお心配そうな明石。だが…

「ミライの面倒なら吾輩と筑摩が見るのじゃ。だから、心配せんでよい」

「万が一容態が急変した時は呼びますけど…それ以外なら、私たちでお世話を致しますから」

 若干それを聞いて顔を赤くするミライ。言ってる本人もやや赤くなっている利根。それをニコニコと見ている筑摩。そんな様子を見て、大丈夫だと思ったのだろうか。

「…わかりました。よろしくお願いします」

「任せるのじゃ!」

「じゃあ、私と明石さんはレイさんの件にあたります。提督、研究所へ協力再開の要請をお願いできますか?」

「ああ、もちろんだ」ーーー

 

 ーーー「分かりました、ありがとうごさいます。では、明日の昼頃に伺います。」

 夜、鎮守府から電話を受け、明日こそ行くことが決まった高山と藤宮。電話が終わったのを確認し、再び藤宮はテレビの音量を上げる。

「町への損害がなかったのは奇跡だ…ただ、その対価は大きすぎるな…」

「もし、僕らが行っている時に、敵が再び襲撃を仕掛けて来たら…いや、僕達は僕達にできることをしよう」

「そうだな、我夢…」

 決意を固めたような表情で、テレビを見つめる二人。

 画面のニュース番組は、エラーガ襲撃の件を繰り返し伝えていた。

「本日昼過ぎ、○○町にある大本営第35鎮守府沖合に、深海棲艦獣が出現しました。種個体の怪獣はエラーガと断定され、第35鎮守府の艦隊と駆けつけたウルトラマンメビウスの活躍で、町への被害はありませんでした。しかし、戦闘の際ウルトラマンメビウスが怪獣によって負傷するような様子が確認され、依然として町は緊張に包まれています」ーーー

 

 ーーー翌日

「本日から、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ついにやってきた、高山さんと藤宮さん。

 互いに挨拶を交わしたあと、早速例の特異点と思われるポイントへと向かった。こちらからはレイの他、響、長門に加え明石、夕張の工廠組が手伝いに来ている。

 現場に着いたあとは、早速機材を下ろし、周辺に仮設テントを整えて接続作業だ。

「このコードは…」

「あ、それは3番の電源装置のAの穴に刺してください」

「こことここはこう繋いで、その後この機械に繋いでください」

「分かりました!」

 皆の奮闘もあり、一時間弱で接続作業は終了。

「では、ここが本当に電波特異点なのかを調べます」

「少々お待ちください」

 二人がコンピューターを操作し、解析している。じっと見つめるレイ。そして…

 

「…!?」

「これは…すごいな」

 二人がこちらに振り向き、モニターを見るよう勧めてきた。

「どうだったんですか?」

「ここの数値がこれで、なおかつグラフの赤いこの線がこのように変則的に動いている…」

「間違いありません。レイさんの波長との適合率も高い。ここが、電波特異点で間違いないでしょう」

 皆の顔がぱっと明るくなった。

「よかった…よかった…!」

 感極まるレイに、高山さんが言葉をかける。

「まだまだここからさ。君の力が不可欠だ、協力を頼む」

「はい!!」ーーー

 

 ーーーその一方

 ミライが休んでいる部屋に、利根が見舞いにやってきた。

「ミライ、りんごの差し入れなのじゃ」

「あ、ありがとうごさいます利根さん。わあ、この切り方可愛いですね!」

「そうじゃろう?地球ではポピュラーな、うさぎ切りなのじゃ。」

「美味しそうですけど、食べるのが勿体無いですね…でもせっかくですし、いただきます」

 そう言って皿に手を伸ばすミライ、だったが…

「待つのじゃ」

 利根に制止されてしまう。何事かと首を傾げると…

「ほ、ほれ…あーん、なのじゃ…」

 爪楊枝を刺し、りんごを自分の口元へと運ぶ利根。その顔はりんごの皮のように赤みを帯びている。ミライはその仕草に心を射抜かれ…

「い、いただきます…」

 同様に、完熟りんごのように顔を赤らめながら、甘く甘く味わったのであった。

 なお、その様子をこっそり覗いていた筑摩が、部屋の外であまりの甘い光景に悶絶していたことは、二人は全く知らないーーー

 

 ーーー再び、特異点

「レイさん、早速テレパシーを試みてください。波長を分析して増幅します」

「分かりました。」

 レイが目を閉じ、集中する。その周りにはいくつものアンテナが並んでいる。

「レイさんのテレパシー波長をキャッチ、パターン1で増幅開始」

「了解」

 何が何だか分からないような研究装置のスイッチを次々と切り替えていく藤宮さん。高山さんは、レイとモニターを繰り返し見ている。

「レイさんは大変だけど、1パターンごとにこれを最低三分は続けてほしい。頑張って」

「分かりました」

「レイ…」

 長門や工廠組を始め、手伝いの艦娘たちが見守る中、三分が経過した。

「何か手応えは?」

 そう問いかけてみるが…

「若干ノイズが少なくなった感じがしなくもないけど…まだまだ聞き取れない」

「そうか…よし、パターン2だ。回路のD2セクションの出力を上げてくれ」

 

 一時間後。

「はぁ…はぁ…まだです。でも最初より、良くなっている感じは、するので…もう一回、パターンを変えて、お願いします」

 テレパシーを多用したことにより、息の上がっているレイ。

「レイさんダメだ、疲れているじゃないか。一時間くらい休もう」

「だめです!」

 休憩を促す高山に、思わず強く当たるレイ。

「私がここで頑張らなきゃ…仲間を、私の大切な仲間たちを見殺しに…!」

「レイ!」

 藤宮さんが怒鳴るようにレイの名を呼んだ。流石にびっくりしたのか、レイは言葉を止める。そんなレイに、彼は表情を緩めて…

「焦っていては結果は帰って遠くなる。より良い作業のためにも、休憩は必要だ。

 それに君が頑張っていることは、きっと君の仲間たちも知っているはずさ。」

「藤宮さん…」

「藤宮の言う通りさ。温かいお茶でも飲んで、一旦ゆっくり休もう?」

 長門が用意していた水筒から、程よく湯気が立つ茶を紙コップに注ぎ、レイに手渡す。

「熱いから気をつけろよ」

「ありがとうごさいます…」

 紙コップの茶を飲み干し、レイは落ち着きを取り戻したようだ。

「すみません、取り乱してしまって…」

「大丈夫だよ。しっかり休んだら、また再開しよう」

 その後も何度かパターンを変えてみたが、意思疎通が取れるレベルまでには結局到達しなかった。

「みんな…必ず助けるからね…!」

 沈む夕日に、レイはそう強く誓っていたーーー

 

 ーーー深夜 第35鎮守府

 鎮守府に出向いているため、高山と藤宮は空き部屋を与えられ、眠りに就いていた…はずだったが。

「…藤宮」

 藤宮は窓から夜の海を見ていた。我夢がベッドから身を起こし、隣に立つ。

「…眠れないのか?」

「…またあの夢を見たんだ。」

「あの夢…僕もだ。」

 

 深海棲艦の出現が確認された直後。右も左も分からない中、正体解明に研究所が忙しかった頃の、ある日の夜だった。

 研究所の寮、深夜までの激務から解放され、つかの間の就寝中だった我夢と藤宮は、不思議な、しかしどこか覚えのある光で目を覚ました。

 誰か、そこにいる。

 

「君は…」

「リナール…リナールじゃないか!」

 

 かつて関わりがあった、深海生命体リナール。セレファス海溝の水深8000メートルに海底都市を築いている、超深海生命体とはまた別の存在だ。そしてそれは、以前藤宮の前に現れた時のように、少女の姿だった。

「君たちはまだ、無事だったのか」

 藤宮が近づくが、少女…リナールは悲しそうな顔で首を横に振る。

「…まさか」

 

「私たちの文明は、深海棲艦の襲撃を受け…もうまもなく完全に消滅します」

 

「そんな…!」

 愕然とする二人。

「でも、だからこそ…私たちに出来る最後の事として、あなたがたに再び力を渡しに来ました」

 淡く光るリナールの姿は、今にも消え失せてしまいそうだ。

「私たちで用意できたエネルギーは…これが限界でした…ごめんなさい…」

 リナールが両手を開くと、それぞれの手の中にはエネルギーと思しき光が、小さくもしっかりと輝いていた。

「お願いです…この星を…私たちのこの最後の力で、守ってください…

 それから、どうか…私たちを…忘れ…な、い、で…」

 リナールの両手からエネルギーが解放され、我夢と藤宮のアイテム…エスプレンダーとアグレイターに吸い込まれたと同時に…リナールは、消えた。

 二人は悟った。たった今、リナールたちが全滅したと。同時に、今託されたその力で、地球を守ることを誓った。

 

 ウルトラマンガイア、ウルトラマンアグル。

 高山我夢と藤宮博也が変身する、地球が生んだ巨人たち。

 リナールから与えられた最後のエネルギーで、ウルトラマンに変身して戦うことが出来るのは…一回が精一杯。ここまではまだ使っていない。

「必ず…守り抜こう。リナールたちのためにも」

「…ああ」

 月の光に照らされた二人。互いを見つめ、アイテムを見つめ、改めて決意したーーー




今回も読んでいただきありがとうございました!

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ではまた次回。

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