笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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新年初更新。
まあ今年も頑張っていきますので皆様よろしくお願いします。

では、本編どうぞ。


招かれざる刺客

 ーーー数日後 ヒトヒトマルマル

「提督、おはようございます。任務スケジュールに余裕ができました。」

「そうか、ありがとう大淀。そうと決まれば、早速研究所に連絡してみようか」

「はい」

 あれ以降タイミング悪く、立て続けに任務が舞い込んできてしまったが、それを何とか皆の力で乗り切った第35鎮守府。その影響で、今は反動というか、あまり任務が来なくなっていたのだ。

 俺は受話器を取り、研究所の番号をプッシュしたーーー

 

 ーーー城南大学附属物理学研究所

「もしもし、高山です。…あ、提督さんですか、どうも。はい、荷物の確認を終え次第、そちらに出発します。少々お待ちください」

 第35鎮守府から昨日電話を受けた高山は、藤宮とチェック作業をしていた。

「モレやヌケはなさそうだな。荷物をトラックに積んだら、すぐに出発しよう、我夢。今からなら、夕方前には着くはずだ」

「そうだな。」

 再び受話器を手に取って、高山は話す。

「では、荷物を積み込み次第、そちらに向かいます」

「ああ、ありがとうごさーーー」

 次の瞬間、電話口の向こうでけたたましくサイレンが鳴り響いた。

「どうしたんですか!?」

 思わず聞き返す高山。藤宮の顔にも、一瞬で緊張の色が浮かぶ。

「すみません、少し失礼します!」

 提督が受話器を戻さず、机の上に置いたのであろう音が聞こえた。通話が切られてはいないため、向こう側の音が聞こえてくる。高山と藤宮は、全神経をそれに集中させた。

「どうした!?」

「大変です提督!沖合の無人定点観測装置が、本鎮守府に向け水中を猛スピードで進む、巨大な生命体を感知!」

「なんだって!?大淀、それは本当か!?」

「間違いありません!このままだと、生命体は残り二十分以内で鎮守府近海に到達します!」

「分かった!至急、周辺住民に避難指示、迎撃体制を整えろ!」

 そして、その数秒後。唾を飲み込む我夢、藤宮。

「すみません、緊急事態が発生してしまいました、一旦通話を切ります」

「分かりました。どうか、ご無事で」

 その言葉を言い終わるか言い終わらないかのうちに、電話口の声は不通音に変わっていた。

 

「巨大な生命体…まさか、最近出てきているという、深海棲艦獣か…!?」

「そうだったらまずいぞ、鎮守府が危ない!藤宮、すぐに向かおう!」

「…待つんだ我夢」

 部屋を出ようとする高山の肩を、藤宮が掴んだ。

「…確かにお前の気持ちも分かる。だが…俺たちは…」

「藤宮…」

 高山は懐から、ウルトラマンのカラータイマーを模したようなもの…エスプレンダーを取り出し、見つめる。

「今は行くべきじゃない…そう言っているのか、藤宮」

「いや…正直、俺も迷っているんだ。行くべきか、行かないべきか」

 藤宮も、その腕に装着された、同じくカラータイマーのような意匠のブレスレット…アグレイターをじっと見た。

 どのくらいだろうか。沈黙が二人を包む。

「…力を自由に使えないことが、こんなにも辛いことだなんて…」

 悔しそうにつぶやく我夢に、藤宮は今度は優しく肩に手を置いた。

「我夢、とりあえずはニュースで様子を見よう。それを見て判断すればいい。」

「ああ…」ーーー

 

 ーーー第35鎮守府

「鎮守府に大型生物が接近していることにより、避難指示が発令されました。住民の皆さんは、落ち着いて避難所に避難してください。繰り返します…」

 大淀が防災無線に鎮守府のマイクを接続し、住民に避難を呼びかける。工廠では明石と夕張が、シルバーシャークGの起動準備に追われる。そして埠頭には、既に迎撃体制を整えた艦娘たちが集まっている。

「避難誘導は、地元警察と駆逐艦、軽巡洋艦の艦娘が当たってくれている。俺たちで奴を足止めするぞ!」

「「「「「はい!」」」」」

 俺もランドマスケッティで迎撃だ。緊迫感がひしひしと伝わってくる。全員がじっと前を睨む中、水面に映る巨大な影がはっきりとこちらに近づいてくる。

「…来るぞっ!」

 艤装が一斉に構えられる中、影はその正体をついに現した。

 

「ミンナミンナ沈メ…破壊サレテシマエ!」

 

 恐ろしい声の

「やっぱり深海棲艦獣…!提督、あれの正体は!?」

 榛名に言われる前から、俺はジオデバイザーで奴の正体を探っていた。

「今照合してる…分かった!

 ドキュメントDASHに同個体の記録存在!

 宇宙古代怪獣エラーガだ!」

 

 宇宙古代怪獣エラーガ。

 かつて南極で発見された謎の女・ニーナによって操られ、チームDASHとウルトラマンマックスを大いに苦しめた強敵怪獣だ。頭部には刺々しい赤い角をもち、腕などには水かきもみられる。例に漏れず、深海棲艦との融合体のため、巨大な砲塔も複数確認できる。

「住民の避難は!?」

 すかさず響に避難状況を確認するが、

「だめだ司令官、まだ完了していない!」

 確かに、この時間帯は昼の買い物客のピーク時間帯。必然的に商店街の人数も多くなっていた。

「何とか食い止める、できるだけ急いでくれ!

 総員、攻撃開始!!」

 号令とともに、空母艦娘たちは一斉に艦載機を発艦させ、それ以外の者達は砲撃で迎え撃つ。

「シルバーシャークG、発射!」

「ファントンレールキャノン、発射!」

 さらに明石たちと、ランドマスケッティによる追撃だ。連続攻撃に耐えかねたのか、エラーガは数歩後退する。

「よし、そのまま押していくぞ!」

 しかし相手も相手だ。放たれた第二波を、肩からの破壊光線で相殺してしまう。そしてその体の砲台を動かし、砲撃。艦娘たちを制圧してきた。

「きゃぁぁあああ!?」

 悲鳴が上がる。しかし幸い、中破以上の損害を受けたものはいないようだ。

「怯むな、撃て!撃てー!!」

「はいっ!!」

 だがエラーガは、巨体を動かし大波を起こしてきた。そしてそれは艦娘の動きを阻む。

「うっ!」

「これじゃ、思うように動けないよ!」

 更には相殺に使っていた破壊光線で、直接こちらへ攻撃してきた!

「まずい!みんな避けろ!」

 しかし、荒れ狂う破壊光線は、的確に艦娘たちにダメージを与える。

「提督、翔鶴姉と加賀さんが中破だよ!」

「こちら高雄、愛宕と妙高さん、それぞれ中破!」

「くそっ、予想以上のパワーだ、このままじゃ持たない!」

 一方エラーガは、艦娘たちの混乱をよそに、その砲塔の先を市街地へ向けた。

「しまった!」

 まだ避難は完了していない!

 だが、その時ーーー

 

 ーーー「メビウーーースッッ!」

 その名の叫びとともに登場、ウルトラマンメビウス!すかさずドロップキックでエラーガを吹っ飛ばし、市街地への砲撃を阻止した。

「大丈夫ですか!?」

「ミライ!助かったのじゃ!」

 ナイスタイミングだ。利根の言う通り、本当に助かった。

「よし、反撃開始だ!」

 

 まさにそこからは形勢逆転。メビウスの強力な打撃が、次々にエラーガを押し戻していく。敵が反撃に転じようとするならば、すかさず艦娘たちが砲撃やら艦載機のレーザーやらでダメージを与えていく。

「司令官、住民の避難が完了したよ!」

「よくやった響!みんな!

 よし、一気に行くぞ!」

 皆の攻撃のペースも増し、戦況はこちらに優勢だ。

「よし、トドメだ!」

 艦娘たちの攻撃で作った隙に、メビウスが一気に飛び込む。左腕にエネルギーを集中、そのままエラーガの土手っ腹に叩き込む!ライトニングカウンター・ゼロだ!

「ギャウウゥゥ…」

 表面で大爆発が起きた。エラーガは装甲もあったが、ライトニングカウンター・ゼロの威力が勝り、エラーガは吹っ飛んでそのまま海面に倒れ込み、沈んでいった。

「よしっ!」

 何とかこれで、ひとまずは危機が去ったーーー

 

 ーーーそう考えるのは、早すぎた。

 突如として空の彼方から、禍々しい赤黒の光線が降ってきたと思うと、それは今さっきエラーガが沈んでいった場所へと吸い込まれていった。そして、次の瞬間…

 

「ハハハハハハハハハハ!!」

 

 何と、エラーガが蘇ったのだ。

「馬鹿な!?」

「何が起きてるの!?」

 俺はすぐさま、エラーガのさらなる分析を行った。そして衝撃を受けた。

「そんな!?こいつ、不死身なのか…!?」ーーー

 

 ーーーエラーガの能力の中でもとりわけ厄介なものに、蘇生能力がある。かつての出現の際も、自分の主であるニーナからエネルギーを補給されれば、例え倒されようと何度でも復活することが出来る。おまけに復活する度にその戦闘力が上がるという、反則級の能力なのだ。

「気をつけろ!奴の戦闘力はますます強くなっている!」

 事実、メビウスの打撃や、艦娘たちの砲撃の効きも薄くなっている。

「提督、どうすればあれを倒せるんですか!?」

 千歳が助けを求めるように聞いてくるが、俺はそれに答えを返せなかった。

 以前は主のニーナをDASHが仕留めたことにより、能力にストップをかけられたのだが、今のこの状況では、あのエネルギー光線を撃ってきた存在の正体も場所も掴むことができない!

 どうすれば、どうすればいい…!

 

 しかしそうしている間にも、エラーガは暴れ狂う。破壊光線も一層強力になり、艦隊に大破者も出始めた。

「こうなったら…!」

 対するメビウス、再びその拳にエネルギーを集中させはじめた。だが…

 

「遅イワァッッ!」

「何っ!?」

 何とエラーガは、スピードまで強化されていたのだ!そして一気に間合いを詰め、メビウスを押し倒す!

「ぐっ!?」

 メビウスをも圧倒するそのパワーで彼を押し倒し、さらにその鋭い牙で彼の右腕に思い切り噛み付いた!

「ぐわぁぁぁあああ!うぁっ、ぁあっ!」

 動かせる体の部位を無我夢中で動かし、必死の抵抗を試みるメビウスだが、エラーガの牙は離れない。

「総員、メビウスを救出するんだ!」

 指令を飛ばし、何とかメビウスの援護にかかる。次々と砲弾やらレーザーがエラーガに命中するが、相変わらずの破壊光線による相殺が続き、なかなか成果を得られない。そんな中…

 

「ミライを…ミライを放せぇっ!」

 恋人のピンチにじっとしていられる利根ではない。エラーガがメビウスと砲撃の対処に気をとられている隙に、一気に近づき…

「くらえっ!」

 至近距離から砲撃。砲弾はエラーガの片目に命中し、噛み付く力が弱まった。

「利根さん…!うぉぉおおおお!!」

 彼女の奮闘に、ミライも応える!エラーガの腹に足をセットし、渾身の力でぶっ飛ばした!

「よし!」

 何とか立ち上がったメビウス。しかし、噛み付かれた右腕を抑えている。カラータイマーの点滅も始まった。

「傷が深いのじゃ…!ミライもあまり長く戦えん、提督、奴を何とかして攻略する方法はないのか!?」

「とにかく、避難誘導を終えた駆逐艦と軽巡洋艦をこっちに向かわせてるが…」

 と、通信マイクにひとつの声が割り込んできた。

 

「話は聞かせてもらったよ!」

「響!」

「司令官、エネルギーの出どころが叩けなくても、怪獣がエネルギーを受け取れなくしてしまえば、結果的に意味はなくなる!」

「…そうか!なるほど!」

 響の助言を聞いてすぐ、俺はエラーガの解析を始めた。

「…分かった、角だ!奴の頭頂部の角が、エネルギーを受け取る部分になっている!そこを破壊するんだ!」

「「「了解!」」」

「僕が奴の動きを止めます、その隙に角を破壊してください!」

 メビウスはそう言うと、すぐさま強化形態のバーニングブレイブへとチェンジする。負傷した腕は当然ながら痛む。だがそれでも、この星を守るため、メビウスは力を振り絞って、後ろからエラーガを押さえつけた。

「今です、皆さん!」

「よし!

 全員、撃てーっっ!!」

 これでもかという火力で、エラーガの角へ集中攻撃。

「主砲、撃てーっ!!」

「どっかーん!!」

「鎧袖一触よ…!!」

 凄まじい爆発が起き、その角は粉々に砕け散った。途端にエラーガの力が弱まったのを、メビウスは感じ取る。

「みんな、ありがとう!今度こそトドメを刺してみせる、離れてくれ!」

 言葉を受けた艦娘たちが距離を置いたのを確認し、メビウスは最後の気力で、奥の手中の奥の手を使う!

「ぅぅうぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」

 叫びとともに、メビウスは全身を燃え盛る炎のごとく高熱化させ始めた。カラータイマーの点滅が一気に速くなり、警告音も高くなっていく。しかしメビウスはその場を動かず、エラーガをガッチリと固めたまま…

 

 ドガァァァァアアアアンッッ!!!

 

 エラーガ諸共自爆した。これぞ捨て身の大技、バーニングメビュームダイナマイトだ。やがて晴れていく煙の中、空中の一点に光が集まっていき…メビウスは再生を果たした。だが…

「やっ…た………」

 バーニングメビュームダイナマイトは強力な技だが、その反面、性質上体への負担はとてつもなく大きい。エネルギーを使い果たしたメビウスは、その姿を維持出来なくなり、海面に倒れ込むと同時に…消えた。

 

「メビウスーーーーーー!!」

「ミライィィィイイイイ!!」




今回も最後まで読んでいただきありがとうごさいました。

評価や感想などもらえると嬉しいです、よろしくお願いしますm(_ _)m

では、また次回(`・ω・´)ノシ

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