笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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ぶっちゃけ説明要素が強い回です。
そして今年最後の更新です。

気付けばこのシリーズが1年以上続いているんですよね…皆様ありがとうございます。

では本編どうぞ!


研究所へ…

 ーーー「あ、すみません、こちら第35鎮守府というところなのですが…」

 ここを逃すわけにはいかない、受話器を握る手に力がこもり汗が滲む。

 ひと通り要項を話すと、相手方はわざわざ所長に代わってくれるという。

「はい、ありがとうございます…」

 脇では響が片時も目を離さず見守ってくれている。やがて、電話口から、男性の声が聞こえてきた。

「電話代わりました、城南大学附属物理学研究所、所長の高山です」

「第35鎮守府の提督です…」ーーー

 

 ーーー通話を終え、響に向き直る。

「どうだったかい、司令官。」

 その問に、俺ははっきりと答えられた。

「事情を話したら、快く話に乗ってくれた。

 今度こちらの都合のいい時に、研究所に来て詳しいことを話し合うことになったよ」

 響の顔は変わらない。先程向き直った時から安心した笑みのままだ。

「だろうね、よかった。

 話している司令官、とても楽しそうだったし、電話口から漏れてくる相手の声もそんな感じだったよ。」

 そう答えながら、響はあるものを持ってきた。その笑みは、苦笑いに変わっている。

「ただ、少し話しすぎじゃないかな…?」

「…あっ」

 響が持っていた時計の針は、電話を始めた時間から40分後を指していたーーー

 

 ーーー三日後

 その日の最低限の仕事を終えた後、ジオアラミスに鎮守府の面々を乗せ、俺は研究所へと向かった。ちなみに同行しているメンバーは、響、長門、レイ、そして技術などの専門家ということで明石である。

「研究所か…どんな所だろう」

「わくわくしてきました!」

「おいおい、遊びじゃないんだからな」

 社会科見学的なムードが漂う中、ジオアラミスは数時間後に研究所に到着したーーー

 

 ーーー研究所

 来客用の駐車場に車を停めると、ご丁寧にそこには二人の男性が既に待機していた。

「お待ちしておりました、提督さん。ようこそ、城南大学附属物理学研究所へ。改めまして、所長の高山我夢です」

「副所長の、藤宮博也です」

 どちらも精悍な顔つきだ。

「第35鎮守府の提督です。今回はありがとうございます。」

「秘書艦の響です。」

「あ、あの…レイです」

「用務員の、そしてレイの保護役の長門です」

「明石です。今回、技術担当ということで来ました。」

「皆さん、はるばるお疲れ様です。

 既に会議室の準備は整っていますが、よければその前に、この研究所を大方見てみませんか?」

「わあ!それはいいですね!

 …ってすみません、つい…!」

 思わず喜びを爆発させた明石。しかし、響も言葉こそ発していないものの、その目がキラキラしているし、レイや長門も興味深そうだ。また何より、ここを知る上でもこの提案に乗らない手はない。

「是非、お願いします。」ーーー

 

 ーーーそして二人の案内で、俺たちは研究所の中を巡った。

「これは?」

「ああ、これは反陽子浮揚システム、リパルサー・リフトの改良研究の部屋です。現在は国際救助ステーションとなっている、赤道上の成層圏に浮かぶエリアル・ベース3号機は、この研究室から誕生した現在最新のリパルサー・リフトを使っています。」

 ん?聞いたことのある用語が出てきたぞ?

「エリアル・ベースって、前は確か特捜チームXIGの基地でしたよね?」

 高山さんと藤宮さんはこう答えた。

 

「はい、怪獣頻出期はそうでした。当時の敵・根源的破滅招来体との戦いのさなかに1号機は敵の襲撃にあい最終的には自爆、2号機は既に破滅招来体の去ったあとに起動したので、防衛拠点と言うよりは空の研究所のような役割でした。やがてその後に怪獣保護チームのチームEYESが誕生、2号機も役目を終えたんです」

 

「しかし、あなた方が今現在戦っている深海棲艦が数年前に出現したことで、人類は再び、XIGなどのようなチームを作ることを考えましたーーー最も、その前に響さんたち艦娘が現れたことでその必要性は無くなりました。

 しかし、深海棲艦は世界中の海に出現し、多くの被害をもたらしています。その被害をできるだけ減らすため、そして艦娘たちや大本営の方々の負担を少しでも軽くするため、現在のエリアル・ベース3号機は深海棲艦の襲撃及び、深海棲艦出現が原因の、多発する異常気象から人々を救出する、救助研究機関の役割を担っているんです。」

「深海棲艦が、異常気象の原因?」

 長門が首を傾げるが、その問に答えたのはレイだった。

 

「…私たち超深海生命体は、地球のエネルギーバランスを保つものです。それが深海棲艦になり、バランスを保つものがいなくなる…いや、もし深海棲艦たちが私たちから得た調整能力を悪用して意図的に崩しているとすれば…」

「必然的に、異常気象は多発します。これを見てください。」

 藤宮さんはタブレット端末を俺たちに見せた。折れ線グラフが表示されている。

「これがその証拠です。地球上で重大災害が発生した件数は、深海棲艦の出現前と比べ、出現した後は年を追うごとにどんどん増えているんです。最近は艦娘たちの活躍で、ペースは緩まってきていますが、依然として増え続けてはいるんです。」

「そうですか…」

 確かに、一ヶ月に一度以上のペースで、新聞に世界各国の災害のニュースが載るようになっている。

「とりあえず、次の場所に向かいましょう」ーーー

 

 ーーーやってきたのは、研究所の建物の外だった。前には海が近く見える。

「…外?それで、ここには何が?」

「あれを見てごらん」

 そこには、不思議な形のタワーが。それも、向こうには同じものがある。

「最新鋭のバリアシステムです。ここと、向こう、さらにもう二機がこの研究所の敷地の四隅に建てられています。

 この研究所は先程のエリアル・ベースの他にも数多くの重要な研究をしているので、怪獣などの襲撃を想定して、かなりの出力を出せるようにしているんです。」

「実際、深海棲艦の戦艦クラスの砲撃、敵艦載機の絨毯爆撃にも余裕で耐えた実績があります。なので海沿いにも関わらず、この研究所はここら辺一帯の地区の避難場所のひとつにもなっているんですよ」

「へぇ…すごいんですね…」

 

 その後も色々な所を巡った…のだが、これ以降は専門用語のオンパレードだった。ちなみに各々の反応としては、キラキラ状態の明石、ギリギリ理解出来るか出来ないかの自分、ちなみに残りの響、長門、レイは全員ポカーン状態であったーーー

 

 ーーー会議室

 ムサシさんから頂いたレイのデータ、そしてここまでの経緯を二人に話す。

「それで、電波特異点の詳細を調べてほしいんですね…」

 頷く高山さん、

「確かに、理論上ありえない事じゃない。確かめる価値はありそうだ」

 微笑む藤宮さん。

「ありがとうございます」

「特異点の状況に関しては、ここからでも十分調べることはできます。だけど、やはりまずは一回、機材を持ち込んでそこに行く必要がありそうですね」

「それに、波長増幅が上手く行けばコミュニケーションもとれ、上手く行けば、もしかしたらレイさんたちのような超深海生命体を救出できるかもしれないな」

「そ、それは本当ですか?」

 思わず椅子から立ち上がるレイ。

「可能性は限りなく高いでしょう。な、藤宮」

「そうだな…こちらとしてはすぐにでも取りかかりたいですね。その方がいいでしょうし」

「え、いいのですか!?」

「もちろんです。地球にはたくさんの生命があります。僕たちはそれを守る義務がありますから。」

「都合のいい時は言ってください、すぐに必要な機材を持ってその特異点に向かいます。やれるだけやってみましょう」

「ありがとうございます!」

 こうして、城南大学附属物理学研究所に正式に協力してもらえることになった。

 超深海生命体救出のための一歩が、ここに踏み出されたのだったーーー

 

 ーーーM78星雲 宇宙警備隊本部

「…んで、なんで俺を呼んだんだ?ゾフィー隊長」

 光の国の若き最強戦士、ウルトラマンゼロ。そして、宇宙警備隊隊長のゾフィー。今日、ゼロはゾフィーに呼ばれてここに来ていた。

「大隊長・ウルトラの父から、お前に任務を預かってきた。」

「ウルトラの父から?

 そう言えば大隊長、最近見てねえなぁ…」

「大隊長は今、独自のルートで敵の正体を探っているらしい。そしてそれが大方特定できてきたのだが、まだ確証も情報も足りない。そのために、今回お前にある任務を頼みたい」

「分かった。

 …それで、何をすればいいんだ?」

 引き受けたゼロに、ゾフィーは告げた。

「別宇宙…アナザースペースのお前の仲間たち、ウルティメイトフォースゼロの内に、グレンファイヤーという炎の戦士がいるだろう」

 ウルティメイトフォースゼロ…ゼロがかつて、アナザースペースで暗躍していた悪のウルトラマン、カイザーベリアルとの戦いのさなかに得た仲間たちを中心とした(尚、カイザーベリアルとの戦いの後にも一人加わった)独自の宇宙警備隊だ。

「グレン?あいつに何か用なのか?」

「正確には彼というより、彼の元いたところだ。」

「…炎の海賊?」

 ゼロは思い出した。グレンファイヤーは、ゼロの仲間になる前、自由を愛し宇宙をさすらう炎の海賊の船、アバンギャルド号の用心棒として、彼らとともに銀河を旅していたことを。

 ゾフィーはそんな彼に、ひとつの物を手渡した。

「大隊長が手を加えたこのブレスレットには、その炎の海賊たちに今回聞いてきてほしいことをデータ化して入れておいた。この任務は時空を超える能力をもつお前にしか頼めない、引き受けてくれるか?」

「もちろんだ。

 …でも、何故全員を動かさない?さっさと片付けちまえばいい話じゃねえか」

「私もそれに関しては、大隊長に聞いたんだが…

『今回の敵は、おそらくかなり強大だ。下手に動けば、それこそ相手の思うつぼになる可能性がある』だそうだ」

「なるほどな…分かった。それじゃあ早速行ってくるぜ!」

 警備隊本部から、飛び立っていくゼロ。それを見送るゾフィー。

「頼んだぞ、ゼロ」

 果たして、敵の正体はいったいどのようなものなのだろうかーーー

 




今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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皆様良いお年を!(あとがき書き忘れてましたごめんなさい)

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