笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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風邪をひいてしまった。
黄色い鼻水+止まらない咳+鼻づまり。
もうヤダ何このデスコンボ。

皆様もお気を付けて。
では、本編どうぞ。


絆を胸に

 ーーー第35鎮守府

「そうですか、順調ですか」

「はい。調査が始まってから数日経ちましたが、いつもとてもいい子ですし、ちゃんとこちらに心を開いてくれているので、こちらとしても助かっています。」

「ありがとうございます。」

 廊下ですれ違ったムサシさんは、どこか嬉しそうだ。しかし、顔色とともに話題を変えてきた。

「それと…千代田さんのことなんですけど…。

 きっと、彼女なりに奮闘しているとは思うんですが、何かまだ、心に拭いきれていない何かがある、そう感じるんです」

 一瞬驚いたが、すぐに納得できた。

 人とも、さらに怪獣とも分かり合えるムサシさんだ。千代田の心の中に気づいていたに違いない。

「ムサシさん、やはりあなたもですか…。」

「このままでは彼女が心配です。しかし、焦って下手に話しかければ、余計に彼女を傷つけかねませんし…」

「ですね。とにかく今は、見守るしかありませんか…。直接聞かないにしても、いつも見守っている、彼女からそんな信頼を得られれば…」ーーー

 

 ーーーその日の夜 食堂にて

「はい、千代田さん。今日もお疲れ様でした。

 間宮さんが、アイスをサービスしてくれましたよ」

「あ、ありがとうございます」

 鳳翔から注文の日替わり定食を受け取り、席につく千代田。一口目を食べようとした時、自然にムサシさんが近づいた。

「千代田さん、よければ相席いいですか?」

「どうぞ」

 少し面食らったようだが、すぐに了承する千代田。

「…司令官は行かないのかい?」

「こないだ千代田とは話したばかりだし、これ以上俺が出たら帰って彼女の心の負担になる可能性もある。仮にも俺は上官だし、そういう面でも気を使わせてしまうかもしれない。」

 少し離れたテーブルで、カレーを食べつつ俺は響に答えた。確かに、ムサシさんと千代田は、変に遠慮することなく、自然な会話を続けられているようだ。

 

「ムサシさん、私の話、聞いてくれてありがとね」

「とんでもないよ。むしろ、君の心に負担をかけてないか、心配だった」

「ううん。かえって、ムサシさんにもわかってもらえて、楽になれたんだよ」

「なら良かった。」

「ねぇねぇ、ムサシさんはさ、怪獣を保護するお仕事をしているんでしょ?」

「うん、そうだよ」

「よかったらさ、ムサシさんの話も聞かせて欲しいな…なんて」

「僕の話でよければ、いいよ」

 

「仲がいいね二人とも。まるでカップル…」

「響。念の為に言っておくが、ムサシさんはちゃんとした既婚者だからな」

「…そ、そうだよね。まあね、そうだよね」

 俺は知っている。響が最近、スポコン漫画はそのまま、恋愛系少女漫画にも手を出し始めたことを。

 よく漫画を借りている榛名から聞いた。可愛い。

 それにしても響の言う通り、確かに二人は楽しそうだ。今はどうやら、ムサシさんが昔の話を千代田に話しているようだ。

「さて、そろそろ俺たちは上がろう。」

「もういいのかい?」

「後はムサシさんが、上手くやってくれるさ。もし話があったら、千代田の方からしてくれるだろう。

 今彼女が抱えているかもしれない影は、きっと自分の心のいちばん弱い部分なんだ。それを自分から話せる人なんて、余程の信頼がない限りいないからね。」

「うん、わかったよ司令官」ーーー

 

 ーーーその日の夜遅く、時刻はフタフタマルマルを回った頃。

 ムサシさんが今日の調査結果を提出しに来た。あとは二人でそれを整理すれば、今日の業務は終了となる。

「えーと、ここの点数はこんな感じです。体の方も、特に異常はなく…」

 二人で考察などを話し合いながら、パソコンに数値を入力していく。

 

 トントン

 

 突然、ドアがノックされた。こんな遅い時間、響が何か連絡をしに来るはずもない。さっき寝かせたし。

「入っていいぞ」

「誰ですかね…」

 ドアが開かれ、そこにいたのは…

 

「…提督、ムサシざぁん…」

 涙目の千代田だった。

「おーおー、どうしたどうした」

「あのね…ぁ…ぁの…」

 最初はよたよただった足取りは、俺とムサシさんに近づくにつれ急加速していき、まるで倒れ込むようにその体を擦り付けてきた。

「…ゎぁぁぁぁあああ…!…ごめんなさぁぁぁい…!!!」

「しっかり、どうしたの?」

「よしよし、大丈夫大丈夫…」

 突然号泣とともに謝罪の言葉を言う千代田。

「思い切り泣いていいよ。」

「辛いこと全部、吐き出していいから。」

 

 しばらく泣いて、落ち着いたのか、千代田はポツポツと心境を語り始めた。

「あのね…怖いの…

 もし、千歳お姉が見つからなかったらどうしようって、もしも自分の頑張りがとどかなかったらって…

 最近、練習のときもそればっかり考えてて…すごく辛くて…でも、みんなわたしのために頑張ってくれているし、申し訳なくてなかなか言えなくてぇ…!」

「そうだったのか…ごめんな…」

「ううん…いいの、提督は悪くないから…」

「ありがとう、辛かったのに、よく言ってくれたね」

「…ひっく…えぐえぐぅ…どうしよぉ…怖いよぉ…やだよぉ…!」

 よしよしと、赤ん坊のように泣く千代田を慰める。

「千代田さん、大丈夫大丈夫…」

「ありがとう、ありがとね…」

 

 数十分後、ようやく千代田は落ち着いた。ずっと抱えていた分、心の負担は計り知れないものだっただろう。千歳の捜索もなかなか成果が得られず、それによって不安も増大していたはずだ。

「千代田さん、大丈夫だよ、ね?」

「ムサシさん…」

「今、確かに君は、不安に押しつぶされそうになってる。でも、きっと大丈夫だよ

 夢を信じ続ける限り、必ず奇跡は起きるから」

「ほ、ほんとに…?」

 すがるような目でムサシさんを見つめる千代田。

「うん。どんな時だって、君はひとりじゃない。

 君と千歳さんは、強い心の絆で、いつだって結ばれているはずだ。そうだろう?」

「…うん」

「大丈夫。きっと千歳さんも君のことを信じている。君もまだ、守れるんだ。僕たちも力を貸す。ね?

 一緒に、前へ進もう。」

 ムサシさんの差し出した手を、しっかりと握る千代田。俺とも握手をした彼女は、また笑顔を向けてくれた。

 ただ、きっとまた時間が経てば、影はまた出てきてしまうだろう。だからこそ、俺は千代田に言った。

「いいか?辛いと少しでも思ったら、またいつでも遠慮なく来てくれ。

 俺も全力を注いで、サポートする。」

「うん、ありがとう提督。それとさ…」

「ん?」

「お姉の捜索にさ、私も加えて貰えないかな…」ーーー

 

 ーーー翌日

「行ってらっしゃい、千代田さん。」

「必ず命だけは持って帰るんだよ。

 じゃあ、気をつけて。」

 この日、鳳翔と話し合った結果、彼女の心の状態なども考慮しつつ前線に出すという結論に至った。

 いつもの言葉をかけ、ムサシさんと共に見送る。

「よかったです、彼女がとりあえずとはいえ、立ち直ってくれて」

「元はとても素直な娘ですからね。だからこそ、守りたいもののために一生懸命になれると思うんです」ーーー

 

 ーーー千代田たちの艦隊は、任務海域に到達した。

「そろそろトドメを刺しちゃおっかな!」

 生き生きとした様子の彼女。艦載機を発艦させ、深海棲艦を次々と沈めていく。

「おめでとうございます、千代田さんがMVPみたいですね」

「あ、ありがとうございます!」

 霧島に褒められ、上機嫌の千代田。

「とにかく、任務を達成しましたし、警戒を続けつつ、千歳さんの捜索に移りましょう」

「は、はい…!」

 一段と気合を入れる千代田。彼女自身も艦載機を使って広範囲を捜索する。

「やっぱり…簡単にはいかないよね」

 しかし、彼女は諦めなかった。自分のために、大切な姉のために、提督やムサシさん、そして支えてくれるみんなのために。

「もうちょっとあっちの方も行ってみて、妖精さん!」

 その日は結局何の成果も得られなかったが、千代田は下を向かない。

「必ず…奇跡は起こる!

 起こしてみせる!」

 

 そして二日後、その気持ちが実を結ぶ。

 その日も艦隊の一員として例の海域に赴いていた千代田。

「今日は、何か見つかるといいな…」

 そう思いながら探していた時だった。飛ばしていたダッシュバード2号の妖精さんから、通信が入ったのだ。

「どうしたの…?

 

 …え?千歳お姉の航行記録レコーダーを見つけた!?」ーーー

 

 ーーー同時刻 大本営極東支部

「長官…これを」

 スタッフから手渡された資料を読む長官、サコミズ・シンゴ。それらは、鎮守府の報告書だった。

「二ヶ月前の第15鎮守府の千歳の失踪事件、それと同じ状況の事件が、ここ最近相次いでいるようです。

 数日前、第22鎮守府の鳥海、さらに第43鎮守府の秋月、そして昨日は第105泊地の伊168が、いずれも同じ海域、そして突如立ち込める冷たい霧とともに姿を消すという報告を受けています」

「確かに…これは危ないね」

「さらに気になる点があります。その事件で、姿を消した艦娘の全員が…

 他の同一個体に比べ、能力が格段に高いという所です」

 スタッフからの報告、そして資料を隅々まで読んだサコミズは、スタッフに告げる。

 

「明日マルキュウマルマルより、この件に関する緊急会議を開くと、全ての鎮守府に早急に通達を出してくれ」

「はっ」ーーー




今回も読んでいただきありがとうございました。

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これからも頑張ります、また次回!

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