笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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だんだんと秋らしくなって来ました。
皆様体調を崩さないように…

では本編です。どうぞ。


涙のあとは

 ーーー惑星ジュラン

「リドリアス、おはよう。今日の調子はどうだい?」

 身長48メートルの、人間とは比べ物にならないほど大きい、鳥のような怪獣…友好巨鳥リドリアスに話しかける一人の青年。

 彼こそ、春野ムサシだ。

「元気そうだね、よかったよかった。

 これからしばらく空けるけど、みんなと仲良くね」

 優しくその頭を撫でると、リドリアスは嬉しそうに目を細める。撫でた後、彼はリドリアスに手を振って、ジュランのスペースポート…つまり、惑星外への玄関口に向かう準備を整えた。

「ムサシ、気をつけてね」

「ありがとうアヤノ。ソラやみんなのこと、よろしくね」

「うん!」

 妻のアヤノに荷物を受け取り、ムサシはジュラン配属の宇宙航行機、テックスピナーKS-1に乗り込む。

「久しぶりの地球か…どうなっているかな」

 深海棲艦のことは、ムサシも知っている。しかし、それでもかつての仲間達は自分の夢を応援してくれた。今は艦娘という存在が現れ、少しづつ海域奪還も進んでいるという。

 希望に胸を膨らませ、ムサシはテックスピナーを離陸させたーーー

 

 ーーー春野ムサシ。

 彼は少年の頃、人生を変える出会いをした。

 優しい心をもつ、巨人との出会い。

 巨人の名は、ウルトラマンコスモス。

 傷ついた彼を救った少年ムサシは、その後コスモスと関わりを深めていった。

 大人になり、ムサシはある時思いがけず彼と再会を果たし、彼と一体化、そしてチームEYES、ウルトラマンコスモスとして地球の守りをすることとなる。

 どんな相手であっても、時に拳を、時には優しさを持って接し、本来大人しい怪獣は無闇に倒さず、一方で真の悪には勇敢に立ち向かった。

 地球の守りの中、ムサシ=コスモスはいくつもの壁に当たった。

 怪獣に憑依し凶暴化させる、光のウイルス・カオスヘッダー。

 さらに、怪獣保護という今までに無い考えを、受け入れてくれない人たち。

 しかし、彼は決して夢を諦めず、最終的にカオスヘッダーさえ浄化し、そしてこのジュランに怪獣たちの楽園を築き上げた。

 テックスピナーのコックピットからは、考えに理解を示し、少数ながら地球から移住してきたジュランの住民、リドリアスなどの怪獣たちや、浄化された後ジュランの守護に就いたカオスヘッダーが、みんな手を振っている。

「みんなありがとう。行ってきます。」

 

 いつしか、慈愛の勇者と呼ばれるようになった彼を乗せて。

 テックスピナーは、地球に向けて加速して行くーーー

 

 ーーー第35鎮守府 フタフタマルマル

「分かりました、はい、ありがとうございます。では、よろしくお願いします」

 ジュランから地球へ向かっているというムサシさんと、初めて会話を交わした。声からもとても優しい雰囲気が伝わり、レイのことも「会うのが楽しみだ」と言ってくれた。

 さて、レイの方は心配は要らなそうだが…

 

「響、千代田の様子は?」

「少しずつ話ができるようにはなってるけど…まだあまり本質的には変わらない感じだな…。」

「そうか。ありがとう」

「レイの件は?」

「大丈夫そうだ。レイの心の状態を考慮して、検査は一日に一、二項目だけだと。ここに滞在する期間が長くなるけど、お互いを知るにはむしろ丁度いいね」

「よかった。それで、いつごろここには着くんだい?」

「宇宙航行にはそれなりの時間がかかるからな…数日後になるらしい。」

「じゃあ、歓迎の準備が出来るね」

「はは、そうだな。長門や鳳翔たちと話し合っておいてくれ」

「了解」

 

 響が退室し、執務室には俺一人。

「さて、どうしたものかな…」

 俺は話を聞いたあと、千代田のこと、そして千歳の失踪事件を詳しく調べた。

「…この海域か。このままだと千代田とのコミュニケーションは難しい…一つの手段としては、千歳を探すことだな。」

 俺は明日の分の任務表を見直す。運良く、当該海域近くを通る任務があった。

「…頼んでみようか」

 失踪事件があったのは、二ヶ月あまり前。失踪扱いとなった艦娘は、規定により二ヶ月を過ぎると所属鎮守府の籍が失効となる。生存の可能性は限りなく低いが、ゼロではない限り、確かめてみる価値があるーーー

 

 ーーー翌日

「と、言うわけだ。今この件を、響が千代田に話をしに行ってる。任務と並行し、安全第一で頼む」

「分かりました」

 例の遠征任務の旗艦を任せた神通が答える。後ろに控える駆逐艦たちも、真剣な眼差しだ。

「よし、第二艦隊出撃!」

 無事に鎮守府を発ったのを確認し、俺は千代田の部屋を目指した。

「さて、と。」

 ノックすると、「司令官?」と響の声。

「いいか?」

 千代田との確認のためか、少し間が空いた後、ドアが内側から開いた。

「いいって」

「分かった、ありがとう。千代田、邪魔するぞ」

 小さくぺこりと頭を下げる千代田。俺は座布団に腰掛ける。

「響から聞いてると思うが…。君のお姉さん、つまり千歳の捜索を、任務と並行して行うことにした」

「そっか…ありがとね、提督…。」

 しかし、言葉とは裏腹に千代田の表情は沈んだままだ。

「…千代田?」

「でももう、いいんだよ…。

 私は千歳お姉にひどいこと言っちゃったし…きっとこれは、私への罰なんだよ。

 だからさ、そんなに私のこと考えなくていいよ…どうせこれからも、足引っ張るだけだし…」

「…千代田」

「私なんか能無しだし…いっそのこと解体ーーー」

 

「そんなことを言うなっ!!」

 気づけば俺は声を荒らげていた。

「千代田、そんなことを言ってはいけない。今、必死にみんなが、君を思って行動しているんだ。

 みんな、千代田にまた笑ってほしいから、という思いでしているんだ。

 だから、そんな言葉で、彼女たちの気持ちを裏切らないでくれ。これ以上…俺は千代田に、何も失って欲しくない。皆も同じさ」

「…てぇ、とく…」

「千代田。君の辛さも知っている。自暴自棄になってしまうことも分かる。でもそういう時こそ、前を向かなきゃ。な?

 みんなもいる。いつでも頼ってくれ。そのために、この場所があるんだから。」

「ひぐっ…えぐ…ぅわぁぁぁあああ!!」

 どうやら心が限界になってしまったようで、千代田は大声で泣き始めた。

「よしよし、大丈夫大丈夫、な?一歩ずつでいいから。千歳もきっと大丈夫だ、必ず見つかる」

 涙の止まらない千代田を抱き寄せながら、俺はそう声をかけた。

 二ヶ月のブランクは重い。元の所属先である第15鎮守府も、事件後数日間の捜索を行ったが、何もなかったという。しかし、千代田に希望を見出させること、今この状況ではそうすることこそ価値がある。

「ありがどぉ…でぇどぐぅ…」

「うんうん。ほら、もう大丈夫だから…」

 しばらく泣き続けた千代田だったが、その後はこの鎮守府に来て初めての微笑みを見せてくれた。一歩を踏み出せたことは大きい。

 

「じゃあ千代田、またね」

「いつでも来ていいよ」

「二人ともありがとう…じゃあ。」

 若干後ろ髪を引かれる思いで、俺たちは千代田の部屋をあとにした。とにかく、これからは千歳の安否確認の捜索にも力を注がなければならない。レイの検査のこともある。やることは多い。

「というわけだから頼むぞ、響…って。

 なんだ、拗ねてるのか」

「そんなんじゃないもん。拗ねてないし」

 とか言いつつ、隣を歩く響はふてくされている。

「なんか、その…悪かったな」

 …なんで謝ってるんだ、俺。まあでも、さっきの抱き寄せが、響を嫉妬させてしまったようだ。しょうがないと言えばしょうがないのだが…ん?

 響、お前何やってんだ。胸なんかいじって…。まさか嫉妬の先はそれか?確かに千代田のそれはかなりのアレだが…

 だめだ、これは見なかったことにしよう。

「…これくらい、僕も大きかったら…」

 おいやめてくれ。心の声ダダ漏れだーーー

 

 ーーー数時間後

「第二艦隊、只今帰還しました。資材を目標数確保しました。

 それと、千歳さんの件は、残念ながら…。」

「大丈夫だ、報告ありがとう。遠征も、別任務もお疲れ様。検査を受けたらゆっくり休んでくれ。」

「はい、失礼します。」

 収穫なしか。まあいきなり上手くは行かないし、想定内といえば想定内。しかし、安否が分からない以上、出来るだけ早く的確な行動をとることに越したことは無い。明日の出撃の時や、空いている時にスカイマスケッティで上空から捜索することも視野に入れなければーーー

 

 ーーー数日後

 千歳の捜索は一向に成果がないままだった。上空からの捜索も同じ。しかし、ここでやめたらなんの意味も無くなってしまう。

「みんな、すまんが今日も頼むぞ」

「謝ることはありません、大丈夫です!お任せ下さい!」

 出撃する本日の第一艦隊の榛名たちの表情に少しだけ救われた気がした。千代田も明日から、自身の鍛錬を再開することになっている。

「第一艦隊、出撃!」

 俺は彼女たちを見送り、鎮守府内の航空機発着場に向かった。そう、大本営経由で今日あの人が到着することになっているのだーーー

 

 ーーー発着場

 既に響、長門、ミライさんにレイが待機していた。大本営からの連絡によると、間もなくのはずだ。

「あれですかね?」

 ミライさんの指さす先、ジェット音を響かせながらこちらにやって来る一つの機影。

 間違いない、あれはチームEYES時代から改良を経た、テックスピナーKS-1だ!

 やがてテックスピナーは上空で減速すると、垂直離着陸機能を駆使して正確に着陸した。コックピットが開き、一人の青年が降りてくる。

「こんにちは、あなたが?」

「はい、お待たせしました。

 

 春野ムサシです」




今回も読んでいただきありがとうございました!

よければ評価や感想、気軽にお願いしますm(_ _)m

ではまた次回お会いしましょう!

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