笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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暑い→喉渇く→飲み物買う→金欠のスパイラル。

皆様も熱中症にはご注意を。

では本編どうぞ。


覚悟の瞳

 ーーー利根はまじまじとその3機を見つめた。

「それにしてもこの機体は…一体なんなんじゃ?」

「利根さんは多分知らないと思うけど、僕はかつて、CREW GUYSにいたことがあるんだ。」

「それは本当か…?」

「本当だよ。それで、この機体は、そこで使われていたものなんだよ。」

「そ、そうなのか…」

「うん。よかったら使ってみて」

「わ、わかったのじゃ…」ーーー

 

 ーーー利根は自室に帰り、改めてミライにもらった機体を見直した。それを触った時、不思議と形容し難い、強いて言うならばその機体にこもっている思念のようなものを感じた。

 気になった利根は、少しCREW GUYS、その中でもミライのいた、GUYS JAPANのことを調べてみた。

 すると、当時のGUYSの公式ブログが今もわずかながら一部残されており、一般公開されていた。そこに書いてあったことを、利根は隅々まで読んだ。

 GUYS JAPANは、歴代の防衛チームの中でも特に隊員同士、さらに当時地球の守りについていたウルトラマンメビウスとの絆が強いチームだったようだ。互いに助け合い、各々が成長を遂げ、地球を守りきった…そう書かれた文を読み、利根は手にしたガンウィンガーを見ながら、少し羨ましく思った。しかしすぐに、今羨んだばかりのGUYSのような所が、自分のすぐ近くにあることに気づいた。

「ここの生活…そういえばなんだか、心地よいのじゃ…筑摩も嬉しそうじゃ…吾輩も、もっと気楽に過ごしていいんじゃろうか…」

 その時。利根は手にしていたガンウィンガーから、ほんの一瞬だったが、熱を感じた。それはまるで、自分を後押しするかのような…。熱い、と言うより温かい、そんな感じがした。

「先程の思念と言い、今の熱と言い…」

 利根の脳内に、ミライの言葉が蘇る。

 

『きっと、この翼が君を助けてくれるから』

 

「憲兵殿の言葉は、本当かもしれんのぉ…」

 利根はふと外を見た。駆逐艦の娘たちが、きゃっきゃとはしゃいでいる。

「…吾輩も行ってみようかの」

 利根は部屋の席を立ち、ガンウィンガーを含めた3機を窓辺に綺麗に並べると、外へと、足取りは心なしか軽やかに進んで行った。

 そして、利根が部屋から出て、彼女の個人部屋は無人となり、静けさに包まれる、はずであるのだが…

 

「…ミライのやつ、どうやら上手くやってるようだな」

「あのレディも、なかなか見どころのあるやつだな、アミーゴ」

「当たり前でしょ?女は強いんだからね!…にしても、ミライくんとあの彼女…えーと…」

「利根さん、ですよ。でも確かに、なんか、いいムードですよね…」

「僕もこれからが楽しみになってきました!これは興味深いですよ!」

 

 どこからか聞こえてくる、小さな声たちが会話していた。しかしそれに気づく者は、当然ながらこの時誰もいなかったーーー

 

 ーーー駆逐艦と遊び終え、艦娘寮棟に戻った利根。そこへ、大量の書類を抱えた響が通る。

「響、よかったら吾輩も少し持つのじゃ。1人では大変であろう?」

「スパシーバ。利根さん、ありがとう」

 二人で協力して書類を運び、執務室へ到着する。ドアをノックする。

「…返事がないぞ?提督、どうしたのじゃ?」

「利根さん、ちょっと静かに…

 大丈夫。司令官はいるよ。ただ、今電話中みたいだね」

 声を聞き分けた響がそう伝える。会話が終わったタイミングを見計らって、2人は中に入った。

「電話か?随分と長かったのぉ。提督、書類なのじゃ」

「はは、気遣ってくれてありがとう。利根も手伝ってくれたんだな。」

「それで司令官、電話の内容は?」

「ああ、それな…利根」

「?」

 唐突に指名され、利根は戸惑う。

「これはもしかしたら、お前は聞かない方がいいのかも分からん…というのも、今運んできてくれたこの書類とも関係あるんだが、お前が前にいた第102泊地についての報告なんだ」

 第102泊地。そこは利根が過去に地獄を見た所。しかし、今の利根はそうヤワではない。一瞬躊躇いはしたものの、すぐに前を向き直り、答える。

 

「…とにかく話してくれ。どうしてもダメな時には言うのじゃ」

「…分かった。実はな…」ーーー

 

 ーーー利根が強くなったことを実感しつつ、俺は2人に話した。いずれ鎮守府全員に話すつもりだが。

 電話の相手は大本営。そしてその内容というのが、

 

「数日前から、第102泊地との一切の交信が途絶えている」

 

 との事だった。あちら側からの定期通信も来ない、大本営側から呼びかけても応答がないという。

「一体何があったのか、情報のない現時点では手がかりすら掴めない。とにかく、警戒を厳とせよ、と来たのだが…」

「そうか…」

「とにかく早急に話し合う必要がある。響、会議室に全員を集めてくれ。その書類をみんなで読み合わせよう」ーーー

 

 ーーーその後、会議室で書類をスライドに映し、ミライさんやレイも含め全員で読み合わせた。というのも、位置的にこの鎮守府は比較的第102泊地に近い方にあたり、それゆえにここを含めた周辺の複数の鎮守府は、調査艦隊を出して欲しいと要請が来ているのだ。

「という訳なんだが…。一応拒否権はあるが、どこかが出さなければ始まらない。少し話し合ってほしい」

 このように話し合いの時間が設けたのも、利根のことを気遣ってだ。利根の受けたことは数日前に知らされ、その重さは全員が知っており、それを知ったあの時の駆逐艦娘たちが謝りに来たというほどだ。

 利根もミライさんとの関わりで次第に復活してきており、駆逐艦娘たちの行動も「気にしないでいい、気遣ってくれてありがとう」と伝えられたくらいにはなっているが、それでもまだ完全復活とは行っていないのだ。

 そして話し合いの中…よく通る声が室内に響いた。

 

「提督はどう考えておるのじゃ…?艦隊を出すことについて。」

 

 利根だった。

 

「…俺は…はっきり言って利根、お前次第だと考えている」

 俺は利根の問いに、心の内を正直に言った。そして、利根からは…

 

「なら…吾輩が行く」

「利根…!?」

「ここで過ごしていて、皆がとても優しくて…吾輩も筑摩も嬉しかった。だが同時に、いつかこのような日が来るかもしれない、とも思っていたのじゃ…

 頼む提督…吾輩に行かせてくれ」

 利根はまっすぐにこちらを見つめてくる。覚悟を決めたということは明らかだ。

 俺は利根に質問した。

「利根…そこは君がかつて傷を負った所だ。それを分かった上で、だな?」

「もう覚悟は決めておる…今もいるかつての仲間だって、本当は罪はないのじゃ…頼む、行かせてくれ!」

 

 気付けば、会議室の全員が利根とのやり取りに注目していた。利根の覚悟は固いし、俺もそれを否定するつもりは…毛頭ない。

 

「分かった。

 我が鎮守府は、調査艦隊を出す。

 …利根、旗艦を頼めるか?」

 

「!!…任せてくれ!」

 

 そう答えた利根の顔は、これまで見たこともない、凛々しさに溢れた顔であった。

 艦隊の方は、ミイラ取りがミイラになる…なんてことのないように、ここを含めて参加を表明したいくつかの鎮守府が、3日後から1日ずつずらして出撃することになったーーー

 

 ーーー3日後 第102泊地付近某海域

「も、もうダメ…!」

「やむを得ません、撤退しましょう!」

「ハッハッハ!私ニ勝テルト思ウナヨ!!」

 先陣をきって出撃したのは、第41鎮守府。しかし、泊地にほど近い海域にて、第41鎮守府の調査艦隊は全員大破させられたーーー巨大な、鳥型の怪獣によって。空を縦横無尽に飛び回るその体には、やはり深海棲艦の装甲や砲塔があちこちに見て取れた。

 艦隊が撤退したことで、再びそこの海域は怪獣のワンマンステージとなる。その強さに酔いしれるかのように咆哮をあげる怪獣に、天から不気味な声が響いた。

 

「ふははは!いいぞ、行けぇアリゲラ!寄ってくる艦隊の雑魚どもを、そのままめちゃくちゃに叩きのめして、返り討ちにしてやるのだぁっ!!」

 

 その怪獣…アリゲラの背後数キロには、利根の一件の後着任した提督と、利根を知る者たちも含めた仲間たちが閉じ込められている、第102泊地がーーー




というわけで今回も最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m

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ではまた次回!

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