笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》 作:バスクランサー
すみません。
失踪とかはしませんし、出来るだけ急ぐので変わらぬご愛顧をよろしくお願いします。
それから、お気に入りが40件到達、ありがとうございます!
では本編、どうぞ。
ーーー翌日。
ミライは利根の部屋を訪れた。
「もしもし、利根さん?」
「お、おるのじゃ。入って、構わんぞ」
よかった、そう安堵しつつ、ミライはドアを開ける。
「そこに、座ってくれなのじゃ。今、お茶を用意するぞ…」
「お気遣いありがとうございます」
ミライは自然な笑顔で、座布団に座る。しばらくして、利根が急須と湯のみをお盆に載せてやって来た。
「…熱いから、気をつけてくれ」
「どうも」
湯のみを差し出し、ミライの向かい側に座る利根。湯のみのお茶を口に含むと、熱さの中にしっかりとお茶の旨みが広がる。
「美味しいです」
「…ありがとう、なのじゃ…」
ちなみに筑摩は、自ら志望した上で、提督の第二秘書艦の座に就いている。きっとこれで、この鎮守府なら安心できる、そう思えるだろう。
一方こちらの利根の方は、まだお茶の感想以外の会話がない。ただ、ミライは全く動じていない。かつて尊敬する兄からは、「人間の心は複雑だ」、と教わっていたからだ。
「な、なんか…話、せんと…そ、その…」
利根は必死に話題を探しているようだ。だが、どんなに利根が考えても、彼女の頭にいい案は浮かばない。
「その…すまん、なのじゃ…」
申し訳なさそうに俯く利根。過去の恐怖からか、もう既に若干涙声になっている。そんな利根に、ミライは優しく話し掛けた。
「じゃあ…一緒に食堂でも行って、なにか食べませんか?」
顔を上げる利根。しかし、食堂は多くの艦娘たちが常にいる場所と利根は認識しているため、思わず躊躇ってしまう。
「ど、どうしようかのぉ…」
「大丈夫です、焦らないで。行きたくなかったら、断ってもいいですからね」
ミライの気遣いに対し、利根は…
「いや、行ってみることにするのじゃ」
勇気を振り絞って、そう答えたーーー
ーーー食堂
比較的、その時間帯は空いていた。だが、利根のためにもミライは間隔のあいた窓側の席を選んだ。パッと見カップルにも見えなく無い2人は、メニューを見て考え込んでいる。だがその様子を見ると、ミライは比較的楽に選んでいるが、利根は周りを頻繁に気にしている。
「大丈夫かな…」
ミライが心配する中、時間はかかったにしろ、利根はなんとかメニューを決めた。あとは運ばれてくるのを待つだけ、だったのだが…
「あ。憲兵さん、何か食べるの…?」
「ご一緒していいですかー?」
駆逐艦から早くも人気を獲得したミライに、霰、大潮が駆け寄ってきたのだ。さらにその後からは…
「みなさーん、待ってくださーい!す、すみませーん!」
「補給が終わるなりすぐ…2人とも、失礼ですよ?」
阿武隈、不知火までもが来たのだ。遠征帰還後のようだ。
しかしこれだけ一気に人数が集まってきた以上、利根がパニックになってしまわないか、ミライは気が気でなくなってしまった。思わず利根を注視した、そしてその時彼の瞳に映ったのは…
「…その、良かったら…そこの机を動かして、みんなで食べるか?」
「…!?」
驚くミライ。利根がぎこちなくも、みんなと一緒に食べようと誘っているのだ。もちろん駆逐艦達は大喜び、阿武隈もお礼を言いつつ嬉しそうだ。そんな中、ミライはひたすら利根のことを考えていた。
過去の忌まわしい記憶と経験、その傷は今でも利根の心に深く残っていることは間違いない。しかし、それでも彼女は、大本営在籍時に解体ではなく、まだ艦娘として生きる道を選んだ。そこからも、ミライは利根の心の奥底にある強さに気づいていた。
しかし、今利根は、ミライに頼らず、自らの力で前への1歩を踏み出した。もちろんトラウマによる恐怖感もあっただろう。でも、今ミライが見ているこの光景は、他でもない利根自身が未来への道しるべを見つけたからこそあるものだ。
ミライは、利根の心の強さが、自分の想像以上であることを知った。そして確信したのだ、「利根さんならきっと、自分自身で未来を掴み取れる」と。
だが、利根が絶えず恐怖感と戦っていることには変わりない。しかし、一生懸命彼女が戦っているからこそ、ミライも全力で利根をサポートするのだ。
自らの兄で宇宙警備隊隊長のゾフィーは、当時科学特捜隊に在籍していた、かつてGUYSだった時のミライの上司・サコミズに、「やがて君たちも我々と肩を並べ、星々の狭間を駆ける時が来るだろう。 それまでは、我々が君たちの世界の盾になろう。」と言った。状況は違えど、ウルトラマンたちの心は変わらない。艦娘も含め、人間の持つ限りない強さと可能性を信じ、ウルトラマンは人間を助け、人間と共に未来へ進むのだ。
利根を優しく導き、自然な笑顔で接する。利根も、ミライの支えが分かったのか、この鎮守府に来て初めての笑顔を見せた。
賑やかながら穏やかな会食風景。その風景を食堂入り口見守っているのは提督と響、筑摩。
「…ここは…しばらく邪魔しないでおこうか」
「それがいいね。ハラショー」
「姉さんのあんな笑顔…もしかしたら私も初めて見たかもしれません」
駆逐艦たちから見たら年上のカッコイイお姉さんとお兄さんが揃っている状況。話は盛り上がりを見せ、利根も本来の元気を取り戻していった。
その後も、食後にはみんなで外で遊んだり、そうして疲れた娘たちを寝かしつけたりと、利根は関わりを深めていったーーー
ーーー「…という感じです。」
「そうか、ありがとう。こちらも、今はもう就寝中だが、筑摩がこちらにだいぶ心を開いてくれるようになった。」
その夜執務室で、俺とミライさんで互いの状況を確認。ミライさんの方も着実に進んでいるようで何よりだ。
「そうですか。
ですが、利根さんはまだぎこちない面が残っています。また明日、少しづつでも進めるように手助けをしていくつもりです」
「そうだな。心からの笑顔を取り戻すまでには、まだまだ時間がかかりそうだな。」ーーー
ーーーそう、事態はそう簡単には好転しない。
数日を経て、筑摩は完全復活と言ってもいい状態になり、利根も仲間達との信頼関係を強固に築き、なんとか提督である俺にも接せるようにはなった。
だがまだ利根には、出撃への恐怖を克服するという壁が立ちはだかっていた。工廠でよく、利根が1人でカタパルトを入念に整備している所を見かける。それを見かけた明石や夕張が止めたり、もう大丈夫だと説明しても、毎回すぐにはやめようとしなかった。
そして、何度か出撃をさせた際も…
「すまん提督、憲兵殿…また、無理じゃった…」
航空機を装備している時は決まって自信をなくし、本来のパフォーマンスが出来なくて、痛々しい姿で帰ってきては落胆していく…それが数度続いた。
俺も、響も、筑摩も、毎回それについて悩んでいた。このままいたずらに出撃を繰り返せば、利根は余計スパイラルにはまってしまうからだ。利根もなんとかなりたいとは思っている、それは俺達もわかっている。しかし、いつまでもこのまま続かせるわけにも行かないのだーーー
ーーーそんなある日。唐突にミライさんが質問をしてきた。
「この鎮守府って…かつての防衛チームの戦闘機を使ってるんですよね?」
「ああ」
「…それって、索敵とか観測とか爆撃とかの種類には…」
「いや、チームのメカは汎用性が非常に高く、一機あればそれで何役もこなせる。…どうしたんだ、そんなことを聞いて…?」
「提督さん。僕に一つ、考えがあるんです」ーーー
ーーー翌日 工廠
「ミライさん、頼まれていたものはこちらになります。」
「うわぁ…すごいです!夕張さん、ありがとうございます!」
「い、いいですよ、そんなぁ…」
満面の笑みで感謝を伝えるミライに、ちょっぴり赤面する夕張。この日、ミライはあるものを受け取りに、そしてそれを利根に渡すために工廠に赴いていたのだ。
「…それで、今利根さんは?」
「…今日もいつもの所で、カタパルトの整備をしています」
「分かった、すぐ行く。ありがとう!」ーーー
ーーー「…はぁ、はぁ、はぁ…」
出撃を終えたばかりで、息の上がっている利根。そこへ…
「利根さん?」
ミライが声をかけた。
「ひゃっ!?び、びっくりさせるでない…」
「あ、ごめんなさい…」
利根が落ち着きを取り戻したのを確認し、ミライは利根にあるものを渡した。
「…これ、は…?」
「かつてあった防衛チーム・CREW GUYSの戦闘機、ガンウィンガー、ガンローダー、ガンブースターです。」
「…あ、ありがとうなのじゃ…。
ところで、なぜこれを吾輩に…?」
「聞いたんです。利根さんが、自信をなくしているって。」
「………」
自覚はあるのか、利根は俯く。そんな利根に、ミライは…
「利根さん。今度よかったらこれを使ってみてくれませんか?」
「吾輩が、か?でも、おそらく上手く使えんぞ…?」
「大丈夫。」
ミライは断言した。
「きっと、この翼が君を助けてくれますから」ーーー
今回も読んでいただきありがとうございました!
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