でもなんか、評価やたらと貰ってるし。
自分も感想欄で、最後までの構想を思いついた、とか言っちゃったし。
なので、やりたい所だけ、やって終わりにします。
一応、第一章の終わりまでは書くよ!
という訳で蛇足編、はーじまーるよー。
称えよ、王を
「マスター。お前はどういうサーヴァントを下僕として、求めんとしているのだ?」
現在、ロクサーヌとそのサーヴァント二人は、召喚システムフェイトの前に立ち、召喚の準備ができるまで待機をしていた。
現在、カルデアは人員が不足している。
次の特異点にそなえ、もっと追加のサーヴァント召喚をしておこう、という訳である。
召喚システムの調整は現在、レオナルドが行っている最中だ。
そんな中、ロクサーヌのサーヴァントの一人、アンデルセンがマスターに問う。
アンデルセンの問いに、ロクサーヌは首をかしげた。
「んー。おれについてきてくれるサーヴァントがいいかな」
「随分と低い望みだこと。サーヴァントに求めるものとしては間違っていないとは言え、そんな心持ちで人理修復を成せるとでも思っているのか?」
確かに、命令に従ってくれるサーヴァントというのは、それだけで賞賛に値する。
人理修復という大義がある以上、ほとんどのサーヴァントはカルデアに協力することだろう。
とはいえ、それでも全ての命令に、サーヴァントが従う訳ではない。
サーヴァントとはいえ、たいていは人間だ。
そこには彼らなりの考えがある。従いたくない命令や、したくない行動があるだろう。
最終目標が同じと言えど、その過程がみな、一致するわけではないのだ。
そういった点では、ここのサーヴァント二人は優秀だ。カルナやアンデルセンは、令呪なしに命令するだけで自害するようなサーヴァントである。彼らまでの忠誠心をもつような、忠実なサーヴァントは貴重だろう。
だが、イエスマンのサーヴァントだけで、はたして人理修復がなるのだろうか?
「マスター、お前は怖いのだな。他者を率いて人類の勝利を目指すことに、今更恐れをなすのか」
「うん。こわいよ。ほんとはね。でも、これからは大じょうぶ」
カルナやアンデルセンが完璧なサーヴァント、という訳でもない。
カルナは正直すぎて人間関係を構築するのが難しく。アンデルセンは物書き故、てんで戦闘に向いていない。
このメンバーだけで、人理修復は無理があるだろう。
それでもロクサーヌにとって、二人はとても心強いサーヴァントである。
決して裏切らない忠実な僕であり、互いを見抜く仲でもある。どんな結末が待っていようと、二人は最後まで主人を見捨てることはないだろう。
例え、他のサーヴァントが裏切ることはあっても、この二人は決して裏切らない、はずだ。
だから、この二人がいれば、他のサーヴァントとも上手くやっていける気がすると。ロクサーヌはそう思っているのだ。
とはいえ―
「ああ、でも、王さまのサーヴァントがきてほしい、とはおもうかな」
「ほう、どういうつもりだ?」
「所長は、おれの王さまだったけど、死んじゃったんだ。だからといってはちょっと、アレかもしれないけど。新しい、おれの王さまがいてもいいっておもったんだ。アレキサンダーみたいな王さまが、いてもいいかなーって」
アレキサンダー、またの名はイスカンダル。
マケドニアの王であり、アリストテレスの弟子である。そして何より、人類史上ナンバー2の征服者である。
彼をサーヴァントとして呼ぶことができれば、数多の人を率いる王として。優れた統治者として、恐らく活躍はするだろう。
(人理を修復するマスターが、誰かの下僕となることを許容するのか。であるのならば、その先は破滅だろう)
だが、そうするならば待ち受けるのは人類の敗北だろうということを、カルナは見抜いていた。
マスターはサーヴァントを頼るべきだが、従うべきではないのだ。
サーヴァントは所詮、過去の人間だ。その栄光に縋りつくだけでは、所詮その程度の成果しか得られまい。
人理修復は未来を勝ち取るための戦いで、他に類を見ない戦いでもあるのだ。
サーヴァントにできないことを、マスターは求められているのだった。
ついでに補足すると、アレキサンダーは偉大な夢をかかげながら、夢半ばで潰えた王でもある。そんな彼に期待しすぎるのも悪かろう。
「それは悪手だと思うがな。とはいえ、発想自体は悪くない。人の上に立つ素質を持つ者を、優れた軍略を持つサーヴァントを呼び、従えることができれば、この戦いも大分、楽にはなるだろうさ」
カルナは黙っていたが、アンデルセンが補足する。
この場合、求められる人材は王というより、諸葛孔明のような軍師だろうか。
愚鈍な王に仕えても、死後も国を守り通そうとした彼のような人材なら。カルデアでも良きサーヴァントとして十分に活躍するだろう。
そうしたサーヴァントを呼べるなら、呼びたいところであった。
「それか、アーサー王をよべたら、楽になったのだけど。しょくばい、もらっとけばよかったなあ」
「それは色んな意味で高望みだ。諦めろ、マスター」
まあ、どんなサーヴァントを呼ぶにしろ触媒が無いと、とても呼ぶことはできないのだが。
カルデアのシステムフェイトは、触媒と言う縁を頼りにする召喚式をしている。
だが、英霊に縁のある触媒というものは魔術師の研究対象であり、往々にして高価で入手困難なものである。
カルデアもいくつかは確保していたのだが、それも爆破テロで失われてしまっていた。
優れたサーヴァントの召喚は、今の所、対して望めそうにないのであった。
『こちらは準備完了だ。いつでも呼んでいいよー』
と、レオナルドの声が管制塔から聞こえる。
さあ、いよいよ召喚だ。
用いる触媒は、冬木でクー・フーリンからもらった、ルーンの刻まれた石。
これを用いれば、ケルト神話の大英雄、クー・フーリンが呼べるはずであった。
何しろ、本人直筆のサインのようなものだ。
これで本人でなく、関係者やらが出ることは考えにくい。
「
何しろ、クー・フーリンなのだ。
ケルト版ヘラクレスとも呼べる彼は、数多の伝説をもった最強クラスの英雄だ。
必ず心臓に中る槍を持ち。致命傷を負って尚、ひたすらに戦い続けた英雄でもある。
カルナと比べれば神秘の面で見劣りはするだろうが。とはいえ、しぶとさなら二人は互角といってもいいだろう。
それぐらい普通の聖杯戦争に呼べば、優勝候補の筆頭になるぐらいには、破格の大英雄なのだ。
「う、くぅ」
『すごい魔力値だな。当然の話なのだろうが。しかし、これは―』
ロクサーヌは魔術回路を回しながら考える。
彼女は知っている。ランサーのサーヴァントとして呼ばれる彼は、自分を裏切ることはないだろう、と。
生前は悪質な王に仕え、死後は外道神父にこき使われたり、出る作品を転々としながら、どんな主にもしっかり従った男だ。
彼もまた十分信頼に値する、サーヴァントとして一流の存在であった。
彼がキャスターとして呼ばれる可能性もあるのだが、まあ、それはそれで悪くない。
キャスターとはいえ、大英雄は大英雄だし、平凡なサーヴァントを圧倒する力を持っている。
それに彼が先導者としてこれからも、未熟な自分を導いてくれるのなら。それは望むところでもある。
あとは、まさかとは思うが―
「クー・フーリン、召喚に応じ参上した。お前はメイヴ、ではないみたいだな」
望み通りというべきか、クー・フーリンは槍を持って現界していた。
しかし、ロクサーヌの良く見知った
真紅の槍は、歪に捻じれている。
その露出した肌はルーンに彩られ、血に飢えている。
その血色の眼は無機質に、こちらを見据えている。
その姿は人なれど、まさに化物。
だが、彼の狂気というより、別の暴力を表現した、その姿は。
「バーサーカー?」
「ああ、そうらしいな。俺の色がお前に関係あるのか?」
クー・フーリンという英雄は、確かにバーサーカーとしての側面も持っている。
とはいえこれは明らかに違う。
クー・フーリンという英雄が本来持ちえない、歪まされた像であるのを、ロクサーヌは知っていた。
これもまた、ロクサーヌの知る、クー・フーリンの一つなのだが。
彼がこうして召喚されることはおかしかった。
「ううん。ありがとう。クー・フーリン。きてくれてうれしいよ」
「そうか」
それでも、召喚されたものは仕方ないと、彼女は納得するのであった。
まあ、捻じれた彼もまた、信頼に値する存在ではあるのだし。
そうして、彼と契約を交わすのであった。
「おい、マスター。これはどういうことだ」
「え。何?」
「え。何? じゃない。コイツがクー・フーリンだというのは俺にも分かる。だがなんだ!この“アテクシが考えたチョイ悪系な理想の彼ぴっぴ“みたいな姿は! もの凄く気持ち悪いぞ! これではお前とそう変わらん。俺の夢を返してくれ!」
とはいえ、アンデルセンからして、このクー・フーリンは大いに不満足だったようだ。
彼も一介のメルヘン作家である。英雄に対して理想の姿と言う物を、勝手に持っているのだった。
陽気な気の良い兄ちゃんで、詩人の頼みを苦手とする。そんなクー・フーリンが良かったのに。
「えっと。でも、つよいよ?」
「分からん奴だな。ああ、そうか。お前がそういう奴だから、コレが召喚されたということか? 全く忌々しいマスターだこった」
とはいえ、ロクサーヌ的には“当たり“のサーヴァントなのだ。
歪められたとはいえ偽物ではない、本物のクー・フーリンなのだ。
スキルや宝具は強力だし、バーサーカーのクラスとその格の割には、燃費も良いようだ。
カルナとの差別化も十分にできているだろう。
ロクサーヌには何が悪いのか、良く分かってなかったのだった。
「ふむ。彼は一体どういうことなのかな? 私にも説明してくれないかい?」
と、レオナルドが管制塔から戻ってきた。
そして、ロクサーヌへと問う。彼は一体何者であるのかと。
計測値からして、クー・フーリンの召喚はおかしかったのだ。
ロクサーヌとアンデルセン、そしてカルナは正体を見ぬいているようだが、レオナルドは彼のことをそこまで知らないのだ。
「えっと、このクー・フーリンは。メイヴの影響を受けた、“わたしのかんがえたりそうのクー・フーリン”なんです」
「コノトの女王メイヴか。君の話だと、第五特異点では彼女が控えているらしいが。それと関係する話のようだね」
「うん。えーと。たしか、おれのしるかぎりでは、しょうかんされるサーヴァントは、しょうかんしゃのイメージによってすがたが左右できる、はずなんです」
第五特異点アメリカで聖杯を所有するサーヴァント、女王メイヴ。
かつてケルト神話においてクー・フーリンと因縁を持ち、彼を死に追いやった、純粋にした悪なる女王。
彼女が聖杯に願ったことは、クー・フーリンを邪悪に染め上げ、我が王とすることだった。
そうした願いの結果が、クー・フーリン・オルタというサーヴァントであった。
「へえ。そうなると、これは君の理想としたクー・フーリンの姿でもあるのな?」
「えー? いや、そうじゃないはずですけど。おれはふつうに、ランサーとしてきてほしかったですし。でも、おれは、かれをしってましたけど。なんでかな」
「まあ、このマスターとしての縁だろうな。そうとしか考えられん」
ちなみに、ロクサーヌの言っていることは聖杯での召喚の話しだ。
残念なことに、このシステムの召喚は聖杯ほどの融通はきかないようだ。
触媒があれば召喚するサーヴァントを特定できるが、それも完璧ではないのだろう。
ロクサーヌという召喚者の性質が、このサーヴァントを引き出したのだった。
「だが、このセンスはなあ。ちょっと私にも分かんないね。どういうセンスをしていたらこういう形を作ろうとするのかな。ロクサーヌちゃんは良いデザインなのに。これがどうして呼ばれたのか気になるところだね」
「製作者の品の違いだな。これを作ったのはその程度の女だということだろう。何せ、実在の女の考えることなど、大抵はろくでもないことだからな。あの女はロクデナシの筆頭に違いない」
そうして、クー・フーリン・オルタのデザインについて話し合う芸術家二人。
議論の対象の男は、無関心にマスターを見つめている。
作られた本人がそこにいるのに、本人について品定めをするのはどうなのだろうか。
そう思いながら、それを口にしないカルナであった。
ロマニ・アーキマンは、オルガマリー所長の亡き後、カルデアの現状トップとして忙しい日々を送っている。
何しろ爆破テロの所為で、人員が全く足りてないのだ。
休む暇もゆっくりする暇も、中々得られないでいる。
「ねえ。今からでも止めにしない?」
「ロマニ。きもちはわかるけど、めめしいよ?」
「いや、そうなんだけどさあ」
「安心しろ。これで上手くいかなくてもカルデアが滅ぶだけだ。人類は滅亡せん」
「それは余計に安心できないなあ」
そんな彼であるが、今日は一風変わった仕事を請け負っていた。
その仕事とは、彼自身がサーヴァント召喚の触媒となることであった。現在、彼はシステムフェイトの、召喚サークルの傍らに立っていた。
「
さて、どうしてこうなったかということを、説明しよう。
ことはロクサーヌたちが次の特異点、フランスでの攻略に頭を悩ませていたことに起因する。
フランスで待ち受けるは恐らく、“青髭”ジル・ド・レェ。
まだ人理修復は始まったばかりだし、ここは簡単な特異点、と言いたいところなのだが。
そう上手くはいかないだろう、というのがカルデアの意見の一致であった。
何しろ相手は、外道に堕ちたとはいえ元帥の位置にまで上り詰めた軍人にして、フランス救国の英雄である。
ロクサーヌの不確定情報によると、相手は多数のサーヴァントを従えている上、純粋なる竜種たるファブニールを従えているようだ。
冬木でのアルトリアも多数の部下を従えていたが、これは質も量も段違いである。
これを甘く見ろ、というのは楽観がすぎるのであった。
打開の作戦は一応立ててはある。
のだが、もう一つこちらの勝利を導くような、決定的な“何か”が欲しいと感じていたのだった。
そうした中、ロクサーヌがある提案をした。
ロマニを触媒とすれば、知恵を持った強力なサーヴァントが召喚できるのではないか、と。
現在のロクサーヌの精神状況も良好だ。
あと一人ぐらい、次の特異点までにサーヴァントをそれで、呼んでみてはどうかということだ。
さて、カルデアのトップ勢が知るように、ロマニ・アーキマンはただの人間ではない。
キャスター、“魔術王”ソロモン。
かつて旧約聖書に語られ、72柱の魔神を従えた王。
そのサーヴァントはかつて、第四次聖杯戦争で勝利をおさめ、聖杯に“ただの人間”としての生を望んだ。
それがロマニ・アーキマンという人間の正体であった。
ロクサーヌが知る限り、彼の縁者は非常に優秀な人物が多い。
例えば、彼の父親であるダビデ王。
そしてこれは縁と言っていいか分からないが、規格外の千里眼により、互いを見通す関係ではある。“花の魔術師”マーリン、そして“英雄王“ギルガメッシュ。
その人格はともかく、能力的には最高峰の実力者たちだ。
当然、ロマニはこの意見に反対した。彼らをよく知る者として、当然だった。
何せ、連中はどいつもこいつも、人格的に大ろくでなしなのだから。そんなやつと直接会うのは、本当に御免であったのだ。
そんなやつらが、ロクサーヌの”サーヴァント”を務めるのだろうかと、そう思っていたのだ。
それに、そんな奴らがいても、現状のカルデアには邪魔だろうと思ったのだ。
自分も人のことはそんなに言えないが、こっちが忙しい中でもサボろうとする連中である。
そんなやつらを呼んでどうするというのか。
だが、ロクサーヌの意見に賛成したのが、カルナとアンデルセンであった。
「お前の懸念はもっともだ。だが、マスターが彼らに認められる必要があるのも確かだろう」
「
人理を救うということは、人類の良いも悪いも飲み込まねばならない。
すごく簡単にいえば、ギルガメッシュに認められない程度の人間では、人理修復は不可能なのだ。
厳しい条件だが、ロクサーヌもいずれ、その試験を受けなければならないだろう。
もちろん、今すぐにする必要はどこにもない。
しかし、今すぐに認められる必要もどこにもないわけであって。
まあ、なんだ。今の段階で誰を呼んでも、そんなに悪い賭けではない、というのがサーヴァント二人の意見だった。
結局、ロマニは投げやりになりながら、その意見を承諾した。
ロクサーヌが前向きで、よく考えた上での決断をしていた、というのもあった。
上手くいくかはわからないが、彼女を信じてやることにしたのだ。
しかし、彼はすぐにその考えを後悔することになる。
「随分とつまらぬ些時に、
ロクサーヌはそのサーヴァントを見るや、すぐさまひれ伏した。
そのサーヴァントは黄金だった。
悪趣味なまでに光輝き、なおかつその威風はどこまでも本物である。
このサーヴァントは、心も体も全て、本物の輝きでできていた。
“英雄王“ギルガメッシュ。
人類史最古の英雄にして主人公、名君でありながら暴君でもある。
最強にして、災厄の存在であった。
「貴様の存在は、それだけで万死に値する。今ここで死んでおけ」
ギルガメッシュの背後の空間が揺らめき、一振りの剣が現れる。
その剣に切っ先はなく、黄金の磔刑の図で飾られた剣であった。
ギルガメッシュはその剣の柄を持つと、薄く笑いながら大げさに振りかぶり、そのままロクサーヌ目がけて振り下ろした。
「なるほど。人類の裁定者とは知っていたが。今、この状況においても裁定しようとするとは。だが、その女はオレのマスターだ。ここでは剣を収めるがいい」
「まあ、こうなって当然だな。おい、サーヴァントの自覚があるなら、その悪趣味な剣を仕舞っておけ。もっとも、お前がその自覚なんぞ、持っている訳ないだろうがな! 0点!」
だが、それをこの二人が見過ごすわけはない。
カルナはその槍をもって、剣を寸でのところで止めていた。
アンデルセンは武器を持たないが、出来る限りの口撃をしていた。
クー・フーリンも、その槍を構え、先をギルガメッシュに向けていた。
「采配は三流なれど、仕える者は本物ときたか。往々にして貴様の存在は度し難い」
ギルガメッシュはカルナとアンデルセンを、そしてロマニの姿を見ると、口を喜悦に歪ませた。
「だが良い。我は寛容だ。貴様等の存在を、特別に赦すとしよう」
そう言うと剣を背後に仕舞い、ロクサーヌとの契約を行った。
「精々、拙い貴様の思惑で、この我を楽しませるが良い、模造品。貴様の道中など本来、我が観るに値せぬが。此度を招いた輩の結末には興が湧いた。この我が見届けてやろう」
そういうと、ギルガメッシュは霊体となり、どこかへ消えてしまった。
嵐が過ぎ去ると、ロクサーヌは姿勢をくずし、へたりこんだ。
「こわかったー」
ロマニはそれを見ると、大きなため息をついた。
「だから嫌だったんだ。もうこのようなことは止めてくれ。こっちはヒヤヒヤしたよ」
「うん。でも、これで十分、かなあ」
ギルガメッシュは全サーヴァントの中でも、最強の存在なのだ。
ロクサーヌが知る”作品”がいくら最新作を出しても、なお最強の存在。
それが、ギルガメッシュだ。
仲間とは言い難いが、こちらの活躍次第では、何かしらの手を出すことも十分ありうるだろう。
「まさかと思うけど、ロクサーヌちゃん。ギルガメッシュをどうにかできると思ってないよね?」
「え? まさか?」
とはいえ彼が手を出す、といっても、それはちょっかいのようなものだ。
ギルガメッシュは暴君だ。
どう考えても、こちらの不利益になることの方が多いだろう。
普段でも、こちらの戦闘中に少なくない魔力消費を行いながらも、傍観することがほとんどだろうと、予想はつく。
「でもさいあく、きりすてられるとはおもっていたけど。まだ、ためされているみたいだから。まだ、だいじょうぶ」
「だろうね。ハァ」
それがどれだけ、君の精神に悪影響を与えることやら。心だって、有限の資源なんだよ?
そう思うと、ロマニはなんだかやりきれなかった。
本当に大丈夫なのだろうか。
「安心していい。マスターはあれでも、多少なりとも認められているようだった。最後までマスターの威勢のよさが持つかはオレには分からないが。これで最後までは、戦えることだろう」
ギルガメッシュという存在を多少なりとも知るカルナは、彼のマスターに対する態度に、無表情のまま驚いているようであった。
かつての己のマスターがこの状況であれば、彼は本気で殺しにかかっていただろう。
そう考えると、今のマスターへの態度は好感触であった。
「ま、せいぜい頑張ることだな。主人公。アレに認められてこそ、真の主人公と言えるのだからな」
英雄王の裁定もまた、人類に対する試練なのだ。
これも試練、あれも試練。
人理修復は、修復が成るとも、試練が続く。
これは、そんな続きの物語の断片である。
本案では、ダビデを呼び出すつもりでした。
ちゃんとした二次小説にするなら、そっちの方が面白そうですしね。
とはいえ、真面目に書く気力がないし。英雄王が来ても面白そうなので、こうなりました。