神転オリ主で人理修復をする話   作:倉木学人

5 / 10
最初は、この小説は四話で終える予定だったのですがね。

でもなんか、評価やたらと貰ってるし。
自分も感想欄で、最後までの構想を思いついた、とか言っちゃったし。

なので、やりたい所だけ、やって終わりにします。
一応、第一章の終わりまでは書くよ!
という訳で蛇足編、はーじまーるよー。


蛇足編
称えよ、王を


「マスター。お前はどういうサーヴァントを下僕として、求めんとしているのだ?」

 

 現在、ロクサーヌとそのサーヴァント二人は、召喚システムフェイトの前に立ち、召喚の準備ができるまで待機をしていた。

 

 現在、カルデアは人員が不足している。

 次の特異点にそなえ、もっと追加のサーヴァント召喚をしておこう、という訳である。

 召喚システムの調整は現在、レオナルドが行っている最中だ。

 

 そんな中、ロクサーヌのサーヴァントの一人、アンデルセンがマスターに問う。

 アンデルセンの問いに、ロクサーヌは首をかしげた。

 

「んー。おれについてきてくれるサーヴァントがいいかな」

「随分と低い望みだこと。サーヴァントに求めるものとしては間違っていないとは言え、そんな心持ちで人理修復を成せるとでも思っているのか?」

 

 確かに、命令に従ってくれるサーヴァントというのは、それだけで賞賛に値する。

 人理修復という大義がある以上、ほとんどのサーヴァントはカルデアに協力することだろう。

 とはいえ、それでも全ての命令に、サーヴァントが従う訳ではない。

 

 サーヴァントとはいえ、たいていは人間だ。

 そこには彼らなりの考えがある。従いたくない命令や、したくない行動があるだろう。

 最終目標が同じと言えど、その過程がみな、一致するわけではないのだ。

 

 そういった点では、ここのサーヴァント二人は優秀だ。カルナやアンデルセンは、令呪なしに命令するだけで自害するようなサーヴァントである。彼らまでの忠誠心をもつような、忠実なサーヴァントは貴重だろう。

 

 だが、イエスマンのサーヴァントだけで、はたして人理修復がなるのだろうか?

 

「マスター、お前は怖いのだな。他者を率いて人類の勝利を目指すことに、今更恐れをなすのか」

「うん。こわいよ。ほんとはね。でも、これからは大じょうぶ」

 

 カルナやアンデルセンが完璧なサーヴァント、という訳でもない。

 カルナは正直すぎて人間関係を構築するのが難しく。アンデルセンは物書き故、てんで戦闘に向いていない。

 このメンバーだけで、人理修復は無理があるだろう。

 

 それでもロクサーヌにとって、二人はとても心強いサーヴァントである。

 決して裏切らない忠実な僕であり、互いを見抜く仲でもある。どんな結末が待っていようと、二人は最後まで主人を見捨てることはないだろう。

 例え、他のサーヴァントが裏切ることはあっても、この二人は決して裏切らない、はずだ。

 

 だから、この二人がいれば、他のサーヴァントとも上手くやっていける気がすると。ロクサーヌはそう思っているのだ。

 

 とはいえ―

 

「ああ、でも、王さまのサーヴァントがきてほしい、とはおもうかな」

「ほう、どういうつもりだ?」

「所長は、おれの王さまだったけど、死んじゃったんだ。だからといってはちょっと、アレかもしれないけど。新しい、おれの王さまがいてもいいっておもったんだ。アレキサンダーみたいな王さまが、いてもいいかなーって」

 

 アレキサンダー、またの名はイスカンダル。

 マケドニアの王であり、アリストテレスの弟子である。そして何より、人類史上ナンバー2の征服者である。

 彼をサーヴァントとして呼ぶことができれば、数多の人を率いる王として。優れた統治者として、恐らく活躍はするだろう。

 

(人理を修復するマスターが、誰かの下僕となることを許容するのか。であるのならば、その先は破滅だろう)

 

  だが、そうするならば待ち受けるのは人類の敗北だろうということを、カルナは見抜いていた。

 マスターはサーヴァントを頼るべきだが、従うべきではないのだ。

 サーヴァントは所詮、過去の人間だ。その栄光に縋りつくだけでは、所詮その程度の成果しか得られまい。

 

 人理修復は未来を勝ち取るための戦いで、他に類を見ない戦いでもあるのだ。

 サーヴァントにできないことを、マスターは求められているのだった。

 

 ついでに補足すると、アレキサンダーは偉大な夢をかかげながら、夢半ばで潰えた王でもある。そんな彼に期待しすぎるのも悪かろう。

 

「それは悪手だと思うがな。とはいえ、発想自体は悪くない。人の上に立つ素質を持つ者を、優れた軍略を持つサーヴァントを呼び、従えることができれば、この戦いも大分、楽にはなるだろうさ」

 

 カルナは黙っていたが、アンデルセンが補足する。

 この場合、求められる人材は王というより、諸葛孔明のような軍師だろうか。

 愚鈍な王に仕えても、死後も国を守り通そうとした彼のような人材なら。カルデアでも良きサーヴァントとして十分に活躍するだろう。

 そうしたサーヴァントを呼べるなら、呼びたいところであった。

 

「それか、アーサー王をよべたら、楽になったのだけど。しょくばい、もらっとけばよかったなあ」

「それは色んな意味で高望みだ。諦めろ、マスター」

 

 まあ、どんなサーヴァントを呼ぶにしろ触媒が無いと、とても呼ぶことはできないのだが。

 

 カルデアのシステムフェイトは、触媒と言う縁を頼りにする召喚式をしている。

 

 だが、英霊に縁のある触媒というものは魔術師の研究対象であり、往々にして高価で入手困難なものである。

 カルデアもいくつかは確保していたのだが、それも爆破テロで失われてしまっていた。

 

優れたサーヴァントの召喚は、今の所、対して望めそうにないのであった。

 

『こちらは準備完了だ。いつでも呼んでいいよー』

 

 と、レオナルドの声が管制塔から聞こえる。

 

 さあ、いよいよ召喚だ。

 用いる触媒は、冬木でクー・フーリンからもらった、ルーンの刻まれた石。

 これを用いれば、ケルト神話の大英雄、クー・フーリンが呼べるはずであった。

 何しろ、本人直筆のサインのようなものだ。

 これで本人でなく、関係者やらが出ることは考えにくい。

 

告げる(セット)

 

 何しろ、クー・フーリンなのだ。

 ケルト版ヘラクレスとも呼べる彼は、数多の伝説をもった最強クラスの英雄だ。

 必ず心臓に中る槍を持ち。致命傷を負って尚、ひたすらに戦い続けた英雄でもある。

 カルナと比べれば神秘の面で見劣りはするだろうが。とはいえ、しぶとさなら二人は互角といってもいいだろう。

 それぐらい普通の聖杯戦争に呼べば、優勝候補の筆頭になるぐらいには、破格の大英雄なのだ。

 

「う、くぅ」

『すごい魔力値だな。当然の話なのだろうが。しかし、これは―』

 

 ロクサーヌは魔術回路を回しながら考える。

 彼女は知っている。ランサーのサーヴァントとして呼ばれる彼は、自分を裏切ることはないだろう、と。

 

 生前は悪質な王に仕え、死後は外道神父にこき使われたり、出る作品を転々としながら、どんな主にもしっかり従った男だ。

 彼もまた十分信頼に値する、サーヴァントとして一流の存在であった。

 

 彼がキャスターとして呼ばれる可能性もあるのだが、まあ、それはそれで悪くない。

 キャスターとはいえ、大英雄は大英雄だし、平凡なサーヴァントを圧倒する力を持っている。

 それに彼が先導者としてこれからも、未熟な自分を導いてくれるのなら。それは望むところでもある。

 

 あとは、まさかとは思うが―

 

「クー・フーリン、召喚に応じ参上した。お前はメイヴ、ではないみたいだな」

 

 望み通りというべきか、クー・フーリンは槍を持って現界していた。

 しかし、ロクサーヌの良く見知った()のキャスターの姿とは、かけ離れた姿をしていた。

 

 真紅の槍は、歪に捻じれている。

 その露出した肌はルーンに彩られ、血に飢えている。

 その血色の眼は無機質に、こちらを見据えている。

 

 その姿は人なれど、まさに化物。

 だが、彼の狂気というより、別の暴力を表現した、その姿は。

 

「バーサーカー?」

「ああ、そうらしいな。俺の色がお前に関係あるのか?」

 

 クー・フーリンという英雄は、確かにバーサーカーとしての側面も持っている。

 とはいえこれは明らかに違う。

 クー・フーリンという英雄が本来持ちえない、歪まされた像であるのを、ロクサーヌは知っていた。

 

 これもまた、ロクサーヌの知る、クー・フーリンの一つなのだが。

 彼がこうして召喚されることはおかしかった。

 

「ううん。ありがとう。クー・フーリン。きてくれてうれしいよ」

「そうか」

 

 それでも、召喚されたものは仕方ないと、彼女は納得するのであった。

 まあ、捻じれた彼もまた、信頼に値する存在ではあるのだし。

 そうして、彼と契約を交わすのであった。

 

「おい、マスター。これはどういうことだ」

「え。何?」

「え。何? じゃない。コイツがクー・フーリンだというのは俺にも分かる。だがなんだ!この“アテクシが考えたチョイ悪系な理想の彼ぴっぴ“みたいな姿は! もの凄く気持ち悪いぞ! これではお前とそう変わらん。俺の夢を返してくれ!」

 

 とはいえ、アンデルセンからして、このクー・フーリンは大いに不満足だったようだ。

 彼も一介のメルヘン作家である。英雄に対して理想の姿と言う物を、勝手に持っているのだった。

 陽気な気の良い兄ちゃんで、詩人の頼みを苦手とする。そんなクー・フーリンが良かったのに。

 

「えっと。でも、つよいよ?」

「分からん奴だな。ああ、そうか。お前がそういう奴だから、コレが召喚されたということか? 全く忌々しいマスターだこった」

 

 とはいえ、ロクサーヌ的には“当たり“のサーヴァントなのだ。

 歪められたとはいえ偽物ではない、本物のクー・フーリンなのだ。

 スキルや宝具は強力だし、バーサーカーのクラスとその格の割には、燃費も良いようだ。

 カルナとの差別化も十分にできているだろう。

 ロクサーヌには何が悪いのか、良く分かってなかったのだった。

 

「ふむ。彼は一体どういうことなのかな? 私にも説明してくれないかい?」

 

 と、レオナルドが管制塔から戻ってきた。

 そして、ロクサーヌへと問う。彼は一体何者であるのかと。

 

 計測値からして、クー・フーリンの召喚はおかしかったのだ。

 ロクサーヌとアンデルセン、そしてカルナは正体を見ぬいているようだが、レオナルドは彼のことをそこまで知らないのだ。

 

「えっと、このクー・フーリンは。メイヴの影響を受けた、“わたしのかんがえたりそうのクー・フーリン”なんです」

「コノトの女王メイヴか。君の話だと、第五特異点では彼女が控えているらしいが。それと関係する話のようだね」

「うん。えーと。たしか、おれのしるかぎりでは、しょうかんされるサーヴァントは、しょうかんしゃのイメージによってすがたが左右できる、はずなんです」

 

 第五特異点アメリカで聖杯を所有するサーヴァント、女王メイヴ。

 かつてケルト神話においてクー・フーリンと因縁を持ち、彼を死に追いやった、純粋にした悪なる女王。

 

 彼女が聖杯に願ったことは、クー・フーリンを邪悪に染め上げ、我が王とすることだった。

 そうした願いの結果が、クー・フーリン・オルタというサーヴァントであった。

 

「へえ。そうなると、これは君の理想としたクー・フーリンの姿でもあるのな?」

「えー? いや、そうじゃないはずですけど。おれはふつうに、ランサーとしてきてほしかったですし。でも、おれは、かれをしってましたけど。なんでかな」

「まあ、このマスターとしての縁だろうな。そうとしか考えられん」

 

 ちなみに、ロクサーヌの言っていることは聖杯での召喚の話しだ。

 残念なことに、このシステムの召喚は聖杯ほどの融通はきかないようだ。

 触媒があれば召喚するサーヴァントを特定できるが、それも完璧ではないのだろう。

 ロクサーヌという召喚者の性質が、このサーヴァントを引き出したのだった。

 

「だが、このセンスはなあ。ちょっと私にも分かんないね。どういうセンスをしていたらこういう形を作ろうとするのかな。ロクサーヌちゃんは良いデザインなのに。これがどうして呼ばれたのか気になるところだね」

「製作者の品の違いだな。これを作ったのはその程度の女だということだろう。何せ、実在の女の考えることなど、大抵はろくでもないことだからな。あの女はロクデナシの筆頭に違いない」

 

 そうして、クー・フーリン・オルタのデザインについて話し合う芸術家二人。

 議論の対象の男は、無関心にマスターを見つめている。

 

 作られた本人がそこにいるのに、本人について品定めをするのはどうなのだろうか。

 そう思いながら、それを口にしないカルナであった。

 

 

 

 

 ロマニ・アーキマンは、オルガマリー所長の亡き後、カルデアの現状トップとして忙しい日々を送っている。

 何しろ爆破テロの所為で、人員が全く足りてないのだ。

 休む暇もゆっくりする暇も、中々得られないでいる。

 

「ねえ。今からでも止めにしない?」

「ロマニ。きもちはわかるけど、めめしいよ?」

「いや、そうなんだけどさあ」

「安心しろ。これで上手くいかなくてもカルデアが滅ぶだけだ。人類は滅亡せん」

「それは余計に安心できないなあ」

 

 そんな彼であるが、今日は一風変わった仕事を請け負っていた。

 その仕事とは、彼自身がサーヴァント召喚の触媒となることであった。現在、彼はシステムフェイトの、召喚サークルの傍らに立っていた。

 

セット(告げる)

 

 さて、どうしてこうなったかということを、説明しよう。

 ことはロクサーヌたちが次の特異点、フランスでの攻略に頭を悩ませていたことに起因する。

 

 フランスで待ち受けるは恐らく、“青髭”ジル・ド・レェ。

 まだ人理修復は始まったばかりだし、ここは簡単な特異点、と言いたいところなのだが。

 そう上手くはいかないだろう、というのがカルデアの意見の一致であった。

 

 何しろ相手は、外道に堕ちたとはいえ元帥の位置にまで上り詰めた軍人にして、フランス救国の英雄である。

 ロクサーヌの不確定情報によると、相手は多数のサーヴァントを従えている上、純粋なる竜種たるファブニールを従えているようだ。

 冬木でのアルトリアも多数の部下を従えていたが、これは質も量も段違いである。

 これを甘く見ろ、というのは楽観がすぎるのであった。

 

 打開の作戦は一応立ててはある。

 のだが、もう一つこちらの勝利を導くような、決定的な“何か”が欲しいと感じていたのだった。

 

 そうした中、ロクサーヌがある提案をした。

 ロマニを触媒とすれば、知恵を持った強力なサーヴァントが召喚できるのではないか、と。

 

 現在のロクサーヌの精神状況も良好だ。

 あと一人ぐらい、次の特異点までにサーヴァントをそれで、呼んでみてはどうかということだ。

 

 さて、カルデアのトップ勢が知るように、ロマニ・アーキマンはただの人間ではない。

 キャスター、“魔術王”ソロモン。

 かつて旧約聖書に語られ、72柱の魔神を従えた王。

 そのサーヴァントはかつて、第四次聖杯戦争で勝利をおさめ、聖杯に“ただの人間”としての生を望んだ。

 それがロマニ・アーキマンという人間の正体であった。

 

 ロクサーヌが知る限り、彼の縁者は非常に優秀な人物が多い。

 例えば、彼の父親であるダビデ王。

 

 そしてこれは縁と言っていいか分からないが、規格外の千里眼により、互いを見通す関係ではある。“花の魔術師”マーリン、そして“英雄王“ギルガメッシュ。

 その人格はともかく、能力的には最高峰の実力者たちだ。

 

 当然、ロマニはこの意見に反対した。彼らをよく知る者として、当然だった。

 何せ、連中はどいつもこいつも、人格的に大ろくでなしなのだから。そんなやつと直接会うのは、本当に御免であったのだ。

 そんなやつらが、ロクサーヌの”サーヴァント”を務めるのだろうかと、そう思っていたのだ。

 

 それに、そんな奴らがいても、現状のカルデアには邪魔だろうと思ったのだ。

 自分も人のことはそんなに言えないが、こっちが忙しい中でもサボろうとする連中である。

 そんなやつらを呼んでどうするというのか。

 

 だが、ロクサーヌの意見に賛成したのが、カルナとアンデルセンであった。

 

「お前の懸念はもっともだ。だが、マスターが彼らに認められる必要があるのも確かだろう」

聖杯探索(グランドオーダー)とやらは、どうも英霊どもとの協力が必要らしいじゃないか。そのロクデナシどもも、その中に入るのではないのか?」

 

 人理を救うということは、人類の良いも悪いも飲み込まねばならない。

 すごく簡単にいえば、ギルガメッシュに認められない程度の人間では、人理修復は不可能なのだ。

 厳しい条件だが、ロクサーヌもいずれ、その試験を受けなければならないだろう。

 

 もちろん、今すぐにする必要はどこにもない。

 しかし、今すぐに認められる必要もどこにもないわけであって。

 

 まあ、なんだ。今の段階で誰を呼んでも、そんなに悪い賭けではない、というのがサーヴァント二人の意見だった。

 

 結局、ロマニは投げやりになりながら、その意見を承諾した。

 ロクサーヌが前向きで、よく考えた上での決断をしていた、というのもあった。

 上手くいくかはわからないが、彼女を信じてやることにしたのだ。

 

 しかし、彼はすぐにその考えを後悔することになる。

 

「随分とつまらぬ些時に、(オレ)を煩わせたものだな。雑種、いや、模造品よ」

 

 ロクサーヌはそのサーヴァントを見るや、すぐさまひれ伏した。

 

 そのサーヴァントは黄金だった。

 悪趣味なまでに光輝き、なおかつその威風はどこまでも本物である。

 このサーヴァントは、心も体も全て、本物の輝きでできていた。

 

 “英雄王“ギルガメッシュ。

 人類史最古の英雄にして主人公、名君でありながら暴君でもある。

 最強にして、災厄の存在であった。

 

「貴様の存在は、それだけで万死に値する。今ここで死んでおけ」

 

 ギルガメッシュの背後の空間が揺らめき、一振りの剣が現れる。

 その剣に切っ先はなく、黄金の磔刑の図で飾られた剣であった。

 ギルガメッシュはその剣の柄を持つと、薄く笑いながら大げさに振りかぶり、そのままロクサーヌ目がけて振り下ろした。

 

「なるほど。人類の裁定者とは知っていたが。今、この状況においても裁定しようとするとは。だが、その女はオレのマスターだ。ここでは剣を収めるがいい」

「まあ、こうなって当然だな。おい、サーヴァントの自覚があるなら、その悪趣味な剣を仕舞っておけ。もっとも、お前がその自覚なんぞ、持っている訳ないだろうがな! 0点!」

 

 だが、それをこの二人が見過ごすわけはない。

 カルナはその槍をもって、剣を寸でのところで止めていた。

 アンデルセンは武器を持たないが、出来る限りの口撃をしていた。

 

 クー・フーリンも、その槍を構え、先をギルガメッシュに向けていた。

 

「采配は三流なれど、仕える者は本物ときたか。往々にして貴様の存在は度し難い」

 

 ギルガメッシュはカルナとアンデルセンを、そしてロマニの姿を見ると、口を喜悦に歪ませた。

 

「だが良い。我は寛容だ。貴様等の存在を、特別に赦すとしよう」

 

 そう言うと剣を背後に仕舞い、ロクサーヌとの契約を行った。

 

「精々、拙い貴様の思惑で、この我を楽しませるが良い、模造品。貴様の道中など本来、我が観るに値せぬが。此度を招いた輩の結末には興が湧いた。この我が見届けてやろう」

 

 そういうと、ギルガメッシュは霊体となり、どこかへ消えてしまった。

 嵐が過ぎ去ると、ロクサーヌは姿勢をくずし、へたりこんだ。

 

「こわかったー」

 

 ロマニはそれを見ると、大きなため息をついた。

 

「だから嫌だったんだ。もうこのようなことは止めてくれ。こっちはヒヤヒヤしたよ」

「うん。でも、これで十分、かなあ」

 

 ギルガメッシュは全サーヴァントの中でも、最強の存在なのだ。

 ロクサーヌが知る”作品”がいくら最新作を出しても、なお最強の存在。

 それが、ギルガメッシュだ。

 

 仲間とは言い難いが、こちらの活躍次第では、何かしらの手を出すことも十分ありうるだろう。

 

「まさかと思うけど、ロクサーヌちゃん。ギルガメッシュをどうにかできると思ってないよね?」

「え? まさか?」

 

 とはいえ彼が手を出す、といっても、それはちょっかいのようなものだ。

 ギルガメッシュは暴君だ。

 どう考えても、こちらの不利益になることの方が多いだろう。

 普段でも、こちらの戦闘中に少なくない魔力消費を行いながらも、傍観することがほとんどだろうと、予想はつく。

 

「でもさいあく、きりすてられるとはおもっていたけど。まだ、ためされているみたいだから。まだ、だいじょうぶ」

「だろうね。ハァ」

 

 それがどれだけ、君の精神に悪影響を与えることやら。心だって、有限の資源なんだよ?

 そう思うと、ロマニはなんだかやりきれなかった。

 本当に大丈夫なのだろうか。

 

「安心していい。マスターはあれでも、多少なりとも認められているようだった。最後までマスターの威勢のよさが持つかはオレには分からないが。これで最後までは、戦えることだろう」

 

 ギルガメッシュという存在を多少なりとも知るカルナは、彼のマスターに対する態度に、無表情のまま驚いているようであった。

 かつての己のマスターがこの状況であれば、彼は本気で殺しにかかっていただろう。

 そう考えると、今のマスターへの態度は好感触であった。

 

「ま、せいぜい頑張ることだな。主人公。アレに認められてこそ、真の主人公と言えるのだからな」

 

 英雄王の裁定もまた、人類に対する試練なのだ。

 これも試練、あれも試練。

 人理修復は、修復が成るとも、試練が続く。

 

 

 これは、そんな続きの物語の断片である。




本案では、ダビデを呼び出すつもりでした。
ちゃんとした二次小説にするなら、そっちの方が面白そうですしね。

とはいえ、真面目に書く気力がないし。英雄王が来ても面白そうなので、こうなりました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。