神転オリ主で人理修復をする話   作:倉木学人

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始まりの終わりと終わりの始まり

 冬木における聖杯の騒動は、こうして終わりを告げた。

 時は元に戻って、2015年のカルデアの司令塔。

 

 ここにいるのは3人。

 ロクサーヌのサーヴァント・ランサー、カルナ。

 医療部門のトップにしてカルデアの現状トップ、Dr.ロマンこと、ロマニ・アーキマン。

 そして、かのモナ・リザの姿を取る、カルデア駐在のサーヴァント・キャスター、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

 

「以上がオレの知る全てだ」

 

 カルナがそうして冬木で起きたこと、そしてマスターから知りえたことの一部を語り終えた。

 現在三人は、カルナの一言足りない部分を質問で補いながら。情報の共有を行っていた。

 

「なるほど」

 

 冬木の特異点はロクサーヌたちにより、無事ではないが、消滅した。

しかしそれにも関わらず、カルデアスによる未来は変わらないままである。

 つまり他の場所、他の時代にも聖杯があり、同様のことが起きているということのようだ。

 

 これから、自分たちは各地各時代に散らばっているであろう、聖杯を探すことになる。

 そうしなければ2017年以降を迎えて、本当に人類は滅亡することになるのだ。

 

「天文台の統領であるオルガマリーを助けられなくて、すまないと思っている」

「そう謝らなくていい。幾ら私が万能の天才とはいえ、死者蘇生は専門外でね。非常に残念だが、彼女を連れて帰ったとしても、蘇生は不可能だっただろう。彼女にはもう、慎むことぐらいしかできない」

 

 カルナの謝罪にレオナルドはその場で、よく知られた微笑みを作って応えた。

 

 キャスターとして召喚されたレオナルド・ダ・ヴィンチは、万能の人にして天才魔術師である。

 とはいえ、出来ないことも当然あり、死者蘇生はその一例である。

 死者蘇生は科学でも再現できない魔術であり、つまりは魔法の領域だ。これが、失われた腕の義手を作る、のであれば余裕だったのだが。

 オルガマリーの失ったものは、全ての肉体だったのだ。万能とはいえ魔術師で、特化した魔法使いでない彼女には、既にどうしようもなかったのだった。

 

「オレのマスターも自らの王の蘇生のために、色々考えていたようだが。叶わず仕舞いだったな」

 

 そんな様子の彼女を見て、カルナはそう零す。

 その言葉にレオナルドは微笑みが引きつり、ロマニはピクリと反応する。

 

 どうやら、カルナは多くのことを知っているし、ロクサーヌは多くのことを知っていたらしい。

 所長の死もその一つであると聞く。

 今回の件は、どういうつもりで行動していたのだろうか。

 

「ひょっとしてキミとロクサーヌちゃんなら、どうにかできたのかい?」

「可能性の話だ。しかし、そこの万能の天才が言う通り、過ぎた話でしかない。無駄な話だな。失言した、許せ」

 

 可能性の一つとして、ロクサーヌはカルナの鎧を所長の延命に使えるかも、と考えていた。

 ロクサーヌは、あの鎧は神々の干渉を退けるだけでなく、干渉による排除をも退ける力もあるのだと知っていた。

それを所長に用いれば、残留思念になった所長を維持できるのでは、と考えていた。

 時間さえ稼いでしまえば、あとは死者蘇生の逸話を持つサーヴァントを召喚し、生き返らせればいいのだと。

 

 とはいえ、これをするとアルトリア以降の敵と戦う時にカルナの守りが薄くなる。

 太陽の鎧が無くともカルナは十分に強いが。流石にエクスカリバー級の攻撃を耐えられるかは、カルナも保証できない。

 

 せめてレフがいなければ。アルトリアを倒した後、それを実行するつもりであったのだが。

 そういうことなので、結果としてこの案は選ばなかったのだ。

 

「そういや、彼女の様子はどうなのかな? ロマニ、面倒を見なくてもいいのかい?」

 

 レオナルドは話を逸らすことにした。

 

 勿論、カルナとロクサーヌ達に色々追求したい、という思いもある。

 しかし、カルナと話し続けるのは正直、疲れるのだ。

 カルナは本質を突いた発言をするが、その言葉には飾り気がなさすぎる。

 そうした者との話を続けるのは、結構な苦痛が伴うのであった。

 

 彼らの事情はロクサーヌを通して、これからゆっくり聞いていけばいいだろう。

 

「今は心労で寝ているよ。戦闘で魔力を酷使したことと、目の前での所長の消滅がよほど堪えていたようだね。けど、ちゃんと寝れてはいるみたいだ」

 

 ロクサーヌの現状は小康、といったところか。

 危うい精神状態だが、ある程度落ち着いている。

 これは彼女のメンタルの強度と、それと多くの魔術礼装による精神安定のおかげであろう。

 彼女は初の戦闘を体験したが、それでも何とか踏みとどまっているようだ。

 

「でも、正直。医者としてボクはあの子を戦場に出すことに反対だよ。あの子には長い期間の休息が必要だ」

 

 ただ、常に精神安定をかけている日常が、まともなはずがない。

 鬱病の薬を毎日飲み続けながら戦争に向かう生活を想像してほしい。

 それが果たして、健康的で人権的と言えるのだろうか?

 

 元々、ロクサーヌはカルデアに来る前から、精神を病んでいたのだ。

 カルデアで医療スタッフの介護を受け続けることで、ようやく回復の兆候が表れてきたはずだったのだ。

 しかし今回の事件でまた、大きなダメージを受けた。

 しかもこれからまた、同様のことを続けなければならないのだ。

 

 ロマニは一人の医者として、そんな兵士を認めるわけにはいかなかった。

 

「それでも、あの子を戦場に送り出さないといけないことは十分承知だろう? 迷っている暇はないよ。我々はあの子を、これから大事に酷使しなければならない。何せ、誰もあの子の代わりはいないのだからね」

 

 元々、人理の修復を行うはずであったマスターたちは全員、死んでしまったのだ。

 他にマスター候補となる人間はいない。

 例え、今からマスターとなるホムンクルスを作ろうとも、そういった方向の研究の例がない。

 それに設備も、人員も時間も、何もかもが足りていないのだ。

 最後の希望は、この脆弱なマスターに託されてしまったのだ。

 

「だが、悲観することはあるまい。マスターは未だ前進するだけの力が残されている。我々の補助があれば、必ずや未来は切り開ける」

 

 だが、どんよりとした雰囲気の中でもカルナは変わらない。

 希望はまだあるはずだ、と彼は本気でそう思っている。

 

「ほんと、君はポジティブだねえ。ま、その方がいいね。クヨクヨしたって問題は何も解決しない」

 

 カルナの前向きな言葉に、レオナルドは呆れながら、それでもおどけて賛同していた。

 天才の習慣として、一つのことに悩み続けない、というのは賛同できる。

 前向きに考える。物事を楽しむというのは、多くの天才が語る成功の秘訣でもあるのだ。

 

「うん、そうだね。でも、カルナ。君はどうしてそこまで、彼女を信じてあげれるのかな?」

 

 ロマニとしてはカルナが苦手だし、あまり話を続けたくはない。

 余りにも彼は、人を見抜きすぎるし、真実を口にし過ぎる。

 話を続けたくない、のだが。これは確認すべきだろう。

 

「マスターは全てのことを話してくれたぞ。Dr.ロマニ・アーキマン。お前が最後には必要になるということを。オレはそれまでの槍であるのだと、オレは信じているだけだ」

 

 そこで、ロマニは悟った。

 ああ、そうか。

 何もかもがお見通しなんだな。

 ロマニが何であったのかも、その役割も、ちゃんと彼は見抜いているというのか。

 

「そうか。そうなんだ。通りでかあ」

 

 ロクサーヌもそうだ。

 彼女は、必要以上に自分に心を開いていたように思える。

 無理に、オタク趣味を一緒に楽しもうとしたりと、変に気を遣っていたのだな。

 彼女も、自分のことを何処までも知っていたからこそ、あの態度だったのだろう。

 

「こうして秘密を共有するのも悪くないんじゃない? 盟友よ」

「ああ。うん。出来れば皆には、隠しておきたかったのだけどなあ」

「オレが言うのも何だが。そういう大事な話は、共有しておくのがいいと思うぞ」

 

 少しずつ、この場に笑顔が戻ってきた気がする。

 

 これなら、やっていけそうな気がする。

 自分たちは、形は歪かもしれないが、情報を共有し、互いに理解できる関係なのだ。

 なんと理想的な関係なのだろう。

 そう思いたい。

 

「あの子が、この物語の主人公になるのだね。少々頼りない主人公だけど、それもまたエッセンスだ。これから我々の手で最高の主人公を作り上げ、物語をハッピーエンドにして見せようじゃないか」

 

 レオナルドは人理の修復に対して、前向きな姿勢を見せていた。

 ロクサーヌを支え、必ずや人類の歴史を取り戻してみせるのだと。

 そう思い、自分たちを鼓舞した。

 

「未来を、あの子が切り開くのか。あの子の物語が、ボクたちを救うことになるのかな」

 

 

―あの、Dr.ロマン?

 

―何だい? ロクサーヌちゃん。ボクはサボるのに忙しいのだけど

 

―おれに、まじゅつを教えてもらえないかな

 

―え? どうしてボクなんだい?

 

―ロマニが、いちばんまじゅつは、とくいだから

 

―え。いや、いやいやいや

 

―そ、そうだ。他のマスターたちに教わりなよ。これを機に、皆と仲良くなろうよ

 

―他の魔術師たちは。おれにまりょくきょうきゅうしか、教えようとしないんだ。まりょくきょうきゅうぐらい、もう知っているのに

 

―ロクサーヌ、ちゃん。君は。その。ごめん

 

―おねがい。何でもするから。何でも、するから

 

―何でもなんて言葉を、君が使わないでくれ。分かった。そんなことをしなくたって、少しぐらいなら教えてあげるから

 

―ありがとう

 

―だから、くれぐれも身体を大事にしてくれ

 

―だいじょうぶ。もう、なれているから

 

 

 ロマニは悲観的な人間である。

 ロクサーヌという心持つ人形を、戦場に追いやることは残酷なことであり、嫌なのだ。

 彼女には悲しい結末が待っているのかもしれない、そう考えると辛いのだろう。

 

 確かに最後には、自分がどうにかする必要があるのだろう。

 だがそれまで、彼女はどうしようもない現実に、打ち勝つことができるのだろうか。

 

 

 寝込むこと1日程度。ロクサーヌの視界にはLEDの照明と天井。

 普段から自分が使っている医務室のベッドで、彼女は目を覚ました。

 

 腕には点滴のチューブが打たれている。

 はて、自分はまた倒れてしまっていたのだろうか。

 

「目が覚めたか」

「ひぃ!」

 

 見知らぬ男が、自分のそばにいる。

 それだけのことで、彼女は恐怖していた。

 

「か、カルナ?」

「そうだが。どうかしたか? マスター」

 

 しかし、それは見知った顔であることに、今更ながら気づくことになる。

 黄金の輝きを持つ、細身の男。

 彼は自分が召喚したサーヴァントであったことを思い出す。

 

「そうか」

 

 自分はあの冬木の街でマスターとなり、己の運命と立ち向かうことになったのであった。

 そのことを今となって、思い出した。

 

「ごめん」

「構わない。恐れられるのは慣れているのでな」

 

 今までの日常は終わりを告げたのだった。カルデアで治療を受け続けるだけの日々は、もう終わったのだ。

 

 これから自分は、カルデアで治療を受け続けながら。人理を守るために戦わなければならないのであった。

 

「所長。しんじゃったね」

 

 初めて定礎を修復した地に思いをはせる。

 やはり、所長であるオルガマリーを助けられなかったことが心残りであった。

 

 厳しくはあったが、根は優しかった所長。

 自分と同じくギリギリの精神状態でありながら、何とか自分を奮い立たせていたあの人。

 天才の身でありながら、何もかもが不遇だった人間。

 

 最後のあの姿は、忘れられそうもない。

 思い出すだけで、頭がくらくらしてくる。

 

「お前の王の死は、もはやどうしても取り返せない。それは最早、確定したことだ」

 

 考えすぎるな、カルナはそう思った。

 

 冬木の聖杯があっても、もはやオルガマリーの死は覆せないであろう。

魂が完璧に消滅してしまったのだ。

 仮にアスクレピオスを召喚したとしても、彼女を復活できるかどうか。

 

 ロクサーヌは服から常備薬の紙袋を取りだし、ゼリー状の液体を手に取り、水も無しで飲み込む。

 すると、少し、気が落ち着くような気がする。

 

「リヨぐだ子なら、どうにかできるのだろうけど」

「リヨグダコが何者かは知らないが、いない者の話も無駄だろう」

「うん。分かっている」

 

 ラスボスとタイマンを張ってそのまま勝ててしまうであろう存在に思いをはせる。

 たしかに、ある意味ビーストと同等のあの存在なら、ビーストを倒すことも可能であろう。

 

 そんな存在が存在していいのかは、まあ、うん。

 

 とはいえ、そんな都合の良い存在はこの世に存在しないのだ。カルナが言うとおりの、無駄な考えである。

 

「おれができたことは、何だったのかな」

 

 自分には何ができたのだろうか。

 自分の頭がもっとマシだったら、もっといい結末だったのだろうか。

 自分が、自分が。

 自分が。

 自分が。

 

 頭が、痛い。

 

「だが、お前の献身は、最後にはお前の王に届いていたぞ」

「本当?」

「ああ」

 

 それは、どうなのだろう。

 自分が何か、所長のためにできただろうか。

 

 ふと、レフの最後のあの顔を思い出す。あの時彼は、所長を始末したことで、喜ぶものと思っていた。

 だが、所長を殺したのに、顔は苦しげだった。何故だろうか。

 

「所長は幸せになれたのかな」

 

 まあ、カルナのことだ。嘘は言っていないのだろう。

 今となっては、わからないが。そこは信ずるとしよう。

 きっと、所長は幸せを見たのだと。

 

 そこで、ふと、ロクサーヌは思いつく。

 カルナになら、もっとこういう話をしてもいいだろう。

 

「ねえ。カルナ?」

「何だ」

「おれが、物語のしゅじんこうだとおもう?」

 

 それを聞いて、カルナは不思議そうにする。

 言っている意味はわかるが、何故そんなことを問うかのように。

 

「違うのか?」

「ちがうとおもっていた。おれはしゅじんこうなんかじゃないって」

 

 ロクサーヌはかつて自分が男で、スマホの画面をポチポチしていたころを思い出す。

 今となってはもう、手に入らない幸せ。

 誰にでも手に入り、どこにでもありふれていたような。そんな光景を思い出していた。

 

「日本生まれのふつうの。男の子か、女の子がいて。それがじゅんけつのきしの女の子とともに、せかいをすくってくれるんだって」

 

 ロクサーヌがカルデアに売られて来たとき、まず二人の名前を探した。

 藤丸立花とマシュ・キリエライト。

 ロクサーヌが知る、物語の主人公たちを探した。

 

 カルデアの名簿をあさった。カルデアの人々に訪ねた。カルデアの研究に首を突っ込んだ。

 

 そうして必死に探し求めた。

 皆の主人公が居て欲しいと思っていた。

 

「おれがしんでも、かれらなら上手くやってくれるんだって。そうおもっていたんだ。でも、違うみたいなんだ。そんな子たちは、いなかったんだ」

 

 しかし、そんな存在はいなかった。

 サーヴァントの実験に用いられていたホムンクルスの少女は、研究すら存在しなかった。

 日本から来た一般人枠のマスター候補は、とうとう見つからなかった。

 

 いるのは、俗物な魔術師たちばかり。

 そこで彼女は気が付いた。世界を何とかしてくれるものなど、どこにもいないのだと。

 自分が世界を何とかしないといけないのだと。

 

「おれが、自分の物語のしゅじんこうなんだって」

「その通りだ。この物語は、お前の物語なのだ」

 

 それはどこにでもある物語である。

 人は、生まれ、生きて、そして死ぬ。

 マスターとしての活動も、極端な話、その営みの一つでしかない。

 例え、人理が崩壊していても、営みは続く。

 

「だが、マスターだけではない。各々が物語の主人公なのだ」

「カルナも? ロマニも? ダ・ヴィンチちゃんも?」

「ああ。そうだ」

 

 主人公を求めるのでは、道は開けない。己の物語において、己の役割を果たす。

 そうした中にドラマが生まれる。見るべきものがきっとある。

 主人公というのはそういう中で生まれる存在なのだ。

 

「心配するな、マスター。我々の手で人理を救うのだ。そこを間違えなければ必ず、未来は切り開くことができる」

 

 ロクサーヌは、その濁った眼をようやく輝かせることができた。

 

「じゃあ、もっとなかまをふやさなくちゃかな」

 

 マスターが前向きな元気を見せたことで、カルナはにっこりと笑う。

 

「仲間か。ああ、それはいいものだな」

「今からでも、なかまになってくれるサーヴァントをしょうかんしよう」

 

 そうして、彼らは歩き出した。

 

 ここに世界の運命はカルデアの手に委ねられた。

 これよりカルデアは人理継続の尊名を全うする。

 目的は焼却された人類史の保護、および奪還。

 探索対象は各年代と、焼却の原因と思われる聖杯。

 戦う相手は、歴史そのものである英雄たち。

 

 どんな未来が待っているのか、誰も知らない。

 しかし、彼らは戦うことを選んだのだ。

 

 世界を取り戻すための彼らの戦いが、ここに始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三流サーヴァント、アンデルセンだ。本棚の隅にでも、放り込んでおいてくれ」

 

「どうやら、今度も俺はマスターに恵まれないらしいな。今度はお前のような女、いや、輩がマスターだとは。全く、英霊召喚というヤツは中々に度し難い。しかし―」

 

「肉布団の次は、大人のおもちゃと来たか。お前もつくづくマスターに恵まれないものだな。ランサー」

 

「いや、今度もオレは幸運だ。この采配には感謝しかない」

 

「そうか。まあ、お前の中ではそうなのだろうよ。全く、オレもその前向きさを見習いたいものだ」

 

「えーと、おれがマスターじゃ。だめかな?」

 

「駄目だとは一言も言ってないだろうが。馬鹿め! こんなロクデナシで良ければ、精々こき使うといい。待遇は要相談にさせてもらおう」

 

「だが、初めにはっきり言っておく。俺はお前の物語を書けんぞ」

 

「どうして?」

 

「分からんのか? 俺の宝具を知っていて、その上で言っているのだな?」

 

「うん」

 

「お前は既に理想として完成している。俺がお前に手を加えるとなると、それ以上は蛇足でしかない。無駄なものを付け足した作品の価値など誤字以下だ。今のお前が、お前という作品の完成形だよ」

 

「え?」

 

「何が、“え?“だ。当然だろう? 自分の理解ができていないと見えるな」

 

「愛したい、愛されたいという気持ち、こうなりたい、こうなりたくないという気持ち。そうした理想を形としたのがお前という人形だ。人間として美しく映えるのかもしれんが、俺にはデザイン重視の消費財にしか見えん」

 

「しかし。いやあ、良かった良かった。仕事をしないのに完成はしているとは、楽でいいな。神様転生万歳! TSオリ主万歳! と言うやつだ。俺の趣味ではない上に、腐るのは早いナマモノだが。文明の流行りに乗るのは、実に楽でいい!」

 

「心無いことをいうものではないぞ、キャスター。それでもお前は物語ることで、己の証明をするのだろう」

 

「フン。俺もサーヴァントの端くれだ。サーヴァントとして最低限の仕事はしてやる。こんな作品を作った馬鹿どもでも、一応は読者様だ。これから、なけなしの駄作にして見せるさ」

 

「えっと、これからよろしくね。いっしょにがんばろう」

 

「ああ。そういう契約だったな。そうか。俺でいいのなら、お前の話の校正をしてやらんでもない」

 

「お前を出版社(マスター)として認めよう。よろしく頼む」




ご愛読ありがとうございました!
倉木学人先生の次回作にご期待ください!

冗談です。
後の話は気が向きしだい、書きたいところだけ書いていくつもりです。

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