「この時間では実践で使用する各種装備の特性について説明する」
考えてみれば、この授業で今日は終わりだ。後はHRを適当に聞いて帰るだけ。
幸い俺には既に部屋……というより家があり、終わってすぐにトレーニングと勉強をすればいい。と、レコーダーのスイッチを入れながら思っていると、
「……と、その前に5月に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
「武器の授業だ、ヒャッハー!!」となっていた俺のテンションを返してほしい。が、そんなものは言っても無駄というか言ったら恥ずかしいだけなので黙っておく。織斑先生はクラス代表の説明をした。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス委員だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで選ぶように」
……何故、クラスの実力推移を測るのに代表者……いや、そもそもクラス対抗戦なんてものが付いている?
仮説はいくつか立ったので、俺は試しに質問してみた。
「織斑先生、質問良いでしょうか?」
「何だ、夜塚」
「クラス対抗戦だというのにわざわざ代表者を選ぶという事は、他にも意図がある、という事ですか?」
「…………いや、要はクラス代表者同士の決闘に他ならないが、確かに名前としてはおかしいが今後変更はない」
「そうですか」
………つまり、水面下の戦いは感知しないという事か? ともかく情報が少なすぎる。
何故、こんな質問したかというと対抗戦の優勝者には半年間のデザートパスがもらえるからだ。
「先生! 私は織斑君を推薦します!」
「私もそれが良いと思います!」
「そうよね。夜塚ってとても動けそうにないし」
「やっぱ織斑君の方が映えるしね」
3人目と4人目の女は別に殴っても構わんのだろう?
どこぞの色黒白髪の弓兵のオマージュをしつつ、俺はただ誰になるか見守る。
「では候補者は織斑一夏。他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
「お、俺!?」
……何であんな反応ができるんだろ? このクラスに「織斑君」はお前しかいないというのに。
「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないなら無投票当選だぞ」
「ちょ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな―――」
「自薦他薦は問わないと言った。他薦された者に拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」
「いや、でも―――じゃ、じゃあ、俺は夜塚透を推薦する!」
「拒否します」
「言っただろう。選ばれた者には拒否権はないと」
馬鹿が。そんなものは所詮パフォーマンスに過ぎないのだよ!
「ならばクラスの意見も聞いてみましょうか。イケメンで織斑千冬の弟である織斑一夏と、デブで雑魚で冴えないこの私、夜塚透のどちらかがクラス代表として選ばれるべきか―――と言っても聞くまでもありませんがね?」
驚きながらこっちを見るクラスメイトに俺は大きく問いかけた。
「では聞くが、俺と織斑のどっちにクラス代表になってほしい?」
「「「織斑君」」」
「満場一致。これでクラス代表者は織斑だな」
織斑が顔を青くしていることを想像しつつ勝ち誇りながら言うと、別の場所から立ち上がる者がいた。
「待ってください! 納得が行きませんわ!」
オルコットだった。まさか俺の援護―――ということは100%ないな。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」
いや、知らねえよ。
まぁ、俺の推薦はまず認められないだろうよ。だってどう見ても擦り付けだろうし。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿とブタにされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、動物園に来ているのではありませんわ!」
誰も動物園に来ているつもりはないだろうよ。
というか、ブタって俺のことだよな? 代表候補生が他人のことを侮辱したら結構マズいんじゃね?
後、イギリスも島国……日本より大きいけどな。
「良いですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」
クラス対抗戦にも出るのだし、間違いではないが………たぶん彼女を推薦する人間は本当にいないんじゃないかな? 俺はするけどな。俺がならなければどっちでもいいし。
操りやすさ、そしてオルコットの場合は素人でも潰しそうだな……。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
クラスメイトが驚いたように俺も驚いた。あそこで反論することもそうだが、何よりも得策じゃないからだ。
あそこはただ流し、後で委員会なり世界に流すなりしてオルコットを潰すのが得策。これじゃあどちらも潰れるだろう。
「あ、あなたねえ!! わたくしの祖国を侮辱をしますの!?」
「お前が先にしたんだろ! 透、お前からも何か言ってやれ!」
「島国代表VS島国代表の舌戦か。興味ないな」
「「こんな時にふざけている場合か(ですの)?!」」
だって別にお前らを擁護する気ないからなぁ。
「決闘ですわ!」
「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」
別のことを考えていると話が進んでいる。というか、決闘って……決闘罪というのがあるのはご存じですかね? IS学園に日本のルールが適用されるかわからないけど……いや、されないか。ここってどの国の法も適応されないから。
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い―――いえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
「まぁ、何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
………あの、相手は素人なんですが……? それで実力を示すってちょっと……なんというか……ドン引きです!
1人でとあるサンタ少女と声が一緒のロシア人の真似をしていると、織斑が変なことを言い出した。
「ハンデはどのくらいつける?」
「あら、早速お願いかしら?」
「いや、俺がどのくらいハンデを付けたらいいのかなーと」
………どうやら織斑は生粋の馬鹿のようだ。いや、むしろ頭に異常があるのではないかと疑ってもおかしくないレベルだろう。というかさっき「真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」って言ってなかった?
なんて考えている間に教室内に笑いが起こる。
「お、織斑君、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「織斑君は、それは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」
ま、確かにそれもそうだな。織斑がオルコットを相手に「俺がハンデを付ける」というのは言い過ぎだろう。オルコットの言動から、かなりやるはずだからな。それができないなら本気で頭がおかしいとしか言えない。
「……じゃあ、ハンデはいい」
「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなくて良いのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのですわね。まぁ、それはもしかしたら織斑さんだけかもしれませんが」
本気で言ったことをジョークとして取られるとは、イケメンの特権だろう。
「それと夜塚さん、さっきから無関心を貫いているようですが、あなたもですわよ」
「………俺は洒落たジョークなんて言えないけどな」
「違います! 試合の方ですわ!」
「………そうか。じゃあ、試合の方は織斑に任せて俺は辞退するわ。ぶっちゃけ、俺は勤勉だしまだ参考書は半分しか読めてないからそんなことに時間を割きたくない」
というか、勤勉じゃなかったあんな大学に合格できない。
「……あなた、あれだけ言われたというのに何も感じませんの!?」
「悪いが俺は国のことを侮辱されて「ふざけんな」と簡単に怒れるような頭をしちゃいないんだよ」
言っておくが、俺が行ってた高校の奴らを連れて来たら大半が襲われてるからな? というか教室で平然とヤってる奴とかダーツしている奴らとかいたからな? そんなダークな面があるのに「日本って素晴らしい!」と宣言できるような頭はしていない。アニメは凄いけどね。
「…………やはり見た目通り、大したことないということですわね」
「まぁ、そうだろ。実は大した人でしたっていうのは所詮はバーチャルのみ。期待すること自体が間違いなんだよ」
だからこそ、俺はバーチャルのロリには興奮するんだけどな。
「ええ。でしょうね。全く親の顔が見てみたいですわ。まぁ、あなたのような怠惰の塊を育てた人間なんて高が知れているでしょうけど」
「その言葉、そっくり返すな。お前のように脳味噌があるかどうか疑わしい人間に育て上げた親なんざ、どうせろくな親じゃねえ。大方、忙しさにかまけて娘を従者に任せっきりにしていた、子どもを自分の素晴らしさを見せしめるための道具としか思っていないんだろうよ」
流石に言い過ぎただろうが、ちょうど良い薬だろうよ。お互いに親を罵倒したところでイーブンだろー――
―――パンッ!
乾いた音が1発、俺の頬から鳴る。
そんなに罵倒されたのが悔しかったのか、オルコットは俺を叩いたようだ。どうやら親をかなり誇りに思っているらしい。………ホント、叩くのは女の特権とでも言いたいのかよ。
「………確かに……父は私にとって目障りでした……あまり発言せず、母の顔色を窺ってばかり。ですが母は違います! 母は女尊男卑が生まれる前からいくつも事業を成功させてきた猛者でした。そんな人を侮辱するなど……許せません! 参加なさると誓いなさい!!」
……なるほど、こいつの女尊男卑思考は母親への憧れからねぇ。そりゃあ、そんなに頑張ってる人がいたら憧れるのも頷ける。だがな、
「嫌なこった」
生憎俺は、首を縦に振らない主義だ。オルコットは怒りで顔を真っ赤にし、俺を見てクラスメイト達はヒソヒソと俺の悪口を言い始める。
「―――席に着け、オルコット」
ようやく担任は口を開いた。本来ならばとっくに介入するべきだと思うんだけどなぁ。
「ですが―――」
「良いから席に着け。これ以上は待てん」
「…………わかり……ました……」
渋々といった感じにオルコットは席に着く。
「大分荒れたが、今回はこれで終わりにする。試合は来週の月曜日、放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコット、そして夜塚はそれぞれ用意をしておくように―――」
「はい、ストップ。ちょっと待ってください、織斑先生。私は散々断ったんですが、何故出ているんですかね?」
「あれだけのことを言ったのもあるが、何よりこれはクラス代表者の席を賭けた戦いだ。お前も選ばれているんだから出る義務はある」
………出る義務、ねぇ。というかこの決闘って自分の国の悪口が言われたことだろ。いつの間に代表者を選ぶことになったんだ? ………ああ、オルコットの発言のせいか。さっきアイツ、「クラス代表者は実力トップがなるべき」とか言ってたから………ふざけんな。
「……つまりあなたは、私も推薦されたんだから出ろ、と?」
「そうだ。それにオルコットからも誘われているし、何よりもお前の糧になる」
………飛んだ横暴だな。俺の糧になる? どう考えても頭がおかしい奴の発言だ。
これはおそらく、自分の弟を助けるための策略だろう。仮に織斑がオルコットに負けたとして俺も負ければ評価はあまり下がらない―――いや、俺だけが下がるだろうな。
……そもそも、ISで戦うこと自体が間違いなんだけど。
「………何度も申し上げていますがお断りします」
「何故だ? さっきも言っただろう、糧になると」
「本気で言っているなら異常者だよ、アンタは」
おっと。思わず本音が。だが覆水盆に返らずとも言うし、何もISで戦わなくても良いんだからな。そしてもう、こんな教師共に敬語はいらないだろ。
「何?」
「何を考えたら俺がこいつらとやることが糧になる? 実力は雲泥の差な上に向こうは戦う気が満々。しかも相手はモラルを失った脳に異常を持つ女」
「―――お待ちなさい! わたくしは脳に異常など持っていませんわ!」
他人の親を侮辱した挙句に、されたら叩く奴が何をほざいているのやら。
「素人相手に「実力を示せる」なんて言えば脳に異常があるって考えるのが普通だと思うけど? しかももう片方は………っていうかもうこれ遺伝だろ。姉弟揃って馬鹿とか救いようがない」
「ちょっと待てよ!? 俺まで馬鹿にするのか!?」
「もはやお前ら3人は何でまともに生活できたのか不思議なくらいだ!!」
織斑はおそらく元々も馬鹿か、姉に叩かれすぎて頭がおかしくなったかだろう。
だがオルコットや、さっき女の方が男より強いとかほざいた奴らは本気で馬鹿だな。IS学園って偏差値高いんじゃなかったっけ?
「って言うか他の奴らも大概だけどな。女が男に勝てるかどうか以前にIS学園に核ミサイルをステルス性でぶっ放したら大半が死ぬし、その前にも争奪戦で血を血で洗う戦いが起こることなんざ明白だろうが。今俺がここでちゃんとした装備で毒を巻けば少なくともこの階にいる奴なんて楽に殺せて、専用機所持者からはISを奪えるし「何でISを所持していながら生徒を守ることができなかったのか」とIS学園の、ひいては学園に所属する候補生がいた国のイメージを下げることも可能。他の所だってそうだ。ISは世界で467機しかないなら最高でも467人しか助からないし、ISを常時展開していたら刑罰に処されるんだから常時展開はまずないから能力如何によっては薬か何かで誘拐して強姦や拷問などの手段も取れる。まぁ、ちゃんと訓練が積まれている奴ならばそうはならないだろうが、生徒の大半は一般人なんだから誰か選んで1人になったところを弱みを握るなりなんなりして人気がないところに移動させて殺すことだってできる。傷つけるだけなら今すぐにでもできるしな。ま、すぐ捕まるし犯罪者として扱われるしでデメリットしかないし、何よりも時間と金の無駄だからしないけどな」
全員が俺の顔を見て青ざめる。
太っている奴は動けない。確かに一理あるし間違いではないのは認める。
「以上の事から男でも女を潰せることを仮定したが、証明するべきか? 俺の目の前にいる奴なんて格好の獲物だけど?」
「そんなことをすればどうなるかわかっているな?」
「わからないのはアンタの弟くらいだろ」
「俺でもわかる」と反論している馬鹿は置いといて俺はため息を吐いた。
一瞬、どうしてこうなったのか考えたが、今となってはそれは無駄な事だろう。俺は思考を切り替えて言った。
「とはいえ、そんなことを言ったところでこのクラスの全員が納得するわけがないのは確かだ。なので俺は、俺と織斑のチームとオルコットの3回勝負を提案する」
「………何?」
「その前にだ。少しその場で大人しくしておけ」
そう命令して、簡易型プリンターとノートパソコンを出して文書を入力し、コピーして教卓の前に立った。
「今すぐこれにサインしろ。俺の参加はアンタがこれに承諾するかどうかによって決まる」
「…………本気か?」
「ああいう口喧嘩になった以上、オルコットも納得すまい。なんだったら、オルコットと織斑の立場を消し飛ばす方法もあるが、上手く締めるならこれしかないだろう」
クラスがまとまるかはともかく、オルコットが大人しくなるのはこちらの実力を示す必要がある。
「だとしてもこんなものは承諾できない」
「そうか。ならば俺の参加は取り消し。そもそも道理だろ? じゃあ聞くが、アンタは両手両足縛って俺にハチの巣にされたいドMなのか?」
「だからと言ってこんなものを了承できるか!」
「高が身体に害が起こり、障害が発生する可能性がある程度だろ」
そう言うとクラスメイトが次々に言った。
「何で障害が……もしかして生身で戦うっていうの……?」
「ISがあるんだからISを使えばいいじゃない」
「散々人のことを馬鹿にしてるけど、夜塚の方が頭がおかしいんじゃないの?」
「おいおい。これは俺の心優しい配慮の結果だぜ? そもそも、ISを使用しての決闘だなんて他のクラスや学園にしてみれば問題以外の何物でもない。ましてや勝手な決闘騒ぎでIS学園の評判はがた落ち必至で、専用機を持っていない上級生には貴重な練習時間を奪うことになる。だというのに自分たちはお祭り気分で見て見ぬふりというわけには行くまい。逆に考えろよ。先輩らが喧嘩して、それをISで決めることになりました。その時間は自分たちの練習時間は減らされるか場合によってはキャンセルされる。それで納得できるのか?」
誰も何も言わなくなった。まぁ、ISって数少ないし動かせるチャンスは少ないからな。
「とはいえ、すべての内容をISを決めたらそれこそ長い時間がかかる。ましてや織斑はともかく俺はISでの戦いを所望していないが、オルコットはISでの決闘を所望している。ならば、織斑とオルコットでIS戦をやってもらい、俺とオルコットで残り2戦を戦う。それにだ、別に代表候補生なんだからそれなりに生身での戦闘訓練は積んでいるはずだし、問題あるまい」
「………ええ。全く問題ありませんわ!」
「だそうだ」
そう。問題あるわけがない。今の世の中、女が男より強いんだ。もしここで断れば「女が男より強いわけじゃない。戦闘経験を積んだ奴が上を行くんだ。そんなことすらわからないくせにIS学園に入学してきたとか、頭大丈夫か?」と挑発するつもりだったが。
「待て。そんなものは教師として認めるわけにはいかない」
「そんなものは今更だ。大体、ISを持ち出しての決闘が良いなら生身でも問題ないだろうが。それに何も武器を持ち込んでの戦いじゃないんだからそこまで酷いことにならねえよ。それとも、戦い自体を中止するか? 俺は別にそれでもいいが、遺恨を持ったままだと喧嘩は絶えない。オルコット1人を犠牲にするか、クラスメイトを血祭りにあげられるか、アンタが選ぶのはそれだけだ」
「言ってくれますわね。どうやら相当生身での戦いには自信があるようですが、もし拍子抜けならばどうなるかわかっているんですの?」
「断言しておくが、お前がこの戦いを受け入れた以上、勝機はねえよ」
「ならば、わたくしが勝ちましたらあなた方お二人を奴隷にしますわ!」
「なら、お前が負けたらお前のものとお前自身を俺がすべてもらう。ああ、敢えて解説してやると、お前の身体は俺の気分次第で汚れ、お前の財産は俺の物だ」
「そんなものは釣り合いませんわ!?」
「馬鹿か? 俺は貴重な男性操縦者だぜ? 価値的に言えばこの学校の誰よりも守られるべき存在であり、お前ら女よりも希少価値は高い。俺自身をもらうというのならば本来ならお前の財産じゃ釣り合わないんだから儲けものだと思うんだな!」
だからこそのこの態度だ。真面目な話、俺の適性が低かろうが希少価値的にSランクを超えるだろう。
「………上等ですわ! それで、2戦目は一体何で戦うのです?」
「ゲームだ」
途端にオルコットは間抜け顔になった。
「げ、ゲームですの……?」
「そうだ。レースにパーティ、後はテニスや野球もあるけど?」
「そ、それはラケットか―――」
「いやいや、コントローラーとかすべてこっちで用意するから大丈夫だ」
プロジェクターもあるしな。
「だから、そんなもの認められるか!」
「文句はオルコットの演説を止めなかった自分たちに言え」
「何?」
「そもそもの原因はオルコットと教師でありながら止めなかった2人だ。暴力も結構だがそれは本当に危険だと教える時に限らせるものだろう? だというのにアンタは安売りをしている。今のままだと「IS操縦しかできない可哀想な女」というレッテルを貼るぜ? でだ、オルコット、別に問題ないだろ? ISはお前が得意とするもの。戦闘はどちらも得意とするもの。ならば次にこっち側が有利になるようにしたって問題あるまい。むしろそれが筋だろ?」
「……わかりましたわ。2戦目はゲームで構いません」
「―――いい加減にしろ!」
教卓の近くにいたからか、怒鳴り声が頭に響いた。
「そもそもその戦いはこのサインをして成り立つものだろう! だがそんなものは認めない―――」
「で、大人しく教師のいう事に従い、アンタの弟に向かうヘイトを引き受けろって? 冗談じゃねえ。馬鹿にするのも大概にしろや。こちとらテメェの企みなんざ、とっくの昔にまるっとお見通しなんだよ!」
教卓を叩いて威嚇する。向こうがISで優勝者だろうがそんなものはどうでもいい。
「テメェらするのは下らねえ決闘のために準備することだけだ! それができないって言うなら喧嘩場所はここだって構わねえ! さぁ選べ! 生徒の怪我が酷くなる方か、ならない方に選ぶかをな!!」
そして結局、織斑先生はサインした。なので俺はオルコットや織斑にもサインさせ、俺自身もサインした。