IS-Lost/Load-   作:reizen

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最終章 本当の幸せを求めて
ep.42 鬱憤は晴らさないと損をする


「子ども、できるけど?」

「………え?」

 

 いつもの空間に呼ばれたと思ったら、唐突にそう言われた。

 

「いや、だってアンタ、テストをし終わったら「子どもはちゃんとできるのか」ってずっと考えていたじゃない? だから教えてあげたのよ」

「………前にISになったって聞いたが?」

「確かにISになったけど、結局のところ再生速度が速くなった程度よ。全細胞の回復機能は向上し、反射神経が向上しただけ」

 

 なぁんだ。ちょっと怖かったんだよな。もし俺が人間じゃなくなったらそれこそ人として生活して良いのかって。

 

「ところで、結婚式っていつ?」

 

 すると何故か空間にヒビが入ったが、すぐに修復された。

 

「………やっぱり嫌なのね。そんなに嫌だったら全員消してくればいいじゃない」

「阿呆が。そうなったらアイツの家はどうなる」

「……………ま、それなら良いけどね」

 

 全く。余計なことを言うなっての。

 ため息を吐いて文句を言おうとしたら、いつの間にかゼロのように黒い髪に黒いワンピースを着た少女ではなく、銀色の髪に白いワンピースを着た少女がいた。

 

「実はあの操縦者、妙だったじゃない? だからこっちで調べてみたのよ」

「………まぁ、確かにな」

 

 少なくともあれは俗に言う「メスの顔」じゃないかと思う。やけに懐いていたしな。

 

「…………あの時、私たちは……性的快感に襲われました」

 

 銀髪の少女にそう言われた俺はフリーズした。これ何の処刑? いや、覚えがないんだが。そもそも俺はたっぷり眺めた後に優しく丁寧に犯しつついただくタイプの人間だからセーフ? え? アウト?

 

「正しくは、私たちは縛られていたのでその時に生じたものかと。それに、開放された時にあなたからとても優しい気持ちが………あの、トオル様?」

「あ、気にしないで? 今の彼はあなたに対して与えた快楽に関して現実逃避をしながら嬉しさに悶えているだけだから」

 

 おい待て。それじゃあまるで俺が変態みたい―――って、勝手にログアウトさせるなぁああああ!!

 

 

 

 

 

 目が覚めると、簪が心配そうに俺を覗き込んでいた。どうやらまた座ったまま入っていたようだ。

 

「………大丈夫?」

「ああ。大丈夫」

「そう。………じゃあ」

 

 そう言って遠慮なくキスする辺り、彼女も色々ぶっ飛んだなぁと思う。後さりげなく腕を首に回すのを止めていただきたい。

 

「もっとしたい」

 

 さりげなく離すと、頬を膨らませて俺に抗議した。実際、臨海学校が終わってから何度かお尻を触りながら押し倒したい衝動に駆られているが、なんとか踏みとどまっている。

 

「簪、あのなぁ」

「わかった。じゃあ代表候補生辞めてくる」

 

 そう言って簪は出て行く。まさか「そんなのは無理だろ」と思ったら、勝也から電話がかかってきて「義妹がISを置いて行ったんだがどういうことか説明しろ!!」と言われたので「テメェの人望がないだけだろ、諦めろ」と返しておいた。

 しばらくしてIS学園の森が少し吹き飛んだみたいだけど、犯人は俺ではない。俺の中の何かが吠えただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園のテストは座学と実技の2つがある。そして実技は対戦となっている。訓練機は訓練機、そして専用機は―――専用機同士で戦うことになる。で、俺の相手は、

 

「今日はよろしくな、透」

「………蹴り飛ばしていいか?」

 

 笑顔を見せる織斑を俺は本気で蹴り飛ばしたくなった。

 

「いや、何でだよ」

「気分だ。気にするな」

 

 とはいえ、これは好機でもある。以前からこいつは倒したいとは思っていたからな。とはいえ、表立って殴るのは処罰対象になる。だからいつまでも我慢していた。

 俺はBピットに移動し、準備運動をしていると楯無が入ってきた。

 

「………どうした?」

「………ちょっと2人で話したくて」

 

 気まずい。物凄く気まずい。

 俺は黙っていると、楯無が口を開いた。

 

「あの……」

「何だよ………」

 

 そう返すが、もじもじとしながら胸を揺らすのは止めていただきたい。

 

「………頑張って」

 

 そう言って楯無は出て行ったと同時に影宮君並に素早く消えた。一体何だったんだ? アレ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし、光景を更識関係者が見ていれば全員が驚くだろう。何故なら、簪が楯無に対して壁ドンをするという光景なのだから。

 

「…………で?」

「……ダメでした」

 

 すると簪は笑顔で楯無の腹部を蹴る。容赦ないその蹴りに楯無は思わず悶絶した。

 

「…………仕方ない。じゃあ、作戦通りにするから」

 

 そう言って簪は楯無を放り投げるように開放して放置する。その様子を楯無は本気で怖がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS要素が入り込んだからか、何か修羅場が起こってそうな気がするが、これは悠夜みたいな感じで手を出さない方が良いだろう。そうしよう。どう考えても「乱入or死」の選択肢を突きつけられる未来しかない。

 

(さて、行くか)

 

 荒鋼を展開して脚部装甲をカタパルトに接続し、フィールド内に入る。

 フィールドはいつも通りなんだが、たまにはボールに入れてモンスターを持ち歩いたりバトルさせたりするゲームみたいにフィールドが変わったりしてくれないかなぁ。………まぁ、基本的にISって空中戦とかが多いからあんまり意味はないって言うのはあるけど。

 

「待たせたな、透!」

「別にいいさ。どうせ俺の一方的な勝ちは決まっているし。それにこの試合が最後だし」

「いや、何でだよ!?」

「簡単な話、白式みたいなノーロマンじゃ俺に勝てないんだ。だってそれ、燃費クソ悪くなってるだろ」

「う………」

「図星かよ!!」

 

 もう少し誤魔化せよ! って言っても流石にこいつじゃ無理か。

 試合開始の合図が鳴り、俺たちは同時に動いて蹴り飛ばした。織斑は初手から瞬時加速を使う癖があるからそれを利用させてもらったが、まさか今回も使って来るとは思わなかった。

 

「クソッ、まだだ!!」

 

 壁に激突した織斑だが、すぐに復帰する。なるほど、耐久力に関しては多少上がっているか。

 

「俺の組んだメニューのおかげだな。少しはマシになったみたいだな」

「言い換えねえのが恥ずかしい!」

「安心しろよ。何も恥ずかしくねえよ。それよりも周りを見回してみろよ」

 

 しかしどうしたことか、織斑は周りを見なかった。

 

「どうした織斑」

「わかっているぜ。俺が目を離した隙に攻撃するつもりだろ」

「いやいや。ちょうど全学年入っていることだしな、言ってやろうと思ったんだよ。「ISを使わなければ男に喧嘩を売れない哀れな奴らが見えるだろう」って」

 

 まぁ、目を離したらその時は本当に攻撃した。

 

「お前、そうやって他人を侮辱するスタイルは直した方が良いぞ!」

「ご忠告どうも。でも俺はちゃんと分別は付けるぞ。強い奴にはちゃんと敬意を払うし、篠ノ之束も技術力だけは認めてやっている」

「何でそんなに上から何だよ!? というか技術力だけかよ!!」

 

 正直、あの性格はないわぁって言うのが本音だ。

 

「絶対勝ってやるからな! 覚悟しろ!!」

「勝つ、か」

 

 俺は笑みを浮かべてマニピュレータに炎を出した。

 

「ならば、俺が勝ったら―――裸でIS学園を1周して、俺が指定する奴以外を子どもを孕ませろ」

「何で、それが、条件なんだよ!!?」

 

 フッ。我ながら良心的な奴だ。何せこれはチャンスでもあるのだから―――両想いにさせる、というチャンスだが。

 

「だって見てみたいじゃん? 男=弱いとか思っている奴らが、レイプされた末に下ろせない時期まで監禁されて結局産むことになる悲惨さを」

 

 織斑が顔を青くするが、俺は別に痛くも痒くもない。だって関係ないし、するの織斑だし。

 

「じゃあ、俺が勝ったら透は俺の言う事をなんでも―――ゴファッ!?」

「…………これはまた、面白いことを言って来る」

 

 織斑の言う事をなんでも聞く? そんなの、条件に出される時点で願い下げだ。

 

「織斑、それはいくら何でも調子に乗り過ぎだ。よもや俺に対してそんな条件を出すとは。それはあくまで、俺と対等に渡り合える奴が言うセリフであり、少なくともこのIS学園に俺と対等に渡り合える奴はいない」

 

 普段は閉じている翼が大きく開き、展開装甲が露わになる。

 

「当然、貴様もだ織斑。いや、貴様が一番あり得ないな。弱すぎる。ISが第二形態になったところで全く覚悟を持っていないしな」

「何だと!?」

「じゃあ織斑、お前はここに入学する時に何らかの妨害をされたか?」

 

 織斑は思い当たることがないのか? また驚きを露わにした。

 

「ちなみに俺はされたぜ。あの時はめちゃくちゃ言われたよなぁ。「デブの癖にハーレムを作る気か」とか「豚風情がIS学園に入学するなんて許さない」とかな。いやぁ、笑った笑った。ま、結果的に―――」

 

 周りには織斑が突然吹き飛んだ風に見えたはずだ。が、実際は俺が吹き飛ばしたんだが、

 

「―――最初から全員俺以下だったってオチなんだけどな」

 

 にしても織斑、お前ちょっとは反応しろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで、大人が子供の相手をしているみたいだった。

 俺、織斑一夏は同じ時期に入学した夜塚透に一方的に攻撃される展開になった。

 

(どこかで攻撃を止めないと、このままじゃジリ貧―――)

 

 考える暇すら与えてくれない。この前に暴れていた知り合いと言い、透の知り合いは化け物揃いか。

 

(………こんなんじゃ、俺はまだ―――)

 

 みんなを守る事なんてできないじゃないか………。

 福音と戦った時もそうだった。結局倒したのは透で、しかもISを解除させて結局は無理やりだった。もしかして最初から透ならできたんじゃないか、そう思わせるほどだ。

 

 ―――いや、透なら千冬姉も守ることも

 

 俺にとって透は、最初は守るべき存在な気がした。1人だけ18歳という異例の入学。もしかしたら気を遣うんじゃないかって思った―――でも、それは間違いだったんだ。

 透は天才だ。でも、俺が知っている天才とはまるで違う。透は、人を選ぶけど最初から否定しているわけじゃない。

 気が付けば、俺たちの差は圧倒的に開いていた。それを認識したのは―――福音事件が終わった時だ。

 すべてが終わり、たった1人罰則を受けていた時に理解した。俺は、本当は弱いって。

 

(………強く………なりたい………)

 

 このままじゃダメだ。このままじゃ、俺は全く強くなれない。

 

「俺は……強くなる―――」

「だったら―――まず自分を変えろよ鈍感クソ野郎」

 

 そう言って透は俺を蹴り飛ばした。よくよく考えれば、透は俺に対して武器すら展開していない。つまり俺は………まだ、透に敵わないってことか。

 

「クソッ……俺は……こんなところで……」

「安心しろ。俺に負けるのはたぶん最後だから」

 

 そう言って透は俺の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり、レベルアップとはいえこいつではこの程度か。しかし意外とセンスはある。いずれ鍛え上げれば凄腕のIS操縦者になるだろう。だからこそ、こいつは日和らせる必要はない。

 

(とはいえ、今は倒すか)

 

 最初だけで結局武装を使う必要はなかったな。武装が増えてもこいつの猪突猛進をする性格を直さなければ強くはなれまい。

 

『試合終了。勝者、夜塚透』

 

 アナウンスを聞いてもむなしいだけ。ふと、視線を感じて上を見る。視線の先には今日の試合を見に来たのか希美の姿があった。

 俺は笑みを浮かべて奴に向けて握り拳を作ってから上に向けるように中指を立てる。

 

『どういうつもりかしら? それとも、そのような小物相手に勝てて調子に乗っているのかしら?』

 

 個人間秘匿通信でそう話しかけてくる。

 

『宣戦布告だ。って言っても日本じゃ今のお前が最強らしいし、仕方なくだけどな』

『………へぇ』

『ああ、何だったら簪以外の代表候補生も国家代表も呼んできて良いぜ。どうせ終わったらお前らが倒れているだろうけどな』

 

 誰が来ようと、関係ない。

 決して強がりじゃない。なんだったら今すぐこの場でそれを証明してやっても構わないくらいだ。どうせ相手は「朝間」だ。鬱憤を晴らすのにちょうどいい。

 しかし奴は姿を消したが現すことはしなかった。次に現れた時に「お兄様の結婚式の準備に忙しいのよ。アンタみたいなお気楽高校生と違ってね」とか言うだろう。

 

「………透」

「あ? 何だ?」

「どうしたら、俺も透みたいに強くなれるかなぁ………」

 

 下では俺に踏まれた状態の織斑がそんな質問をしてくる。だから俺は答えてやった。

 

「お前の心は幼すぎるから、いっそのこと非人道的な組織に実験体として入れば良いんじゃね」

「…………できれば、別の方法で……」

「じゃあ、周りが全員「粋がったゴミ屑」だと思えばいい」

「本当に碌な方法がないな!!」

「まともな方法で化け物になれるわけがない」

 

 静流君はあくまで天然記念物。ちなみに瞬君は僕ら4人の中では総合スペックで言えば雑魚だ。素早くて気配があまりない以外は突出していない。

 

「結局、そいつの気分次第だろ」

 

 そう言うがどうやら織斑の頭脳ではまだ理解できないみたいだ。




ナターシャさんがMっぽくなっていることに関してさらに言いますと、今回は拘束時間が長かったのでその分の開放された時の感覚が一気に来たこと、さらに解放された時に荒鋼からとても優しくて暖かい感情が2人を包んだことから、少しばかりの勘違いが起こったという感じです。

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