IS-Lost/Load-   作:reizen

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ep.29 法律は守ろう

 学年別トーナメントが終わり、約2名は除いて動ける生徒全員が体育館で騒いでいる……一部通夜状態に近いが。

 そんな中、俺は外に出て近くのベンチに座って荒鋼の状態を確認した。……やっぱり少し無理があったか。

 AICは第二世代式の電波装備の一環として改造したが隠れた使用制限があったようで使用不能。衝撃砲とBTは従来使えるから問題はない。突貫だったからな。もう少し改造は必要か。

 

「大会が終わった後だと言うのに、精が出るわね」

「楯無か。向こうで騒いできたらどうだ? 俺は多数で騒ぐと言うのは好きじゃないんだ」

 

 昔に大人たちパーティに連れて行かれたことがあるが、見栄と警戒のオンパレードだったからな。あれは一種のトラウマものだろう。

 

「私も疲れたのよ」

「……仕込みは?」

「それに関しては問題ないわ。しっかりとこなしたから」

「そうか。じゃあ乳を出せ。吸ってやろう」

「何か言った?」

「いえ、何も」

 

 そんなに怒らなくても良いじゃないか。優勝したんだからご褒美くらい欲しいものだ。

 

「ところで、決勝戦の事なんだけど」

「何だ? やり過ぎという意見は聞く気はないぞ。……その分結構機体に負担がかかったから後で整備するけど」

「そうじゃないわ。そうじゃなくて、何で簪ちゃんは動いてなかったの?」

「できるだけ織斑といさせたくなかったのが1つ。後、もしボーデヴィッヒ辺りが簪をボコったらあの程度で済まさないし観客席にぶち込んでも暴れていただろうって思ったのが1つ。後、ちゃんと仕事は果たしてくれたしな」

「そうなの?」

「俺がボーデヴィッヒを潰している間、織斑が鎖で拘束されてたろ? あれ、簪がしてくれてたから」

 

 簪に作戦を伝えたら撫でることを要求された。後で部屋でしてやらないと………胸や尻は撫でませんよ?

 

「そう。完全に参加してなかったわけじゃないのね」

「まぁ、大して動かなかったから俺の実力も見せつけれたわけだが」

「それが本音よね?」

 

 だって女だったらいつでも認識できるけど、男の場合は「実力がない=実験台」になる確率が高いからな。ここで少しでも点数を稼いでおかないと面倒なことになる。……もっとも、研究所を占拠して俺がボスになるのはわけがないのだが。

 

「それで、ボーデヴィッヒと織斑の容体は?」

「ISを展開していたからそこまでダメージはないわ。ただ、機体の方は………」

「まぁ、どっちにしても今度の臨海学校までには間に合うだろ。俺の推理が正しければ白式は既に修理に取り掛かっているだろうし」

 

 誰が、とは言わないが。

 

「…………そうね。私も同じ見解よ」

「正直なところ、金じゃなくてISコアが欲しかったな」

 

 簪用の機体を作っておきたい。いざという時のために。ちなみに今回の賞金として100万円もらえた。折半して50万か。太っ腹!

 

「ISコアはそう簡単に手に入るものじゃないわ。いくらあなたと言っても、ね」

「それは残念。じゃあ代わりに楯無の身体を」

 

 ―――ごんっ!

 

「殴るわよ?」

「もう既に殴っているよな?」

 

 すっごく痛い。

 とはいえこのご時世で女性にセクハラして殴られるだけで済んでいるのは奇跡だろうな。楯無だから奇跡で済んでいるが、布仏虚にしたら即刻訴えられるだろう。

 

「………楯無」

「セクハラするなら殴るわよ?」

「………ある意味近いんだけどさ。悪いんだけどちょっと肩貸して」

 

 警戒しながら俺の近くに寄ってくる楯無。俺は彼女の右肩に頭を預ける。

 

「………夜塚君」

「なんか、簪にすると色々とヤバい気がするからさ。そういう意味じゃお前は警戒さえしてくれればある程度のことなら問題に発展しないからな」

 

 本当は胸の方が良いとかは言わない方が良いだろう。

 

「正直、思うんだけどさ。俺は優勝したけど………所詮は学生相手だよな?」

「確かに優勝したわ。それにあなたが相手をした中には代表候補生もいたし、簪ちゃんに抑えてもらったとしてもボーデヴィッヒさんには勝った。それは誇るべきだわ」

「………俺には無理だな」

 

 決して相手を馬鹿にしているわけではない。だが、俺には無理なのだ。

 俺が今欲しいのは知恵もそうだが、何よりも力だ。たった1人で多くの敵を排除する力が欲しい。

 

(………また授業はサボるか)

 

 俺には戦闘経験値が圧倒的に足らない。今回は簪の援護と機体スペックの差で勝てたようなものだ。

 

(…………まだ足りないんだ、俺には。何もかもが)

 

 いくら楯無相手とはいえ流石にこれは言えない、か。

 俺はしばらくしてからパーティに戻り、主に殺気に囲まれてとにかく楽しく過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、とある事態が起こった。

 時間は少し遡る。いくら祝い事とは言え俺はともかく周りは高校生。明日は土曜日で午後からの授業だとしても夜更かしは厳禁となり、解散した後のことだった。簪はまた甘えてきたのである。

 正直、それに関しては別に何の問題はない。俺としても性欲との戦いにはなるが喜ばしいことになるのは間違いないのだ。ある意味悠夜があんなことをした理由は頷ける。

 

「………あの、簪さん」

「何?」

「服着てください」

 

 俺の愚息はとある理由から暴走し、簪は唯一身に着けているパンツのみの状態でこっちに迫ってくる。一歩間違えれば(何をとは言わないが)即挿入しそうになる。だって他人だもん! 可愛いもん! むしろこっちから襲いたい気分だ。

 

「………今日という今日はもう許さない」

「……もしかして、やっぱり補助のみに徹したことが気に入らなかった?」

「…………そっちじゃない。お姉ちゃんとイチャイチャしていたこと」

 

 あ、見られていたのね。

 さ、流石は暗部の出身というべきか。俺のかぁいいセンサーに引っかからないとは。

 

「…………だから………仕返し……あと……調教……」

 

 何だろう。元神童に恋した学年主席の女の子を彷彿とさせる。一体何が彼女をそうさせたのか――ってくさっ!? 簪からアルコールが臭って来る!

 

「簪………まさか酒を………」

「……? ……呑んでない。だから透さんは……今すぐ脱いで………」

「いや、それは―――」

 

 流石に問題だろうと思った俺は断ろうとしたが、次の簪の行動に驚かされた。

 

「脱いでよぉおおお!!」

 

 叫んだ。いや、この家は全面防音仕様だからヤリまくってどんだけ喘いでも問題ない。……だって騒音がいつも鳴るしね。じゃなくて、そうじゃない。

 

「どうしてお姉ちゃんばっかりセクハラするのに、私にはしないの!? おっぱい!? 私が貧乳だから?! じゃあ揉んで!! 今すぐ!! 早く!!」

「お、落ち着け! そんなことしたら―――」

 

 間違いなくやります。

 だからこそ、一定の年齢まで我慢をしているんだけど、簪には関係のないことだな。

 

「良いもん………子供出来ても」

「いやアウトだろ!? それに子育てだって今のまま難しいし、簪だって若いんだから他の友達とかと遊んだりしたいだろ?」

「………………………」

「あれ、簪? って、おい!」

 

 簪が倒れそうになるのをなんとか止めると、彼女の口からあるものが飛び出した。

 

 おそらく、これをされて怒らなかった俺は凄いと思う。叫ばなかった俺はとても神ッているだろう。だって仕方ないじゃん。俺の中のスイッチが切り替わったのだから。

 こうなったということは簪に何か異常が発生したということで、服でそれを受け止めながら簪の額に手を当てると熱かった。服から溢さず簪をおぶった俺はまず風呂場で上半身裸になり、邪魔なものを置いて簪をトイレに連れて行った。

 

「ここなら好きなだけ出していいからな」

 

 こっちはやるべきことをしないと。

 まだ風呂は準備していないから、まずはそれをしながら―――の前にバスタオル2人分を用意だ。風呂の湯を張っている間、俺は俺でシャワーを浴びる。

 

「簪、風呂の準備ができたから入れ」

 

 熱が出ている奴にそれが有効かどうかはともかく、一度入れておく。

 

「…………お兄ちゃん」

 

 ん? 今何か変なのが聞こえた気が………

 

「身体………洗って……?」

 

 どうやら俺は他より頭が言い分、かなり難関な状況に陥れられる運命を背負うことになっているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 透に聞く人によっては殺意が湧くような災難が降り注いでいる頃、IS委員会に所属する面々は重苦しい表情を浮かべていた。

 

「…………恐れる事態が起きた」

 

 委員長であるチェスター・バンクスはそう言うと、全員は同じようなことを思っているようで頷く。

 

「……まさか、第二の天災が現れるとはな」

「確かお主の孫であったな、シュウゾウ・アサマ。あの男をどうして放っておいた?」

「………正直、ここまでの人間に成長するとは思いませんでした」

 

 修蔵でも予想外だったのだ。

 確かに昔から頭が良かった。しかしどういうことか全世界に知れ渡っている不良校「私立黒葉高校」に入学すると言い、結果的に自分の主要取引相手でもある女権団のボスを再起不能に陥れた。それだけではなく次の団長になるはず女性が次々と誘拐され、中には他国の有力者たちに売られそうになっていたこともあった。

 

「まぁいい。ともかくこちら側に来るように説得しろ。相応の対価は支払っている」

「………わかりました」

 

 修蔵はそう答えるが、正直なところ彼にとって透は最早別次元の存在。わざわざ自分のテリトリーに入れる気はさらさらない。

 

(それに、あの男が下手すれば私が今まで築き上げた地位を壊しかねる………)

 

 チェスターの子飼いとして献上できれば上々。だが透はそう簡単に他人に平伏すような人間ではないことはわかり切っている。

 

「大丈夫ですよ。我々も協力しましょう。例えばこちらの臨時に国家代表をしている者を差し出すとか、ね」

 

 ロシアの代表がそう述べる。それが意味することは1つ。更識楯無を日本に貸すと言っているのだ。元々楯無は日本の人間だが、今は専用機を持たずに生徒会長を倒したと言う都合上で彼女と相性が良かったロシアの代表候補生として専用機を受領したが、後に国家代表を下して成り代わったのである。

 

「………その時はよろしくお願いします」

 

 内心「元々こちらのものだ」と主張しそうになったが修蔵は自重した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突の騒ぎに俺は少し騒いでしまったが、簪をようやく横にさせることができた。

 まずは汚物の掃除。少し嫌だったがそれでも今動けるのは俺だけだ。ベッドのシーツは洗濯の後に乾燥中。別のシーツで代用している。ベッドとかは流石にバスタオルを敷いて対応した。ただ、問題は他にもいくつかあった。

 まずは簪のパジャマ。エアコンがあるとはいえ……いや、むしろあるからこそちゃんとした衣類が必要だ。流石にパンツやブラを取るわけには行かずに裸ワイシャツを強要することになった。

 

(………こうして見ると、本当に可愛いな)

 

 そう思いながら俺は簪の唇を突っつく。すると簪は口を開けたので引っ込めた。

 

「………誰……?」

「俺だ。気にせずに寝ろ」

 

 そう言って俺は頭を撫でる。しかしまだ熱があるようだ。いやまぁ、当然か。

 

(俺もそろそろ寝るか)

 

 いくら明日は昼からとは言え、身体が持たないからな。そう思って部屋を出ようとしたら服を引っ張られた。

 

「………ま……て……」

「簪。悪いが俺は寝る」

「………行かない……で……」

 

 心配そうな目で俺を簪。………ふぅ。俺はつくづく甘い男だな。いや、それは元々か。そうじゃなかったら織斑まで教えようとは思わない。

 

「わかった」

「………いい……の?」

「別に。まさかお前、俺に引っかけたことで俺がお前を嫌うとでも思っているのか? だとしたら心外だな。俺に甘えてくる美少女を嫌う理由なんてあるわけがないだろう。気にせず眠れ」

「…………抱いて」

「…はいはい」

 

 簪のベッドに入りつつ、俺は簪を抱きかかえてそのまま横になって目を閉じる―――って、おい。

 

「人の指を舐めようとするな」

 

 全く。さっき唇を触っていたのはそういうつもりじゃないっていうのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍しいことが起きた。

 思考がフルに回っていたはずのあの男から無茶苦茶な想像や妄想の類が一切なくなったのだ。おかげで私は作業に没頭できる。

 

「これで………これで作業を進めることができるわ! さっさと一次移行をさせなくちゃ!」

 

 莫大なデータが常に送られてくるのだから、忙しい。えっと、今はあの簪って女の子と一緒に…………一緒に!? ちょっと待って?! 何であいつ女の子と一緒に寝ているのよ!? あ、むしろそのせいで大人しくしているの? だったら超ラッキー!! 今の内に作業の大半を終わらせなくっちゃ!!

 

「そうとわかったら燃えてきたわ!! さぁて、仕上げるわよ!!」

 

 だけどこの後、莫大な量のデータが送られてきて泣きそうになったと言うのはまた別の話。




絶対に仕組まれた事故でない限り……いや、例え仕込まれたことでも未成年者の飲酒と喫煙は犯罪です。自分たちが良くても周りが被害に遭うので、飲酒や喫煙をすることはもちろん、未成年者が買い物に行くなどという行為は迷惑そのものなので20歳になるまで我慢しましょう。

いや、本当に迷惑なので。どれだけ迷惑かというと、ISで日本を消し飛ばしたいと思うくらいには。

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