IS-Lost/Load-   作:reizen

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最後の部分「一週間前」から「5日前」に変えました。


ep.24 やはり血の繋がりは存在する

 まさしく異常だった。

 私が選んだ男は取り調べ中に不条理に殴られても何も言わなかった。むしろ内心笑ってすらいた。

 ただでさえVTシステムを直接侵入し、体細胞を一瞬で殺されてエネルギーの糧とされて人体を崩壊し、無理矢理再生しただけなのに………。

 

(………何故気付かないの………あなたはもう……)

 

 死ぬかもしれない、その一歩手前なのに。

 

 ―――アラート発生 情報が更新されました

 

 そんな情報が私の頭に入ってくる。これでもう何度目? あり得ない。今生死を彷徨っているはずよね? 何で情報が更新されているのよ?!

 私はもしかしたら選ぶ男を間違えたかもしれない。何で常時情報が更新されるの? 10分ごとに新しいアイデアが更新されるの? しかもISじゃ考えられないものばかりじゃない! この前なんて「ISを2機合体させれば超兵器ができるんじゃね?」とか出てきた瞬間に頭を抱えたわよ!? これ本当に死人なの!? っていうか今あなたを助けるために全力を出しているっていうのに情報更新ってなんなのよ!!?

 

 ―――アラート発生 情報が更新されました

 

 そっか……そっか。

 私は悟ってしまった。この男、殴られている時に気絶したけど、脳だけは何故かどういう原理か知らないけど回ってるんだ。

 

(もう……女なんか全員ブ男に孕まされろ!!)

 

 届かないとわかっていたけど、どうしても叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に思ったのは、いつものベッドよりも固いという印象だった。

 気になって目を開けて上半身を起こすと、そこは俺の知らない………あ、知ってたわ。

 

「…………あ!」

 

 そうだ思い出した。もう少しで俺は楯無のおっぱいにダイブできたんだ。クソッ! 織斑の野郎、盗んだバイクで轢き殺したい。あのモテ男め! 絶対に許さねえ!!

 

「―――よ……夜塚君……」

 

 唐突に声をかけられて俺は硬直した。

 

「布仏虚か。どうしたんだ?」

「ど、どうしたって………目を覚ましたんですか!?」

「この通りな。そだ、楯無は? あいつの胸を揉みしだきたいんだけど。もしくは尻でも―――」

 

 布仏虚が何かを振り下ろす。物凄く痛かったとだけ言っておこう。

 

「って、何するんだよ!?」

「お嬢様にはあなたの様子を定期的に見るように、もし起きてセクハラを働いたらこのハリセンで叩いても良いと言われているので」

「おいおい………ってことは今はいないのか?」

「ええ。あの件で学園を離れています」

 

 …………ああ、あの件ね。

 

「それでアンタが来るとはな」

「嫌でしたか?」

「真面目な話、鎖付き首輪と犬耳を付けて四つ這いになったら興奮できると思うけど―――」

「死にますか?」

「結構です」

 

 でも、たぶん似合うと思うんだ。だって、妹が可愛いの集合体みたいなものなんだから、姉だって可能性があるだろう。

 

「………それで、本当に大丈夫なんですか?」

「体の調子か? まだ起きたばかりだからな。セックスするなら万全になるしするけど―――」

「はい?」

「あ、はい。すみません」

 

 にしてもおかしいな。いつもよりも性欲が強すぎる気がする。あー、

 

「もしかしたら、2回も死にかけているから性欲が強くなっているかもしれない」

「…………3回目で簪様が孕んでいることに賭けましょうか?」

「じゃあ双子を―――冗談だから、冗談だから!」

 

 まぁ、今はそんなことを言っている場合じゃないか。

 

「聞きたいんだが、俺の処分はどうなった?」

「1週間の停学ですね。もっとも、あなたはその内の3日を寝ていたので残りは4日ですが」

「他の奴らは?」

「特にお咎めはナシです」

 

 あー。やっぱりか。ま、そうだよな。そうでなきゃこっちが困る。

 俺が笑顔になったのがそんなに怖いのか、それとも警戒しているのか布仏虚は厳しい目で見てきた。

 

「何か企んでいるみたいですね」

「布仏虚をどうやって調教しようかなって事だけど?」

「…………それ、言われている本人は結構傷つくんですよ?」

「あー、悪い。でもこれだけ言わせてほしい。俺は、可愛い奴は愛でたい奴以外には発情しない」

「………………は?」

 

 あー…………もしかしてこいつって……。

 

「もしかしてお前、可愛いとかって言われ慣れていないのか?」

「そ、そそそ……そんなわけないじゃないですか!? 私だってそれなりにモテるんですよ」

「いや、お前の性格ってお堅いしなぁ」

「そう言えば、今度の課題は死神の鎌をどれだけうまく作れるかでしたね。よろしければ試し切りのために身体をぶった切ってもよろしいでしょうか?」

「断る」

 

 眼が死んでいるという事は図星ですね、理解しました。

 

「さて、そろそろ戻るとするか」

「ダメですよ。あなたは今まで生死を彷徨っていたんですから入院続行です」

「えー!? せめて家に帰りたい!!」

「…………それくらいは良いでしょうが………トレーニング自体厳禁です」

 

 よし! これで帰って簪に抱き着いてクンカクンカ………え?

 

「トレーニング……禁止……?」

「もちろん、室内からみだりに出ないこと。良いですか? あなたは本当に一度死にかけています。ですから今度の学年別トーナメントも辞退を―――」

「絶対に嫌だ!!」

 

 トーナメントを辞退とか、それってつまり各国からまた狙われるって意味するじゃねえか。

 

「トーナメント辞退は絶対にしねえ。俺は出る」

「………ダメです」

「じゃあ、代わりにお前を孕ませろ!!」

 

 経験上、これで大体仕方なくってケースになることがある。ハリセンだろうがなんだろうがかかって来いやぁ!!

 

「ダメですよ」

 

 そっと頭を触れられる。気が付けば俺の力は抜けていて、そのまま倒れていた。

 

「今、あなたは疲れているんです。だから寝なさい」

 

 そう言われて俺の瞼は段々と閉じていく中、俺はあることを思った。

 

 ―――やっぱり、布仏姉妹って魔術師かなにかの家系ではないか、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚が透を寝かしつけて部屋を出てしばらく、IS学園にある大事件が起こる。

 学園周辺に鳴り響く警報に全員が騒然としたがすぐに避難が行われる。前回の騒動に合っているのが大半だからかスムーズに事が進んだ。

 千冬をはじめ戦闘員を兼任する教員たちが集合して初めに言われたことは、

 

「これは、侵入者が来たことではないのですか?」

「ええ。今回は―――脱走者です」

 

 菊代は緊張した面持ちでそう言った。

 

 ―――脱走

 

 IS学園は学園という側面が強い。そのため申請すれば大抵はすぐに自主退学を行うことができる。そもそも本来は可能性としては限りなく低くなったが、襲撃自体があまりないため当然捕縛された人間が脱走するというケースはゼロだったのだ。

 

「あの、一体それはどういう………」

「………実は、夜塚君が学園から脱走しました」

「「「……………は?」」」

 

 教員全員が唖然とした。

 彼女らにとって夜塚の目を覚めていたこと自体が初耳なのだから。

 

「布仏虚さんから目が覚めたことを聞いたので様子を見に行きましたがすぐにいなくなっていて、その後です。部屋を調べたら書き置きがありましたが………」

 

 菊代はそう言って千冬たちに書き置きを見せる。

 

『振りではなく本気で探さないでください。学年別トーナメントまでには戻ってきます。あ、簪と同じペアで登録オナシャス!』

「………この通り、参加する気満々です」

「そんなの認められませんよ!!」

 

 教師の1人がそう言うが、実はもう許可は出していた……というか、簪がとっくにそういう風に行動していたのである。

 容体が安定はしたので経過を見るために一般病棟に移された後、簪が侵入して拇印を押して書類を提出している。

 ちなみにトーナメントは元々個人戦だったが、先の無人機襲撃事件によって2人組による作戦行動を行わせることになった。そういうこともあり、専用機持ち同士のタッグは認められているのである。

 

「とはいえ、上層部からも「男子はぜひ出す様に」と言われていますしねぇ」

「………それは―――」

「だ、大体、何で既に提出されているんですか!? こんなの無効ですよ! ちょっと私が更識さんに話をしてきます」

 

 そう言って出て行こうとした教員は足を止める。

 

「遅れてすみません。それで、話とは?」

「ちょうどいいわ、更識さん。あなた、夜塚透とのペアを解消しなさい」

 

 ―――ドンッ!!

 

 職員室の壁が叩かれる。犯人は言うまでもなく簪だ。

 

「さ、更識さん…………」

「…………わかりました。では、今度のトーナメントは辞退させていただきます」

 

 その宣言に、その場にいた虚と本音は驚いた。

 

「な、なに言ってるの、1年生は強制参加―――」

「夜塚君と組むことができないんでしょう? なら出ません」

 

 はっきりという簪。それに本音は敢えて突っ込まないようにした。

 

「ど、どうして―――」

「確かに……今回の脱走は彼に非がありますが………そうなったのはあなたたちが余計なことをし続けたからでしょう?」

 

 楯無に比べたらそこまでではないが、それでも15歳にしては十分な気迫を見せる簪。学園の戦闘員となると元代表候補生が多数だが、全員が気迫にたじろく。

 

「………でもまぁ、彼に非があるのでこうするのはどうでしょう?」

「………何だ?」

「もし、トーナメント当日になっても夜塚透が帰ってこなければ、その時点で私たちの敗北ということで」

 

 その場にいた教員たちは内心喜んでいたが、本音はすぐにそれに気付いた。

 

「………それでよろしいのですか?」

 

 菊代に簪は頷いて答える。

 

「構いません」

「そうですか。では、夜塚君が学年別トーナメントまでに帰ってこなければお二人は棄権ということで」

 

 これで一応は決まったのだが、当然教員内で透の評判は最悪である。

 そのため女権団に頼んで捜索、直ちに妨害することを頼んだが―――実はこれがすべての間違いだったのである。

 

 

 

 

「わ、私たちが女だという事をわかってるの?」

「知ってるよ。確か、手にかける価値がない蛆虫っスよね?」

 

 そう言って少年は女性の肩を外した。そこから少し離れた場所では2人の男がたくさんの女性を相手にしていた。

 

「な、何なのよこいつ!?」

「生意気よ!!」

「没落した組織の残党たちが今更何かと思ったら………みんな、ヤっていいよ」

 

 男の1人がそう言うと、どこからか男たちがバイクで駆けつけたようで次々と接近してくる。

 

「まるで暴走族の集団だな」

「実際そうだけどね」

「にしても意外だったな。さっきまで喧嘩していた奴らをこうも単純に操れるなんて」

「簡単なことだよ。みんな女性に対して恨みつらみはあるからね。それに元々男は子孫を植え付ける存在だし」

「見たくもない野外乱交が始まるのか。吐き気がするな」

 

 その理由の大半が「他人のイチモツを見る趣味はない」ことと「ブスの裸なんて興味がない」ことだが。

 

「それよりもお前、1週間も家を空けていて良いのかよ?」

「大丈夫。君が前に暴れてくれたおかげで上手く義母を消せたから」

「うん。今のは聞かなかったことにするわ」

 

 引き気味にそう答えた男―――夜塚透。そして彼の親友である桂木悠夜は、透も久々に会ったが予想以上に変態度が進んでいたのである。

 実は悠夜の家は女尊男卑が始まる前に子持ち同士で再婚していたが、女尊男卑が始まったことにより悠夜の実父が蒸発し、義母がそれを利用して悠夜に苦労を強いていたのである。だが、とあることが起こったことにより義母も蒸発して莫大な財産が彼と義妹に残されたのだが、当然所有権に揉めた―――ということは案外なかった。

 

「君もすれば―――ああ、ごめん。君たちは実の兄妹だから無理か。それでIS学園でメス豚―――もとい、ペットを探していると………」

「訂正できてねぇぞー」

 

 透も詳細も知らない。というか、聞いたら負けと思っているので聞いてないのである。

 

「あ、おふたりさん! お待たせしました!」

「………ただいま戻りました」

 

 今度は2人の少年が現れる。どちらも高校生であり、本来なら授業があるのだが―――サボっている。

 

「あれ? 君たちは家畜を連れてないの?」

「えぇ。生憎先輩の彼女みたいに可愛い女の子は―――っと、危ないっスよ!?」

「NTRをしても良いのは、股間を潰される覚悟ある奴だけだ」

「どこぞの皇帝みたいなことを言わないでくださいよー」

 

 ちなみに股間にあるイチモツを潰されそうになった少年はさっき女性の肩を外した少年でもある。

 

「………どうせいないよ」

「大丈夫。容姿さえ良かったら後はぶち込んで大人しくするだけだよ」

「………笑顔で鬼畜なことを言わないでください」

 

 透は少しばかり後輩2人に同情した。

 

「にしても静流君は凄いな。たった1人で突っ込んだと思ったら敵部隊を壊滅させるなんて」

「いやぁ、かの有名な「魔王様」にそんなことを言われると照れるっスよ」

「………なにそれ?」

「………有名ですよ。自分と家族を守るために同級生と後輩を男女問わず全員病院送りにして女権団のボスを倒した話は」

 

 それを聞いた透は顔を引き攣らせた。

 そう、透が脱走した理由はその強い自分を引き出す―――というよりも、さらに自分を強くするためである。彼はラウラとの試合で自分が対応しきれていないことを痛感したのだ。確かに透は少年の1人―――影宮瞬が言った通りの偉業を成し得たが、その時の記憶は全くないのである。

 

「にしても凄いっスよね、「黒葉の魔王」なんて。俺なんていつの間にか「エアリアルオーガ」なんてダッサイ二つ名があるので羨ましいです」

 

 両目を輝かせてそう言ったもう1人の少年―――舞崎静流から透は目を逸らした。

 

 そんなことがあり、透がIS学園に帰ってきたのは―――学年別トーナメントの5日前である。




あ、最近向こうの方を書いてないや

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