IS-Lost/Load-   作:reizen

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ep.19 あっちこっちでフォローする

 俺たちが廊下を出て更衣室に向かう……のだけど、実はアリーナの更衣室を利用するので結構遠い。理由? 以前織斑の盗撮写真が出回ったせいだよマジしばくぞクソイケメン。

 

「おいデュノア、こっから先は警戒区域だ」

「え? 何かあるの?」

「むしろケルベロスとかいてほしかったけどな。残念ながらそうじゃない」

 

 番犬ならばまだマシだ。これから来るだろう奴らに放つから。

 

「ああっ! 転校生発見!」

「しかも織斑君と一緒! 1つ汚物いるけど!」

「そろそろ俺はこの学園の生徒を無条件にボコっても良いと思う」

 

 そう呟くと織斑に突っ込まれるがスルーした。

 

「いたっ! こっちよ!」

「者共、出会え出会えい!!」

 

 なんか奴らのテンションがウザったい。というか騒ぐな。虫唾が走る。

 

「な、何? 何でみんな騒いでるの?」

「そりゃ男子が俺たちだからだろ」

「………?」

 

 何でデュノアは意味がわかっていないのか。仕方ない。説明してやるか。

 

「簡単に言えば、奴らは自分たちが行き遅れたくないと騒いでいるビッチ共だ。だから今度から武器持ってこい。チェーンソーでもいいぞ」

「それ死んじゃうから!」

 

 的確な突っ込みをされるが、まぁこのままいたらジリ貧だ。

 

「織斑」

「何だ?」

「じゃあな」

 

 そう言って俺は織斑の足を払ってこかせる。最初は股間を蹴り上げて悶絶させようと思ったけどそれじゃあ少し可哀想と思ってそれで終わらせた。

 

「デュノア」

「え? な―――何するの!?」

 

 時間が惜しいのでデュノアを担いだ。

 

「何も言うな。舌噛むぞ」

「そういう問題じゃないよ!!」

 

 騒ぐデュノアを放置して、俺は階段を駆け下りる。こういう時って体重が重い方が有利だったりする。

 という、どうでも良いうんちくはともかくだ。俺たちはこのまま女たちの包囲網を抜けて更衣室に着いた。

 

「急げデュノア。さっさと着替えないと織斑の犠牲が無駄になる」

「………僕、待つよ」

「転校初日から罰を受けたいのか? もしかしてマゾか?」

「ち、違うよ!? でも、心配だし……」

「それに関しては問題ねえよ。もう来る」

「え?」

 

 ちょうどいいタイミングに更衣室のドアが開いた。

 

「おい透! 一体何てことしてくれたんだよ!?」

「織斑、そろそろやばいぞ」

「お前がヤバくしたんだろ!!」

 

 叫ぶ織斑を流しながら俺は夏服になった制服を脱いでロッカーの中に入れ、ISスーツの上から着る特殊ジャージを着て水筒とタオル、その他諸々が入ったスポーツバッグを持った。

 

「行くぞデュノア。織斑は放っておけ」

「で、でも―――」

「どうせ後から追いつく」

 

 デュノアの着替えるスピードも大概早かったので、ついでに誘った。今からなら歩いたら十分間に合うな。

 

「まぁ、ともあれよろしくな。しばらくしたらあの騒ぎも落ち着くだろうしな」

「う、うん………でもいいのかな? そのたびに織斑君が犠牲になるし……」

「ああ、今日はたまたまだ。もしかしたら次はお前かもしれないしな」

「え………?」

 

 悲壮感が漂う顔をするデュノア。同じことをされると思ったらしく、みるみる彼の顔は青くなっていく。

 

「冗談だ。とはいえ手段としては視野に入れている」

「入れているの!?」

「と言っても普通に生活している分には全く問題ないことだ。そう気負うな」

 

 普通に友人として付き合うだけなら特に問題ない。

 

「でも意外だったよ。てっきり日本の有名大学に主席合格しているから気難しい人かと……思っていました」

「思い出したように敬語にするんだな…………待てデュノア。俺は次席合格したはずだけど」

「そうなんですか? 変だな。僕は夜塚さんが日本にある超難関技術大学で現役ながら主席、しかも満点で合格したと聞きましたが……」

 

 瞬間、俺の時間は停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? ご存じではなかったのですか?」

 

 オルコットにそんなことを言われた俺は少し泣きそうになった。

 デュノアに「主席合格した」と聞いた俺はすぐに知ってそうなオルコットに聞いてみたんだが、まさかこんな返答が来るとは思わなかった。

 

「ああ。だって「次席合格者」って書かれてたし……」

「………そのことなんですが、実は少々込み入った事情がありまして………」

 

 言いにくそうにするオルコットを俺は止めた。

 

「ああ、それ以上は良い。そろそろ授業だしな」

「は、はい……。ありがとうございます」

 

 何でお礼を言われたんだろうか。

 

「では本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する……が、その前に戦闘を実演してもらおう。凰! オルコット!」

 

 詳細は後から昼飯の時に楯無にでも聞くとしよう。今は話を聞くふりでもしておかないと殴られるしな。

 

「めんどいなぁ……何でアタシが……」

「こういうのは見世物のようで気が引けますわ……」

 

 いやいや、ISって元々見世物の部類だろ。最近はそうでもないが、俺が入学して上にジャージを着ていた時は「ダサい」などの罵倒のもとになっているが、本音を言うとISスーツのみで活動しているこいつらは完全に露出狂扱いしてもおかしくないくらいだ。

 

「お前ら少しはやる気を出せ。―――アイツらに良いところを見れられるぞ?」

 

 瞬間、凰はテンションを上げたがオルコットは首を傾げている。

 織斑先生は意外そうに俺を見るが、どうやら少し勘違いしているみたいだな。……俺とオルコットの間にあるのは精々、師匠と弟子みたいな絆ぐらいしかないというのに。

 などと考えていると、ハイパーセンサーが起動して物体の接近警報が鳴ったので場所を表示させると、こちらに向かってISが飛んできていた。

 

「ああああーッ!! ど、退いてください~っ!」

 

 俺は咄嗟に織斑の肩に乗ると同時に蹴って荒鋼を展開し、すれ違いざまにウイングスラスターを掴んでその場で回転し、安全な所に投げた。

 

「あ、ありがとうございます~。助かりました~」

 

 若干目を回し気味なんだけど………もしかしてこれが2人の対戦相手だろうか?

 

「よくやった夜塚。だが女性にはもう少し丁寧に扱え」

「言われなくてもちゃんとやってるさ。どこかの無能と違ってな」

 

 着地して展開解除する。全く、一度俺の簪に対する態度を見てからそう言ってもらいたいものだ。

 

「さて小娘共、いつまで惚けている。さっさとはじめるぞ」

「え? あの……2対1で……?」

「いや、流石にそれは……」

「安心しろ。今のお前たちならすぐに負ける」

 

 ……なるほどな。そういうこと。

 俺は素早く英中コンビの所に移動して2人を連れて移動する。

 

「ちょ、何すんのよ!?」

「……もしかしてこれは―――」

「ああ。アレをただの無能2号だと思わない方が良い。おそらく普段は胸と童顔と授業が分かりやすい以外はむしろ教師として能力が低い女だが、相応の実力者だ。お前ら2人を噛ませ犬にして実力を証明させる腹だろう。いいか、決して舐めてかかるな。ああいう普段は無能な奴ほど本当の実力は高いものだ」

「わかりましたわ」

「………わかったわ。アンタの言葉を信じてみる」

 

 2人を離して俺は移動し、3人は俺たちに被害が及ばないように離れて戦い始めた。

 

 

 

 

 2人はまだ健闘した方だと思う。試合時間は8分程で、敗因としては2人がタッグを経験がないことと山田先生のレベルが2人よりもかなり上だったことだろう。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意をもって接するように」

 

 非常事態に何の役にも立っていなかった奴が何かを言っているが無視だ。技能はあれど何もできないんじゃ宝の持ち腐れだな。

 

「ぐっ………まさか山田先生があそこまで強いなんて……」

「先読みも代表レベルね。彼女が日本代表じゃないのが嘘みたいよ」

「まぁ、これから精進すれば良いって。…………いくら強くてもいざという時に何もできないなら邪魔なだけだしな」

「………ごめん」

「………あの時はすみませんでした」

「いや、その……なんかすまん……」

 

 別にあの暴走事件に関して2人を責めるつもりはなかったんだがな。なんか悪いな。

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、夜塚、凰だな。では6つのグループで実習を行うので均等になるように分かれろ」

 

 言われて彼女らはやはりというか織斑とデュノアの方に集合するが、何故か布仏だけはこっちに来た。

 

「あー、なんか布仏に落とされそうだわ」

「もー、笑えない冗談はよしてよ~。もう少し顔を悪くして産まれたかった」

「………何があったか、俺で良ければ相談に乗るぞ」

「ありがとー。このままだとやっつーに惚れちゃいそうだから話しかけないでー」

「なんかごめんね! ほんとにね!」

 

 俺が悪魔だとしたら布仏が聖水で鍛えた剣で刺して来た感覚を味わった気がする。

 織斑先生の教育という名の暴力を受けて渋々といった感じでこっちに人が寄ってきたが、何故か全員が警戒している。

 

「良いですか、みなさん。これから訓練機を1班につき1機取りに来てください。数は打鉄とラファール・リヴァイヴがそれぞれ3機ずつです。好きな方を班で決めてくださいね。ちなみに早い者勝ちですよー」

「じゃ、遠慮なく」

 

 そう言ってラファール・リヴァイヴを1機持って来た。にしてもこのキャリー、中々重いな。流石にISを乗せるだけはあるという事か。

 

「うっし。じゃあ始めるか。じゃあまずは……2組から行くか」

「え? 1組からじゃないの?」

「1組って専用機持ちが多いから、おそらく1組から回されるからな。ここは公平に―――っておい、どこに行くんだ?」

「別の班よ。私、男なんかに教わることなんてないもの」

 

 そう言って3人ほど俺のグループから離れるのですぐに引き留めた。

 

「おい待て」

「ちょっと! 触らないでよ! セクハラよ!!」

「勝手に行くな。こっちが困る」

 

 そう言って俺は1人の手を掴んでそのままある場所に移動させた。

 

「ボーデヴィッヒ」

「…………」

 

 え? ちょっと待って。まさかの無視?

 

「おいボーデヴィッヒ。…………ふっ」

「!!? おい貴様! 何をする!!」

「無反応だったからてっきり寝ているのかと思ってな」

「………私は貴様らと話すつもりはない」

「じゃあ、ここから何人か俺の班に引き入れるが、良いか?」

「勝手にしろ」

 

 どうやらこいつは周りと関わる気がないらしい………そういえば、織斑先生の言う事には従うつもりのようだな。

 

「それと、この3人は将来有望で是非ボーデヴィッヒに鍛えさせるべきだと織斑先生に紹介された」

「「「え?」」」

「何?」

「どうやら織斑先生はこの3人のスキル向上とお前の教育方法を見るらしい」

「………そうか。では私が引き受けよう」

「じゃあ、他の奴らはこっちで引き受けるから」

「了解した。伝言、感謝する」

 

 俺はボーデヴィッヒの冷血結界の被害者を救い出す代わりに俺から離れた3人を犠牲にした。

 

「少し人数は多くなったが、回転数を多くすれば良いだけだ」

「え? でも、時間に間に合わな―――」

「調整はこちらですから問題ない。じゃあまずは装着と起動、そして歩行だ。思うがまま移動して構わん。倒れそうになったらこっちでフォローする」

 

 そう言ってまず1人目から動かしてもらう。そして4人目と5人目が終わったところで時間が追いつかなくなったのでオルコットと凰に救援を頼んだ。

 

「悪いな、2人共」

「いえ。いつか夜塚さんにはお返しをしなくてはと思っていたので」

「……まぁ、あの3人に関しては自業自得だしね」

 

 俺の指導を拒絶する=授業放棄だからな。クラス代表にしても多少は仕方がないのだろう。

 とりあえず、今は勝手な事をしたことで怒りを露わにしている織斑先生の説得だ。俺は起こったことを話す。

 

「……なるほど。事情は概ね理解したが、それは我々教員がすることだ。勝手な判断で周りに迷惑をかけるな」

「良いじゃねえか。最終的にはどうにかなったんだし」

「そういう問題ではない!!」

「そういう問題だろ。むしろ感謝してほしいくらいだ。関わりたくないアンタの関係者のフォローまでしてやったんだからな。話はこれで終わりなら俺は先に行くぞ」

 

 何せ楯無に事の真相を問いたださないといけなくなったんだからな。俺が主席且つ試験満点合格とか、何かの間違いだろし。もしそうなら俺はたぶん………大人を信用しなくなるな。

 

(………待てよ、もし主席だったら俺は……)

 

 IS学園の生徒なんてもはやゴミと呼んでも問題ないんじゃないか?

 いや、落ち着け。それなら楯無と簪をゴミ扱いするようなものだ。テンションを下げろ。落ち着くんだ。

 と、心に言ってはいるが俺の顔はニヤニヤし続ける。なんとか元に戻ったのは、今日使った更衣室に入った時だった。




山田先生が弄られるのは本人にも問題があると思う(ボソッ)

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