IS-Lost/Load-   作:reizen

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Lost Boyを楽しみにしている方は本当にごめんなさい。
書きあがったのでこっちを先にしました。

……ハーレムって、書く方も疲れるね(笑)


ep.14 なんだかんだで巻き込んだ

 クラス対抗戦当日、俺は凰の所に来ていた。何の用だと周りが騒ぎ始めるが、ボスらしく凰がそいつらを制す。

 

「何の用?」

「なに、あの約束を覚えているか確認しておこうと思っただけだ」

 

 実はあの出来事は凰のことは結構大事になった。特に弟が巻き込まれかけたことが姉の逆鱗に触れたらしいが、

 

『じゃあ聞くが、「料理が上達したら、毎日酢豚を食べてくれる?」という言葉にアンタは何を考える?』

 

 意外にもそのワードに反応したのは山田先生だった。そのことを出汁にして織斑先生をからかうことは忘れない。

 

『可哀想な奴。男の結婚できない喪女な教師はそんな言葉の意味すらわからないとは』

『それくらいわかる。だがやってくれたな、凰』

『ちなみにアンタの弟は1ミリもわからないからこういうことに発展したんだが? しかもアンタがわかった理由は山田先生が顔を赤くしたからだろ? 流石はアホの冠を背負う織斑の姉と言ったところか。ドン引きにも程がある。しかもその阿呆は本人に説明させようとする始末だぜ? 女としてどうよ、ええ?』

 

 そう言うと意外にも山田先生が援護に入った。

 

『そんなの酷すぎですよ! 織斑先生、冷静に考えてください!!』

 

 我ながら破綻している理論をよく引き継いであそこまで持ち上げたなと言いたいほど、山田先生は庇ってくれた。まるで170㎝の美人でメガネ姿が可愛い女性を召喚した高校生が乗り移っているように見えたのは気のせいだろう。

 結局反省文に懲罰用のトレーニングを受けることで収まった。試合に出られることもあって俺は見返りを求めたが………実はこの見返りは結構小さい。

 

「言われなくてもわかっているわ。でも、良いの? てっきりアンタのことだから身体を要求するかと思ったけど」

「胸をデカくするために揉むなら協力するが? あれ、男女でした方が効率良いし。ま、身体も考えたが、こっちの出費がデカいんでな」

 

 猫耳だろ? 面積少なめの服だろ? あと尻尾だろ? 一応、自作できる奴はいるけどあまり頼りたくない。

 

「アンタ、アタシに何をするつもりよ……」

「たぶん、俺たちの考えは色々と食い違ってる」

 

 そもそも性を盛らせる身体つきをしていないし。それに―――

 

「2組で……何やってたの……?」

 

 更識妹……もとい、簪と違って父性本能がそそる奴でもないしな。

 

「別に。ちょっとした取引をな」

「……八百長?」

「そうじゃねえよ。というか別に、俺は織斑が勝とうが負けようがどうでも良い」

「……そうなの?」

「まぁな。ま、織斑は上達速度は早いが………何分頭がな……」

 

 俺は盛大にため息を吐き、あの日の事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑、お前に足りないものが何かわかるか?」

「………技術?」

「それだけで済むんだったら良いんだけどな。言っておく。お前には頭脳と切替の早さが足りない」

 

 要は「速さが足りない」と言いたかっただけであるが、まぁそれは置いといて。

 

「それで、今日はどんな特訓をしますの?」

「コーンは持って来たが、これをどうするつもりだ?」

「サッカーの練習でドリブルしながらジグザグに移動する方法があるだろ? あれを真似て―――」

「「「真似て?」」」

「オルコットのビット攻撃を避けながら、オルコットの胸にタッチすることを目標に移動する」

 

 瞬間、予想通りだが3人から抗議された。

 

「お待ちなさい!! いくら夜塚さんでもその発言は許しませんわよ!!」

「何言ってんだよ透!! そんなことできるわけないだろ!?」

「夜塚、やはり貴様は一度斬らねばならんようだな……」

 

 いや、1人だけ違うか。

 

「落ち着けお前ら。この練習にはちゃんと意味がある。そしてこれは篠ノ之の乳房を真似て作ったものだ」

「夜塚ぁッ!!」

 

 殺意を出して俺に迫る篠ノ之を落ち着かせる。

 

「こ……これは見事に……だ、ダメですわよ織斑さん!」

「いや、何が?」

「とりあえず、オルコットにはこれをISを展開した状態で首にかけてもらう。ちゃんと輪っかになった状態でぶら下がっているから落ちる心配もない。ちなみに、もしオルコットの方に誤って触ったら、その時はオルコットの気が済むまで殴られろ」

「すっげぇ理不尽!!」

 

 座標を指定して、練習用のドローンを配置させる。

 

「この枠外にはみ出ないように、だ。オルコット、ちょっとこっちに……」

「何でしょう?」

 

 少し移動させてオルコットに指令を出した。

 

「オルコットはビットのみ使用しろ。ただし、2基のみだ」

「何故ですか?」

「お前はまず、機体の特性であり優位性を持つ子機の扱いに慣れる必要がある。織斑に堂々と「ビット操作の時は動けない」なんてバラされているんだから、その対策はできる限りしておく必要がある。ということで、お前には魔法の……特に催眠術とか死体操作の話に関する本を読み、自分がその操縦者になった状態をイメージしろ」

 

 まぁ、死体操作のイメージなんてつかないよな。

 

「そ、それがビットの操作と一体何の関係が―――」

「オルコット。もしお前は平伏させたい奴らがいるか?」

「……はい?」

「極端な話だが、ビット操作もそれに似ている。自分1人の命令で自在に動いてくれる人形。そう考えるとおもしろいだろ」

 

 それが意外と聞いたのか、オルコットは一瞬だけ笑った。

 

「………アドバイス、ありがとうございます。参考にさせていただきますわ」

「ま、グロい描写があるのは否定できないけど」

「……否定してほしかったですわ」

 

 泣きそうになるオルコットは織斑と合流して早速練習を始めた。

 

「では、理由を聞かせてもらおうか」

 

 今、篠ノ之は俺が借りたラファール・リヴァイヴを装備している。

 

「篠ノ之、お前には銃を装備して移動しながら的を落とせ」

「何故だ!?」

「この先どういう状況になるかわからないから、だ」

 

 おそらく篠ノ之も近い内に専用機を持つだろう。聞いた話じゃ、こいつはあの篠ノ之束の妹だからな。………というか、俺や織斑よりも重要じゃね? 何でこいつに白式が渡ってねえんだろ?

 

「銃は好かん!」

「当たらないから? なら当たるように練習するしかないだろ」

「そんなもの、貴様に言われるまでもない!」

 

 さて、そろそろ言っておくか。

 

「篠ノ之、前から思っていたんだが」

「何だ?」

「お前、ISのことを―――自分の現状を舐めてるだろ」

「そ、そんなことない!!」

「だったら今すぐ銃の訓練しておけ。相手が織斑のようなアホならともかく、いくらブレード1本あれば強いって言っても限界がある。同じ訓練機でも俺に勝てたことがないのが良い証拠だ」

 

 主にトラップで嵌っているけどな。

 

「今はある程度手を抜いているが、来月末には学年別トーナメントも控えている。そこで無様な試合結果にしたくないなら銃の練習はしておけ」

「せめて打鉄でさせてくれ!」

「そっちに乗せたのはもう1つあるんだが………お前、飛べるのか?」

 

 そう言ってやると篠ノ之は怒ったらしい。

 

「馬鹿にするな!! 私だって飛ぶことぐらいできる!!」

「じゃあ今日はそっちの訓練な」

「何故だ!?」

「………篠ノ之、お前は織斑の機体を見てどう思う?」

 

 だが篠ノ之はわからないようだ。………というか、少し当然だと言う風に見ているほどだが。

 

「じゃあ別の方向で聞くが、今の織斑が俺にすら勝てないのは何故かわかるか?」

「それはお前が罠を張るからだろう。正々堂々すれば夜塚は一夏に勝てるかどうか怪しい」

「理由はわかってるんだな。つまりそういうことなんだよ」

「だから何だ?」

「織斑は俺が罠を張るから勝てない。でもな、マシンガンとかの銃があればそれを破壊して活路を見出すことができる。もっと言えば罠を回避して攻めるっていう方法もあるが、俺が相手ならばまずそれはほとんど無理だ。土壇場に、躱しきれない距離で爆弾とかを使って対応するからな。そこまで考えている相手に、お前は抗おうとできるか?」

「………できなくはないが……」

「学年別トーナメントじゃ、訓練機は追加パッケージ使いたい放題だしな。そこから考えても銃の1つは使えるようになっていた方が良い。それにあの訓練はお前のためでもある」

「は? 何を言っているんだお前は……?」

 

 どうやら篠ノ之のおつむはそこまで良いわけではないらしい。出がらしか、と言ったら怒られると思うから黙っておくけど。

 

「もし織斑が胸を揉むことにハマったら……その犠牲……もとい、篠ノ之のことを意識し始めるかもしれないだろ」

「いや、そうかもしれないが………」

「だからあれはそういう目的も含まれている。後はお前が銃の特訓と称してその無駄にデカい乳を揺らすだけだ」

 

 織斑に意識させるためにそう宣言したが、どうやらそれは別の奴にも効いたらしい。

 

「そうか。ではお前が的になれ」

 

 そう言って篠ノ之は重機関銃を展開して俺に向かって撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ところ……応援行かなくて……いいの?」

「全然。必要ねえよ。向こうには篠ノ之とオルコットが行ってるし」

 

 俺が向こうに行く必要性はほとんどないと言っていいだろう。(性格さえまともだったら)美人2人に応援されて負けるようじゃ反省する必要があるが。

 4組用に用意されたピットに移動すると、そこには少数ながら生徒がいた―――のだが、俺と目が合ったこともあってコソコソし始める。

 

「じゃあ、俺は適当に観客席にでも行っとくわ」

「………気にしなくても……良い……」

「そうは言ってもな。せっかく応援しに来たあいつ等が可哀想だろ」

 

 そう言って俺は女子たちの方を向かせて背中を押す。

 

「………でも……」

「俺と会話は帰ってからでもできるが、あの子たちとは学校ぐらいしか今は無理なんだ。親交を深める意味でも挨拶して来い」

 

 とりあえず俺は外に出ておくか。俺がいたらやりにくいだろうし。

 外に出てからしばらくして試合が始まった。俺はとりあえず傍観していると、次第に凰が有利になっていく。

 

(さっすが、怒っていると質が違うな)

 

 少し単調だが、それでも織斑の弱点を的確に突いている。流石は代表候補生と言ったところか。

 

(………衝撃砲……厄介だな)

 

 どうやら砲弾だけでなく、砲身すら見えないようだ。これは学年別トーナメントの前に何度か手合わせして対策を練る必要がある。セクハラ攻撃なんて最初から来ることを知っていれば耐性が付くのは早いし、使える手札は用意しておいた方が良い。

 少ししてから何故か織斑は仕切り直す。凰もそれに合わせなくてもいいというのに、何故か攻撃しない。

 織斑の動きが変わる。どうやら何かを待っているみたいだが、切り札を持っているのか?

 織斑が凰に突っ込もうとした時、床が大きく揺れた。

 俺は寒気がして咄嗟にそこから離れると、俺がいた場所に人型の機体が降りてきた。

 

(………まさか、襲う場所を間違えたのか?)

 

 モニターは砂嵐が起こったせいで中の状況がわからない。応援を呼ぼうにもその隙を見せてくれそうにもなかった。そして悲しいことに、現れた人型の狙いは俺だった。

 人一人を消滅させるのが目的か、ISと比べて出力が低いビームを放とうとした瞬間に動き、攻撃を回避する。俺の目的は最初から1つ―――上だ。

 機体が降りてきた場所によじ登り、上に避難する。ロッククライミングはしたことないが、特訓の成果もあるのかなんとか登り切れた。

 

「これでなんとか………なるわけないよな」

 

 平然と上に昇ってくる謎の機体。空笑いを絞り出すしかない。

 

「やれやれ。俺はこれといって科学者に喧嘩を売った覚えはないんだが、嫉妬なら織斑の方にしてくれ」

 

 そもそもISを動かしたのは織斑なんだから俺が責められる謂れはない。文句を言ったりサンドバッグにするのは織斑の方だ。

 片手を後ろにして織斑千冬にかけるが、

 

『おかけになった電話は、電波が届かないところにあるか、電源が入っていないため、かかりません』

「よし、あのクソ教師は後で殺そう」

 

 つっかえねえクソ教師の処理は後にして、今は目の前の敵だ。とりあえず投身自殺だ。

 比較的人がいない場所を選んで、アリーナの上を走って宙にダイブする。流石はIS用闘技場。高度100mどころじゃなかった。

 

「―――夜塚君!!」

 

 ハハハハハ! これを待っていたのさ!! なんてわけではない。

 簪に抱えられるが羞恥心はない。あるのは―――警戒心のみだ。

 

「簪、盾で防御だ!!」

 

 指示を飛ばすと簪はすぐに反応してくれた―――のだが、迫るビームの出力は対ISで、俺たちは問答無用と言わんばかりに吹き飛ばされる。

 簪が俺を助けるために庇い、下敷きになる。幸い、森の方に入って木々がクッションになったが、それでも簪は気絶していた。

 

「………」

 

 こうなってはもう手立てはないだろう。立ち上がった先には絶望。もはや笑うしかない―――が、簪からISを奪ったら今度は簪の方が危ない。幸い、ISはまだ簪を守ってくれるようだ。

 

「………これで勝ったら、大金星だな」

 

 人型に変形している機体を見て、俺はそう言った。


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