IS-Lost/Load-   作:reizen

13 / 45
ep.13 妹が嫌う理由

 召喚した奴は画像を送って5分ぐらいしか経っていないのにチャイムを何度も鳴らした。

 やがてチャイムが鳴らなくなったと思ったらドアが思いっきり殴られる。簪の拘束を解いて画像を消してドアを開けると、黒いオーラを纏った16歳の少女が目を輝かせて入ってきた。ま、実際黒いオーラがあるかどうかはともかく、後ろの背景が歪んでいるのは確かだ。

 

「お前の妹、怖くて後ろに引っ込んだぞ」

「何ですって!? あなた何したのよ!!?」

「いや、チャイムとドアを殴る音で引っ込んだんだけど………」

 

 おそらく今、俺の部屋の片隅でブルブルと震えているだろう。そう考えていると抱きしめて撫でたくなる―――なんて言ったら間違いなく殺される。

 

「それで、この画像は何!? あの子に何をしたの?!」

「………それ、お前を呼び出すために協力してもらっただけだから。すっごくエロいだろ?」

「………………へ?」

「つまりあの子にお前を釣るための餌になってもらったんだっての。ちなみにこっちで撮った写真は削除している。それによく見てみろ。それ、簪からのメールだぜ?」

「…………あ、そういえば………でも、あなたが奪って撮ったんじゃ―――」

「予めその約束が無かったら許可する奴でもないってことはお前が一番知ってるだろ。俺の個人的な趣味としては採用していないし、するならお前でやってるよ」

 

 さりげなくセクハラを入れると頭を叩かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから簪を呼んで、そして突然脱走した生徒会長を捕まえに来た布仏を巻き込んで事情を説明したのだが、

 

「布仏、こいつの殺気を静めることってできない?」

「無理ですね。私の妹ならばこんなことはなかったのですが………」

「妹か。アンタの妹だからマネジメントをしっかりしてそうだな」

「…………そうであれば私は苦労しないんですけどね」

 

 あ、たぶん墓穴掘った。

 

「それで夜塚君、あなたは本気で言っているのかしら?」

「事情は大体把握しただろう? それに今のところ何故か俺にISが来ないから使う用事もない。ならば使ってもらった方が良いだろうよ。それにここなら部屋はないがベッドはある………昨日まで俺が使っていたベッドだが」

「余っているベッドがあるから持ってくることはできるわよ? っていうかそんな問題じゃないの。あなた、本気なの? 本気でその子と同居するつもりなの? というか何であなたから提案したの? 場合によってはあなたをボコるわよ?」

「俺がただボコられて終わると思っているのか?」

 

 どこをと宣言はしないが揉むぞ?

 

「考えてもみろ。ここに移動すれば移動時間は短縮されて少しでも多くIS開発に専念できる。もちろん、10時になったら流石に切り上がらせるさ。成績に関しては保証しないがな」

「その点に関して心配していないわ。心配していないけど……というか、私が心配しているのはそこじゃないの!! もし一緒に暮らして、子どもでもできたらどうするつもりよ!!」

「それ以上は止めてやれ。精神的に来ているようだぞ」

「会長、流石にそれは……」

 

 ま、男女で同居はそういう疑いが出てくるのは確かだが、そんなものは自ずと結果が出るだろう。

 

「そんなに言うなら、姉妹でこっちに暮らせば良いだろ。いくら高校生だからって言ったって…………あ、何かマズいことを言った?」

「………そうですね。今の彼女らにそれは酷です」

 

 え? マジで?

 姉妹仲は良好じゃないのか? むしろ姉の方が一方的って方?

 

「………私は、別に良い」

 

 どうしようかと考えていると、妹がそう言った。

 

「え? 本当?」

「………ここに泊まるのは」

「わかった。私も―――」

「あなたとは嫌」

 

 一瞬、華が咲いたような顔をした姉だが、妹の言葉に萎んだ……いや、沈んだ。

 

「で、でも―――」

「………悪いが、2人はそこに待機していてくれ」

 

 俺は布仏と沈んでいる生徒会長を置いて、妹を連れて寝室に入った。

 

「……本来なら自分から話すまで待とうと思ったが、すまないが何故あそこまであの女を軽蔑するのかわからん。悪いが説明してくれないか」

 

 ベッドに座らせて、俺は椅子に座ってそう言った。もちろん、部屋の鍵は既にかけている。

 簪はおそらく一部を脚色して話した。

 曰く、あの女はとある組織で指揮する立場になったのだが、どうやらその時に「あなたは無能のままでいなさい」と言われたようだ。その時妹は候補生でもなんでもなかったのだが、見返すために代表候補生になったらしい。

 

「………先に言っておくがな、更識。悪いが俺はお前の姉の言っていることはあながち間違いではないと思う」

「………え?」

「まぁ、これはあくまでも俺が推理しただけなんだが、実はお前の家ってかなり特殊な武装組織とかそんな感じだろ。ああ、別に調べたとかそういうわけじゃない。いや、調べようと思ったらできるけどそれをする気はねえよ。ま、調べたところで「ふーん、あっそ」程度が俺の感想だろうが。……話を戻すが、これは同じ妹を持つ方からして同じ立場になったらという仮定で話させてもらうが、奴は恐れているんだろうよ」

「……恐れて……る?」

 

 流石にそこまで考えなかったらしい。まぁ「ずっと無能のままでいろ」とか言われたら怒るのは当然だ。

 

「1つ目。奴は立場を奪われるのを恐れている。何からの形で今の立場をお前に奪われ、勘違いでヤバいことをされたりしないかとかな。………まぁ、お前の姉はハッキリ言って馬鹿だから流石にそれはないだろうな。そして2つ目。おそらくその立場がとても辛い立場なら、確かにお前は姉を超えない方がいい」

 

 どういうことかはわからないらしく、首を傾げる更識妹。おい止めろ。興奮してしまうだろうが。

 

「例えそれが暗部の長となれば、確かにお前は姉を超えるなと俺は言うべきだろうな」

「………あなたに……何がわかるの……? 私だって……覚悟を持って自分を鍛えてた…!」

「……そういうことじゃ、この学園は―――いや、この世界の中でIS操縦者になろうとしている奴らは異常だ。絶対防御があるとはいえ、結局は人を撃っていることには変わらない。それだけならまだ良いが、いずれお前を含めたそいつらは不穏分子を排除するという名目で生身の人間を殺すことになるのかもしれないのだが?」

 

 ―――それをお前はできるのか?

 

 俺の言いたいことを理解したのか、更識妹は顔を青くする。

 

「そういう意味じゃ、俺は自分の妹にIS適性がないことに安堵したよ」

「………え?」

「俺には4つ下……お前の1つ下に妹がいてな。6年前の検査で妹はIS適性がないと出た。そりゃあ、後に俺にISの適性があると知ったら大騒ぎ。……と、考えてみれば最初の1日だけだったな。後から何故か怯えていた」

 

 まさか、俺がこれまで虐められていた分の鬱憤を晴らすと思ったのだろうか。そんなことないのにな。

 

「………それに、お前が大事にされている証拠だったらある」

「……え?」

「………先に言っておくが、これからするのはあくまでも冗談とかそんな類だ」

 

 そう言って俺は更識に言った。

 

「さて、早速裸になろうか」

「……え?」

「まさか密室で男女がいると言うのに何もないわけがないだろう?」

 

 更識妹を押し倒し、太もも部分に軽く手を這わせると狙い通り悲鳴を上げた。

 

 ―――チャッ、ガチャバンッ!!

 

「簪ちゃ―――なるほど。やっぱりそれが狙いだったのね」

「………おいバ会長、それは何だ?」

 

 おそらくピッキングの道具だと思われる物を平然としまうバ会長。流石、1秒も経たない内に鍵を開けて入ってきただけはある。

 

「夜塚君、信じてたのに………私にセクハラを働くからてっきり私が本命だと思っていたのに、まさか最初から妹狙いだったなんて!!」

 

 遠くでドアが開閉される音がしたが、バ会長はさらに言った。

 

「許さないわ。あなたを矯正……ううん、去勢するわ!!」

「落ち着け会長、俺もしたくてこいつにそういうことをしたんじゃない」

「つまり妹とは遊びだったと?」

「とりあえず今は落ちつけ。そして俺の話をすべて聞いてから判断しろ。……これでわかっただろう? こいつは最初から心配で盗み聞きしていたし、お前が悲鳴を上げた瞬間に飛び込んで来た。こいつはただお前に酷い目に遭ってほしくないからそう言っただけで、決して嫌っているわけじゃない。嫌っているなら俺が手を出したら傍観して俺を嵌めることを考えるからな」

 

 少なくとも、俺は織斑が迫られているのを目撃してもその情事に走った犯人が誰かチクるけどな。織斑が何かを失う? 別にいいだろ?

 

「………つまり?」

「お前がこいつに「無能のままでいろ」という意味を教えてたんだよ。後―――馬鹿かお前は。最初からすべて話しておけばあそこまで拒絶されず、ここまで話をこじらせることはなかったんだ。少し―――いや、かなり反省しろ」

「………だって、全部話して簪ちゃんに居場所がなくなってグレることを考えたら………言えなくて……」

 

 内心、ちょっとそのグレた状態を見たいと思った。

 

「…………すまん。言い過ぎた。確かにそんな状態なら言葉をぼかすな。………流石に「無能なままでいろ」と堂々と言える度胸はないけど」

「もう!!」

 

 軽く肩をポカポカという擬音が聞こえてくる程度に殴ってくる。

 

「………仲……良いの?」

「ん? まぁ、こいつはこの世界じゃまだマシな部類だしな」

「にしても随分痩せたんじゃない? 特にお腹」

「お前は相変わらず乳が凄いな。どれ、大きくなったか確認してやろう」

 

 そう言って手を伸ばすと見事に極められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、作成するにあたって他に誰を呼ぶつもりなんだ? 呼ぶにしても限度というものがあるぞ」

 

 一応、将来は本格的なアニメスタジオとか映像関係の部活動ができることを願いつつ、部屋は複数あるにはあるが、少ない。

 

「……私1人で十分」

「いやいや、ちょっと待て。流石にそれは―――」

「そうよ簪ちゃん。ISを1人で作るなんて結構時間がかかるのよ? 私だって7割ぐらい出来上がっている状態で、データも充分にあったけど、それでも虚ちゃんとか薫子ちゃんとかに手伝ってもらったの。だからその、本音ちゃんぐらいは……」

「…………それでも……私は1人で作りたい」

 

 どうやら決心は固い様だ。

 まぁ、これで1人で作り上げたらそれはそれで凄いことだけど。

 俺は姉の方を呼んで言った。

 

「もう少し様子を見させてみようぜ。他人が言ったところで揺らがないみたいだしな。………なんなら、勉強がてら何度か様子も見てやるし」

「………悪いけどお願いできるかしら。………その、最悪……少しだけなら……」

「そういうのはもう少し関係が進んでから」

 

 ISの作業はもちろん、製作活動の中での高所作業は何かと危険が伴う。年上としてやるべきことをするだけだ。………正直なところ、するならそれ以上の事はしたいしな。

 

「とりあえず、しばらくは1人でしてみろ。もし危ないと思ったら俺以外にも監督役は派遣させるしな。だからバ会長は技術を盗まないと安心できる奴をこっちに寄越せ。……できれば警戒しない奴で」

「大丈夫。心当たりがあるわ」

「もし俺の遺伝子を取ろうとしてきたら、その時はそいつを突き出してお前を孕ませるまで………いや、毎日犯す妊娠してようがしてまいが」

「大丈夫よ。むしろあなたが襲う可能性が高いから。手は出さないでよ」

「俺の鉄壁の理性を舐めるなよ?」

「セクハラ三昧の発言でよく言えるわね?!」

「それはそれ、これはこれ、だ。なぁに。いつの間にか消えているお前の同行者は可愛いとは思うが発情はしない。それと同じだ」

 

 怒られた時が怖そうだとか、そういう理由だけどな。

 

 

 

 

 

 

 とりあえずの決着は見えた。

 更識妹は服などの荷物を持って空いている部屋を使うことにさせた。

 

「今日からよろしくお願いします」

「ああ。安全第一でやれよ」

 

 思わず頭を撫でるが、全く嫌がらなかったので逆に驚いた。……あの姉なら日頃から撫でているのは容易に想像がつくが。

 

 ……ちなみに、派遣された監督役は……

 

「やっつー、おかしちょーだーい」

 

 タカリ……というかクラスメイトだった。しかもあの堅物メガネの妹らしい。

 

「似てねぇ!? ……いや、可愛い部分は似てるな」

「えへへー。やっつーに褒められた~」

 

 主に俺がいない時の監督役だが、少し……いやかなり心配だったんだが………

 

「つまりー、ここはー」

 

 何故かいつの間にか教えられる立場になっていた。どうやら整備科の知識は姉からの影響である程度持っているらしい。教科書も持っているらしいけど、それを貸してほしいと頼んだら断られたので、仕方なく買った。




ということで、召喚したのは楯無でした。
虚が途中が理由はため息と頭痛というワードで察してあげてください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。