未来への進撃   作:pezo

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古城の礼拝堂の屋根に、打ち付けるような雨音が響く。

 

 

そのだだっ広い空間を上から圧迫するように、その天井一面は巨大な絵画で満たされていた。100年以上も前の文明の証であるそれは、一方は光溢れる「天国」を、もう一方は暗い闇に支配され、悶え苦しむ人々が沈殿する「地獄」が描かれている。

 

 

クマのひどい目を上げて、その上官は「俺は「地獄」とやらに堕ちるために懸命に働いている」と呟いた。

 

 

まさか、と乾いた笑いを返したイリヤに、人類最強の名をほしいままにしているその英雄は鼻で笑うだけだった。

 

 

 

「俺は、兵長のような「英雄」になりたかったんです」

 

 

 

空を誰よりも高く、速く飛ぶその姿に、憧れない調査兵はいない。イリヤもまた、調査兵団に入団してすぐに、その魅力に虜になった一人である。

 

彼の潔癖で近寄りがたい粗暴な性格は、世間で言われる「英雄」像とは程遠かったが、その異質さもまた、人を魅了してやまないものでもあった。それほどの力を持ちながらも、何故か自分の力を卑下するようなところも、実力者であるにもかかわらず、団長へと寄せる信頼感も、全てがイリヤにとっては憧れだった。その小柄な体格すら、羨望の的になるのだから、憧れとはまさに盲目的であると、イリヤもさすがに自覚している。

 

 

 

「俺は、内地にある実家が嫌で仕方がありませんでした。つまらない常識ばかり重んじるところで……。俺はこんなところで平凡に死にたくないってずっと思ってました。だから調査兵団に入って、一旗あげてやるんだって思ってたんです」

 

 

 

イリヤは、生存率の著しく低い兵団を志望しておきながら、死ぬつもりなどなかったのだ。そこにあったのは、子供じみた虚栄心だけだったのかもしれない。それは、まさに目の前の生きる「英雄」によって、夢物語に終わらずに育てられていったのだ。イリヤの兵士としての実技的能力が高かったのも、その高いプライドから出る夢を見せ続けるのに一役買った。

 

そんな彼にとって、自分の再生する能力は、混乱だけをもたらしたものではなかった。その所以と意味を知れば、自分もまた「英雄」になれるのでは、と夢を見たのだ。

 

 

 

「でも、この能力には意味がありません。俺はただの出来損ないです。エレンのように巨人化して戦うこともできないし、あんな覚悟を決めることもできない……。中途半端な出来損ないだったんです」

 

 

「まあ、お前は確かに中途半端だな」

 

 

 

イリヤの呟きを、まるで興味もなさそうに聞いていたリヴァイ兵長が、ようやく口を開いた。見れば、いつのまにかイリヤの上官の女性の姿はなくなっている。しかし、兵長は話を中断させるつもりはないようだった。

 

 

 

「俺が兵団にいる理由なんて、他のやつらとそう変わらない。ただ、俺は「英雄」なんて器でもない、ただ生き残ることが他より上手いだけの兵士だ」

 

 

「謙遜です。誰もそうは思っていませんよ」

 

 

「ああそうだ。誰も俺を「ただの兵士」だと思ってない。だから、俺はそれに応えるためにいる」

 

 

 

アイスブルーの細い瞳が、まっすぐにイリヤを見上げてきて、背筋が伸びる。やけに眼光が強いのは、この上官の特徴だ。

 

 

 

「ここの奴らは皆、暑苦しいほど「人類」のためになんてご大層な大義のために戦ってる。俺はそれが悪くないと思った。しかもこの両手はどうやら巨人殺しには向いてるらしい。他に特技もねぇクソみたいな人間だが……、ここでは出来ることがある。だからやっている。それだけだ」

 

 

 

大層な理由など自分のような人間にはない、と言い切った上官の青白い顔に、礼拝堂のガラスの天窓から差し込むわずかな虹色の光が差し込んだ。

いつしか、雨音が遠のいている。色とりどりのガラスをはめこんだその天窓の光に、小柄な兵士長は、眩しそうに目を細めた。

 

その姿は、まるで神に懺悔する矮小な人間のようで、それでいて、とても敬虔な信徒のようにも見えた。

 

 

 

「イリヤ。お前は何のためにここにいる?」

 

 

 

実際のところ、神など信じてなどいないであろう兵士長が問うてきた。

 

 

 

「俺は……」

 

 

「お前は死にたくないし、死なせたくないなどと言いやがった甘ったれだ」

 

 

「はい……」

 

 

「なら、中途半端な甘ったれらしく、それを守れ」

 

 

 

咎められるのかと思った矢先の言葉に、思わず顔を上げる。兵士長は立ち上がって、尻の埃をはらって舌打ちした。懐のハンカチを取り出して、手を拭こうとして、そのハンカチも雨で濡れているのに気づいて、哀れにも、苛だたしい表情を一瞬見せた。

 

 

 

「お前がそうありたいと願うなら、死ぬ気でやってみろ。俺やクシェルを黙らせるくらい本気でな。……お前の、「それ」は、そのためのもんじゃねえのか?」

 

 

「え……」

 

 

「再生できるなんてそりゃ気味悪ぃことには違いないが……。俺は、ずっとそんな、」

 

 

「兵長?」

 

 

 

珍しく歯切れの悪い上官は、しかしその先を言葉にすることはなかった。さっさと彼は礼拝堂の入り口に向かい、「あの野郎、また勝手にどっか行きやがった」と、消えた女性の部下に悪態をついて、イリヤを振り返った。

 

 

 

「オイ。どうなんだ。やるのか、やらねぇのか」

 

 

 

問われて、その上官が、自分に兵団への在籍の如何を問うているのだと初めて理解した。問うた上官の影はやはり小さい。イリヤは、一歩踏み出して、答えを口にした。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

馬ごと兵士を蹴り上げた瞬間、視界の隅にふたつの小さな影が迫るのが入った。それが立体機動をつけた兵士だと察知して、体を浮かせてそのワイヤーの軌道を狂わせる。叫び声と共に一名、躍り出てきたのを右拳で叩きつけ、左側から刃を振り抜いてきた一名をつかみあげた。

 

 

アニは、ライナーとベルトルトの密告通り、エレンが配置されているという右翼索敵を襲っていた。兵士たちの顔を確認しながら、それをひとつひとつ潰していく。

 

 

やはりというべきか、調査兵団の兵士たちは訓練兵とは比べものにならないほど、練度が高い上に度胸もある。何人か殺してしまえば、立ち向かっては来ないだろうと踏んでいたが、彼らは何人殺しても、次々に立ち向かってくる。

 

恐ろしいほどの勇気と行動力だ。一人一人を潰すのは虫を殺すのに等しく、造作もない。

しかし、それが幾重にも重なれば、邪魔なことに違いはなかった。思いの外、時間を食っている。まだエレンは見つけられていない。初列を潰すだけで、こうも時間がかかるとはアニの想定外であった。

 

 

 

「こっちだバケモノ!」

 

 

 

思考していた隙に、新たな兵士が一人、左手首の腱を削いできた。その急な襲撃に、思わず左手の中に握りしめていた先ほどの一名を取りこぼす。

 

煩わしいその兵士を捕まえようと手を振り上げたが、予想外にその兵士が顔めがけて飛び込んできたので、一瞬反応が鈍る。その隙に、取りこぼした兵士を保護して、退却しようとする兵士たちが足元で右往左往しているのが見えた。

 

 

足元でたむろする数人を一気に潰そうと、手を上げれば、再び顔をめがけてとびこんできた兵士が、今度は左耳を削いできた。

急所を狙っていないのか、狙うほどの技量もないのか。しかしその兵士の飛び方に、あの同期の「死に急ぎ野郎」を想起させて、アニは手をとめた。

 

 

 

「早く!今のうちに逃げてください!」

 

 

「イリヤ!あなたも早く撤退しなさい!!」

 

 

 

「死に急ぎ」な兵士は、どうやらエレンではないらしい。彼が囮になることで、数人の索敵班と思われる兵士がその場を離脱していた。また数名、彼を見捨てられないのか、近くで残っている兵士もいる。

 

目標のエレン・イェーガーではない。そう分かるや否や、アニは煩わしく飛び回るハエのようなその兵士を右手で勢いよく地面に叩きつけた。

 

 

 

「イリヤ!!」

 

 

「クシェル副官!ここを離脱してください!こいつは、俺たちが!!」

 

 

 

一旦離脱したはずの兵士たちが、そろって戻ってくるのが見えた。なぜ、こうもこの兵団の兵士たちは戦い続けるのだろうか。

アニは、その思考を閉じた。考えていては、もう殺せなくなるのは承知の上だったのだ。

 

彼女は、長く兵士ごっこを演じすぎた。

 

 

 

「クシェル班長!」

 

 

 

足元から声が聞こえて、アンカーが巻き上げられる音がアニの耳にも届いた。見れば、それは先ほど潰したはずの兵士だった。

 

 

その体から、大量の蒸気が濛々と上がっている。その蒸気が、自分たち巨人のものと同じであると一目見てわかった。兵士を潰したはずの手のひらを見れば、一面に赤い血が咲いている。間違いない。狙い違わず、あのハエのような兵士は叩き潰したはずなのだ。

 

 

 

「イリヤ!よくやった!離脱する!!」

 

 

「しかし!」

 

 

「イリヤ!班長の指示に従え!索敵班の命を無駄にするな!!」

 

 

 

叩き潰したはずの兵士が、体から蒸気をあげて生き延びている。その事実に、アニはひと月ほど前に先に海の向こうに帰ったであろう、クルト・ウェルナーの言葉を思い出した。

 

 

 

――あの「出来損ない」の一族がいる。

 

 

 

巨人科学の研究の副産物。

 

王家の伝承でしか伝わっていない、眉唾ものの一族だ。しかし、あのアッカーマン一族とも思われる同期の存在。それに、今目の前で起こっている事実に、アニは確信した。この壁の中には、伝説が息づいている。

 

 

 

――でも、こんなの聞いてない。

 

 

 

無我夢中で遠のいていくその兵士に手を伸ばしたが、右翼索敵の兵士たちが一斉にそれを邪魔する。

 

 

「出来損ない」の一族。だが、それは、単に再生能力があるというだけだったはずだ。致命傷を負ってまで蘇生するような能力など。ましてや、あんな一瞬で致命傷を再生できるような能力など、聞いたことがない。

その中途半端な再生能力ゆえに、戦闘にも利用しづらい「出来損ない」だったはずだ。

 

 

 

困惑の中、アニが周囲の兵士を一掃できた時には、すでにその「出来損ない」は、遥か遠くに数人の兵士たちと走り去ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

その女型の巨人の姿が見えなくなった時、イリヤたちは、班長のクシェルの指示のもと、負傷した兵士の手当のために一度馬を止めた。

 

 

 

「血は出ていますが、傷は深くないみたいです。これなら、まだ大丈夫です」

 

 

「イリヤ……。すまない。お前が盾になってくれたから……」

 

 

「いえ……」

 

 

 

ゴーグルを外して、その黒髪の男性兵士がイリヤに礼を述べた。彼もまた、長くクシェル班に所属する兵士だ。彼ら五名の班員は、右翼索敵へ向かってあの巨人と交戦した。結果、一名の班員を失ったが、イリヤが身を呈したおかげで、瓦解は免れた。

 

 

 

「お前、確かに潰されたと思ったが……あの蒸気は一体……。お前、」

 

 

「イヴォ。悪いが詳しく説明している暇はない。が、これがイリヤが私たちの班に配属された理由だ。彼の力は、エレンを守るためにある。「人類の盾」として……」

 

 

 

イヴォ、と呼ばれたその負傷兵の戸惑いを制したのはクシェル班長である。彼女が「生きて帰れたら、必ず説明する」という言葉に、その兵士は困惑を追いやって、「はい」と強く頷いた。そのやりとりに、彼らの長い兵務から培われた信頼関係がうかがえた。

 

 

 

「あと、イリヤ。よく頑張ったと言いたいところだが、あまり無理はしてくれるなよ」

 

 

 

手当を終えて立ち上がったイリヤに、クシェル班長が困ったように言った。

 

 

 

「あなたのおかげで私たちは助かったけど……。あなたはこの中では一番命の優先順位が高いんだ。これからは、自分の命を守ることを頭に入れて動いてくれ。あなたが身を呈してその力を使うときは、エレンの命が危うくなった時だ」

 

 

 

わかったね、と念を押す上官に、イリヤは拳を握りしめた。不意に、一週間ほど前の兵長の言葉が脳裏をよぎる。

 

 

 

「俺は、守られてばかりは御免です」

 

 

「え?」

 

 

「……あんたは、弱いただの人間だ。だから、」

 

 

「だから、あんたが身を呈して守るっていうの?自惚れも大概にしろ。あんたのその能力はまだほとんどわかっていないんだ。エレンと同じでね。それに兵団として頼るわけにはいかない。自分の仕事のことだけ考えてなさい」

 

 

「守ります!!」

 

 

 

喉から出した声は、予想外に大きな響きをもってあたりの草原に響いた。驚いたのはイリヤだけではない。言われたクシェル班長も、目を丸めており、離れた場所で監視をしていたエーミールもまた、その大きな声に振り返っていた。

 

 

 

「俺はエレンも、班員も守ります!守ってみせてやる!だから!!」

 

 

 

自分が何を言っているのか。イリヤは分かっている。こんなワガママに近い戯言は、また彼女の逆鱗に触れるかもしれない。今度こそ、その隠し持っている小銃で頭をブチ抜かれるかもしれない。

 

でも、子供じみていようが、イリヤにはそれしかできなかった。

 

 

大人しく、守られて、意味ばかりを求めているだけではいられなかった。

 

 

 

「あんたはせいぜい大人しく見てればいいんです!俺がこの班も、エレンも何度死んだって守ってやるから!!死ぬことに美徳なんて見出してんじゃねえよ!!この、」

 

 

 

イリヤの言葉に、そばにいた黒髪の負傷兵がおい、と止めに入るのを振り払って、渾身の力で彼は上官に怒鳴った。

 

 

 

「この英雄気取りの勘違い野郎め!!」

 

 

 

その言葉に、上官が黒くて大きな瞳を、さらに大きく見開いて、息を飲んだのがわかった。

 

 

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

 

「背後より増援!」

 

 

「兵長!指示を!!」

 

 

 

後方で仲間たちの叫び声がこだまする。穏やかな木漏れ日をこぼす巨大樹の森で、恐怖は皆の心を完全に侵食していた。

 

 

エレンを目指して迫る女型の巨人が、すぐ背後まで迫っている。

イリヤたちがリヴァイ班と合流し、巨大樹の森へと進入してからすぐのことだった。

 

 

 

イリヤたちクシェル班は、リヴァイ班の後ろに控えてその追跡から逃れて一心不乱に馬をかけさせていた。

 

 

 

「お前ら、耳を閉じろ」

 

 

 

静かな、しかしよく通る声で振り返って指示したのは、先頭をいくリヴァイ兵長である。その指示に耳を塞げば、彼が右手を高らかにあげて音響弾を放った。

 

 

 

「お前らの仕事はなんだ。その時々の感情に身を任せるだけか。そうじゃなかったはずだ。この班の使命は、そこのクソガキに傷一つつけないよう、尽くすことだ。命の限り」

 

 

 

イリヤの前で走るエレンが、戸惑いを隠せていないのが背後からでもはっきりとわかった。しかし、彼を守るリヴァイ班は、先ほどまでの狼狽を追いやって、冷静さを取り戻したようだった。兵長がこのまま馬でかけるよう指示を出せば、それぞれ「了解」の強い合図を送った。

 

 

 

「かけるって一体どこまで……。それに、奴がもうすぐそこまで」

 

 

 

振り返ったエレンの顔が引きつった。その様子に、その後ろを走っているクシェル班長も、背後を振り返る。

数名の兵士が、女型へと刃を向けて行く様子が見えた。

 

 

 

「また……!増援です!早く援護しなければ、またやられます!!」

 

 

「エレン!前を向け!」

 

 

「グンタさん!!」

 

 

「歩調を乱すな!最高速度を保て!」

 

 

「エルドさん!?なぜ!!?リヴァイ班がやらなくて、誰があいつを止められるんですか?!!」

 

 

 

エレンの戸惑いは正しく、彼らの背後で増援の兵士たちが悲鳴をあげて次々になぎ倒されていく。まるで、虫けらのように。

 

 

 

「荷馬車護衛班!援護用意!!」

 

 

 

その瞬間、叫んだのは、リヴァイ班のあとについていたクシェル班長だった。彼女は背後の増援の様子を見ながら、身を起こして立体機動装置のグリップを構えている。その声に、エーミールやイヴォもまた、身を起こす。彼女が一声あげれば、彼らはアンカーを放って女型へと向かっていく姿勢だ。

 

 

 

「イリヤ!」

 

 

 

エーミールが叫ぶ。は、とグリップを握り直したイリヤが前を向いた時、エレンの戸惑う表情と目があった。

 

 

 

「イリヤ!やめろ!!」

 

 

 

巨人になれるその少年兵が悲壮に叫ぶ。行くな。そんな生意気な後輩の表情に、イリヤは息を詰めた。

 

 

 

「荷馬車護衛班!どうか!どうか、ここで死んでくれ!!」

 

 

 

クシェル班長が放った言葉は、命令ではなく、懇願だった。

 

顔を伏せて班員を振り返ることなく放たれたその悲壮な懇願に、エーミールとイヴォが強く頷く。そんな、とイリヤが彼女を見た時、その顔は穏やかに、否、どこか楽しそうに笑っていた。

 

 

 

「リヴァイ」

 

 

 

打って変わった静かな声であったが、それでも届いたようでリヴァイ兵長が振り返る。

 

 

 

「あとは頼む」

 

 

 

班長のその静かな声に、「……了解だ」と頷いた兵長の表情は、常と変わらない。

 

しかし、その視線が一心に彼女に注がれているのに、イリヤは気づいてしまった。

 

 

 

――ああ、やっぱり。やっぱりあんた間違ってるよ、リヴァイ兵長。

 

 

 

あんたたちは、何故死ねるのか。何故、死ぬために生きていけるのか。大切なものを切り捨てて、そこに何が残るのか。「人類」の幸福を願うあんたたちの思い描く未来には、あんたたち自身の幸福はあるのか。

 

イリヤは悪態をつきながら、刃を構えた。

 

 

 

「荷馬車護衛班!何としてもエレンを守れ!!女型の巨人を足止めしろ!!」

 

 

 

鬼気迫る班長の指示に、先輩方の低い声が応える。

 

 

 

ふざけるなよ、この勘違い野郎め。

 

 

イリヤは約束を思い出す。それは、リヴァイ兵長との、そして自分自身との約束だ。

 

守ってみせる。何度死んだって。この人たちを、勘違いの英雄にさせたままに終わらせるものか。

 

 

クシェルがアンカーを放ったのを皮切りに、続いてイヴォとエーミールも馬を離脱する。

 

 

 

「なあおいエレン!」

 

 

 

最後に残ったイリヤは、やめろと情けなく叫ぶエレンに怒鳴った。

 

 

 

「お前!間違うなよ!!頼むぞおい!!」

 

 

 

 

そして、アンカーを背後の巨大樹めがけて放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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