インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結) 作:鈴木颯手
「ラウラ!コルネリアを頼んだぞ!」
ヴィルヘルム六世はコルネリアを運び処置をラウラに任せて再び敵のもとへと向かった。現在敵を武装親衛隊員が一人で押さえている状態でコルネリアですら押さえきれなかった敵に一人で勝てるとは思えなかった。それどころか最悪の状況すら予測できた。
「…あ」
そしてその予想は当たってしまう。敵は戦っていた場所から動いていなかったが残った右腕には戦っていたはずの武装親衛隊隊員がおりその体は握りつぶされており赤い液体が海へと流れていた。
「…これで三人。生きて帰れると思うなよ」
瞬間ヴィルヘルム六世は一気に敵に肉薄する。
両腕のレーザーブレードを一気に敵に叩きつけるが敵は再びきれいに避けてしまう。しかし、それはヴィルヘルム六世も分かっていることでヴィルヘルム六世は敵がよけた位置に向かってレールカノンを放つ。
敵はこれをもろに受けるがすぐに体勢を立て直す。見る限り大したダメージは食らっていないだろう。
「はっ!」
ヴィルヘルム六世は間髪いれずに追撃するがやはり敵には当たらずひらりと避けるが再びそこにレールカノンを撃ち込む。これはまたも直撃し、左腕の砲塔が破壊できたのかかなりの煙を上げていた。
「…そろそろか?」
ヴィルヘルム六世は目の前に表示されるモニターに目を向ける。そこには【出力78%。不安定】と書かれていた。これは本来なら100%になるまで待つつもりであったのだがコルネリアが落ちていくのを見て仕方なく戦闘に入ったのだ。
「この調子で行けばギリギリ勝てそうな気もするが油断や慢心はいけないな」
そう思いレーザーブレードを構えて再度攻撃に移ろうとしたとき、
【あははははははははは!!!!!すごいよ!君!まさか壊されるとは思っていなかったよ!】
子供のような甲高い声があたりに響いた。どうやら声の発生源は敵であるようだが腹を抱えて笑っていそうなイメージなのにそう言った行動はしていない。
「…誰だ?」
【俺?俺はなクラッカーっつうんだ】
「クラッカー、ねぇ。それは偽名だろう?」
【悪いね、知らない人に名乗るほど心が広い訳ではないんだ】
相変わらず敵に動く気配はないため敵が遠隔通信で行っているのが予想できる。
「…何故陛下を狙った?」
【実験に付き合ってもらっただけだよ。有象無象の一つでしかないからね…っと】
敵はひらりと避ける。瞬間ヴィルヘルム六世のレーザーブレードが通り過ぎる。そのスピードは今までの中で最も早く少しでも遅ければ胴体が上下に分かれていただろう。
【危ない危ない。今までの中で一番早かったね】
「貴様は絶対俺が殺す!例えどこに逃げようと必ず捕まえて殺す!」
【無理無理。このISを超えるIS、
「それはどうかな?」
ヴィルヘルム六世は不敵に笑う。ヴィルヘルム六世のみが見える画面には【出力100%、出力安定:ヨルムンガンド起動可能】と表示されていた。これを見たヴィルヘルム六世は封印していた兵器、ヨルムンガンドを起動する。ヨルムンガンドは右肩に装着されているレールカノンの対になるように左肩に現れた。それは大口径の砲塔であった。
ヨルムンガンドとはプラズマ砲のことである。その威力はISを起動不能にするどころか中に乗っている人まで破壊しかねないもので封印していたのだ。
【!?な、なんつー出力だ】
「これで終わりだ。クラッカー」
ヴィルヘルム六世はヨルムンガンドを発射する。放たれたプラズマは敵に直撃して分解するように破壊しては破壊したところから溶かしていく。
【ぐ!?ま、まだだ!】
その時敵が残っていた右手の砲弾を発射した。しかし、方向はヴィルヘルム六世とは反対方向で苦し紛れの一発かと思ったが撃った方向にある物を発見して表情を変える。
「き、貴様!」
【フハハハハハ!!!!よく見ておけ
最後の方は通信にも影響が出ていたようで聞こえなくなるころには敵は完全に焼失していたがそれと同時に敵が放った砲弾が、皇帝が運ばれ治療を受けているはずの病院船に突き刺さり大爆発を起こして沈んでいった。
その様子をヴィルヘルム六世は茫然と見ている事しか出来なかったのであった。
「成程、プラズマ兵器か。流石は世界の最先端を行くと自負するドイツ帝国。半端ないものを作るじゃないか」
クラッカーは自身の研究室のモニターから戦闘の様子を見てそう答えた。現在IOSが破壊されてしまったため何も写っていないが最後には病院船が破壊されるのを見ることが出来ていた。
「すごいじゃないクラッカー。まさか武装親衛隊を赤子の手をひねるように殺すなんて」
一緒に見ていたスコールはIOSの活躍に歓声を上げていたがクラッカーにしてみればまだまだであった。本来であればISを余裕で倒せるくらいにはしたかったのであるが結果は敗れてしまっていた。
「…まだまだこれから、だな。次の七つの大罪を完成させないとな」
スコールには聞こえない声でクラッカーはそう呟くのであった。