インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第二十一話

「私は三組に所属しています。ヤルナッハは五組にいます。何かあったときは呼んでください」

 

「すぐに行きますよー」

 

一通りヴィルヘルム六世も頭に叩き込んではいたが実際に通っている二人からもいろいろと聞くことが出来た。二人によると先日行われたクラス対抗戦で謎のISが乱入してきたらしい。その時試合中だった一組代表の織斑一夏と二組の凰鈴音が何とか撃退したらしい。その際織斑一夏が負傷したが今はもう回復しているらしい。

 

「ところで陛下」

 

「陛下はやめろ。…で、なんだ?」

 

「まさかとは思いますがヘリでここまで来たのですか?」

 

「いや、近くまで艦隊で送ってもらったよ。ちゃんと許可も得ている」

 

「そうですか…」

 

やがて四人は職員室に到着する。

 

「では、私たちはこれで失礼します。…それと所属するクラスは一組となっています」

 

クラーラは悔しそうな顔でそう言ってその場を後にした。ヴィルヘルム六世は最初何の事か分からなかったがクラーラの言いたいことはすぐに理解できた。

 

「ほう、貴様等が転入生か」

 

その声を聴いたヴィルヘルム六世は無表情になりかけるがこらえて後ろを振り返る。そこには二人の女性がいた。一人は小柄な女性で私服でいることから教員であることが分かる。何処か幼げな印象である。

 

もう一人はスーツを着込んだ女性で鋭い目つきに出席簿を持っていた。

 

見間違えるはずもなかった。

 

「私が貴様らの担任の織斑千冬だ。ここでは私が法だ。私のいう事にはすべてハイと答えろ。いいな?」

 

それだけ言うと「ついてこい」と言って歩き出した。もう一人の女性は「山田真耶です。いまからSHRなのでついてきてください」と二人に言うと「織斑先生待ってくださーい!」と織斑千冬のもとへと小走りに向かっていった。

 

「…どうしますか?」

 

ラウラは若干不安げな顔でヴィルヘルム六世を見る。

 

「行くぞ。職員室に入る手間が省けた」

 

それだけ言ってヴィルヘルム六世は歩き出すがそれ以降しゃべることはなかった。

 

やがて二人に追いつき一組のある教室の前につくと「ここで待っていろ」と言われたので待っていると「では入ってきてください」と言われたので入ることにした。

 

中に入ると一斉に生徒がこちらを見てくる。その動きは軍隊さながらで内心感嘆しつつも教卓の隣に立つ。

 

「自己紹介をしろ」

 

「それでは私から」

 

織斑千冬の言葉にラウラが名乗り出た。ラウラは半歩前に出る。

 

「ドイツ帝国武装親衛隊第五部隊隊員のラウラ・フォン・ボーデヴィッヒだ。階級は少佐だがみんなとは仲良くやっていきたい。よろしく頼む」

 

ラウラのあいさつに拍手が飛ぶがみんなの目はヴィルヘルム六世にくぎ付けであった。

 

「…んじゃ、次は俺だな」

 

そう言ってヴィルヘルム六世は努めて明るくする。

 

「ドイツ帝国武装親衛隊第一部隊所属ハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインだ。階級は大佐。年は諸君らより一つ上だが年齢は関係なく仲良くしてくれれば幸いだ。三年間よろしく頼む」

 

そう言って少し頭を下げる。この時目の前に初の男性操縦者の織斑一夏がいたことに気付いたがそれどころではなくなった。

 

「「「「「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」」」」

 

ヴィルヘルム六世も思わず半歩引いてしまうほどの衝撃波が襲ったのだ。これによりラウラは目を回している。

 

「男よ!男!黒髪のイケメンよ!」

 

「イケイケ系男子きたぁぁぁぁぁぁ!」

 

「一目ぼれしました!結婚を前提にお付き合いを!」

 

「これはハイ×一で決まりね!」

 

何やらよくわからないことを叫んでいるがヴィルヘルム六世にとっては偶に似たようなことがあったのですべて無視していく。

 

「静かにしろ!」

 

そこへ織斑千冬の指導が入りクラスは一気に静かになる。

 

「一時限目は二組との合同授業だ。決して遅れないように」

 

織斑千冬はそれだけ言うと教室を出て行った。取り合えず俺は織斑一夏に挨拶しておこうと近づく。

 

「君がい「しゃべってる暇はないぞ」え?」

 

織斑一夏はそう言って教室を出て行った。ヴィルヘルム六世は何だったんだ、と思いつつ教室を出ると

 

「あ、例の新入生よ!」

 

「かっこいい!」

 

と、あっという間にヴィルヘルム六世の周りには生徒であふれてしまった。先ほどの原因はこれかと思いつつ生徒たちに話しかける。

 

「すまないがこの後合同で授業が行われるらしいんだ。着替えるにはどこに行ったらいいかな?」

 

「それならアリーナにある着替え室が男子に貸し出されてるよ」

 

と目の前にいた生徒がそう言ってくる。それをヴィルヘルム六世はいつもの癖で頭をなで始める。

 

「おお、ありがとうな」

 

そう言われた少女は

 

「…きゅう」

 

顔を真っ赤にして倒れてしまった。そしてさらにうるさくなるが「織斑先生の授業だから遅れることはできない」と言ってまた今度と言って解散してもらい、生徒に聞きつつアリーナにある着替え室に入るとあと少しで授業が始まる時にまでなっていたのであった。

 

そのせいでギリギリ授業には間に合わず織斑千冬出席簿の恩恵を受けたのであった。

 


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