インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結) 作:鈴木颯手
「良くやったドクトル」
「いえいえ、私もこれほどなものを作れて感激しております!」
初の男性用ISにヴィルヘルム六世はドクトルを称賛する。
「で?これの武装はどうなっている?」
「はい、これはシュヴァルツェア・トイフェルの上位機でトイフェルにあった五連バルカン砲は取り外してリヒトやレーゲンにもあったレーザーブレードを装備してあります。また、全距離に対応可能な多機能レールカノン、トイフェルと同じスラスター型特殊ビーム砲を搭載しています!」
更に!とドクトルは続ける。
「第三世代兵器としてとあるものを搭載しています」
「とあるもの?いったいどんな兵器なんだ?」
「それは…」
と、ドクトルが続きを言おうとしたとき入ってきた扉が思いっきり開いて一人の武装親衛隊が入ってきた。
「どうしたヴァイス。そんなに慌てて」
「大変です!これを見てください!」
そう言って渡してきた紙を見てヴィルヘルム六世は眉を潜めた。
「…陛下?」
「…すまないがドクトル、急用が出来た。私はこれで失礼する。ただしこれは何時でもうごかせるようにしておいてくれ」
「了解しました」
「クロエにラウラ、ターニャ。皇宮に戻るぞ」
ヴィルヘルム六世は指示を出しつつ三人にヴァイスが持ってきた紙を見せる。三人とも紙を見て表情が固くなる。そこに書かれていたのは、
【初の男性操縦者現れる】
「それで?結局これはどういうことだ?」
皇宮に戻ったヴィルヘルム六世は直ぐに高官を召集した。普段は信頼するものしか入れることはないが今回は特例として集められた。
「四年前に助けたはずの織斑千冬の弟、織斑一夏。そいつがISを動かしたと聞いたがそいつは女だったのか?」
ヴィルヘルム六世は思わずそう言ってしまうがそれも無理はない。現状ISは女性にしか扱えずヴィルヘルム六世もドクトルが専用に開発させてようやく男性用ISが作れたのだから。
「いえ、確かに織斑一夏は男です。ですが」
「ISを動かせた、と」
高官達はあまりの出来事に誰一人として声をあげない。
「…こうなった以上仕方がないな」
ヴィルヘルム六世は少し思案した後に声を出す。
「現在ドクトルに命じて男性用ISを開発させている」
予想外のヴィルヘルム六世の言葉に高官達は驚きの声をあげるが構わずに続ける。
「そこで、この事を世界に発表する。その際女性利権団体が騒ぐだろう」
「確かにそうですな。最悪の場合IS委員会も介入してくる可能性があります。それで?恐らく誰かをIS学園に送るのだろうと思いますが一体誰を送るのですか?」
ヴィルヘルム六世の予想にアルベルトも同意の言葉をかける。そしてその後に続く言葉を想像してヴィルヘルム六世に聞く。
「決まっている。俺だ」
「…」
頭の隅では予想していたがまさか本当に言うとは思わなかったアルベルトは思わず頭を抱えてしまう。一体何処の国に皇帝自ら行こうとするのか。更に言えばIS学園があるのは日本である。四年前に一悶着あった彼の国がもし皇帝がいると分かれば何かしらの行動を起こす可能性があった。最悪の場合は暗殺すらありえる。
「勿論リスクも承知の上だ。バレないように変装もするしな」
「当たり前です!いくら陛下でもIS学園に素で入ることは出来ませんよ!」
ヴィルヘルム六世も既に23。高校どころか大学も卒業して働いている年であるのだ。更に幾らなんでも一国、それも世界の半分を影響力に納めている皇帝を生徒として迎えることなどできるはずもなかった。
「…はぁ」
とは言えアルベルトもヴィルヘルム六世がどんな行動をとるのか大体予想できているため止めても無駄だと思いつつ言う。
「別人として、IS学園に入学する。決して皇帝とバレてはいけない。問題を起こさないようにする。最低でもこれを守ってください」
アルベルトの言葉にヴィルヘルム六世は頷く。
「当たり前だ。このくらい出来なきゃ皇帝としては二流だよ」
初の男性操縦者の報が全世界に広がって一週間してからドイツ帝国で驚きの発表がされた。
「我がドイツ帝国では男性が動かせるISを発明しました。そのデータ採取を兼ねてIS学園に今年度は一人、来年度は数名、そして再来年から本格的に入学させることになりました。まず、このISが発明できたのも…」
「男性用ISの最終調整のために今年度の入学は少し遅れてからとなります。今年度入学するのはドイツ帝国軍武装親衛隊所属のハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインです。それと同時にもう一人護衛として入学することが決まりました」
「国際IS委員会は男性用ISのデータの開示を求めていますがそれに関してはドイツ帝国は沈黙を貫いています」
「日本、アメリカ、中国を中心に世界のあちこちで女性利権団体によるデモが行われています。これに対し、各国は軍を使って鎮圧を行っています」