インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第一章 原作前
第一話


「さて、諸君。集まったようだな」

 

…深夜。月明りのみが唯一の光源となっている森の中で男は満足そうに頷く。男の周囲には十数名の男女がいた。見た限り上は60、下は10程度の年齢差があるが彼らに共通する点は目にとてつもない闘志、何事も失敗を許さない忠義、何者にも邪魔をできないほどの集中力を宿していた。

 

更に彼らは皆黒いアーマーを着込み手には前時代的な銃を携えていた。

 

男は周囲を気にしながら彼らに話す。

 

「…ここは目標の本拠地という話だ。この作戦を知っている者はここにいる諸君らとベルリンで待っている宰相しか知らない」

 

男の言葉は決して大きい声ではないが彼らには十分に聞こえていた。

 

「今更だがこの作戦は強硬手段であり成功確率は高くとも絶対ではない。たとえ生きて生還してもこのことは闇に葬られ勲章などは何一つ手に入れることはできない。…それでも、諸君たちならやってくれると信じている」

 

男は身を翻して歩き出す。

 

男の進路には山の中に築かれたとある施設があった。見張りの兵は男が放った銃弾により頭を打ちぬかれてこの世から永遠に消え去った。

 

「さて諸君!殲滅の時間だ!奴らに自らが犯した罪を後悔させながら、殲滅せよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一次世界大戦で勝利したドイツ帝国は連合軍に降伏したオーストリアを占領。オスマン帝国に支援しつつ領土を拡大できるところまで拡大した。

 

ヴェルサイユ条約では帝国の解体もなく連合軍よりかすめ取った賠償金を使い更なる軍備の強化、インフラの整備を行った。

 

そして史実通りにヒトラーが政権を握ると時の皇帝ヴィルヘルム四世と協力してのちにドイツ革命と呼ばれる大粛清を行い帝国の結束を強固にした。

 

1940年。勢いに乗る大日本帝国、イタリア、同盟国のオスマン帝国と独日土伊四国同盟を結びフランス、イギリスに宣戦布告した。

 

軍備を強化したドイツ軍の進撃速度はすさまじく宣戦布告からふた月ほどでフランスを完全占領、イギリスへの定期的な爆撃を行い有利に進めていた。

 

1945年にアメリカは日本を降伏させると連合国の代表としてドイツ帝国と講和。イギリスからの賠償金、フランス本国の占領、アフリカに持つ植民地の放棄を条件に連合国と講和した。

 

これに不満と焦りを覚えたソ連から宣戦布告を受けるも軍備に余裕を持っていたドイツ帝国は侵攻してきたソ連を撃退、逆にソ連に攻め込みモスクワを占領。ウラル山脈以東まで押し込んだうえで講和した。

 

これによりソ連はウラル山脈より東側に押し込まれることとなりモスクワを含めて主要都市が奪われたソ連はシベリア最大の都市ノヴォシビルスクを新たな都市としてドイツに備えることとなった。

 

ドイツ帝国はイギリスやフランスが持つ植民地を征服していきさらには独立していた国ですら征服していったのである。

 

ここまでならただの征服者であるがヴィルヘルム四世は征服した土地に住む住民を国民として扱い手厚い保護をしたのである。更には学校の建設、インフラの整備、地雷や不発弾の積極的な処理。

 

これらの行動からドイツ帝国は歓迎され一部の地域では自ら支配下になるところもあった。

 

後にこの行動をヴィルヘルム四世はこう語っている。

 

「俺は単純に街づくりが好きなだけだ。何もないところから作られていき発展していく…。これに勝る娯楽はない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように繁栄を極めたドイツ帝国であるが百年もたてば腐敗は出てくる。とある山奥で極秘に研究されている遺伝子強化研究所。ここは遺伝的に強化された人間を作る研究所であるのだが理論的に問題であるため政府の中でも一部のものしか知らずローマ法王すら超える絶大な権力を有するドイツ帝国皇帝ですら知らされていなかった。

 

そんな研究所は現在いたるところから煙が出ており中は破壊されており火事が発生していた。男の言葉とともに突撃した彼らは十分ほどで研究所の半分が制圧され中にいた研究員は出合い頭に殺されていた。

 

「急げ!あと少しでここは崩壊する!それまでに何としても目標を確保するのだ!」

 

男は声を上げて叫び彼らはそれにこたえるように俊敏に動いて探していく。やがて待ち望んだ報告が聞こえてきた。

 

「見つかりました!」

 

報告を聞いた男は反射的に飛び出して向かう。場所はそれほど離れていなかったが煙がすごくすぐに立ち去らないと危険なことはだれの目から見ても明白であった。

 

「この中です!すでに一名だけですが先行しています!」

 

隊員が指し示す方向には地下へ続く階段があった。

 

「すぐに隊を呼べ!俺はこのまま向かう」

 

「了解しました!」

 

男は用心しつつ進んでいく。中は電気系統がいかれたためか非常灯が付き薄暗かった。階段を下り切れば巨大な扉とその近くで扉を開こうとハッキングしている隊員の姿が見えた。

 

「どうだ?空きそうか?」

 

「ええ、今開きます…っと」

 

隊員の言葉とともに扉は開きこの研究所の中枢である試験管ベビーがポッドにたくさん入れられていいた。そのほとんどが小さな肉塊のような形をしており失敗作と思える風体であった。

 

男はそれには目をくれずに奥へと進む。進んだ先には円形に設けられた檻がありその一つに二人の少女が入れられていた。きれいな銀髪に片方は目をつぶりながらも震えながら、もう片方はおびえた様子でこちらを見ていた。

 

「…試験管ベビーはお前たちのみか?」

 

男の声にビクッと体を震わせる。その様子に男は困惑した様子で近づき少女たちと目線を合わせる。

 

「安心してくれ。俺は君たちに酷いことはしない。君たちを助けに来たんだ」

 

「私たちを…助けに…?」

 

目をつぶった少女はおびえた様子で聞いてくる。その様子に男は頭をなでる。

 

「…あ」

 

「大丈夫。何がんでも助けてやる。だから今は、な?」

 

男はそう言って二人を抱きしめる。二人はとても大きなぬくもりを感じて恐怖で泣きそうになっていた少女は眠りについた。

 

「よし、少し待っていてくれよ。もうすぐ部下が来るからな」

 

「…あ、あの…あなた様は…?」

 

「ん?ああ、そういえば言っていなかったな」

 

男は目を見て不敵に笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はドイツ帝国皇帝、フリードリヒ・フォン・ヴィルヘルム・ヴィクトル・プロイセンだ」

 

 


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