インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第十七話

「「し、死ぬかと思った…」」

 

一次移行を終えてミサイルの大群を防ぎ切った二人はISを解除して大の字に横になっていた。

 

「大丈夫か?」

 

ヴィルヘルム六世はクロエとラウラの頭を自身の膝の上に置く。膝枕というものである。

 

「え!?へ、陛下何を!?」

 

クロエとラウラは顔を赤くして慌てるがすぐに大人しくなる。まんざらでもない様子である。

 

「ほら、無理すんなって」

 

そう言ってヴィルヘルム六世は二人の頭をなでていく。二人は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに目を細めている。

 

「…陛下。よろしいでしょうか?」

 

そこへ表情を一切変えないターニャが敬礼して言う。ヴィルヘルム六世は今が専用機の受け取り作業中だったことを思い出す。

 

「そういえばまだターニャの専用機は終わっていなかったな。悪いが俺は二人を看病するからドクトルとやっていてくれるか?」

 

それを聞いたターニャは嫌そうな表情をするが常人では分からないスピードで表情を戻した。もちろんヴィルヘルム六世には見えていたが。

 

「…分かりました。それでは失礼します」

 

「おう、がんばれよ」

 

ターニャを見送ったヴィルヘルム六世は邪魔にならないように二人を脇に抱えて建物の方に移動する。

 

「あ、あの陛下…。さすがに自力で歩けます」

 

「まあまあ」

 

「あの降ろしてもらえますか?」

 

「…」

 

「あ、いえ大丈夫です」

 

ヴィルヘルム六世の顔を見たクロエは一瞬で考えを変えてされるがままとなる。この時ヴィルヘルム六世がどんな顔をしていたか語る者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、ターニャも一次移行まで動かすこととなったか」

 

研究所を出て空へと飛びあがっていく機体を見てヴィルヘルム六世はそうつぶやく。

 

それと同時にやはりいきなり現れたミサイル群がターニャに迫る。

 

ターニャはそれを初期状態の機体でありながら巧みな操縦でよけきっていく。その姿は女神と呼ぶにふさわしかった。

 

「…武装親衛隊第五部隊の隊長だったあいつが戦死したときターニャは仇をきっちり取ってくれたしな」

 

二年前、当時武装親衛隊第五部隊の隊長を務めていた女性はアフリカの紛争地域の鎮圧時に突如として未確認のIS によって殺されてしまった。それを当時ドイツ帝国軍少佐、第五部隊の隊員だったターニャが敵を全滅させたのだ。この功績によってターニャは大佐に昇進。武装親衛隊第五部隊の隊長となったのだ。彼女からすれば機体の性能差はあれどこのくらいあの時に比べれば訳ないだろう。

 

「…お?一次移行が完了したようだな」

 

最後のミサイルを振り切ったときに機体が光りだしたのだ。一次移行が完了した合図だ。黒い機体は二人と変わらないが胸元には鷹のマークがついていた。

 

更にはレーゲンに似ているが両肩に砲台がついていた。腕はごつく腕を囲むように片腕五つの銃口が見えた。更にスラスターがシュヴァルツェア型よりも大きく見えた。

 

「あれがシュヴァルツェア・トイフェルか」

 

ヴィルヘルム六世は渡されていた資料にあった名前をつぶやくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハ!!!どうですかシュヴァルツェア・トイフェルの雄姿は!?」

 

ようやく復活したクロエとラウラと一緒に研究者の裏口まで戻るのとターニャが戻ってくるのは同じタイミングであった。そこへ先ほどよりもハイテンションなドクトルが声をかけてくる。

 

「なかなか凄まじいぞ」

 

「当たり前でしょう!武装親衛隊第五部隊の隊長はドイツ帝国最強のIS操縦者なのですから!それに見合うものを作るのは当たり前でしょう!」

 

それもそうだな、とヴィルヘルム六世も肯定する。

 

ドイツ帝国では表裏の最強の操縦者がいる。表はあくまで国家代表という立場を背負い裏はドイツ帝国で最も強いものが選ばれていた。その証が武装親衛隊第五部隊の隊長の座である。

 

これは切り札という面も兼ねており万が一の場合は国家代表アルビーナ・フォン・バッケスホーフすら上回るIS操縦で対象を倒すのだ。

 

そして現在ドイツ帝国で最も強いのがターニャ・フォン・デグレチャフというわけであった。

 

「シュヴァルツェア型のカスタム機であるシュヴァルツェア・リヒトにレーゲン。そしてシュヴァルツェア型の上位機であるシュヴァルツェア・トイフェル。これこそが真のドイツ帝国最強の機体だ」

 

恐らくこの三機があれば領土が大きい国でなければ焦土に変えられる力を有している。このことを実はクロエとラウラは知らなかったが自分たちがその一角を担っていると改めて実感して気を引き締めるのであった。

 

「まあ、これで専用機の件は終わったが…。ドクトル、お前に頼みがある」

 

「何ですかな?」

 

首をかしげるドクトルにヴィルヘルム六世は一つの携帯端末を見せた。それを受け取り内容を確認したドクトルは驚愕の顔となり同時に不敵に笑った。

 

「…期限は?」

 

「一年。それで完成しない場合は大々的に公表して国家プロジェクトとなる。これはドクトルお前にしか頼めないができるか?」

 

その問いにドクトルは笑った。

 

「楽勝ですよ。一年もかけずに作ってごらんに入れましょう」

 

ドクトルはそう返事をした。彼が手に持つ端末にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【男性用ISの開発】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは現在の世界に爆弾を放り込むような衝撃となるようなものであった。これが吉と出るか凶と出るかは誰にもわからない。

 


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