インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第十六話

「久しぶりターニャちゃん」

 

「やめろ、ちゃん付けするな。一応私は上官なのだぞ」

 

中央技術研究所に向かう車の中でターニャ・フォン・デクレチャフはクロエとラウラに抱き付かれていた。ターニャは引き剥がそうとしているがうまくいっていなかった。

 

「陛下、何とかしてください」

 

ついにはヴィルヘルム六世に懇願するが頼んだ相手が悪かった。

 

「暫く二人のしたいようにさせておけ」

 

久しぶりに会ったがために二人のさせたいようにさせたいと言う思いと幼女三人が絡み合う姿はとてもほほえましかった。

 

「…このロリコン」

 

思わずそう呟くが誰にも聞こえずターニャは中央技術研究所に着くまで二人の玩具にされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私の方が、上官なのに…」

 

中央技術研究所はベルリンの外れにあるため皇宮からそこまで時間はかからないがその間だけでターニャはグロッキーとなっていた。

 

「ほら、しっかりしろ」

 

俯くターニャの背中をさすってやる。因みにクロエとラウラはその光景を羨ましそうに見ていた。

 

「おお!ようやく来られましたな!」

 

そこへ機械的な片眼鏡をかけた初老の男が小走りで近付いてきた。

 

「久しいなドクトル」

 

ヴィルヘルム六世は中央技術研究所所長アーデルハイト・フォン・シューゲルに機嫌よさそうに言う。

 

「本当ですぞ!最後に会ったのは去年、シュヴァルツェア・レーゲンのお披露目会の時ですからな!」

 

ドクトルは老いを感じさせない軽やかな動きを見せていたがふとターニャと目が合う。瞬間ターニャはいやそうな顔をした。

 

「おお!誰かと思えばデクレチャフ君ではないか!」

 

「…お久しぶりです。ドクトル・シューゲル」

 

ターニャは心底会うのが嫌だったらしく「会いたくなかったです」と顔に書いてあった。

 

「デクレチャフ君のお陰で色々と良質なデータを取ることが出来たよ」

 

「そうですか」

 

「実はまた協力してほしい「お断りします」そうか残念だよでは他の…」

 

ターニャはドクトルの話を裂いて断った。しかしドクトルは別の話を持ち出してくる。このままでは終わりそうにないのでヴィルヘルム六世はドクトルに話しかける。

 

「ドクトル。そろそろいいか?」

 

「おお!そうでしたな!ではこちらに来てください」

 

ドクトルは忘れていたらしく少し慌ててヴィルヘルム六世やターニャたちを案内する。

 

通された先には三つのISが並んでいた。

 

「それではまずはボーデヴィッヒ君たちのISをやってしまおうか」

 

そう言ってドクトルは左端にあるISに近づく。

 

「先ずはこれ、クロエ君の専用機第三世代シュヴァルツェア・リヒト。量産型ISシュヴァルツェア型のカスタム機だ!」

 

ドクトルはやや興奮ぎみに性能を話す。

 

「これはシュヴァルツェア型に搭載されているAICの能力を二つ搭載してある。このISにはAIを積んである。戦闘中に搭乗者の意思を読み取って必要なときに使用してくれるぞ!」

 

つまり一対一のみならず二対二にも適応できる機体と言うことだ。

 

更にドクトルは続ける。

 

「武装は量産型と特に変わってはいないぞ!本当なら色々と積みたかったが陛下のお気に入りですからね。もしもの事があっては大変だからな」

 

それを私にもしてほしい、と後ろでターニャが呟くがヴィルヘルム六世は聞こえなかったことにした。

 

「続いてはこれ!シュヴァルツェア・レーゲンだ!これも名前が違うだけでリヒトと大差はないぞ。ただ、リヒトは射撃にレーゲンは近接に特化しているくらいだ」

 

これは単純に二人が得意とするものの違いだ。クロエは射撃が得意でラウラは格闘や近接武器が得意なのだ。

 

「早速初期化と最適化を行ってしまおうか。なに、三十分ほどで終わる」

 

ただ、とドクトルは付け加える。

 

「このまま三十分何もしないというのも勿体ない。この壁の向こう側は外でかなり広いスペースがある。ちょっと今の状態でどこまで飛べるか試してみろ」

 

そうドクトルが言うと同時に扉が開き何処までも続きそうな平原が現れた。のどかな雰囲気であるがターニャはそう思わなかったらしく「ああ…、あの時のことが先ほどのように感じるよ」とどこか遠い目をしていた。

 

「それではさっそく行け!」

 

ドクトルの言葉とともに二人は空に上がっていく。その様子を見たヴィルヘルム六世は感嘆の声を上げる。

 

「ほう、早いな。本当にシュヴァルツェア型なのか?」

 

シュヴァルツェア型の特徴は速度を捨てた重装甲である。その機体から撃ちだされる攻撃はまさに圧巻の一言であった。

 

「それはそうですよ!シュヴァルツェア・リヒトとレーゲンは重装甲を一部取り外してスラスターに出力を回していますから!データで見た限り二人は機動戦術を好むようなのでこのような形となりました」

 

暫く二人は飛んでいたがドクトルが「そろそろ慣れただろう」と呟いた。

 

「よし!ボーデヴィッヒ君!次は今から放つミサイルをよけてみたまえ」

 

そう言うと後方にいつの間にか現れたランチャーからミサイルが放たれた。その数100以上。

 

「「「「…は?」」」」

 

「ほらほら!ぼけっとしていると撃ち落とされるぞ!頑張って落としたまえ!」

 

ドクトルの言葉に二人は悲鳴を上げながら一次移行が完了するまで必死に逃げるのであった。

 


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