インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第十四話

「はあ」

 

「どうしたのおねえちゃん?」

 

第二回モンド・グロッソが終了した日の夜。クロエとラウラに充てられた寝室でクロエがため息をついているのを見てラウラはどうしたのか聞く。

 

「やっぱりお姉ちゃんも陛下が心配なの?」

 

「当たり前でしょ。私たちを助けてくれてこんなにいい部屋までくれたのに何も返せていないじゃない」

 

二人に与えられた、というよりこの皇宮で働く使用人は泊まり込みで働くため部屋が与えられていた。そして使用人すべてに高級ホテル並みの部屋が与えられることとなっていた。そのため新人がここで働くときに部屋に案内してびっくりするのは恒例となっていた。

 

「でもここでお掃除とか手伝っているよ?」

 

「それもそうなんだけど…」

 

クロエは昼のことを思う。陛下が怪我をしたと聞かされた時とても胸を締め付けられる思いだった。それと同時にその場に一緒にいられなかったことをとても後悔した。いつもそばにいたいと考えていた。

 

クロエはそこまで考えて、決断した。

 

「私、武装親衛隊になる!」

 

「え!?」

 

いきなりの発言に驚くラウラ。

 

「武装親衛隊って陛下を守っている黒い服を着た人たちのこと?」

 

「そうよ。使用人のおばさんに聞いたらドイツ帝国軍の中でも特に優秀な者しか入れないんだって。その任務は陛下の護衛が主だって」

 

「そうなの?」

 

ラウラは疑問に思う。浮かべるのは初日に自分たちの相手をしてくれた女性のことだ。あれはどう見ても優秀には見えなかった。この時ラウラは知らなかったが彼女は武装親衛隊第五部隊の隊長で子供好きということ以外は常に無表情の仕事に忠実な女性であることを。このことを知るのはだいぶ先である。

 

「私は入るわよ!」

 

「でもどうやって入れるの?」

 

「うっ!」

 

ラウラの疑問にクロエは固まる。二人は一週間前まで研究所が世界のすべてであった。その後救出された後もこの皇宮で過ごしていたため外出したのは第二回モンド・グロッソに行ったぐらいだ。

 

「…陛下に聞きましょう」

 

結局クロエはヴィルヘルム六世を頼ることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、アメリーはハニートラップであったか」

 

皇宮の執務室でヴィルヘルム六世は諜報大臣のゲルルフ・ツー・ブロボヴィッツからの報告を受けていた。アメリーとは皇宮で使用人として働いていたものでアーベルによってスキューバダイビングを永遠に行うこととなった女性である。

 

「部下の報告ではアメリーは日本の女性利権団体からの命令で接触してきたのだと思われます。陛下のご命令通り手は出していませんが警告はさせていただきました」

 

「それくらいなら構わないよ」

 

「…陛下。織斑千冬の時と言い今回のことと言い少し甘すぎではありませんか?」

 

ゲルルフは気になっていた疑問をぶつけてみる。織斑千冬のとった行動は死刑すらあり得る行動であったがヴィルヘルム六世がそれをさせず切られたことすら闇に葬ったのだ。

 

「…理由は単純だよ。もし織斑千冬を死刑にして殺したとしよう。女尊男卑に染まったやつからすればドイツは絶対なる悪となるぞ。そうなれば俺やドイツの高官さらに行けば同盟国のものすら狙われることとなるぞ。誰かがたきつければ自爆テロすらあり得るからな」

 

「成程…。そこまでお考えとは」

 

「ま、さすがにやりすぎたからそれなりの制裁は加えたがな。あとは篠ノ之束の介入をさせないためだ。話によると織斑千冬は束の唯一の友人と聞く。そいつを助けるためなら何をしてくるかわからないからな」

 

何せ白騎士事件なんて起こすんだからな、と付け加える。ドイツ帝国は白騎士事件が束によって引き起こされたものと調べがついていた。

 

「いずれあいつをどうにかしなくちゃいけないが今はその時ではない。だが、何が起きいてもいいように準備はしておくように」

 

「了解しました。それでは私はこれで失礼させていただきます」

 

そう言ってゲルルフは執務室を出て行った。ヴィルヘルム六世もそろそろ寝ようと執務室の書類を片付けて寝室へと向かった。

 

「ん?なんだあれ?」

 

寝室の前まで行くと中を覗き込む二人の姿があった。

 

「どうした二人とも?」

 

「「ふぇ!?」」

 

二人はかなり驚いたらしく跳び上がっていた。そしてヴィルヘルム六世の方を振り向く。

 

「へ、へいか。あ、あの」

 

「なんだ。また眠れないのか?」

 

ヴィルヘルム六世は仕方ないなと言って二人を寝室に入れる。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

クロエは少し大きな声で呼び止める。その眼には決意を固めたものがする目をしていたためヴィルヘルム六世は向き合う。

 

「わ、私も…。武装親衛隊に入りたいです」

 

「…へぇ」

 

ヴィルヘルム六世としては予想外というわけではないが可能性は低いと思っていたために少し驚く。

 

「理由は?」

 

「わ、私も陛下を守れるような人になりたいんです。私たちを助けてくれた陛下に恩返しがしたいのです」

 

クロエは絶対になるという目をしていた。それを見たヴィルヘルム六世は溜息を吐きつつ頭をかく。

 

「…はぁ、お前らがそうしたいのなら俺は止めないがとてもつらい道だぞ?」

 

「覚悟は、できています」

 

「…え?私も?」

 

ラウラは自分も入ることになっているのに驚くがヴィルヘルム六世はそれに気づかずに続ける。

 

「…分かった。二人ともまずは軍に入れ。それから優秀な成績を残せば武装親衛隊になれるようになっている。俺の耳に入るような精鋭になれよ?」

 

「あ、あn「望むところです」」

 

かくしてクロエ、およびそれに巻き込まれたラウラはドイツ帝国軍に入隊することとなった。この時クロエは12、ラウラは11であったがIS操縦候補生としてヴィルヘルム六世が無理やり入れた。丁度貴族の娘が10歳で入隊すると聞いていたので問題ないとされたのであった。

 




次回は一気に原作の一年前まで飛びます。

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