空中に浮かぶエーデル、だがその異様さにシュート達は気づいた。 エーデルの身長が4m近くあるのだ、普通の人ではあり得ない高さだ。
「ガァ、ワ、ワレハ・・・・・・・」
次の瞬間、エーデルの全身から全方向にレーザーが放たれる。
「グラビティーテリトリー展開!」
シュートが刀奈とマドカの前に出てグラビティーテリトリーを展開してレーザーから護る。
「何なのよあれ!」
「わからないわよ!」
「二人とも落ち着け、エーデルが何かしたのは変わりないない。 それにISのコアの反応がある以上はISなんだろう。」
3人とも事態が呑み込めずに一瞬動揺したが、何とか気持ちを落ち着かせレーザー攻撃を避けはじめる。
今のエーデルに自我というものはなかった。老化現象の発現という自分にとって最悪の事態にエーデルは禁断の方法を使った。
ラズムナニウムの人体投与・・・・しかし、これは未だ成功した事例は1つも無かった。エルデが何度となく人体実験を試みるも、その全てで人体はラズムナニウムの力に耐えられず組織崩壊を起こして物言わぬ肉塊に変貌したのだった。
エルデは、ラズムナニウムの再生・増殖・進化の力を人の力だけでは制御することが出来ないと判断した。そこでその力を制御する方法としてISコアを考えた。 だが、それも上手くはいかなかった。 何よりISコアとラズムナニウムの相性が悪く、失敗が続いた。 レプリコアを使ってみるも、レプリコアではラズムナニウムの制御するには能力不足だった。
そんな中、エーデルはある方法を考えた。ISコアの生体同期による制御だった。ISコアとラズムナニウムを直接制御させようとするから問題があるのであるなら、その間に何か中継するようなものを挟めば良いのではないかと。
そう例えば人の脳とかを。
エーデルは密かに実験を開始した。幾度かの実験を経て、コア1つでは制御が出来ないという結論が出た。
最初の内は上手く制御できたのだが、時間が経過すると人の脳が耐えられずに失敗するのだった。
そこでエーデルはもう1つコアを使い、脳にかかる負荷をコアに分散させる方法を考えたが、装置の試作までで実験を行う事は出来なかった。
エーデルはその装置を自身で試す事になったのだ。
「皺が消えていく・・・・それに肌の艶も・・・・成功だわ!成功したのよ!!」
カプセルの並んだ部屋でラズムナニウムを注入したエーデル、その効果は直ぐに現れた。
「これで私は不老・・・・ぐ?!・・・・グワァァァーー!
」
エーデルは自分に起きた変化を喜んだ瞬間だった、激痛が全身を駆け巡る。 激痛にのたうち回るエーデル、そんなエーデルの肌が銀色に染まって・・・いや金属に変わっていく。
それだけに留まらず、徐々に体が大きくなっていく。
額と左胸のISコアは内部に取り込まれた。
この時点でエーデルの自我というのは殆ど喪われてラズムナニウムとISコアに防御本能で動く事になった。 結局エーデルの考えた方法はラズムナニウムを制御するには至らなかった。もっとも別の形で不老というのを実現した、全ての細胞を金属に変換するという方法で。
そして彼女は人から戦闘マシーンへと変貌した。
エーデルが右手を掲げると無数の剣が現れる。そして右手を振り下ろすと剣が一声にシュート達を襲う。
「スライダーパージ! スラッシュダガー!」
リュミエールからスライダーパーツが全て外れて、それぞれがビームブレードを展開し、迎撃していく。
「ガナリーカーバー、シューティングフォーメーション。 スターダストショット!!」
両手と周囲に展開しているガナリーカーバーがマシンガンモードで銃弾を絶え間無く射つ。
銃弾はエーデルの体に命中するが、その傷は直ぐに治っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エーデルは左手に槍を出現させ、それを掴むと穂先を向けるとレーザーが放とうとした、
「コズミックストライク!!」
シュート達の後方から飛来してきた緑色のエネルギー球体がエーデルにぶつかり、発射を阻止する。 更にエネルギー球体は無数に分かれると、四方八方からぶつかっていき、最後はエーデルを包みこみ爆発する。
「みんな、大丈夫?」
シャルロットだった。身に纏うソレイユは真形態移行しており、フェー・ソレイユとなっていた。
「助かったわシャルロットちゃん。」
「でもあまり役にたてなかったみたい・・・・」
爆煙が晴れると所々破損しているエーデルがいた、しかしその傷も直ぐに修復されていく。
「修復速度が段違いね。」
「それだけじゃない、防御力も相当なものだ。スターダストショットで表面にしか傷がつけられないなんて。」
修復が終わりシュート達に攻撃しようとするが、先んじて刀奈が
「天に鳳閃火、地に水閃華、天地双殺!」
上から火球、下から水球がエーデルを襲う。 だが、ライグ=ゲイオスの時と違い内部に深く、くい込む事はなく僅かにめり込んだくらいで爆発した。 それでも表面はかなりのダメージを与えたようで、エーデルは動きを止めて修復を始める。それを見て刀奈が
「どうやら修復している時は動きが止まるみたいね。」
「どうするのシュート? このままエネルギー切れが起きるまで攻撃を続けるの?」
シャルロットに問いにシュートは
「・・・・・いや、たぶん無理だろう。奴の体は殆ど例のナノマシンで構成されているみたいだ、エネルギー切れを起こすまでどれくらいかかるかわからない。寧ろ此方の消耗が先かもしれない。」
シュートがそう言うと、タバネからの通信が入る。
『タバネさんもシュー君の意見に賛成だな。かるく解析したんだけど、どうやらあのナノマシン進化したみたいでさ、自分でエネルギーを生産しているみたい。』
「つまりエネルギー切れは起こさないということか・・・」
『でも、そのかわり同時に複数の機能を使う事が出来ないみたいだよ。 修復している時は修復のみ、エネルギー生産している時はエネルギー生産のみ。そしてそれらを指揮している中枢となるナノマシン・・・言わば女王蜂の役割をしているクイーンが存在しているよ。』
「なら、そのクイーンナノマシンを破壊すればいいんだね?」
『シュー君、正解! 今から全知全能を使った超集束モードのHT砲を撃つよ。それで奴のナノマシンをある程度消滅させた上に、弱体化されるよ。もっとも効果が出るには少し時間がかかるとは思うけど。』
「それなら、効果が出ると同時にクイーンナノマシンを特定させて破壊すればいいんだね。」
シュートの言葉に全員が頷き、構える。
『それじゃあ、20秒後に撃つからね。』
タバネの言葉に全員が射線を塞ぐ。そして
『いくよ!HT砲、集束モード。発射!!』
一斉に散開するシュート達、そしてエネルギーの光がエーデルに命中する。 そのエネルギーはエーデルの体を蒸発させていく。
光が収まった時、四肢を失い、ほぼ原型をとどめていないエーデルの姿があった。
「よし、いくぞ!!」
シュートの掛け声と共に全員が攻撃を開始する。
今、最後の戦いの幕が上がる。