インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第33話  アタッド・シャムラン

 

  

 「喰らえ、サンダースピンエッジ。ウォォォリャァァァーー!」

 

 ダリルはディカステスの両手に装着されている大剣による大振りの攻撃をかわして懐に潜り込み膝の放電式回転ノコギリを頭頂部に叩き込む。 

 

 

   ギュィィィィィーーーーン 

 

  高速回転するノコギリがディカステスの頭部の装甲を削る。だが、おとなしくされるアタッドではなく、両手の大剣をダリルに向かって付き出す。 むざむざ刺されるはずもなく、ダリルは紙一重でかわしてフォルテの側まで下がる。 ディカステスの頭部は右の角が折れ、顔の右側の装甲が削り取られていたが、

 

 

 「・・・・・ハソンカショ・・・・・カクニン・・・サイセイ・・・」

 

 無機質な声と共に頭部の傷が瞬く間に修復されて元に戻る。そして胸部の装甲が開き

 

 

 「・・・・・・メガフラッシャー・・・・」

 

 高出力のレーザーが発射される二人はそれをかわし

 

 

 「チッ、またかよ。 」

 

 「先輩、やっぱりシュート達が言っていた福音と同じ能力ス。」

 

 「確か、[自己再生・自己増殖・自己進化]の能力を持つナノマシンだったけ?」

 

 タバネがシュートから受け取った福音の装甲の一部を解析した結果、ダリルの言った機能を持つナノマシンの残骸を見つけ出したのだ。

 

 

 「そうっス、ISコアと相性が悪くエネルギーを滅茶喰いするナノマシンっス。」

 

 「タバネ曰く、欠陥だらけの使えないナノマシンだっけ?」

 

  ナノマシンの残骸を調べたタバネは自己増殖・自己再生・自己進化能力を持つ事を解明したが、このナノマシンには決定的弱点があったのだ。 フォルテが言った通り、エネルギーの消費が激しく特に進化能力を発現させる為には莫大な量のエネルギーが必要だということ、そして意思を持つISコアとの相性の悪さである。全てのISコアは意思を持っている、だがその意思に反して勝手に増殖・再生・進化を行うナノマシンとは相容れない存在なのだ。最初のうちは問題無いのだが、ナノマシンが機能を使う度にISコアはストレスを感じ、やがてナノマシンと融合している機体を拒絶し、機体から分離するのだ。 タバネはナノマシンを徹底解析して幾つかの攻略方法を導き出していた。

 

 

 「とりあえず簡単なのは再生しないうちにダメージを与えて完全破壊するだな。」

 

 「でも先輩、その方法をとるには頭数が足らないっス。私達二人じゃ無理っス。「我らを呼んだか?」 えっ?!」

 

 突然聞こえてきたラウラの声。

 

 

 「我らを呼んだか? ダリル・ケイシー先輩、フォルテ・サファイア先輩。」

 

 二人が振り向くとそこにはラウラ、簪、サラ、リムがいた。

 

 

 「お前達!!」

 

 「既にセシリアがスタンバイして待っています。」

 

 ラウラ達の姿を見て驚くダリルとフォルテに簪が言う。

 それを聞いてダリルは笑みを浮かべ

 

 

 「よーし、それなら締めはお嬢さんに任せて全員最大火力を叩き込むぞ。」

 

 ダリルの掛け声を合図に全員が動き出す。

 

 

 「先ずは動きを封じさせて貰う。ポイントマーカー指定、AIC改発動!」

 

 ラウラがAIC改を重ね掛けで発動させてディカステスの動きを封じる。

 

 

 「いきなさい、ソードブレイカー! アサルトコンビネーション・ホーネットダンス」

 

 アシュセイバーから放たれた誘導兵器ソードブレイカーはディカステスの周囲を高速で飛び回り装甲の隙間や関節部分を狙いレーザーを撃ち込んだり、切りつけたりする。そして頭上に集結し、頭部目掛けてレーザーを一斉発射する。

 

 

 「ウェポンハンガー[アルスノーヴァ]起動、ライドオン。」

 

 リムはウェポンハンガー・アルスノーヴァを呼び出すとビアンカネーヴェごと乗り込む、そして

 

 

 「ターゲットロックオン、ライン・ロック・ランチャー シュート!」

 

 アルスノーヴァに装着されているビアンカネーヴェの換装武器、そしてアルスノーヴァの先端部分が開いた場所から一斉にレーザーが射たれる。 ディカステスの左腕は直撃を受けて消失する。

 

 

 「単一仕様能力発動 三千大三千世界。」

 

 簪が翠華月の単一仕様能力を発動させると、翠華月の周囲に全ての武装が展開されて宙に浮いている。 そして簪は両手を左右に広げて胸の前で十字に組み

 

 

 「マルチロックオンシステム起動。 ターゲットロック、 スペシウム超光波!!」

 

 全ての武装、ミサイル・リニアガン・荷電粒子砲・ショットガン・ガトリングガン・ブーメラン・薙刀・ビームがディカステスに向かって放たれる。 全身にくまなく攻撃を受けるディカステス、両足は完全に吹き飛ぶ。

 

 

 「F2Wキャノン ロングレンジモード。ツインレールキャノン、セットオン。 ダブルブレイクシュート!」

 

 ラウラはF2Wキャノンと背中のガルーダユニットのツインレールキャノンをセットし、ディカステスに向かって放つ。右腕の剣で何とか防ごうとするが、耐えきれずに剣諸とも右腕が消失する。

 

 

 「アイスクリスタル・オーバードライブっス!」

 

 コールド・ブラッド・ピクシーの各部についている青白いクリスタルが一斉に輝き、周囲に雪の結晶のようなものが浮かび上がる。

 

 

 「コキュートス・インパクト!」

 

 フォルテの周囲に浮かんでいた無数の雪の結晶が、まるで妖精のように舞い踊りながらディカステスに向かっていく。 雪の結晶はディカステスの装甲や関節部、損傷部分に貼り付く。 貼り付いた場所は白く変色し、周囲を氷が覆う。

 

 

 「 いくぜ、イグニッション!!」

 

 ダリルの言葉と同時に全身から炎が吹き上がる。 その炎はダリルの体を覆い、そのままディカステスに向かって突撃する。 全身を覆っていた炎は徐々に左の拳に集約されていく。連続瞬時加速により炎の流星の如く一気にディカステスに迫るダリル、そして

 

 

 「バーニング・ブレイカー!!」

 

 炎を纏った左の拳がディカステスの胸部に炸裂する。その衝撃で、氷ついていた箇所と胸部装甲の一部が砕け散る。 砕けた胸部装甲の隙間から内部にいるアタッドの顔をダリルは見た。

 

 

 「うっ?!」

 

 垣間見えたアタッドの顔は、頭髪の一切ない頭部に無数のコードが直接差し込まれており、左目には眼球の代わりにセンサーらしきものが埋め込まれており、血涙を流していた。

 

 

 「チッ!! お嬢さん決めろ! そしてアタッドを解放してやれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「申し訳ありません鈴さん、ボディーガード役を任せる形になってしまって。 何せ、この機能を使うと使用中はほぼ無防備になる上に、使用後は強制冷却でISが再展開まで少し時間がかかるので。」

 

 「気にしなくていいわよ。その代わり、私の分までやって頂戴。」

 

 「わかりました御約束します。 システムロックオフ、メタルジェノサイダーモード起動!」

 

 セシリアの言葉と同時にブルー・ティアーズの装甲が

顔のバイザーと手足の内部装甲を残してパージされ、スターブレイカーに装着されていく。 銃口部分をシールドビットが覆い先端に変形したハイツインランチャーが接続されたとき、巨大なレーザーキャノンが完成した。

 そして銃下部からトライポッドが現れて地面に固定される。 セシリアはトリガーを握り発射準備にかかる。

 

 

 「システムオールグリーン、エネルギーフルチャージ。 ターゲットロックオン。」

 

 そしてチャージが終わった頃、ダリルからの声が届く。

 

 

 『チッ! お嬢さん決めろ! そしてアタッドを解放してやれ!!』

 

 「ハイ。 セーフティーロック解除

 バスターキャノン  ファイナルシュート!!」

 

 銃口から眩いほどの光の奔流がディカステス目掛けて走る。

 光の奔流は半壊したディカステスを飲み込み、爆発し消し飛ぶ。

 

 

 「・・・・・・・アッ?!・・・・・」

 

 爆発する直前のディカステスのコックピット内、自我を失いISの部品と化したアタッドは目の前に拡がる眩い光の中で、アタッドは右目から涙を流していた。

 この僅かな瞬間に自我を失った筈のアタッドの脳裏に若かりし頃の記憶・・・・ISが登場する前の学生時代に恋心抱いた少年と木漏れ日の溢れる木陰で語らいあった青春の頃の風景・・・女尊男卑の思想もなく純粋な気持ちで未来を夢見ていた頃の風景が甦る。 

 アタッドは最後の瞬間、幸せだった頃を思いながら光の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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