インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第31話  IS学園の攻防

 

 

 IS学園の教師のひとり、元ブラジル国家代表の肩書きを持つガーネット・サンデイは学園内に設置された作戦指令室で事態を見守ることしかできなかった。

 目の前のスクリーンにはグローリーキングダムのISと戦う同僚と生徒達の姿が映し出されていた。 本来ならぱ、ガーネットもあの場に行って戦うはずだったのだが、それが出来なくなってしまった。 彼女の胎内には新しい命が宿っていることがわかったからだ。

 

 

 「こんな時に力になれないなんて・・・」

 

 IS学園はグローリーキングダムの攻撃を受けていた。 生徒並びにISコアの引渡しを要求してきた彼女達に対して十蔵はそれを生徒達の安全等を理由に拒否。事前にシュート達から連絡を受けていた事もあり、生徒並びに一般職員を地下シェルターへと避難させており、また市街地等の競技で使用される屋外型のシールド発生機を島の周囲に設置し備えていた。これにより今のところ学園には被害が及んでいない。

 またダリル達、ファントムタスクのメンバーだけでなく教師と志願した各国の代表候補生達も防衛部隊に加わっており、持ちこたえていた。

 最初は100機程だったレストレイルも半分以下に減っていた。 だが、それに伴い防衛部隊の面々も疲弊していた。

 スクリーンの画面越しでも、それがわかる。 だからこそガーネットは歯痒かった。 そんなガーネットに十蔵が声をかける。

 

 

 「そんなに心配しなくても大丈夫ですよサンデイ先生。 まもなく飛びっ切りの助っ人がやって来ますから。」

 

 

 

 

 

 

 

 「このーーーー墜ちろーーー!!」

 

 そう言ってダリルは専用機ヘル・ハウンド・ガルムの両肩に装着されている犬の頭部を模したユニットから火球をレストレイルに向けて放つ。 火球はレストレイルの全身を炎で包み込み焼き尽くす。 その間にダリルは両手に持つアサルトライフルを周囲に迫るレストレイルに撃つ。

 

 

 「凍るっス!!」

 

 ダリルが銃弾を撃ち込んだレストレイルに、フォルテが専用機コールド・ブラッド・ピクシーの雪の結晶を想わせる形の背面ユニットから光を放つ。光が当たった場所が凍りレストレイルの動きを鈍らせる。 動きの鈍ったレストレイルにダリルが火球を撃ち込み撃破する。 二人は長期戦になることを見越して、消耗を抑える為に戦闘が始まってからずっとペアを組みサポートしあいながら戦っていた。

 

 

 「とぉりゃぁぁぁーーー!」

 

 鈴は右手で振り回していた棘付き鉄球(ブーストハンマー)をレストレイルの頭部に投げつける。頭部を破壊されて動きが止まったところで鈴は左手に持つグレネードランチャーを撃つ。 グレネードはレストレイルの胸部に命中し爆発し、レストレイルは海に向かって落ちていく。 弾が切れたグレネードランチャーを投げ棄てて拡張領域から新なグレネードランチャーを取り出す。

 鈴は事前に受けたレクチャーで長期戦になることを教えられ燃費はともかく、自分の機体の決定力不足を感じて、武器庫からグレネードランチャーと整備科の生徒が作った試作武器のブーストハンマーを持ち出してきた。

 

 次の敵を定めようとした鈴の後方から数条のレーザーが飛んできてレストレイルに命中し、破壊する。

 

 

 「鈴さん、前に出過ぎです。少し下がってください。」

 

 IS学園近くの島の崖の上にいるセシリアのブルー・ティアーズ・ストライクガンナーパワードのレーザーライフルと新に装備されたシールドビットからのレーザー射撃だった。 全ての武装がエネルギーを消費するブルー・ティアーズは今回の戦いおいて、エネルギーカートリッジを機体に取り付けた上に、崖の側にエネルギータンクを設置し、ケーブルで接続されエネルギー切れを起こさないようにしていた。

 

 

 

 

 

 

 「そろそろ交代の時間です。B班は前衛のA班とシフトチェンジします。」

 

 そう言ってグリシーヌを装着しているラーダは側にいるメンバーに告げる。 長期戦になる可能性が高いと読んだ十蔵はメンバーを2班に別けて前衛と後衛で時間毎にシフトチェンジし、消耗を抑える為に休ませながら戦う戦法をとることにした。

 そしてラーダの指示を受けてB班のメンバーが予め指定されたポジションに向かう。

 

 ダリルとフォルテの元にはリムとサラ、鈴とセシリアの元には簪とラウラが向かった。

 

 

 

 「ダリル先輩、フォルテ、シフトチェンジよ。」

 

 ダリルはリムとサラが近づいて来るのを知ると腰に付けていたチャフ入りスモーク弾をレストレイル達の目の前に投げつけて爆発させる。 銀色の粒子が混ざった赤い煙がレストレイル達を包み込む。

 その隙にダリル達はリム達と位置を変える。 ダリルが擦れ違い様に

 

 

 「どのくらい減ったんだ?」

 

 「およそ1/3程減りました。」

 

 「なら次のあたいらの出番で終われるな。」

 

 ダリルがそう言った瞬間だった。

 

 

    ピーピーピーピー 

 

 IS学園に設置されている広域レーダーを通じて各機にアラートと共にデータが送られてきた。

 

 

 「えっ?!、南東20キロの海域に船舶1の侵入を確認・・・・船舶より機影の発進を確認・・・・その数30!!」

 

 送られてきたデータを確認するためにサラは専用機アシュセイバーの高感度長距離対応ハイパーセンサー「サウザンドアイ」を起動させる。

 

 

 「・・・・・・まちがいありません、タンカー船から機体が発進するのを確認しました・・・数は30ですが、甲板に更に待機している機体が50機以上・・・」

 

 サラの報告に沈黙が流れる。

 

 

 「予定変更だ、これから大本を叩く。 いくぜフォルテ!」

 

 「待ってくださいダリル先輩! いくらなんでも無茶です。」

 

 スモーク弾の効果が切れつつある中、ダリルの発言にリムが驚き止める。

 

 

 「無茶でもやるしかねえ。 もともと長期戦は想定済みだったが、それは第1陣撃破後の第2陣襲来まで多少なりと間があると予測しての事だった。 だが、休む間もなく小出しに増援され続けられたら、いずれ此方側のメンバーの心が折れる事になる。それを防ぐ為にも今は無理してでもあの船を落とす必要があるんだ。」

 

 そう言ってダリルはフォルテを伴って船に向かおうとした時だった。

 

 

 『その必要は無いわ、あれは私達に任せなさい。』   

 

 突然飛び込んできた通信。リムはその声の主に心当たりがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 グローリーキングダム所有のタンカーの上空に専用機シルベルヴィントを纏うアギーハとイギリスから奪ったサイレントゼフィルスを纏うシエンヌ。 その二人の背後には10m近くある巨体を持つISがいた。

 

 

 「にしても、コイツを連れてくる必要あったのか?」

 

 「文句を言わないのシエンヌ。Doctor のご要望なのだから、コイツの戦闘データが御所望よ。」

 

 「戦闘データっても、コイツは例の機体を作る段階で出来た紛い物だろう? データなんか取る必要あるのかよ? しかもパイロットはエキドナが回収して実験に使われた女だろ? 」

 

 「それもデータがほしいからだそうよ。 作った以上は死蔵せずに使用してデータを取り、次の物にフィードバックする。それがDoctor のお言葉よ。」

 

 「ちっ、しかたねえな。それにしてもここにいるのも暇だな。 少し遊んでくるわ。」

 

 そう言ってシエンヌが先程増援に出したレストレイルの後を追うように飛ぼうとした瞬間だった。

 

 

 「あら?暇なら私達がお相手しますよ。」

 

 その言葉と共に先行しているレストレイルに向けて空から流星群が降り注ぐ。 流星がレストレイルに命中する度にレストレイルは凍り付き砕け散る。

 更にタンカーに向けて2条の巨大なレーザーの光が命中し、あっという間に爆発してタンカーはまだ発進していなかったレストレイルもろとも海の藻屑と消えた。

 

 

 「「誰だ!」」

 

 シエンヌとアギーハは攻撃してきた方向を見る。そこには専用機ファービュラリスを纏ったグラキエースと専用機サーベラスを纏ったアクアがいた。

 

 

 「まさかイタリアとフランスの国家代表がお出ましとは・・・・念のために確認しますが、まさか私達と敵対するおつもりですか?」

 

 アギーハの質問に

 

 

 「「勿論、そのつもりよ」」

 

 二人は答える。

 

 

 「へっ! 面白れえ。やってやるよ、アギーハはフランスの代表を。俺はイタリアの代表の相手をする。」

 

 「わかったわ。その前に、IS学園に行って暴れてきなさいアタッド。 ディカステスの力を存分に見せつけな!」

 

 「・・・・・・・リョウカイシマシタ・・・・アギーハサマ・・・スベテハ・・・・・・・グローリーキングダムノタメニ・・」

 

 「アタッド? もしかしてアタッド・シャムラン?! まさか彼女はVTシステムの影響で廃人となって病院にいるはずでわ?」

 

 アクアはアタッドがいることに驚いた。 廃人となったアタッドだったが、グローリーキングダムが千冬に自分達の医療技術を証明する為に病院からアタッドを密かに連れ出して実験したのだった。 傍目には回復したように見えるが、実際には見た目だけで精神は壊れたままで結局このような実験にしか使えないのであった。

 アタッドはアギーハの命令を受けてディカステスを発進させた。

 アクアとグラキエースは目の前の二人を相手することを決めてアタッドは代表候補生達に任せる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『・・・・・ということで、そっちにデカ物が向かったから頑張ってね。』

 

 アクアからの連絡を受けたダリル達。

 

 

 「よし、あたしとフォルテでデカ物の相手をしとくから残りの奴を頼む。 片付いたら手伝いに来てくれ。」

 

 そう言ってダリルはフォルテを伴ってディカステスの元に飛んでいく。

 




 
 今回登場した原作キャラの強化IS並びにオリジナルISを簡単に説明

セシリア:ブルー・ティアーズ・ストライクガンナーパワード
高機動パッケージストライクガンナーを装備したブルー・ティアーズに胸部装甲と顔を護る長距離用高感度センサー[サウザンドアイ]内蔵ヘッドギア一体型のバイザーを装備。 更にエネルギー消費を補う為のエネルギーカードリッジを複数装着している 
 武器として高出力レーザーライフル[スターブレイカー]と射撃能力を封じたブルーティアーズの代わりにレーザーキャノン内装のシールドビット、更に背中にハイツインランチャーを装備した。


鈴音:甲龍
 IS学園の整備科浪漫武装部が作った、威力は有るものの見た目と重量で忌避されてきた、加速ブースター内蔵刺付き鉄球・・・ブーストハンマーを装備し、更に武器庫からグレネードランチャーとアサルトライフル、手榴弾を装備した。


ダリル:ヘル・ハウンド・ガルム
 ヘル・ハウンドVer 2.8に頭部ヘッドギアと胸部装甲を追加し、更に肩部にファンググリルという火炎砲を装備し、腕部と脚部に放電式回転ノコギリを装備。背中にバウンドキャノンというレーザーキャノンを装備。


フェルテ:コールド・ブラッド・ピクシー
 コールド・ブラッドにバイザーと胸部装甲を追加し、背中にスノーウイングという雪の結晶の形をしたユニットを装備。更に肩・腰・膝・肘に白いクリスタルがついており、氷結能力を増幅する。


サラ:アシュセイバー
 イギリスがティアーズ型を参考に作り上げた第3世代試作量産型IS。最大の特徴はBT適性が低くても扱えるAI制御型BTを登載していること。 ただし、AI制御故に思念誘導と違って柔軟性がなく、プログラムで行動する。


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