グローリーキングダムの宣戦布告より1日がたった。
世界は混乱していた、人々は戦争が起きる事を感じとり様々な行動をとっていた。
都市部は危険だからという理由で地方への疎開を試みる人、食料品が無くなると思い込み買いだめに走る人、諦めているのか楽観視しているのかわからないが普段通りの生活をおくる人。
そしてグローリーキングダムに合流しようとする女性達、しかしそれはグローリーキングダムの思惑とは異なり、IS適性も無くISの恩恵のみで威張り散らしていた女尊男卑主義者、IS適性はあるものの代表候補生にも成れない女性もしくは代表候補生の序列下位の装着者、代表候補予備生ばかりだった。
大半の国家代表や専用機を持つ代表候補生はISが女性だけでは稼働しない事を認知している男女平等の考えを持つ者だ。そんな彼女達はグローリーキングダムに合流する気は全くなかった。
一方で少数ではあるが存在する女尊男卑主義の国家代表や専用機を持つ代表候補生達はグローリーキングダムに合流したくても出来ない状況となっていた。国家に所属しているおり、しかも宣戦布告直後から厳重な監視体制がとられ身動きが取れないのだった。
女尊男卑の風潮が広まっているとはいえ、いまだに殆どの国の中枢にいるのは男性であり、こういった状況が起きる可能性を以前から危惧しており、常に身辺調査をし思想を持つ女性をリストアップしていたので行動は早かった。
更識重工地下秘密ラボ
IS学園の防衛メンバーであるダリル達を送り出したシュート達。
目の前のモニターにはグローリーキングダムの宣戦布告後からずっと報道特別番組を全てのテレビ局が放映しており、様々な情報が飛び交っていた。
「アメリカを始め、イスラエル、中国、ロシアがグローリーキングダムをテロ組織に認定、攻撃することを決めたようです。」
ちなみに日本はアメリカから参加を求められているが、憲法第9条の存在がそれを阻んでおり特別立法で対応するための法案を作り可決しようとしているが審議に時間がかかる為、1~2週間先になりそうだ。
「さてタバネ姉さん、どう攻めようか?」
「シュー君なら、どうする?」
二人は顔をあわせると
「「宇宙からの本拠地への電撃降下強襲作戦!!」」
「でも、その前に・・・」
「裁きの雷とやらをどうにかしないとね。で、タバネ姉さんはもう裁きの雷の正体をつかんでいるの?」
「勿論! あれは人工衛星の高エネルギー収束砲術兵器だよ。元々はアメリカが対IS用に作ったんだけど、設計段階から連中が密かに色々とやったみたいで、出来上がったのは昨日見た通りの物に。 当のアメリカは改造されていることを知らずに打ち上げて、更にコントロールを奪われてしまい自国では制御不能で大慌てみたいだよ。」
「それでタバネ、その衛星の現在地は?」
「連中の本拠地の真上。 改造された後の設計図や仕様書が無いから断定は出来ないけど、あれだけのエネルギーを衛星単体で賄えるとは思えないから地上からの何らかの方法でチャージしているんだと思う。」
スコールの問いにタバネが答える。
「それなら宇宙に上がったついでに撃破しよう。」
シュートの言葉で方針は決まった。
「それじゃあ宇宙に行くための船に一同ご案内~」
タバネが指を鳴らすとその場にいた全員が何処かに転送される。
気がついた時、全員が船の操舵室のような雰囲気の部屋にいた。しかし、部屋には正面の大型モニター以外は何もなかった。
「ようこそ[
フランスが主体となって進められている宇宙進出計画[フロンティア・プロジェクト]の中核をなす惑星探索戦艦型IS[
「それじゃあ、その辺の椅子に座ってベルトを絞めてね。直ぐに発進するから。」
「「あの~すいませんが~」」
発進準備をしようとするタバネに声をかける
「「「「「「「「あっ?!」」」」」」」」
そう、本来なら更識重工地下秘密ラボに残るはずだった虚と本音までも転送して連れてきたのである。
「・・・・・・・二人は予定を変更してこの船からサポートをお願いしようかな。 ポチッとな!」
タバネはそう言って懐から取り出した端末のボタンを押すと何もなかった室内にシートが現れる。
「二人はモニター前のシートに座って。そこにシステム端末を出すね。 他のみんなは適当に座ってね、それじゃあクーちゃんいこうか。」
タバネがそう言って二人はISを展開する。タバネは[ワンダーアリス]を、クロエは色違いの[ティンカーベル]を纏う。
そして天井や床から二人を固定する為のアームやシステムとリンクするための配線が現れて接続される。
「ワンダーアリス、コネクトオン。」
「ティンカーベル、コネクトオン。」
「「[
二人の声と同時に室内の機器に明かりが点る。
「それじゃあ、早速宇宙出るから全員シートに座ってベルトを絞めてね。」
スクリーンや様々な計器に色々なデータが表示され
「タバネさま、システムオールグリーン。オフェンスシステム並びにディフェンスシステム異常なし。巡航モード、正常に機能してます。」
「了解! それじゃあ宇宙に向けて発進!!」
タバネの掛け声と共に振動が始まる。そして徐々に体にGがかかりだす。やがて海中から全長100mの白亜の戦艦(外見:シロガネ)が飛び出し、加速しながら空へと向かっていく。 徐々に角度を上げて、そのまま宇宙を目指し加速する。 だが、その姿を誰も見ることが出来ない。レーダーやセンサーもそうだが、視覚的にも海上に出た瞬間からステルスモードになって、ありとあらゆる目を欺いているからだ。
やがて大気圏を突破して宇宙空間にたどり着く。
タバネとしては、こんな形であるが念願の宇宙に来た事に感慨深い思いを抱いた。 できればこのまま未知なる宇宙を見て回りたいと思うが、その思いを内に押し込み、今やるべき事をやることにした。
「それじゃあ再突入の前に邪魔物を片付けようか! クーちゃん、主砲ショックカノン発射用意。目標敵人工衛星!」
「目標を確認。主砲ショックカノン1番・2番・3番セット。発射角修正+5度、ターゲットロックオン。」
「了解~! うっちゃんにほんちゃん、地上の様子は?」
「ダリルさんからメッセージが届いてます。どうやらIS学園に攻めてきたようです。機影はおよそ100との事です。」
「ん~、ヨーロッパの方にも兵を向けているみたい。 それから~、連中の本拠地はアメリカとイスラエルの合同部隊と中国とロシアの合同部隊が包囲して、あっ! 何かシールドのようなものを島の周囲に展開されました。」
「タバネさま、目標の衛星がエネルギーをチャージ開始しました。予測発射タイムは30秒後です。」
「よーし、それなら発射直前に撃破するよ。 クーちゃん、計算後カウントダウンよろしく。」
「了解しました・・・・・・計算終了、カウント15からスタート。14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0「発射!!」」
軽い振動と共に3筋の螺旋状の光が人工衛星に向かって伸びていき命中し、人工衛星は木っ端微塵に爆発する。
「よし、それじゃあ大気圏に再突入! クーちゃん、艦首モジュールを巡航モードから突貫モードに変更!」
「艦首モジュール、巡航モードから突貫モードに変更。 大気圏再突入準備開始。」
「それじゃあみんないくからね。さっきよりGがきついから覚悟してね。 それじゃあGO!!」
艦首がドリルに換わった鋼の猫は敵本拠地に向け再突入するのであった。