◇【 会議 】◇
国連本部ビルの一室
そこには5人の男女がテーブルを囲んでいた。
その場にいるのは、小野寺哲哉IS委員会日本支部長 レフィーナ・エンフィールドIS委員会フランス支部長
ショーン・ウェブリーIS委員会イギリス支部長 レモン・ブロウニングIS委員会ドイツ支部長、そして国連事務総長のワクガガ・ルヴェールだ。
実はこの5人、ファントムタスクの存在を知る数少ない人間なのだ。
「さて、今日集まってもらったのは最近の女性権利団体の動きについてなのだが、みんなも知っての通り最近活動が活発になっている組織がある。 第1級危険指定組織[グローリー・キングダム]だ。」
ワクガガがそう言うと室内の緊張感が増す。
「色々と話は耳にします。日本では被害はありませんですが、最新式のISや量産型ISの強奪を行っていると。」
「ISだけでなく、適性のある女性を様々な方々で引き込んでいるとも。我国イギリスでもそういった女性の誘拐事件の報告が上がっております。」
「パイロットだけでなく科学者や技術者も同様ですわ。我国ドイツで、VTシステムを開発した技術者がどうやら、その組織に逃亡したという情報もあります。」
「それだけではありません。裏社会やブラックマーケットに流れていたISコアの強奪も行われているようです。」
哲哉、ショーン、レフィーナ、レモンがそれぞれ報告する。 更にワクガガが
「今年になって起きた2度に渡るIS学園の襲撃事件に先日の福音の暴走事件、何れも組織の影がちらついている。また、学園を襲った無人型ISには擬似ISコアという物が登載されていたということだ。」
この瞬間、全員が理解した。グローリーキングダムはかなりの戦力を有していることを。
「せめて、奴等の本拠地か幹部の正体がわかれば・・・」
哲哉が悔しげに呟く。レフィーナが哲哉を慰めるように
「仕方ありません。末端組織を摘発しても入手出来る情報は些細な物ばかり。本拠地はおろか中心人物である
Empressはもとより幹部である五芒星の正体すら掴めていないのですから。」
「そう掴めていなかった、だがブロウニングドイツ支部長から有力な情報がもたらされた。」
ワクガガの言葉にレモンに視線が集まる。
「我国の諜報機関が漸く幹部、五芒星の一人の正体を掴みました。 もっとも少なからず犠牲を出しましたが・・・」
レモンはそう言いながら手元の端末を操作すると壁のモニターに一人の老婆の姿と経歴が表示される。
「アギラ・セトメ。コードネーム[Doctor ] 今から20年前け違法薬物の製造並びに人体実験、違法手術による人体改造等の罪により国際指名手配を受けている人物です。」
レモンの説明を聞きレフィーナが顔を曇らせて
「人を人とも思わぬ所業、狂っていますわね。」
「あぁ正しく狂人だな。このアギラを足掛かりに他の幹部達の正体を掴まねば。」
哲哉がそう言うとワクガガが
「ICPOにアギラの捜査状況を内々に問い合わせた所、10年前に縮小されたが地道に捜査が続けられており様々な情報を提供してもらえた。」
「それでは、その情報を元に我々の方でも捜査を開始します。」
ショーンの言葉に全員が頷く。 漸く見えた糸口を逃さぬ決意を全員が固める。
◇【 アギラ 】◇
「・・・・・これにより、擬似ISコアは当初の予定通りの数を製造しました。 この7割を無人型IS[レストレイル]に登載し、残りを有人型ISに登載予定です。 また、それとは別にDoctor の要望通りに製造している特機型ISにも擬似ISコアをまわすとの事です。」
「そうかい、そりゃあ良かった。ところでエキドナ、素体の娘達の調製はどんな具合だい?」
「素体の半数は肉体強化を終えてシステムとの同調を開始しました。ですが、残りの半数が強化に耐えられず身体や精神に異常が出ました。」
「やはり薬物に対する拒絶反応が出たか。仕方あるまい、個体毎にに調合した物ではなく大量生産した物を使ったからのう。 そっちの半数はtypeーMB の部品に回せばよい。」
「わかりました。」
そう言うとエキドナは一礼して部屋から退出する。
エキドナが部屋を出てからアギラが端末を操作するとディスプレイにカプセルに浮かぶ一人の少女が映し出される。
「ウフフフフ、我最高傑作オウカよ。 間もなくお前の力を遺憾無く発揮できる時が訪れるぞ。」
オウカ・・・アギラがある女性の遺伝子を後天的に投与することで生み出された強化兵士の唯一の成功体。
そしてアギラが作り上げたシステムに完全対応することが可能な個体である。
アギラが作り出したシステムはあまりにも強力すぎた。 常人では対応出来ない、そこでアギラはシステムを改良して常人でも使えるようにするのではなく、人に手を加えることでシステムに対応出来るようにする手段をとったのだ。
ピーピーピー
アギラがみるディスプレイの一部に何かを知らせるランプが点る。
「おや、分析が終わったようだね。」
そう言うとアギラは端末を操作して分析結果を表示した。
先日アギラは、ある場所に落ちていた髪の毛を見つける。 ちょっとした好奇心からアギラはその髪の毛を拾い分析にかけてみることにしたのだ。 暇潰し・・・そう単なる暇潰しで行ったことだ。別段何かしらの結果を求めるつもりはなかった。
その分析結果がディスプレイに表示された瞬間、アギラは目を見開いて驚き無言になる。 やがて
「・・ヒャッ・・ヒャッヒャッヒャッヒャッ。ヒャッヒャッヒャッヒャッ! まさかこんな結果が出るとは! ヒャッヒャッヒャッヒャッ面白い、面白いぞ。」
ディスプレイに表示されたデータを見てひたすら笑い続けるアギラ、 それを部屋の天井の角にある防犯カメラが静かに見つめる。
◇【 剣と盾 】◇
フランス アルカンシェル社の地下にある秘密ラボ。
そこには日本から戻ったタバネとオータムの姿があった。
「はい、オーちゃん。グリシーヌの改良終わったよ。オーちゃんの希望通りに防御重視にしたよ。」
「サンキュー、タバネ。これで準備万端だな。」
「でも良かったの? オーちゃんもスーちゃんもグリシーヌのカスタム機で? ちゃんとしたワンオフの専用機を造ってあげるのに。」
「私もスコールもグリシーヌは気に入っているんだ。汎用性は高いし操作性も抜群だしな。 更にタバネがカスタマイズしてくれてんだ文句無しに決まってるんじゃねえか。」
「それなら良いけど。」
そう言うとオータムにグリシーヌの待機形態であるピアスを渡す。
オータムはタバネから渡されたピアスを左の耳につける。 そこにクロエから連絡が入る。
『タバネさま、[
「テストお疲れさまクーちゃん。今から私とオーちゃんが行くから、その場で待機しといて。」
『わかりましたタバネさま、お待ちしております。』
そう言うとクロエは現在地の座標を表示して通信を終える。
「それじゃあ行こうかオーちゃん。これからは暫くは日本を拠点にするよ。」
「えっ? でもこっちの方はどうするんたよ?」
「こっちの方はアーくんパパとミーちゃんママにお願いしてあるから大丈夫!」
*アーくんパパとミーちゃんママとはシャルロットの両親でアベル・デュノアとミア・デュノアのことです
「でも俺までいったら護衛とかは?」
「それも問題なし!楯くんパパと雪ちゃんママにお願いして腕利きの護衛を派遣してもらったから。」
*楯くんパパと雪ちゃんママとは刀奈と簪の両親で更識楯無と更識雪子のことです。
「随分と手回しがいいな。それならとりあえず問題無いな、それじゃあ支度するから待っていてくれ。」
そう言うとオータムを後ろ手に手を振りながら部屋を出る。
グリシーヌカスタム・エペ 第3世代IS
搭乗者:スコール・ミューゼル
外見:ゲシュテルベン改(ゴールドカラー)
タバネがスコール用にカスタマイズしたグリシーヌ。
機動力と攻撃力が格段にアップしている。
武装
ショットガン×2
コールドメタルソード×1
スプリットミサイル×8
バイフォーカル・ガン×1:バレルを取り外すことでロングレンジとショートレンジと使い分けることの出来る銃。銃身下部にグレネードを装備している。
バーグラー・ガン×1:大剣と一体化した遠近両用の射撃武器。
カイリー・クレイバー×1:両脚部に装着された2枚1対の近接武器。 短剣のように手に持って使う他に柄を連結しブーメラン状の遠隔誘導兵器として使える。
小型スラッシュリッパー×10:通常のスラッシュリッパーを小型化し、更に爆裂弾としての機能もあり思念トリガーにより爆発させることが出来る。
グリシーヌカスタム・ブクリエ 第3世代IS
搭乗者:オータム・レイン
外見:アルトアイゼン・ナハト(EF版)
タバネがオータム用にカスタマイズしたグリシーヌ。 重装甲化により重量が増しているが、スラスターの出力upとブースター増設により機動力は通常のグリシーヌ並。 ただし、突進力は規格外を誇る。
武装
ショットガン×2
コールドメタルソード×2
スプリットミサイル×4
シールドチェーンガン×1:左腕に装着されたシールドと一体化した五連チェーンガン。
レイヤード・クレイモア×2:両肩部のハッチに大量装填されている実弾。
スパイダーボム×2:両肩部の側面に内蔵されているポッドに装填されている蜘蛛型の思念誘導爆弾。 接触して爆発するだけでなく時限式、思念トリガーでの爆発が可能。
リボルビング・ブレイカー×1:右腕に装着されている回転式弾倉のパイルバンカー。 装填されている杭には螺旋状の溝が刻まれており、深く食い込み抜け難い仕様となっている。
スタッグビートルアーム×2:両肩部背面に装着されている思念誘導型の大鋏のついた折り畳み式サブアーム。AI制御により装着者の負担は軽減されている。 また、大鋏はサブアームから切り離してビットのように使える。