インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第21話  福音

 

 準備が終わり、司令室となっている宴会場に集まった専用機持ち達。 だが、そこに一夏と箒の姿がなかった。

 

 

 「織斑君と篠ノ之さんが遅いわね? 誰か二人を見ていない?」

 

 スコールの問いかけに全員が首を横に振る。 そして気づく千冬の姿も無いことに。 スコールが再び口を開こうとした瞬間だった

 

 

 「えっ?! これは・・・・・た、大変です。この旅館の敷地内から2機のISが飛び立ちました! しかもこの識別は織斑君と篠ノ之さんのガーリオンです。『織斑君、篠ノ之さん、応答してください。 二人共、返事をください。』 駄目です、此方との回線を閉じているようです。」

 

 真耶の報告に緊張がはしる。

 

 

 「ちょっと待て、あの二人無断出撃したのか?」

 

 「まさか? ・・・・もしかして最初の作戦を実行する気じゃ!」

 

 シュートの話に刀奈が千冬の作戦の実行する可能性を告げる。ちょうどそこに千冬が入って来る。

 

 

 「すまない遅くなった。ん?! どうした山田先生?」

 

 「た、大変です織斑先生! 織斑君と篠ノ之さんが勝手に出撃しました!」

 

 「な、なんだと! それは本当なのか?」

 

 「本当です織斑先生。 どうやら二人は織斑先生が最初に発案した作戦を実行するつもりのようです。 ともかく、このままでは不味いので全員直ぐに出撃してください。それから山田先生は織斑君達との交信を試みてください。」

 

 スコールが直ぐに全員に出撃を命じる。

 

 

(・・・・・・まさか無断出撃とは。一夏か?それとも箒が先導したのか? どちらにせよ不味いな・・・何とか誤魔化す方法を考えねば)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、一夏と箒は予測ポイントに向かっていた。

 

 

 「なあ、箒。本当に勝手に出撃してよかったのか?」

 

 「さっきも言った通り、私達二人で千冬さんの作戦を成功させて千冬さんが正しい事を証明するのだ。 そうすれば千冬さんもきっと喜んでくれる筈だ。」

 

 「でも命令違反をしてるけど・・・・」

 

 「任務さえ成功させれば帳消しになる!結果さえ出せば、誰も文句は言わない!」

 

 「そうかな?・・・・見えた! 」

 

 二人の視線の先に高速で飛行する福音の姿があった。

 

 

 「一夏、タイミングを合わせて同時に仕掛けるぞ!」

 

 「わかった。」

 

 そう言って二人は機体の位置を調節する。

 

 「「ブレイクフィールド展開! 出力全開!」」

 

 二人の機体がエネルギーフィールドに包まれ加速する。

 

 

 「「 ソニックブレイカー!!」」

 

 福音目掛けて突撃する二人。 福音に凄まじい勢いで接近していく二人。

 

 

 「やった! な?!」

 

 命中する直前だった、福音は一気に加速して突撃をかわす。 一瞬喜んだが避けられて驚く箒。

 攻撃を避けた福音は

 

 

 『敵対行動ヲ確認。 コレヨリ迎撃モードニ移項』

 

 福音は二人に対して戦闘モードになり翼の一部が砲身となり無数の光弾が発射される。 

 間一髪で避ける二人

 

 

 「うわっ?! 何だよこの攻撃!」

 

 「くっ?! 一旦距離を取ってからもう一度行くぞ一夏!」

 

 「わかった箒! 今度は別々の方向から挟み撃ちだ!」

 

 そう言って光弾を掻い潜り、左右に別れる二人。 距離を取った所で再び突撃を開始する二人。

 

 

 「「ソニックブレイカー!!」」

 

 そんな二人に無数の光弾が襲う。 ブレイクフィールドで多少は打ち消せるものの、あまりの数にブレイクフィールドの維持出来なくなってきた。

 

 

 「駄目だ箒! ブレイクフィールドが維持出来ない。 再チャレンジだ。」

 

 「くっ?! 今度は上下からだ。」

 

 再び離れて体勢を立て直しブレイクフィールドを展開した時だった。 無数のビームが福音に命中する。

 

 

 「「な?!」」

 

 ビームが発射された方角には無数の機影が見えてきた。 

 

 

 (くっ?! もう来たのか!)

 

 箒には此方に近づいて来るシュート達の姿が見えた。セシリアのブルーティアーズを先頭に新しく装備された特殊武装ユニット[AMガンナー]に乗るシュートのリュミエール。 更にAMガンナーに掴まって刀奈の凰姫とラウラのゲシュペンスト。

 

 

 「織斑、篠ノ之、何故勝手に出撃した! 命令違反だぞ!」

 

 「ふん、お前達が遅いだけだ。 そこで見ていろ私と一夏がコイツを倒して見せる。いくぞ一夏!」

 

 「待ちなさい篠ノ之さん!」

 

 シュートの話に耳を傾けずに福音に向かう箒。 刀奈が制止するが、それをも無視する。

 そして福音に向かってブレイクフィールドを展開して突撃した。 福音まであと僅かという所で異変が起きる。 二人の機体を覆っていたエネルギーフィールドが消失したのだ。

 

 

 「「えっ?! フィールドが消えた!!」」

 

 一夏と箒はブレイクフィールドが消えたことに驚く。 そして気づく、エネルギーの残量が僅かな事に。エネルギーの残量が少なくなった事によりセーフティが働きフィールドが消失したのだ。 

 現場までの高速移動に加えて、ソニックブレイカーの無駄撃ちによりエネルギーの消費量が多くなったのだ。

 

 

 「ほ、箒! エネルギーがもう無くなりかけだ!」

 

 「くっ?! 」

 

 寸前でフィールドが消失したことで動揺する二人。そんな無防備な状態の二人を見逃す筈もなく福音は無数の光弾を放つ。

 

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」

 

 「い、いちかぁぁぁぁぁぁーーー?!」

 

 アサルトブレードを呼び出して三つ葉葵で防ごうとするが間に合わず、至近距離で光弾を喰らう一夏。 そしてそのまま海に落下していく。  

 一夏が海に向かって落下していくのを呆然と見続ける箒。 その体は震えていた。 今更ながら実戦の恐ろしさを実感したようだ。

 

 

 「鈴さんは織斑を救出して旅館まで運んでくれ。セシリアは篠ノ之を補給船まで連れて行ってくれ。 」

 

 シュートは一夏をグラビティテリトリーで護ろうとしたものの間に合わなかった。距離が離れていたこともあったが、何よりも福音の攻撃が至近距離で行われたことで防ぎようがなかったのだ。 

 シュートは一夏の救出と箒の戦線からの離脱を指示し、福音への対応を始めた。

 

 

 「刀奈とラウラは俺と一緒に攻撃。シャルとマドカと簪ちゃんは援護射撃で、いくよ!」

 

 シュートの指示と同時に全員が行動を開始する。

 

 

 「先ずは動きを止めさせてもらう!」

 

 ラウラがそう言ってAIC改を発動させて福音を拘束する。そのままF2Wキャノンを撃ちこむ。

 それと同時に刀奈が左腕を突き出すと

 

 

 「影槍乱舞」

 

 槍状のエネルギー弾が無数に発射される。 ラウラと刀奈の二人の攻撃が動きが封じられた福音に命中する。

 攻撃の煙が晴れると、傷だらけの福音が姿を現しそのまま海へと落下していった。

 あまりの呆気なさに全員が言葉を失う。

 

 

 「えっ?! 倒したの?」

 

 「軍用ISが、こうもあっさりと・・・・」

 

 刀奈とラウラ、攻撃した二人はまるで実感が湧かなかった。 カタログスペックの上ではSEは競技用ISの10倍以上ある筈なのに、倒せてしまった。

 

 

 「兄さん・・・・」

 

 「あぁ、何か変だ。 あまりにも呆気なさすぎる。」

 

 「ともかく機体を回収した方がいいんだよね? このまま私がダイバーモードで回収に行くね。」

 

 「待ってシャルロット、何か変だよ!」

 

 シャルがソレイユをフライヤーモードからダイバーモードに換装して海に潜ろうとした時だった。海面に異変が起き簪が制止する。

 海面が泡立ち、赤黒くなっていく。

 

 

 「全員散開!」

 

 シュートの号令と同時に全員が散らばる。

それと同時に海面から福音が飛び出してきた。その姿は墜落する前と何ら変わらず、傷だらけであったが

 

 

 「Wooooooooooooーーーー」

 

 叫び声と同時に傷が修復されていく。 それだけでなく、その姿が変わっていく。

 両手両足が2回り程巨大化し、獣のように鋭く尖った爪が生え、背面スラスターが先程までと違い生物の・・・蝙蝠の翼を連想させるような形状となっていた。 そしてなにより先程までは存在していなかった尻尾のような物まであり、その姿はまるで悪魔を連想させるのであった。

 

 

 「セカンドシフト・・・・・・」

 

 誰かの呟きが響く。

 

  戦いはまだ始まったばかりだということを思い知った。

 

 

 

 

 

  

 

 

  

 

 


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