インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第16話  VTシステム

 「【今こそ我が身に降臨せよ、偉大なる戦女神よ!!】」

 

   アタッドは禁断の呪文を口にした。 

 その瞬間だった、ラファールの装甲のの隙間から黒い泥のようなものが染みだしてきて一気にアタッドの体を覆い隠す。

 徐々にラファールの形を失い、別な何かに姿を代えていく。

 

 

 (ブリュンヒルデの加護・・・戦女神の降臨・・・・まさか!)

 

 シュートはアタッドの口にしたフレーズから何が起きているのか理解した。

 

 

 「気をつけろマドカ、VTシステムだ。 恐らく織斑千冬モデルだ。」

 

 「VTシステムって、研究や開発が世界的に禁止されているやつだよね。そんなの使ってアイツ大丈夫なの?」

 

 「・・・・・恐らく、命の危険に関わることになるだろう。それほどVTシステムは恐ろしい物なんだ。 」

 

 シュート達が会話している間にもアタッドを覆った黒い泥のような物は形をかえていった。剣を持つ、その姿は暮桜を纏った織斑千冬そのものだった。

 

 

 「ガァ・・・・コロス・・・ジャマスルヤツ・・・コロス」

 

 剣をかまえて、シュート達に向かって突撃してくる。

その太刀筋は一夏と比べて遥かに速く鋭かった。 

 だが、シュート達に避けることは容易かった。

 

 

 「速くて鋭い、でも怖れる程の太刀筋ではない。」

 

 「そうね、VTシステムは不完全ということだね。本人の能力を100%再現出来てないんじゃね。」

 

 「そうだな、織斑の5割増しくらいの能力かな。どちらにしても脅威ではないな。 さっさと終わらせるぞ。」

 

 二人が仕掛けようとした瞬間だった。 

 

 

 「ウォォォォォォーーー、千冬姉の真似してんじゃねえよ!!」

 

 アリーナのピットから雄叫びを挙げて一夏が飛び出してきて、偽暮桜に斬りかかる。 偽暮桜はそれをなんなくかわして一夏を蹴飛ばす。 アリーナの壁に激突する一夏、それでも再び偽暮桜に向かって行こうとする。

 それをシュートが押し留める。

 

 

 「何をしている織斑! お前には避難命令が出ているはずだぞ、直ぐに戻れ!」

 

 「嫌だ、あれは千冬姉だけの剣だ。俺がやらなきゃいけないんだ!」

 

 「SEが半分以下のお前では無理だ。直ぐに戻れ!」

 

 「それでも俺がやらなくちゃいけないんだ! 他の誰でもなく、弟である俺がやらなくちゃいけないんだ。」

 

 そう言って一夏は偽暮桜に再び突っ込んでいく。今度は偽暮桜の持つ剣で打ちのめされてアリーナの地面に墜落する。 どうやらSEが尽きたらしくISが解除される。

 

 

 「まったく少しは人の意見に耳を傾けて貰いたいものだ。 さて、兄さん速攻で終らせるんだろ?」

 

 「あぁ、手遅れになる前に助け出す。背後関係や組織の全容に他の権利団体の情報を喋ってもらわないと困るからな。」

 

 シュートの言葉と同時にマドカがガナリーカーバーからビームを射つ。 

 

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 偽暮桜は、それを紙一重でかわしマドカに向かって突撃しようとした瞬間、背後から避けたはずのビームの直撃を受ける。

 避けたビームは一夏の時と同じく、何かに反射されて方向を変えて偽暮桜に命中したのだ。 

 その反射した要因こそ、ガナリーカーバーに装備されている武装の1つ、リフレクターナノマシンである。 

 鏡の特性を持つナノマシンを散布しマドカの指示で起動しビームを反射させる。 

 これは偏向制御射撃(フレキシブル)とは違ってビームを弧に曲げるのではなく反射させるという方法により意表をつきやすくしたのである。

 また偏向制御射撃(フレキシブル)と違い、反射ポイント・反射角度を自在に指定出来るため、予測困難になるのだ。

 

 

  「?!」

 

 次々に襲いかかるビームの雨、避けても再び角度を変えて命中する。 偽暮桜は、その場から動くことが出来なくなった。

 そしてマドカのビーム攻撃に翻弄された偽暮桜はシュートの存在を忘れてしまった。

 ビーム攻撃が止まった瞬間、偽暮桜の背中に何が押し当てられた。

 

 

 「さぁ、これでフィナーレだ。 Gインパクトステーク、セット!」

 

 そこにはシュートがGインパクトステークを構えていた。 

 

 

 「どんな装甲だろうと、撃ち貫くのみ! ゼロ・フェイヤ!!」

 

  トリガーを3回引く。 しかし、あまりにも速射ちだった為に音が繋がって聞こえる。

 

 

   ド、ド、ドォォォォーーーン

 

 ほぼ同時に撃ち込まれた3発の重力波。その衝撃は空気を震わせアリーナ中に轟音を響き渡らせた。

 そして撃ち込まれた偽暮桜は全身に細かい亀裂が走った瞬間、ガラスのように砕け散り中にいたアタッドが空中に投げ出される。

 それをマドカが受け止める。マドカは受け止めたアタッドを見て驚く。

 

 

 「兄さん、アタッドが・・・・・」

 

 「ん? これは!」

 

 マドカが受け止めたアタッドは見るも無残な姿に変わり果てていた。

 ピンク色に染められていた髪は白髪となり張りも艶もなくボサボサとなっており、手足の肌も張りをなくし皺だらけに、そして顔も唇はひび割れて頬はこけ、深い皺も刻まれ老婆のようになっていた。 そして何よりも

 

 

 「あ・・・・・・・あ、わ・・・・・・」

 

 目の焦点が合わず、口から出る言葉も不明瞭であった。

 

 

 「VTシステムの後遺症か・・・・これ程とは」

 

 「兄さん、治療は出来るの?」

 

 「わからん、タバネ姉さんに聞いてみないとなんとも・・」

 

 変わり果てたアタッドの姿に困惑する。

アリーナのピットから打鉄やラファールを纏った教師部隊が出てきた。

 

 

 「アルカンシェル君、アルカンシェルさん、無事ですか?」

 

 ラファールを纏った教師、元インド代表候補生のラーダ・バイラバンが二人に近付いて声をかける。

 

 

 「「はい、大丈夫です。」」

 

 二人が声を揃えて答えると嬉しそうに微笑み

 

 

 「それは良かったです。 遅くなってごめんなさいね。 そちらの女性を引き渡してもらえますか?」

 

 「はい、ですがVTシステムの影響で精神・・・・」

 

 「あなた達が気にすることはありません。彼女は禁断のシステムを使った罰を受けたのです。」

 

 そう言ってラーダはマドカからアタッドを受け取り

 

 

 「それでは二人共、このあと事情聴取があるのでピットに戻り着替えてから学園長室に向かってください。」

 

 「「わかりました。」」

 

 そう言って二人はピットに向かう。

アリーナでは教師達が、気絶している他の侵入者達を拘束する作業にかかっている。  その中に混じって救助される一夏の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い室内に光を放つ3つのモニター。 その1つ・・・IS学園のアリーナの様子をじっと見つめる女性・・・Professor

 残り2つのモニターには、Merchant とAssassin が映っている。

 

 

 「ドイツから逃げてきた科学者が持ち込んだVTシステム、思ったほどではないわね。」

 

 『これならDoctor のGAMEー SYSTEM が良かったのではProfessor ?』

 

 『Assassin 、実験する必要はあったんだから仕方ありませんわ。 それにわたくしとしては金食い虫がいなくなり手間が省けましたわ。』

 

 『そんなに酷かったのかMerchant ?』

 

 『えぇ、同じ女性至上主義者とはいえ、彼処まで無駄に贅沢されたらたまったものではありませんわ』

 

 ローズガーデンの女性達を酷評するMerchant  どうやらローズガーデンの者達はグローリー・キングダムの傘下にあったようだ。

 

 

 「Assassin 此方との関係を示す証拠の処分は?」

 

 『問題無いわProfessor 、エキドナを直接派遣して指揮を取らせているわ。 ついでにダミーに使った団体の処分もね。』

 

 「それならいいわ。」

 

 『ところで、そのドイツから逃げてきた科学者はどうされるのですか?』

 

 「VTシステム自体が役にたたないですし、本人の技量も二流三流といったところ、使い道が無いわね。 だから次の作戦のスケープゴートにすることにしたわ。」

 

 Merchant の問いに答えるProfessor

 

 

 『ラズムナニウムの試験運用を開始するのですか?』

 

 「えぇ、そうよAssassin 。 そこでお願いがあるのアメリカ軍に忍ばせているアギーハとイスラエル軍に忍ばせているシエンヌに指令を出して。 どうやらなかなか面白い事をしてるみたいだし、それを利用したいの。」

 

 『わかったProfessor 。指令の内容は?』

 

 「これよ。」

 

 そう言ってProfessor はキーボードを操作する。 Assassin の元に指令の内容を送ったようだ。 その内容を確認するAssassin

 

 

 『なるほどわかった、指令を出しておく。それからMerchant 、あれから連絡があった任務の第1段階が成功したそうだ。第2段階はそちらからもサポートしてくれ。』

 

 『わかりましたわAssassin 。それでは』

 

 

 『『「すべてはグローリー・キングダムの為に!」』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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