お気に入りが500件を越えました。
本当にありがとうございます。
また、感想を書いてくださる方にこの場をお借りして御礼申し上げます。
放課後、生徒会の面々にセシリア・簪を加えたメンバーがアリーナでの訓練を終えて食堂に向かっていた。
生徒会はその業務の多忙さ故に特例として週に3日、火曜・木曜・土曜日にアリーナの特別貸し切りが許されているのだ。 無論、仕事が忙しく使えない場合はキャンセル待ちの組に貸し出される事になっているが。
ただ今日は、そのメンバーに鈴とラウラが加わっていた。
「悪いわね、急に参加を申し込んで。」
そう言って鈴が挨拶してきた。 昼休みにセシリア達と一緒に食事した際に訓練の話になり、鈴が食いついてきて一緒に訓練したいと言ってきたそうだ。
「別にかまいませんよ。 此方も訓練の幅が広がり助かりました。 ラウラさんはどうでしたか?」
「こんなに密度の濃い訓練をしているとは恐れ入った。 私もこれから引き続き参加させて欲しい。」
興奮しながら答えるラウラ。 ラウラが参加したのは昼休みにアリーナの使用法を聞いてきたのでシュートが訓練への参加を呼び掛けたのだ。
「えぇ、かまいませんよ。」
シュート達が行っている訓練は、軽いランニングと準備体操をしてから、ドローン相手の格闘&射撃訓練、複雑な動きをするドローンの後ろを同じ軌道で飛行する軌道訓練、ドローンからの攻撃をひたすら避ける回避訓練、1対1or1対多の模擬戦等、多種多様にわたる。
また、参加メンバーも生徒会役員以外にもファントムタスクの面々がその時々で加わる。
それ故にラウラが感心するのだ。
食堂までの道すがら、訓練での反省点等をみんなで語りあった。
一方、その頃 千冬は応接室にきていた。 そこには一人の女性が千冬を待っていた。
「お待たせして申し訳ない。」
千冬がそう言うと、真っ赤なノースリーブのチャイナドレスを纏った女性が
「高名なブリュンヒルデにお逢いできるのです、待つことなぞ造作もございませんわ。」
そう言って立ち上がり名刺を差し出して
「御初に御目にかかります。この度、織斑一夏君の専用機を製作することになりました[イスルギ重工]の社長の石動光子です。 どうぞよろしくお願いいたします。」
「織斑千冬だ。」
千冬は名刺を受けとると座るように促す。
「さて、ビジネスのお話ですね。 早速ですが白式をお渡し願いますか?」
光子の言葉に千冬はスーツのポケットから待機状態の白式を取り出した。
「渡す前に聞きたい事がある。イスルギ重工が作る一夏の新しい専用機はどのような形になる予定なんだ?」
「政府からは、白式のような剣1本のピーキーな機体・・・欠陥機ではなく量産を見据えた汎用性の高い機体をという依頼が来ております。」
千冬の心情を知ってか知らずか、白式を欠陥機とバッサリ切り捨てる光子。 横に置いていたバッグからタブレットを取り出して、データを呼び出して
「イスルギが独自に開発していた実験型第2世代IS[リオン]をベースにして打鉄で得たデータをフィードバックして作り上げる第3世代型IS[ガーリオン]。 これを更に織斑一夏君用にカスタマイズします。」
そう言ってタブレットを操作しリオンとガーリオンの姿とデータを表示していく。
「標準装備として、アサルトブレードにバーストレールガンにマシンガンがあります。第3世代兵装として[ソニックブレイカー]があります。」
「・・・・・・雪片を装備させるのは無理なのか?」
データを見ながら千冬が光子に尋ねる。
「白式に装備されている雪片弐型ですか? 流石に現状では無理ですね。 それを装備すると他の武装が何も装備出来なくなって白式の二の舞になります。」
そこまで光子は言うとタブレットの画面をスライドし
「しかし、ある方法を使えば雪片を装備させても問題無いと、開発主任が申しておりました。」
スライドされて現れた画面に釘付けになる千冬。
「・・・・・・どこまで知っている石動光子! 」
光子を睨む千冬。 睨まれた光子は涼しい顔をしている。
「そんなににらまないでくださいブリュンヒルデ。 一切他言いたしませんし。 それに必要な物は既に揃っております。」
「何が目的だ!」
「話が速くて助かります。目的は二つ、1つ目は貴女が隠し持っている設計図。二つ目は篠ノ之箒をわが社の企業代表パイロットにしたいのです。」
光子の要求に驚く千冬。 設計図・・・・それはかつて束が失踪した後に、千冬は今は更地となっている束の実家に行き、倉庫の地下に作られていた束の秘密ラボに侵入しそこから密かに幾つかの物を持ち出していた。
その中の1つがISの設計図・・・第3世代ISの物だ。その当時第2世代の開発が急務だったのに、束は既に第3世代の設計図を作り上げていた。
「設計図はともかくとして、箒を企業代表パイロットにしたい? こう言っては何だが、あいつはそれほど優れたパイロットではないぞ。」
「ネームバリューですわ。 篠ノ之束博士の妹の箒さんが、わが社の代表パイロットになる。 それだけでもかなりの話題になりますわ。」
「機体はどうする? イスルギには白式の分を含めて二つしかコアは無いのだろう、表向きは。」
「ご心配には及びません。日本政府との交渉の結果、民間の研究室が保有しているコアを回収してわが社に回してくださるそうです。」
「・・・・・・わかった、その条件を飲もう。 設計図は月曜日にそちらに直接持っていく。 それから専用機は何時出来上がる?」
「来月末には出来ます。 学校の臨海合宿には間に合いますわ。 それでは今日はこの辺りで失礼させていただきますわ。」
そう言って光子は千冬に一礼して部屋を後にする。
残された千冬は出ていった扉を忌々しげに睨み
「あの女キツネめ!! 」
だが、千冬にはどうすることもできない。 首根っこ押されられているのだから。
食堂では、シュート達が夕食を取っていた。
シュートはカツ丼と鴨南蕎麦のセット、マドカはカルボナーラ、シャルロットと本音はハンバーグ定食、刀奈とセシリアはオムライス、鈴は麻婆豆腐定食、簪は天婦羅うどんと太巻き、虚はチキン南蛮定食、ラウラはトルコライスを食べている。
そんな中、シャルロットがトルコライスを一心不乱に食べるラウラの世話を甲斐甲斐しく焼いている。
「ほらラウラさん、口の回りにケチャップがついてるよ。」
「すまない、しかしこのトルコライスというのは凄いな! トンカツにスパゲッティにカレーピラフにソーセージにオムレツにフライドポテトまで、こんな夢のような料理があるとは、日本とは凄いな!」
ラウラが食べているトルコライス・・・ようは大人のお子様ランチみたいな物で、1つの皿にピラフ、トンカツ、ナポリタンが乗った料理でトルコとなっているがトルコ料理ではなく長崎の郷土料理だ。
ちなみにIS学園のトルコライスは、オムレツの乗ったカレーピラフにナポリタンにデミグラスソースのかかったトンカツにソーセージにフライドポテトとかなりの豪華版だ。
それを無我夢中で食べるラウラの姿はまるで年端もいかない子供のようで微笑ましかった。
和やかな雰囲気の中、シュート達は夕食を食べていた。
一方で、シュート達の席からかなり離れたテーブルでは殺伐・・・・いや一見、遠目には和やかな雰囲気のようだが、近づけばわかる程の殺気と怒気が渦巻いていた。
一夏と四人の少女が夕食を食べているテーブルだ。
一夏の右隣に鏡ナギ、左隣に相川清香と四十院神楽、その反対側に箒が座って食事を取っている。
ちなみにその周囲のテーブルには誰も座っていない。
いや、座れないのだ。
ちなみに一夏がステーキ丼、ナギは焼きうどん、清香は唐揚げ定食、神楽は天婦羅定食、箒が焼き魚定食を食べている。
ナギ達3人が一夏の世話を甲斐甲斐しくやきながら話をしている。 その反対側で箒が3人と一夏を睨みながら食事し、たまに会話する。
一夏を巡って協力関係を結んだナギ達3人対箒の構図が出来上がっていた。
これが後に悲劇を生み出す事になる。
前々回で一夏の毒牙に掛かった三人娘に関して色々な感想をいただきました。
とりあえず、一夏を巡る戦いは箒VS三人娘の構図となりました。
箒→三人娘 一夏を惑わす女狐達
三人娘→箒 幼馴染みを傘にきる毒婦。でも単独だと強敵なので協定を結び三人が協力して一夏をものにする。
三人娘→内情 一人を除き、ある理由から一夏と関係を持つ。 思惑が色々あれど対箒で協力。 これは追々あかしていきます。
というふうになっております。 三人娘の協定は一夏争奪戦から箒が離脱するまでは一夏を共有財産とし、あらゆる面で協力し共闘する、となっております。
まあ、これがいつまで持つかは今後の展開をお待ち下さい。
また三人娘達はけっしてアンチ対称ではないので、それぞれ幸せな未来(あくまで本人にとって)が待ってます。